そうして私と彼の高校生活は…   作:桜チップス

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まさかここまで読んでいただけるとは思ってもいなかったです。
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本当に…
本当にありがとうございます!!!!!
今後ともよろしくお願いします‼︎


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翌日からは、3日間に分けてテストが行われた。

1日目と2日目は3教科、3日目は4教科で全て午前中に終了し、午後はフリーになる。

今回、テスト勉強があまり身に入ってなかったため少し不安に思っていたが、どのテストの内容も難しいと思うところはなく、特に数学は元々得意だったということもあり、会心の出来だった。

ただ気掛かりな事があるとすれば、この3日間、彼とお弁当を食べる時間がなかったため、全く話す機会がなかったことである。

もちろん教室では顔を合わせているが、人前での接触はやめてくれと彼から釘を刺されているため、話しかけることはできない。

それに、多分だけど教室では避けられてる。

彼とは何度か目が合ったが、すぐに逸らされたりもした。

これには流石にショックだった。

いくら彼が目立ちたくないとはいえ、何度か一緒にお弁当を食べた仲だというのに目線すら合わせてくれないとは…

やはり、本当は1人で食べたかったのに私が無理やりこの関係を続けたからだろうか。

それとも、私がくだらない見栄を張ってたことがバレたからだろうか。

せっかくテストも終わって、もうすぐ夏休みだというのにこの調子では気が滅入る。

明日の昼休みには会話する機会は十分あるのだから、そのときに尋ねてみるべきか。

いや、もしかしたらもう来ないでくれと拒絶されるかもしれない。

やっぱり、嫌われたのかな…

ヤバい…頭が痛い。

それに、呼吸も苦しくなってきた。

もしかしたら、また発作が起こるかもしれない。

急いで帰り支度を済ませると、クラスメイトからのテストの打ち上げの誘いを体調が悪いと言って断り、ふらつきながらもなんとか家まで帰った。

 

その夜、やはりというか、高熱に見舞われた私は翌日の学校を休んだ。

 

 

 

 

 

 

「オーッス!調子はどう?」

「もう全然平気。いつも通りだよ。」

「そりゃ良かった。ほい、一緒に食べよーぜ♪」

「ありがとう!お茶入れるね♪」

 

金曜日は丸一日睡眠をとり、その翌日にはすっかり元気になった私は図書館に本を借りに行こうと支度していたのだが、おばあちゃんにまだ安静にしてなさいと止められ、ヒマな私の元に桃花が遊びに来てくれた。

 

「桃花はテストどうだったの?」

「…ボチボチダヨ。」

「…結構ヤバいの?」

「そうなんだよー!特に数学がヤバすぎる!」

「そうなの?むしろ簡単だったと思うんだけど。」

「嘘だッ!あんなの20点取れたらいい方だよ!」

「…ほんとよくこの高校受かったね。」

 

桃花は中学のときからとにかく勉強が嫌いだった。

成績も散々でこのままだと高校にいけないとまで言われ、追い込まれた桃花は高校受験まで死に物狂いで勉強した。

もちろん私も散々付き合わされたが…

だが、おかげで同じ高校に入れたのだから今となってはいい思い出だ。

 

「うわーん‼︎夏休みの補習がほぼ確定じゃんよー!優希ちゃん助けてー!!」

「うん、頑張ってね。」

「…ねーえー、このままだと桃花ちゃん補習で何回テストやっても受かんないからさー。お・し・え」

「うん、頑張ってね。」

「ハクジョーもの!おに!あくま!」

「自業自得だよ。桃花は集中してやれば出来るんだから頑張りなさい。」

「さようなら、私のエンジョイサマーライフ…」

 

真っ白な灰になった桃花を無視して買ってきてくれた大好物のどら焼きを頬張る。

やっぱりここのは餡子がぎっしり詰まってておいしい♪

 

「あっ、そういえば比企谷くんとはもう付き合ったの?」

「…!?」

 

危うく口の中いっぱいに詰め込んだどら焼きを盛大に吹き出すところだった。

昆布茶で無理やり流し込んで呼吸を整える。

 

「フーッ…いきなりなにありえないこと言ってんの!?」

「えー、まだなんだー。」

「まだというか、そんな…付き合うなんて…考えたこともないよ。」

「そうなん?」

「だって、彼と話すようになってまだ日も浅いし、まだお互いのことなんて全然知らないし、それに…」

「それに?」

「彼は私のことなんて見向きもしてないだろうし…」

 

このテスト期間中、彼に避けられていることを桃花に話した。

話している最中、彼から避けられているという事実を再認識して、また心が沈みこむ。

 

「なるほどねー。要するに優希は比企谷君から嫌われたんじゃないかってことね。」

「…うん。」

 

これまでのことを考えると当たり前か。

彼の本を勝手に持って帰ったり、強引に昼休みを一緒に過ごしたり、むしろここまで付き合ってくれた彼は本当に優しい人だ。

たぶん私が謝っても、彼はまたお得意の捻くれた優しい答えを返してくれるだけだ。

もう、私の我儘に付き合わせられない。

 

