到着した先はケーキバイキング。ここなら一週間分は糖分補充できる。
「……うわあ、いっがーい」
「あ?何が?」
呟いた白露に俺は反射的に反応してしまった。
「だってこういうところって、普通女の子が来るところでしょ?」
「バッカお前キャーキャー喧しいだけの猿と一緒にするな。俺は週に一回はここに来ないと糖分切れて死ぬぞ」
「随分と簡単に死ぬんだね福島さん……」
ほっとけ。さて、じゃあ行くか。今は平日の昼間だし、空いてるはずだ。
「ここ、奢るって事でいいか?」
「いいよ〜。ふっふーん、一番食べちゃうんだから!」
「好きなだけ食べてもいいけど晩飯入らなくならないようにな」
「わかってるし!そんな子供じゃないもーん!」
フラグにしか見えないのは僕が捻くれてるからでしょうか。まぁ、食べ切れなかったらこいつの自己責任ってことで。
「よーっし、じゃあ行こー!」
「大声出すな。ただでさえ子供連れて歩いてるヤバイ男なんだから」
1
ケーキバイキング。俺はとりあえず皿5枚分用意し、その上に片っ端からケーキを乗せた。
「じゃ、食うか」
「いや、福島さん多すぎでしょう……」
「いいんだよ」
言いながら俺はケーキを片っ端から口に詰め込む。
その俺にドン引きしながらも、白露もケーキを口に入れた。
モキュモキュと咀嚼して、幸せそうに自分の頬を抑えるその姿は、いくら白露でも可愛かった。
「あむっ……うっ……ゴクッ、はぁー。美味しいね、福島さん!」
「あの、ごめん。さん付けで呼ばれると誘拐したみたいになるから『お兄ちゃん』か『パパ』か呼び捨てで頼む」
「えっ、なにそれキモっ……」
「お前はわかってないんだよ……世の中の世知辛さを……」
「いや、仮に理解したとしてもさ、別に身分証見せればすぐに軍関係って分かるでしょ?」
「あ?お前、周りに艦娘ってバレていいのかよ。街の中にはあんま艦娘好きじゃないやつらもいるんだぞ」
「…………」
言うと、なんかすごく意外なものを見る目で見られてしまった。
なんだよ、と視線で聞き返すと、白露は言った。
「いや、意外と気が回るんだなぁって……」
「意外とは余計だ」
職質掛けられたら自殺するまである。
すると、白露は悪戯っ子のような笑みで俺を見た。
「まぁ、わかったよ。『お兄ちゃん』」
「おぅふ……」
「えっ、きも……」
いや、悪くない。妹と言うのも悪くない。今夜、大鯨さんに呼んでみてもらおうかな。
ちょっとイメトレしてみるか。
『お、に、い、ちゃん♪え、何?水着?一応、用意だけはしてあるけど……ふえっ⁉︎い、今⁉︎ダメです。夏まで待ってください』
あ、ダメだこれ。破壊力抜群。
なら、古鷹さんならどうだ?
『お兄ちゃん……は、忙しそう…えっと……どうしようかな、加古とか何してるかな?えっと…お兄ちゃん!古鷹、何してましょう⁉︎』
「ゴフッ!げふっ!ェゲフッ!」
「ふ、福島……お兄ちゃん⁉︎」
しまった、あまりの可愛さにむせてしまった……。なんて可愛いんだ大天使古鷹。
「大丈夫?なんかキモい妄想してた後、あまりの可愛さにむせたみたいになってたけど……」
おい、こいつエスパーか?
とりあえず、鎮守府帰ったらマジで頼もう。
2
「んー!おいしかったー!」
伸びをしながら白露が店を出た。満足してくれたようで何よりです。
「じゃ、帰っか」
「えー、もう帰っちゃうの?」
「もうそろそろ帰んないと晩飯の仕込みとかあるんだよ」
「ぶー……」
「…………」
不満そうな顔をする白露の頭に、俺は軽く手を置いてやった。
「また今度な」
「! うん!」
うん、やっぱこいつはまだまだ子供だ。子供なら、このくらいは許容範囲だろ。
「じゃあ帰るぞ」
「はーい。安全運転でお願いね!」
「わーってるよ」
バイクに跨り、鎮守府に向けてバイクを走らせた。
3
その日の夜。俺の部屋。寝ようとしていた大鯨さんに、俺は勇気を出して声をかけた。
「そ、その、大鯨さん」
「?なんですか?」
「俺のこと、お兄ちゃんって呼んでみてくんない?」
「………は?」
かなりのガチトーンで返されてしまいました。
感想お待ちしておりますのです