鎮守府の食堂で働く   作:アルティメットサンダー信雄

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恋愛相談

 

 

「は?遠征中?」

 

古鷹さんが見つからなくて、執務室に駆け込んだら、加賀さんがそう教えてくれた。

 

「つーか、提督は?」

 

「提督ならそこで寝てますよ」

 

執務室のソファーでおでこから煙を上げて寝て……いや、気絶していた。

 

「………え、なんで?何であんなことに……」

 

「昼間っから隼鷹やら千歳やらに飲まされ、酔っ払って執務室に帰って来て、私のスカートの中に頭を突っ込んで来たのでチョップしたのよ」

 

チョップで普通頭から煙上がるかよ……。普通に引くわ。

 

「それで、古鷹に何か?」

 

「あ、いや別に謝ろうと思って来ただけなんで。遠征中なら大丈夫です」

 

「謝る?最近、元気なかったかと思ったら何したのよ」

 

「どうやら、古鷹さんの好みのパフェの材料を買えなかったみたいで」

 

「…………は?」

 

「だから、謝ってまた材料を買おうと思っています」

 

「いや、それ絶対原因違うわよ。何したのよ」

 

「や、だからパフェ」

 

「話を聞いてあげるから話してみなさいと言ってるの」

 

「マジで?聞いてくれるんですか?意外と良い人なんですか加賀さん」

 

「意外と、は余計よ」

 

ふーむ、加賀さんに相談……。ま、いっか。叢雲に他の人にも頼れ、と言われたし。

と、いうわけで、俺は数日前の事を話した。直後、加賀さんの目はゴミを見る目になった。

 

「あなたは……バカなんですか?」

 

「え、何がですか?」

 

「良くその流れからパフェの方に行きましたね。大体、あの子ならあなたの作るパフェなら何でも良いと言うでしょう」

 

「え、手を抜こうが拘ろうがどちらも等しく無価値って事?」

 

何それひどい。退職しようかな。

 

「違います。ほんと馬鹿ですねあなた。この世で一番のバカは提督だと思っていたけど、あなたも同レベルね」

 

「おい、俺でも傷つくんだぞ。大体、名前の感じからして加賀の方がバカっぽ」

 

ヒュッ、と。ヒュッと真横で風を切る音がした。加賀さんの拳が俺の頬を掠めた。

 

「………何か言った?」

 

「イエ、ナニモ」

 

今、一度俺死んでたかも。

加賀さんは少し考え込んだあと、「ま、ヒントくらいならいいか」と呟いて、言った。

 

「いいですか?古鷹が何故、怒ったか。それはあなたが余りにも鈍いからです」

 

「いや、俺敏感ですよ?この前だって……」

 

「黙って聞け」

 

「え、はい」

 

何この人怖い。

 

「まず、なんであなたの写真を持ってるのか、そして何で鹿島と二人で帰って来たあなたにイラっとしたのか、その辺を考えなさい」

 

「…………」

 

言われて、俺は腕を組んで考えた。

ふむ、写真……他の奴とイラつかれる……、

 

「俺、古鷹さんにペットと思われてるんか」

 

「今すぐ死ぬか消えてください」

 

「あ、違うのね………」

 

と、なると、だ……。考えられるのは一つ。

 

「ストーカー、か……」

 

「いや、あながち間違ってないけど言い方」

 

「間違ってないんですね。ストーカー、かぁ……困ったなぁ。古鷹さんそんな人には見えなかったんだけど……」

 

「ああもう。私がここまで言うのは違う気もしますが、この際仕方ありません」

 

加賀さんはそう言うと、シレッと言った。

 

「ストーカーかどうかはおいて、少なからずあなたに好意を抱いてるというわけです」

 

「…………いや、ないないない」

 

「わかりまし……は?」

 

ねーよ、ねぇ。俺を誰だと思ってんだこの人。女性に嫌われることにおいて、俺の右に出るものはいないとまでされてる伝説の男だぜ?

 

「あのなぁ、加賀さん?俺は過去の人生で最後に女性と付き合ったのは中三の夏以来ですよ?しかも、それが最後の女性との会話ですよ?なんか高校の頃なんて、話したことないのに女子の間では俺の悪い噂立ってたみたいだし、そんな俺の事を好きになる奴なんているわけないでしょ」

 

「それは学生時代のあなたの話でしょ?今のあなたは別です」

 

「いやいやいや、俺と言う人間の人格は基本的に変わってないはずだよ。だって、変わろうと思ったことないもん」

 

「なら、過去に出会った女性達と違って、古鷹は貴方の良い所を見たという風には考えられませんか?」

 

「俺の良いところなんてないから嫌われてたんだろ」

 

「少なくとも、艦娘の子達はあなたの事を嫌ってる者はいませんよ」

 

「………いるでしょ。加古とか」

 

「あの子は別です。私も、あなたの誰にでも平等に優しく気遣える所は嫌いではないわ」

 

「…………あの、加賀さん?大丈夫?何か悪いものでも食べた?」

 

「そういう、褒められた時に素直に受け入れられないところは殺したいほど嫌いですが」

 

「あれ、それマイナスに振り切ってるような……」

 

この人、やっぱり俺のこと嫌いなんじゃないだろうか……。

ああもうっ、と加賀さんはため息をつくと、話を進めた。

 

「とにかく、あなたはもっと自分に自信を……」

 

そう加賀さんが言いかけた直後、電話が鳴った。受話器を手にする加賀さん。

しかし、古鷹さんが俺に好意、か……。俺はどうなんだろうな。古鷹さんのこと、好きなんだろうか。確かに、他の子達よりも多く関わって来たし、「何この子天使かな?」と、思った回数も多い。

そもそも、本気で人を好きになったことがないから、俺はイマイチ古鷹さんに対する感情が分からない。

………だけど、古鷹さんが俺に好意を向けてると聞いた時、少なからず嬉しかったのも確かだ。

あーもうっ、なんでこんな悩まなきゃなんねーんだよ畜生。

そんなことを考えてると、電話中の加賀さんから聞き捨てならない声が聞こえた。

 

「………なんですって?古鷹が、大破?」

 

…………あんだって?

 

 


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