鎮守府の食堂で働く   作:アルティメットサンダー信雄

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電子遊戯

 

夜。風呂から上がった俺は、自室に向かった。

………しばらく大鯨さんと同室。大丈夫だ、俺はこう見えて自分に帰ってくるリスクの計算はできる男だ。間違っても寝込みを襲うなんて事はしない。

よし、入室!

 

「えっ」

 

「えっ」

 

中で大鯨さんは着替えていた。腕の間から見えるピンク色のブラと、全く隠れていない純白のパンツ。こういう時の俺の判断と行動力も早い。速攻でドアを閉めた。

数秒後、ガチャッ……と扉が開いた。扉から顔を出したのは、かなり恥ずかしそうな顔をしている大鯨さんだ。

 

「す、すみません……」

 

「い、いやいや、俺が悪かったです。ノックした方がよかったですよね」

 

「……………」

 

「……………」

 

気まずい。初日からやらかしたな俺……。でも、いいものは見れた。とりあえず、頭の中の永久記憶フォルダに入れておこう。

それはさておき、どうしたもんか。こういう時になんと声をかければいいのかさっぱり分からない。うん、何も言わないのが得策だな。

 

「そのっ……福島さんっ」

 

まさか、そっちから声をかけてくるとは。

 

「な、なんです?」

 

「さ、さっき見たことは…忘れて下さい、ね」

 

「へっ?」

 

「そのっ……あれは事故で、誰も悪くない、と思うので……だけど、出来れば忘れてほしいなぁ……と思ってて……」

 

「わ、分かりました。絶対忘れます」

 

もう遅い。頭の中の絶対消去不可能領域に保存されている。

 

「じゃあ、もう布団敷いて寝ましょうか」

 

「そ、そうですね」

 

俺は押入れから布団を出して、さっき綺麗にしたばかりの部屋に布団を2枚敷いた。

 

「じゃあ、おやすみなさい」

 

俺はそう言うと、布団の上に寝転がって、大鯨さんに背中を向けて目を閉じた。普段なら、このまま最近始めたpso2をやるのだが、どうもそんな雰囲気ではない。

寝よう。

 

「………………」

 

「………………」

 

眠れない。つーか、眠れるか。後ろでさっき裸見た女の子が寝てんの。あんなにオッパイ大きい人が俺の背中の後ろで寝息を立ててんの。

 

「………やっぱpso2やるか」

 

起きて、俺はvitaを探そうと立ち上がった。

 

「? どうかしました?」

 

どうやら、大鯨さんも起きていたようだ。

 

「いや、眠れなくて。ちょっとゲームしようかなって」

 

「ゲーム?」

 

「うん。知ってます?pso2」

 

「ぴーえすおー……?」

 

ああ、この人横文字ダメなんだ。若いのに。

 

「いいですよ。気にしないで寝て下さい」

 

「むっ、今ちょっとバカにしてましたね?」

 

「す、鋭い!そんな事ないですよ」

 

「声に出てます!」

 

こいつぁ、一本取られちまったZE☆

 

「もうっ!私だってそういうの、少しは興味あるんですからね!」

 

「それじゃあ、やってみます?」

 

「はっ?」

 

「いや、pso2」

 

「ぴ、ぴーすおーつーやります!」

 

「じゃあ、ちょっとvita探すんで待ってて下さい」

 

「? 私がやりたいのはぴーすおーつーですよ?」

 

「うん、分かったから少し静かにしてて下さいね」

 

「あー!また、バカにしてる!」

 

………横文字がダメな子系も可愛いな。内心、ほんわかしながらも、俺はvitaを用意した。

pso2を起動した。キャラを選んで、大鯨さんの横に寝転んだ。

 

「操作方法教えますから、見てて下さいね」

 

「わっ、すごい。こんな薄い機械の中に人がいる!」

 

「うん、これがゲームだからね。どこまで頭の中昭和人なのかな?」

 

「あ、またバカにして……!」

 

「はいはい、それはもういいから。いいですか?この女の子いますよね?これを操作して、敵と戦うんです」

 

「なるほど……。あれ?この子、深海凄艦、なんですか?やけに白いですけど……」

 

「あー……それはゲームの中のデューマンっていう種族でして……」

 

「あ、でも弓持ってる。空母、ですかね」

 

「や、だから空母とかじゃなくて……」

 

「なんていうか、深海棲艦と艦娘の間の子なのかな?」

 

「さっきの着替えシーン思い出されたくなかったら話聞いてくだ……」

 

俺の前をヒュッと拳が通った。

 

「ぶちますよ?」

 

「いやそれ『ぶつ』なんて可愛いもんじゃ……」

 

いや、これ以上口にすると往復ビンタされて、下手したら幼児退行するかもしれんからやめておこう。

 

「でも、操作するって、どうやってですか?」

 

「この左のスティックを動かすと……」

 

「わっ、動いた!」

 

「左の十字ボタンで視界転換、あとはまぁ色々ありますけど、とりあえず何かクエスト行って覚えましょう」

 

「はい」

 

そんなわけで、ゲームを教えた。

 

 

1

 

 

目を覚ますと、既に朝だった。だが、何故か目の前にはパジャマがある。俺のパジャマではない。大鯨さんのパジャマだ。

………あれ?って事は………。目の前にあるの、大鯨さんの、パジャマ越しのオッパイじゃね?

 

「はっ、はわわわ……」

 

いや待て、落ち着け俺。大きな声を出すな。この際だ、この時間を堪能しよう。そもそも、俺の頭を抱き締めるように寝てるのは明らかに大鯨さんの寝相の悪さの所為であり、俺に責任ない。なら問題ない。

そう、この場を楽しめ、俺。

そう思って、俺は目を閉じた。二度寝することに決定したからだ。

………あれ、なんだろう、この感覚。暖かい感覚……最近忘れかけていた感覚……これは、お母さんと一緒に寝ていた時の………、安堵感………。

ああ……もう、今日は間宮さんに怒られてもいいや……。遅刻しよう。

 

この後、目を覚ました大鯨さんの羞恥心によるビンタで、これまでにないほどのスッキリした目覚めを迎えた。

 

 


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