嬉しすぎて人前で興奮してしまったくらいです(笑)
本当にありがとうございます!!
校舎裏での出来事から数日が経って現在はお昼休み、私はあの日から毎日を悶々と過ごしていた。
理由はやはりあの日の帰り際に言われたことである。
あの日、彼に恥ずかしい所を散々見られ、誤魔化すためにも適当な言い訳をしている最中にふと思い出した。
「あっ、そういえばさっきのメロンパンのお金なんだけど、教室に帰ったらすぐに返すから。」
食べ盛りの男子高校生にとっては貴重であろうお昼ご飯を分けてもらったあと、色々考えこんだり言い合い(私がほぼ一方的に)をしていたため、そこまで頭が回っていなかった。
しかし彼は、
「いや、別にいらないから。」
と顔の前で手を振って私の申し出をすぐさま断る。
「それは駄目!君に散々迷惑をかけたのに、ご飯までタダで貰うなんてできない!」
「俺は太りたくないからお前に手伝って貰っただけだって言ったじゃん。むしろ妹に嫌われなくすんでこっちは助かってんだよ。」
むーっ…そんな見え見えのウソで誤魔化そうとして。彼は私と同様、いや、私以上の捻くれ者だ。
だったら…
「仮にそうだとしても私は他人から無償で施しを受けるのがイヤなの。だから私の自尊心を保つためにも、絶対に払うから。」
これ以上みじめな思いはしたくないということもあるため、言っていることは別にウソではない。
「…頑固なやつ。」
「…君に言われたくないよ。」
「…しかも捻くれてるし。」
「それだけは君に言われたくないよ‼︎」
私も大概だけど、彼ほどではないと信じたい。
「それじゃ、金は適当に机の中にでも入れといてくれ。あんまり人に見られないようにな。」
「どうして?帰ったら直接渡すよ。」
「いやいや、直接とか目立っちゃうでしょ。」
「別にお金を返すだけだよ?別に目立つことじゃないよ?」
「普段からぼっちな俺がいきなり他人に話しかけられてみろ。周りは何事かと思って見るだろ。」
「それはさすがに自意識過剰じゃないかな?」
「まぁ普通の人なら問題ないかもしれん。だがお前みたいなリア充っぽいやつが話しかけてきたら話は別だ。」
「りあじゅう?」
怪獣の名前?そうだとしたらかなり失礼な気がするが。
初めて聞く言葉に小首を傾げていると、
「まじかよ…とにかくお前みたいなやつが俺なんかに話しかけてきたらほぼ間違いなく注目してくる。そうなると俺の平穏なぼっちライフが悲惨なぼっちライフになる可能性もあるからな。」
あれ?どっちもぼっちだから変わんないのか?っと彼は1人でブツブツ言っている。
「君が目立ちたくないのはなんとなくわかったけど、なんで私だと、りあじゅう?になってみんな注目するの?」
私だとダメな理由でもあるのか?と疑問に思っていると、
「…逆にこれだけ自覚がないってのも考えもんだな。」
と、彼は訳のわからないことを言っている。
「ねえ?それってどういう、」
こと?と続けようとしたが、そこでチャイムが昼休み終了の鐘を鳴らす。
彼はヤベッ、と即座に荷物をまとめると、
「とにかく、教室では絶対に話しかけるなよ!これでこの話は終わりだからな!」
「ちょっ!待っ…」
そう言って彼は一方的に話をまとめると、早足で教室に戻って行ってしまった。
そうして何日か経ったが、彼にはずっと話しかけられずに今に至るわけである。
正直彼にはまだ聞きたいことがたくさんある。
なぜ私を簡単に許してくれたのか?
彼が言った自覚がないとはどういうことなのか?
そして…りあじゅう、とはなんなのか?
