翌日、目を覚ました俺は、すぐに今日がオフであることを思い出し、すっごいダルそうに起き上がって顔を洗った。
さて、二度寝しよう。そう思ったとき、
「あ、おはようございます」
「あ、ども」
大鯨さんが元気良く挨拶してくれた。俺も会釈して返す。
「朝ごはんの準備ですね」
「あー、俺今日オフなんで。けど、いつもの習慣でつい起きちゃいましたわ〜」
「ふふ、早起きは良いことですよ?」
「いやーでもオフの日くらいは寝たいでしょー」
この前、鳳翔さんという軽空母の方が来て、食堂は四人で回すことになった。
が、明らかに四人では多いので、三人ずつ入ることになった。
「ふふ、じゃあ私は行ってきます」
「はい。いってらっしゃい」
大鯨さんに手を振って見送ると、俺もとりあえず何か飲んでから寝ようと思い、冷蔵庫を開けた。中に飲み物はない。
そういや、昨日の夜に飲み干しちまってたな。
仕方ないので、食堂の冷蔵庫に飲み物をたかりに行くことにした。
パジャマからラフな格好に着替えて、部屋を出た。
しかし、オフの日に歩く朝の鎮守府ってのも、なんか、こう……新鮮だな。何より、早く食堂に行かなきゃという使命感がないから、随分と気が楽だ。
そんな事を思って、曲がり角を曲がろうとすると、扉が開く音がした。こんなに朝早くから誰か起きてるとは、感心感心。
何様だこの野郎、と言われてもおかしくないことを思いながら、駆逐艦のガキどもなら褒めてやろうと決めつつ、そこを見ると、古鷹さんだった。
ただし、ただの古鷹さんではない。赤と白の帽子をかぶり、薄黄色と白のTシャツを来て、腰にはウエストポーチを着け、ズボンは黒色のピチッとした短パンを履いた古鷹さんだ。まるでポケモントレーナーのような姿だ。
相当警戒してるのか、辺りをキョロキョロと確認すると、鎮守府の出口に向かった。
随分と挙動不審だったので、俺も気になり、後をつけることにした。
外に出ると、屈伸シンキャクアキレス腱と、ラフな準備体操をして、スマホを取り出すと言った。
「………目指せ、151匹!」
「ぷふっ」
思わず吹き出してしまった。
………何してんのあの人。ほんとに。まさか、ポケモンのゲーム買って影響されたの?可愛いなあの人ほんとに……。ダメだ、笑とニヤニヤが止まらん。
玄関の内側で肩を震わせてると、扉が開いた。反射的にパッと顔を上げると、古鷹さんが立っていた。
「あっ」
俺の姿を認識するなり、顔を徐々に赤くしていき、その顔が青ざめたと思ったらまた赤くなった。目には涙が浮かんでいる。
「………んですか?」
「あ?」
「見て、たんですか……?」
「え、あ、はいっ」
「………どこから?」
「部屋から出てきたときからです」
「………………」
かあああッと顔を赤くした。あ、やばい悲鳴上げられる。
「ま、待った!落ち着いて!別に俺どうもしませんから!誰にも言わないし、さっきのこと全部忘れるんで!ですから……!」
「…………ほ、ほんとですか?」
「ああ。マジで。だから大声出すのだけは勘弁して……」
「………すみません」
「いえ、こちらこそ」
なんでこちらこそって言ったんだろう。
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「ふぅん、ポケ○ンGOですか……」
あれもう日本でリリースしてたのか。
「は、はい……。うぅ、恥ずかしいなぁ、もう……」
やだこの人ほんと可愛い。
「じゃあ、俺も始めようかな。少し興味ありましたし」
「! ほんとですか⁉︎」
うおお、思いの外食いついてきた
「だったら、いろいろ教えてあげますね!」
「いや、自分で見つけるんでいいです。そういうのもゲームの醍醐味でしょう」
「えっ、そ、そうですか……。すみません、余計なことを言って……」
「と思ったけどやっぱり教えてもらおうかなー」
「じゃあまずはですね、Googleアカウントで……」
ああもうっ、この人本当に可愛いなぁ。