俺は提督とゲームをしていた。
「で、どう?」
「何がっすか?」
「誰か好みの女の子とかいる?もううちの鎮守府も30人超えてるけど」
「うーん……どうすかね。どの子も良い子だとは思いますけど」
「特にどの子?」
「あんま関わってる艦娘が少ないですから、一概にこの子とは決められないですね」
「じゃあその関わった子の中で」
「ちょっ、なんでそんな聞いてくるんすか」
「いいじゃん。せっかく鎮守府の数少ない男なんだし」
「まぁわかりますけど。言わんとしてることは。じゃあ提督は?」
「いないけど?」
「ほら見たことか……」
「あ、ちょっ、死ぬ。死ぬ」
「PKスターストオオオオオオオオム」
「あっ、おっ、おまっ……!」
「はい俺の勝ち」
「あそこで最後の切り札はねーだろお前」
「いやあの場面だからこそでしょう」
ダラダラと二人揃ってゲームをしてると、後ろから肩を突かれた。振り返ると、サイドポニーの人が立っていた。
「仕事、しましょう」
「「…………はい」」
無表情でそう言われ、俺と提督はすごすごと立ち上がる。
「………あの、この人は?」
「加賀さん。今日の秘書艦で一航戦としてのプライドも高くて、あの人の前で赤城をからかうと殺されるぞ」
うわ、怖い。
「じゃ、仕事頑張ってください。俺、厨房に戻るんで」
「いや待て。あの人俺を二人きりにしないでくれ。泣くぞ」
「俺もう泣きそうですよ。無理です、あの人とにらめっこしたら笑えません。表情筋が凍りつきます」
「その状況がこれから俺に起ころうとしてんの!どうすんだよ!もう夏前なのに鳥肌立ってくるんだよ!」
「知らねーよ!部下とのコミュニケーションもあんたの仕事だろうが!」
「一言間違えたら凍りつくコミュニケーションとかギャルゲーでもねぇよ!」
「……あの、すいません。俺、ギャルゲーときメモ4しかやったことないです」
「………お、おう」
「…………」
「…………」
「じゃ、俺行くんで」
「させるかぁ!」
「グホッ!」
提督の廻し蹴りが俺の顔面に直撃した。
「ってぇな!何するんすか!」
「行かせねぇ……!ここから先へは行かせん!」
「はっ、おもしれぇ……。俺はお前を倒して奴らも仕留める」
奴らって誰だよ、そんなツッコミもなく、俺も提督も構えた。
お互い、1ミリも動かない。ただ、隙を窺うように睨み合う。直後、お互いに殴り掛かった。だが、
「グスッ」
という声が聞こえて動きを止めた。二人してその声のほうを見ると、加賀さんが顔を俯かせて目を擦っていた。目元には涙が見える。
「……………」
「……………」
さっきまでの会話、ガッツリ聞かれてた。あーあ、どうすんのこれ。ヤバイよこれ。俺も提督も動けずに、ただ泣いてる加賀さんを眺めることしか出来ない。
さらにその時だ。
「艦隊、帰投しました」
赤城さんが帰って来ました。赤城さんは、泣いてる加賀さん、棒立ちしてる俺と提督を交互に見合わせると、笑顔で言った。
「話、お聞かせ願えますね?」
「「………はい」」
この後、メチャクチャ怒られた。
1
赤城さんの説教は三時間ほど続いた。床に穴が開くほど土下座させられ、俺はおでこから流れた血を止めるために医務室にいる。
「まったく、バカなんですか?」
たまたま居合わせた古鷹さんが俺の頭に包帯を巻いてくれている。
「そんな事言えば、赤城さんじゃなくても怒りますよ」
「……そっすよね。いや、一番バカなのは提督だと思います」
「うん。提督が一番バカ」
なんか古鷹さんの口調が心なしか冷たい気がする。
「よし、これでおしまい」
「すみません、有り難うございます」
「いえいえ」
そういえば、ずーっと気になってたことがある。古鷹さんの左目だ。だけど、聞いて良いのか分からないよね、体のことだし。もしかしたら障害者なのかもしれないし。
「あの、何か……?」
「いや、何でもないです」
あんまり見すぎていたからか聞かれてしまった。あんま見るのもよくないよな。
「さて、じゃあ俺そろそろ晩飯の用意しないと。ありがとうございます、古鷹さん」
「あ、いえ……」
あれ、何でこの人少し残念そうな顔してるんだろ。よく分かんないな。
まぁいいか、俺には関係ないだろうし。軽く古鷹さんに会釈してから食堂に向かった。
2
厨房には、まだ間宮さんは来ていなかった。とりあえず、先にご飯を炊いておこう。それと、味噌汁でも作っておくか。
鼻歌でウルトラマンコスモスのOPを歌いながら飯の準備をしていると、「あのっ……」と声が聞こえた。
「はい?……あ、瑞鳳。どうしたの?」
俺がタメ口を使う使わないは、相手の年齢による。中学生以下くらいの相手には使わない。まぁあくまで俺の目測なんだけどね。
「あの、お願いがあるんだけど……」
「? 何?」
「今日の晩御飯、私も一緒に作らせて欲しいなぁ、なんて……一応、間宮さんにもお願いしたんですけど……」
あー。なるほど。女子力を上げたいと、そういうことか。
「良いけど……。俺料理とか教えらんないよ?」
「そこはいいです!間宮さんに教えてもらうから!」
あ、そう……。まぁいいけどね?こっちは楽できるわけだし?
「お待たせしました」
すると、間宮さんがやって来た。