古鷹さんが行ってしまった。あー、こういう時俺どーすればいんだろうな。追いかけるべきなのか、とりあえず買い物を済ませるべきなのか。困ったなあ。うん、とりあえず買い物済ますか。
えーっと、とりあえず適当にチョコとか……アイスとか?うん、おk。じゃ、鎮守府に戻るか。
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スーパーを出て、とりあえず怒らせてしまったなら謝っとこう、ということで少し急ぎ足で帰宅していた。
「……つーか、俺って鎮守府で寝泊まりしてていいのだろうか」
どうでもいいことを呟いた。や、でもいいのかね。こっちとしては便利なんだけど、軍人とはいえ食堂で働いてるだけの身である俺が最前線に寝泊まりしていいのか?
そんなことを考えながら、とりあえずうち帰って久々にモンハンでもやるか、と決めると、ツインテールの白髪の女の子が地図を持ってキョロキョロしてるのが見えた。
「…………」
あーはいはいこのパターンね。道に迷ってるーみたいなね。つーかあの子、うちの鎮守府にこの前来た鹿島さんじゃん……。
どうしよう、そんなに仲良いわけじゃないし、向こうが困ってるとはいえ、恩着せがましくするのは良くないよなぁ。つーか、ナンパと思われたら嫌だし。
ここは、わざとあの人の目のつくように歩いて、あとをつけてもらうしかないか。
そう決めると、俺はイヤホンを装着した。
「へっきし!」
加藤茶みたいなくしゃみをかますと、鹿島さんは俺の方を見た。
音楽を聴きながら歩いて鎮守府へ向かう。スマホの自撮りモードで後ろを確認すると、ついて来ていた。よし、あとは鎮守府に着くだけだ。
「福島さん!」
名前を呼ばれても無視。音楽を聴いてるのはそのためだ。ここで振り返ったら、なんか声をかけて欲しくてわざとくしゃみした奴みたいになる。………どんだけまだるっこしい事してんの俺。
って、あれ?なんか勝手にイヤホンが外れ……、
「ふ、く、し、ま、さんッ‼︎」
「おふぉっ⁉︎」
耳元で声がした。横を見ると、イヤホンを片手で摘んでる鹿島さんがふくれっ面で立っていた。
「何で無視するんですか?」
「え?いや、すみません。音楽聴いてたもので……」
「嘘です、聞こえてたくせに」
………なんでバレてんの。
「あーんなわざとらしく、くしゃみして『俺に着いてくれば鎮守府に着けるよ?』みたいにアピールして……」
「わーまったまった!恥ずかしいから懇切丁寧に解説しないで下さい‼︎」
「では、一緒に帰りましょう」
「いや、何が『では、』なのか皆目わかんないんですけど」
「いいから。私、また迷っちゃいますよ?」
「そんなこと言ったら俺は人生という道に迷ってますよ!」
「ちょっと何言ってるかわかんないです」
そこで真顔になるなよ。
「分かった、分かりましたよ」
「ありがとうございます」
ま、いいか。どうせ帰るだけだ。
「あ、イヤホン返してください。……って、なんで勝手に付けてんの?」
「これ、なんて曲なんですか?聞いたことないんですけど……」
「うわあい、綺麗なスルーだ。何でもいいでしょ。アニソンなんてそんなもんです」
「ふぅん……アニメ、ですか」
「つーか鹿島さんはあんな所で何してたんすか」
「香取姉にお使い頼まれてしまってまして」
「ふーん……なんのですか?メガネ拭き?メガネケース?メガネのフレーム?」
「なんでメガネ関係なんですか……というか、最後の買ってどうするんですか」
「じゃあ、鞭?麻縄?蝋燭?」
「………そういう趣味があるんですか?」
「いや、違うから引かないでくださいお願いします」
だってあの人のイメージって言ったらメガネか鞭か……、
「あ、慎吾?」
「誰ですかそれ」
「なんでもないです」
「買ったのは普通にメガネクリーナーです」
「結局メガネ関係じゃないですか」
そんな話をしながら、鎮守府に到着した。
玄関を開けて、鎮守府の中に入ると、中で古鷹さんが待っていた。
「あ、福島さん!すみません、さっきは嫌な態度で帰ってしまっ、て……?」
「へぇー、パフェ作ってあげるんですか」
「はい。古鷹さんに……って、あ、古鷹さ」
「…………」←超不機嫌な古鷹さん
「え、あの、なんで怒っ」
「………ふんっ」
逃げられてしまった。