「これ以上、彼の優しさに甘えるのはやめる。」

「てことはさ、比企谷くんとは関わり合う前の関係に戻るってことでいいのかな?」

「…そうだよ。」

「ふーん。ほんとにそれでいいの?」

「だって、これ以上は彼の迷惑にしかならないし…」

「迷惑?」

「元はと言えば、私が勝手なことしたばっかりに余計な心配させたし、お弁当だって本当は1人で食べたいのに私が無理やり作ってきて一緒に食べてるんだしさ。嫌われるのは当然だよ…だから、もう」

「優希ってさー」

 

突然、桃花が私の言葉を遮ってきた。

先ほどまで明るい口調で話していた桃花の声が急に低く、冷たい声になる。

 

「さすがにそこまでだともうさ、愚かでしかないよね。」

「なッ…」

 

この無表情で冷たい感じ…

知っている。桃花が本気で怒ったときだ。

驚いてなにも言えなくなった私に構わず桃花は言葉を続ける。

 

「優希の他人を思いやれるその優しさは美点だよ。でもさ、今回みたいに深読みしすぎて間違った結論を勝手に出して自己完結させるのは優しさでもなんでもない。比企谷君をバカにしてる。」

 

桃花の容赦ない言葉に呆然としていたが、すぐさま我に返って反撃する。

 

「そんなことない!これまで私の我儘でずっと彼を振り回してる!」

「迷惑って言った?」

「えっ?」

「比企谷くんは優希に1人で食べたいから来られるのは迷惑だって言った?」

「それは…」

「あのとき優希のお弁当、喜んで食べてくれなかった?」

「…美味しいって言って全部食べてくれた。」

 

あのときは本当に幸せそうな顔で食べてくれたな…

 

「比企谷くんは別れ際になんて言った?」

「…明日からよろしく頼むって言ってくれた。」

 

たぶん勇気をだして照れながら言ってくれた…

 

「比企谷くんはそれらを言ってるとき、全部ウソに見えた?」

「…見えなかった。」

 

…そうだ。

私は彼のことをなに一つ見ていなかった。

自分で勝手に他人を評価してそこで終わらせるなんて、そんなの私が一番嫌っていたことではないか。

結局、私はこれ以上彼に嫌われたくないから逃げようとしていただけだ。

中学のときとなに一つ変わらない、弱虫な私。

そして、いつの間にか無表情な桃花はいなくなって、いつもの笑顔がよく似合う桃花に戻っていた。

 

「分かったみたいだねー。優希がどんなにバカなこと考えていたか。」

「…うん。」

 

私は本当にバカだ。

 

「でも、教室で避けられてるのはたぶん気のせいじゃないと思うんだけど…」

「あー、それね。」

「なんか知ってるの!?」

「まぁ…知ってるけど」

「教えてください!お願いします‼︎」

 

もうここまで桃花に色々と晒してるんだ。

なりふり構っていられない。

 

「んー、比企谷くんには私が言ったってこと、内緒にしといてね。」

「もちろん!」

「比企谷くんはね、クラスのはみ出し者が人気者の優希と話してるところを他の人に見られたら優希に迷惑かかっちゃうんじゃないかって思ってるんだよ。」

「そんなことないよ!全然迷惑じゃない‼︎」

「まぁ比企谷くんの目立ちたくないってのもウソじゃないとは思うんだけどね。それに、彼の言うとおり一悶着はあるだろうし。中学を思い出してみなよ。」

「あっ…」

「でしょ。優希も何かあるだろうけど、たぶん比企谷くんのが被害は大きくなるだろうしね。」

「そっか…」

「ほんと、美少女過ぎるのも考えものだねー♪」

「茶化さないでよ。桃花だってこういうのあるでしょ。」

「私はそこんとこ上手くやってっからねー。」

「…たしかに。」

 

言われてみれば桃花には一度もそういった話を聞いたことがない。

ともあれ…

 

「桃花…」

「んっ?」

「ありがと。また助けられちゃったね。」

「助けられたなんて大袈裟だよー。ただちょっと比企谷くんが可哀想に思っただけだから。」

「また間違えるところだった。」

「ンフー、これからは先生と呼んでくれたまえ♪」

「はい!先生♪」

 

本当に尊敬してる、私の大親友。

ただ、怒らすとめちゃくちゃ怖いということを改めて知った。

あれ?そういえば…

 

「なんで彼が私を避けてる理由を桃花が知ってるの?」

「…ん?」

「知ってるってことは直接聞いたってことだよね?」

「んー、まぁ…そういうことだね。」

「いつ聞いたの?」

「…金曜の昼休みにちょっちね。」

「…えっ?じゃあ2人で」

「さーってと!優希も元気そうでよかった。んじゃまた月曜にねー♪」

「あっ!ちょっと待って!聞きたいことはまだ」

「お邪魔しましたー‼︎」

 

私の制止を振り切ってあっという間に出て行っていまった。

彼と桃花が2人きり?

そんな…

他にも何か話したってこと?どんなことを?まさか桃花は彼のことを?

今日もまた眠れない夜になりそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さすがにまだ言えないねー。比企谷くんが優希を避けてた本当の理由が、目が合っただけでなぜか緊張しちゃうからってことは。」

 




今回もお付き合いいただき、ありがとうございます!
書きたいことが多くてなかなか夏休み編までいけないです…
次話は夏休み前を書いて、その次こそは夏休み編を書く予定ですのでよろしくお願いします!!

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