わからないことが多すぎて頭の中がグチャグチャになっている。
いくら考えても答えは出てこず、いつものようにボーッとしていると、
「優希、いつにも増してボーッとしてるねー。」
後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
振り返るとそこには同じ中学でよく相談に乗ってくれたり遊んだりした私の唯一とも言える親友、藤堂桃花《とうどうとうか》が笑顔で立っていた。
「桃花…どしたの?」
「どしたのって、お弁当一緒に食べる約束してたじゃん! 」
「いや、約束した記憶が全くないのだけど…」
「そだっけ?まぁ、親友に会いに来るのに理由なんかいらないっしょ!」
人懐っこい笑顔でそういうと向かいの席に、ちょっち借りるねー、っと本人の了承も得ず、勝手に向かいの席に腰掛ける。
桃花のいきなりの登場に周りからは、
「見ろよ、藤堂さんだぜ。」
「やっべー超可愛い。」
「なんか守ってあげたくなるよなー。」
「ギュッてしてー…」
口々に賞賛の声があがる。
彼女は中学のときからその人懐っこい笑顔と見た目に似合わずサバサバした性格で人気があった。
高校に上がってからは髪を少し茶色く染めてショートボブにし、制服を適度に着崩し化粧も薄くしている。まさに今時の女子高生って感じで同性の私から見てもかわいい。
ただ、彼女は身長が平均よりも低い…いや、かなり低いことにコンプレックスをもっており、間違ってもそのことを口にしてはいけない。
昔、クラスの男子に幼女とバカにされて大暴れしたのは今でも鮮明に覚えている。
…あれは悲惨だった。
だが普段はその明るさとサバサバした物言いで誰からも頼られる姉御的な存在で、それは高校生になった今も変わっていない。
中学のときは本当にお世話になり、こんな私を親友と呼んでくれる彼女にとても感謝している。
そして、今回もここ数日間悩んでる私を心配して声を掛けてくれたのだろう。
ほんと私には勿体無いくらいできた親友だ。
「で?我らが学園のアイドル、優希ちゃんは一体なにをお悩みなのかなー?」
いやいや、こんな愛想のない私なんかよりむしろ桃花のほうがアイドルじゃん。知らない人なら勘違いしてもおかしくないくらいには。
「私がボーッとしてるのはいつものことだよ。知ってるでしょ?」
「そりゃ優希がボーッとしてるときはいつも面倒くさいこと考えてるときだっていうのは知ってるけどさ。」
失礼な、別に面倒くさいことばかりではない。
例えば………あれ?出てこない…
「今は面倒くさいこと考えてるときだねー。優希ちゃんは分かりやすいですねー。」
桃花が、席を立って、おーよしよし、と頭を撫でてきたのでムッとしてその手を振り払うと、
「もう、恥ずかしいからやめて。…私ってそんなに分かりやすいのかな?」
「優希は声や表情には出さないけど雰囲気やちょっとした仕草で付き合いの長い人にはすーぐバレちゃうよねー。」
そうなのかな?自分では全然わからないや。
「でも今回のボーッはいつものボーッとちょっと違うんだよねー。なんていうか…いつもより深刻な感じがするんだよねー。」
…この子、私よりも私のこと知ってそうでなんか怖い…
「まぁどうでもいいことでもいいからさ、なんか話してみてよ!てかぶっちゃけ暇なんだよねー!」
ニヒヒッ、と笑う桃花にジト目で睨みながらも感謝する。
彼女はいつもこうやって冗談を交えて悩み事を話しやすい雰囲気をつくり、心を軽くしてくれる。
中学のときも彼女のこういった気遣いに何度救われたか。
私は力を抜いてフッと笑うと、
「じゃあ親友の桃花ちゃんに聞いてもらおっかな。でも、そんなに面白い話でもないんだけどね。」
もしかしたら色々な人から相談を受けていた桃花なら、私では見えないものが見えるかもしれないという期待も込めて、相談にのってもらうことにした。
「まっかせんしゃい!とりあえず場所変えて話そっか。」
「よろしくお願いします!」
そうして私達はあまり人気のない屋上に向かい、私はここ数日の出来事を親友に全て明かすことにした。
今回も読んでいただきありがとうございます!
オリキャラ2人目の桃花を登場させるかどうか迷いましたが、登場させたほうが面白くなるだろうと判断しました。
これから頻繁に登場することになると思いますのでよろしくお願いします!