鎮守府の食堂で働く   作:アルティメットサンダー信雄

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四人建造

 

 

その日の夜。さらに仲間を四人建造したらしい。電、古鷹、五十鈴、叢雲の四人、らしい。俺はまだ会ってないからよう知らん。

晩飯の席で提督が紹介してくれるらしい。最初の晩飯だし、少し気合い入れよう。ムンッと一息入れると、間宮さんが聞いてきた。

 

「何作ります?福島さん」

 

「え?あー……どうしましょうか。割と気合い入れようと思ってるんですけど」

 

当たり障りのない本心を答えておいた。

 

「そうですね……どうしましょうか?」

 

いや、実際俺は困ってる。ここにいるのが男子だけなら焼肉にすりゃいいとなるのだが、女の子がどんなもの好きかはわからない。下手に肉ばかり出せば、「太る」と文句を言われそうだ。

かといって、野菜メインでも文句が来る気がするし……。本当に間宮さんにお任せしたいんだけどなぁ。

 

「………まぁ、とにかく福島さんにお任せしますね♪」

 

…………この人、実はあんまり仕事したくない人なんじゃ……。……まぁ、仕方ないか。

 

「……わかりましたよ」

 

とりあえず、冷蔵庫から鶏肉を出した。

 

 

1

 

 

晩飯の席。全員が席に着いたのを確認し、提督の指示で料理は後から運ぶことになった。

 

「じゃあ、改めて。電、古鷹、五十鈴、叢雲。これからよろしくな」

 

提督の挨拶で、四人ともそれぞれの挨拶を返す。

 

「それと、あの二人がさっき紹介できなかった食堂の二人だ」

 

「………あ、俺かっ。福島です」

 

「間宮です。よろしくね」

 

「今日の晩飯はあの二人が作ってくれたんだぞ?」

 

ちょっと、提督さん。そういうこと言うのやめましょうよ。ついうっかり照れちゃうじゃないですか。

 

「わー!本当なのです?」

 

「楽しみだね、電ちゃん」

 

電と古鷹さんは割と良い人みたいだ。良かった。

 

「ふーん、そう」

 

「いいからさっさとしなさいよ。こっちはお腹空いてんのよ」

 

あ、他の二人はダメそうだ。生意気だ。つーかあの五十鈴って子もおっぱいやべーな。

 

「福島さんの料理美味しいよ?お昼に食べたけど最高だったもん」

 

「ふん、仮にも料理人だからそのくらい当たり前よ!」

 

川内さんがそう言ってくれるも、叢雲はツンケンした態度をやめない。

 

「それに、美味しいって言ってもどうせあれでしょ?おふくろの味がするとかグルメリポーターが反応に困った時に使う当たり障りのないような味なんでしょ?」

 

な、なんだこのスレンダー女……クソガキの癖にヤケに偉そうだなオイ。でも、イラッとしたけど俺は怒らないよ?料理人は口では語らない、皿で語る。キリッ!

 

「じゃあ、今料理持ってきますね」

 

間宮さんと一緒に全員分の料理を運ぶ。

 

「どーせ肉じゃがとか……」

 

言いかけた叢雲の口が止まる。とりあえず、持って来たのは鶏肉のソテーにオレンジソースを掛けたもの。それとパンに冷製野菜スープ。飲み物は成人してそうな人には酒、他の子達には牛乳を入れた。

少し力を入れてみました。フランス料理です。

 

「………な、何よこれ」

 

「す、すごい……」

 

「は、はわわわ……」

 

五十鈴さん、古鷹さん、電が驚いたような声を上げるが、別に難しいことはしてない。クックパッドに載ってるものだ。

 

「へ、へぇ……少しはやるようね」

 

お前さっきから何様だよ叢雲。

 

「じゃ、いただきましょうか」

 

明石が言うと、全員手をあわせる。提督が音頭を取った。

 

「じゃあ、この鎮守府の稼働を祝して!」

 

『かんぱーい!』

 

とのことで、食事を始めた。

 

 

2

 

 

あれから数分くらいか。艦娘の親睦も含めた意味のこのパーティは、成功したようで艦娘同士はすぐに打ち解けたようだ。それは明石さんや大淀さん、間宮さんも例外ではなく、早い話が女子はみんな仲良くやってる。願わくば、うちの高校の女子のような決して表には出さない黒い関係でないことを願う。

 

「飲んでるのか?」

 

提督が俺の隣に座った。

 

「はい。少し」

 

「ふふ、まぁなんとか今日は四人建造することができた」

 

「出撃はしたんすか?」

 

「いや、初日は休みだ。出撃は明日から」

 

俺は初日から仕事なのに……と、思ったが、俺たちは別に戦うわけではないし、士気を高める意味でも初日休みにするのは致し方ないだろう。

 

「しかし、何なんすかねあの叢雲って子。初対面で青酸カリ並みの毒を吐いてきましたよ」

 

「まぁ、素直になれない子なんだろう。大目に見てやってくれ」

 

「いや別に怒ってないんですけど。ほら、料理人は皿で語るものなんで」

 

「君一応軍人だろう……。というか無駄にかっこいいなその台詞」

 

「かっこいいすか?まぁ確かにきまってましたもんね、すいませんねこんなカッコよくて」

 

「………うん。なんか、君という人間がよく分かった気がする」

 

すると、提督は席を立った。

 

「じゃ、俺は艦娘との親睦を深めてくるよ。指揮官たるもの、部下の信頼は欲しいからね」

 

そう言うと、女子の群れに突撃する。すごいなあの人、仕事のためとはいえ女子の中に入るなんて。俺にはとても無理だ。女子に囲まれたらつい素っ気ない態度を取ってしまうのが目に見えている。

ま、一人というのも悪くない。結構、一人でいるのも慣れてるし、今日はさりげなくみんなのお皿を流しに出して、一人で皿洗いするか……。

そう決めて立ち上がろうとした時だ。

 

「あの……」

 

隣に古鷹さんがすわってきた。

 

「は、はい。なんでしょう」

 

「この料理、福山さんがメインで作ったんですよね?間宮さんに聞きました」

 

おい名前間違ってるよ!雅治じゃねぇぞ!裸の唇キスしちゃうよ!

 

「そ、そうですけど……」

 

「その……とても美味しかったです。明日から、こんな料理を毎日食べられるなんて幸せです」

 

「そんな大したものじゃないですよ。ググれば出るんで」

 

「いえ、本当に美味しかったです」

 

ま、まぁ料理が美味いと言われるのは嬉しいけど……。

 

「それで、その……明日からお世話になるので、これからよろしくお願いします」

 

ぺこりと頭を下げて古鷹はみんなの輪に戻った。さて、とりあえず名前の訂正の機会を考えないとな。

 

 


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