鎮守府の食堂で働く   作:アルティメットサンダー信雄

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少年思考

 

 

大鯨さんが俺の部屋に来て2日目。特に変化があったわけではないが、強いて言うならゲーム仲間が増えた。

これから大鯨さんがゲームにハマるかどうかは分からないが、俺としては嬉しいことこの上ない。暇潰しの相手もできたし。

その暇潰しの相手は、間宮さんに色々と教えてもらいながら朝食を作っている。

それを横目で見ながら、俺は作り終えた卵焼きとハムとサラダを皿に盛り付けていた。

 

「朝ご飯もいっちばーん!」

 

「ま、待って下さいよ白露姉さーん……!」

 

白露と春雨が朝飯を取りに来た。

 

「はえーよお前ら」

 

「だって一番だもーん!」

 

「いや、意味わかんねーからな。朝から任務か?」

 

「違うよ?」

 

「じゃあなんでこんな早く来たの?」

 

「一番に朝ごはんをいただくためです!」

 

「うん、アホだなお前は」

 

そう言ってから、俺は春雨に顔を向けた。

 

「おはよう、春雨」

 

「おっ、おはようございます!福島さん」

 

「そんな畏まんなくていいよ。力抜いて」

 

「は、はい!」

 

「そーだよ春雨。福島さん優しいから例え後ろから膝カックンしても怒らないよ!」

 

「お前はもう少し畏まれ一番厨」

 

別に俺は気にしないが、そんな態度だと他の大人は怒るぞ。

 

「一番チュー?最初のキスはファーストキスって言うんだよ?あ、もしかして恋人いた経験ないから知らなかったの?」

 

「春雨、退いてろ。そいつ虐殺する」

 

「ふえっ⁉︎だ、ダメですよそんな……!し、白露姉さんも言い過ぎです!」

 

「へ?本当のこと言っただけだよ?」

 

………へぇ?ほんとのことなら何言っても構わないと?

 

「なら、俺もお前に本当のこと言ってやる」

 

「んー?何ー?」

 

「お前、ネームシップって事以外に特徴ないよな」

 

「あー!あーあーあー!」

 

言うと、俺を指差して大声を上げた。なんだよ、コーラス部なの?ローレライさん?

 

「言っちゃいけないこと言ったー!」

 

「一人だけその辺にいそうな髪型だしな、髪の毛の色的にも」

 

「う、うるさいなぁ!時雨だって黒じゃん!」

 

「犬っぽい癖っ毛と三つ編みと改二がそれを緩和してんだろ」

 

「むー!うるさいどーてい!」

 

「お、おまっおまおまっ……!お前なぁ‼︎」

 

あったま来たわ。

 

「お前の卵焼きだけタバスコ大量にぶち込んでやる」

 

「あー!やめてよー!」

 

「うるせーバーカバーカ。あーっはっはっはっ!」

 

「お、大人気ないよ!」

 

「男は大人になっても心は少年なんだよ!あーふぁっふぁっふぁ!………あっ、春雨は可愛いから春雨の好み通りにしてやるよ」

 

「ふえっ⁉︎かっ、かわっ……⁉︎」

 

「あー!春雨ばっかズルい!」

 

「黙れバナジウム野郎。春雨、どんなのが好き?」

 

「え、えと……私は甘めの卵焼きが好きですけど……」

 

「甘めな、了解!」

 

「ねーえー!私も甘いのがいいー!」

 

「なら謝るんだな。そうだな、『生意気なこと言って申し訳ありませんでした福島様、お詫びに福島様にファミチキを奢ります』と言え!」

 

「この人最悪!下衆だ!てかなんでファミチキ⁉︎」

 

「今ちょっと食いてえんだよ!言わないとお前の卵焼きにハバネロぶち込むぞ!」

 

「しかもワンランク上げた!」

 

グヌヌッ、と悔しそうに唸る白露を俺は見下ろした。ふははは、大人をナメると言うのはこういう事なのだよ!

あーっはっはっはっはっ!あーっはっはっはっ……!

 

「何、情けないことしてるんですか」

 

後ろから間宮さんに関節決められた。肘を後ろに回されて背中で曲げられ、顔面をカウンターに叩きつけられた。

 

「ちょっ!間宮さ……!」

 

声を掛けると、尚更力を入れられた。何この人、鬼?

 

「まったくこの男は……。ごめんなさいね、白露ちゃん。私の部下が怖がらせちゃったみたいで」

 

「い、いや……あまり怖くなかったので。ドン引きはしたけど」

 

こ、この野郎……!俺ってこの鎮守府でなめられてたのか……!あと、どうでもいいけど腕が間宮さんのおっぱいに当たってて少し心地いいです。

 

「春雨ちゃんもごめんね?」

 

「わ、私は何もされてませんから!それに、今回の件は、そのっ、白露姉さんにも非があったように感じますし……」

 

春雨が遠慮気味にそう言うと、そうなの?と視線で俺に問う間宮さん。ちなみに俺からなぜ間宮さんの顔が見えるかというと、包丁から反射して間宮さんの顔が見えてるから。

 

「そうですよ!向こうが遠慮なしに俺の心に土足で踏み込んでくるから……!」

 

「ハマーン様ですかあなたは」

 

「へ?い、今のわかったの?」

 

この人、意外と俺と話が合うかもしれない。

 

「とにかく、どんな理由があれ良い大人が子供に怒るような真似はやめて下さい。まったく……」

 

「わ、わかりましたよ……!」

 

「白露ちゃんも、何を言ったか分かりませんけど、この人ほんとに頭の中はノースリーブ短パン麦わら帽子に虫網と虫かごスタイルなんですから、言葉には気をつけて下さいね」

 

「いやそこまでガキじゃないし……」

 

「はぁーい」

 

白露はつまらなさそうに返事をすると、春雨の手を引いて料理のトレーを待って去って行った。

 

 


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