鎮守府の食堂で働く   作:アルティメットサンダー信雄

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ゲーセン

 

 

ゲームセンター。俺はいつものゲーム機の前に立った。ガンダムトライエイジだ。

 

「……なんですか?これ」

 

「俺のやってるゲームですよ。あの、一緒にいるの恥ずかしいと思うんで離れててもいいですよ」

 

このゲーム俺がやるとみんな離れて行くんだよなぁ……楽しいんだからいいだろ別に。

 

「いえ、見てます。福島さんのやるゲームがどんなのだか、気になりますから」

 

「………そう」

 

えー、ちょっとー。どういう意味それー。勘違いしちゃうじゃんー。いやいや、いかんいかん。落ち着け。恥をかく前にやめとこう。

財布から100円玉とICカードを取り出し、筐体に投入した。

 

 

1

 

 

2000円ほどすっ飛ばしたのだが、相変わらずPは一枚も出ない。どういう事なのだろうか。ここ最近、1枚も引けてない。というか、最近の俺の運は悪過ぎる。

これ以上やっても無駄だと分かったので、俺は立ち上がった。

 

「……もういいんですか?」

 

古鷹さんが聞いてきた。

 

「はい。これ以上やっても不幸スキルの熟練度がカンストするだけですから」

 

「か、カン……?」

 

「何でもないです」

 

もうゲーセンに用はない。……が、まぁ少しくらいカッコつけても大丈夫だよね。

俺はクレーンゲームの方へ行った。俺のクレーンゲームの腕は絶妙だ。何故なら、調子がいいと一回で取れるからだ。中学の時の彼女にカッコつけて一回で取ってプレゼントしようとしたら「いらない」と言われた過去がある。あれはトラウマだったね、うん。

だが、ここ最近で分かったことだが、古鷹さんはそこらのビッチ女学生とは違って良い人だ。少なくとも、取ってあげれば「いらない」と言われることはないだろう。

そんな事を思ってると、丁度良いところにモンスターボールのクッションがあった。

 

「………よし」

 

「? それやるんですか?」

 

「はい。俺の腕前はなんとも言えませんよ」

 

「そうなんですか!……あれ?それ別に自慢できるようなことじゃ……」

 

自慢なんてしてませんけど?いや自慢っぽい口調は使ったけど。

さて、今日一番の運勝負、行ったるで!俺は200円入れた(一回200円)。まずは目測でアームを横に動かし、そして筐体の側面に回って、また目測でアームを移動させる。

 

「そこ」

 

小さい声でさそう呟くと、アームを降ろした。二本のフックがモンスターボールの中心を捉え、ガッチリと奥まで掴んだ。

もらった。

アームはウィィィンっと音を立てて上がった。が、ポロっとモンスターボールを間から落とした。ボールはのそのそと転がり、パターゴルフのように景品の穴に落ちた。

 

「……………」

 

しまらねぇー……。なんだこれ、一発で取れたのに何となく情けねーよ。これは古鷹さんも白けてるか?

様子を伺うように隣をチラ見した。

 

「すごいですね!一回で取れるなんて!」

 

き、気ぃ使ってくれてるうううう!その満面の笑みをやめろ!なんか気まずいじゃないですか!

 

「……や、あの、大分しまらない感じだったんですけど……」

 

「そんな事ないですよん私だったら取れませんし」

 

「……………」

 

あれ?これ、気を使ってくれてる、んだよね……?その割にはなんか目の輝き方が純粋に賞賛してるように見えなくもないような……。

いや、そんなのどうでもいいか。向こうがフリだろうとなかろうと賞賛してくれてるなら、こっちもそれなりに返さないと。

 

「あの、これ……良かったら、あげますよ」

 

あげますよ、じゃ少し上から目線だったか?差し上げますのほうが良かったか?

 

「へっ?い、いいですよ!せっかく福島さんが取ったんだから……」

 

遠回しにいらないと言われているのだろうか。いやでも俺もこれいらんし。

ちょっと恥ずかしいけど、言ってみるか。

 

「……ふ、ふりゅたかさんのために取ったんですから、もらってくださゃい」

 

「……………」

 

ええ、噛みましたとも。それも、盛大に。「さゃ」ってなんだよ、どうやって発音したの?恥ずかしさで俺の頬は熱くなっていく。多分、顔が真っ赤になってるんだろう。

最初はキョトンとした顔の古鷹さんだったが、クスッと微笑むと、天使の笑顔で、俺の手元にあるモンスターボールクッションを掴み、両手で抱き締めるように抱えた。

 

「ふふ、ありがとうございます。では、もらっておきますね」

 

………ッ。ヤバい。可愛すぎるだろこの人の笑顔。サングラス越しでも見える素敵な笑顔の破壊力は計り知れないし、もしサングラスが無かったら、多分世界はもののけ姫のラストのように緑で溢れることになりそうだ。

 

「………じ、じゃあ、行きましょうか」

 

「あ、待って下さい」

 

何だよ。しばらく顔見せたくないんだよ。真っ赤だろうし。

 

「あの……出来れば私、これ撮ってみたいんですけど……」

 

古鷹さんの指差す方にはプリクラがあった。

…………マジ?

 

「………マジ?」

 

「マジです」

 

声に出てたか……。

 

「良いですけど……」

 

「では撮りましょうっ」

 

ち、ちょっと!手を引っ張らないでくれますか?照れちゃうから!勘違いしちゃうから!

俺の心の中の抵抗も虚しく、プリクラの中へ。

 

「ここなら、サングラスなくても大丈夫ですよね」

 

サングラスを外す古鷹さん。……やっぱり、この人は美人で可愛い。改めて思った。

お金を入れると、古鷹さんは自分のお好みのフレームを選んで行く。そして、いよいよ撮影タイム。

 

『じゃあまずは、彼氏さんが後ろから彼女ちゃんを抱き締めよう!』

 

「ぶふっ⁉︎」

 

いきなり何を抜かすかこのポンコツ撮影機!そんなこと……出来るわけねぇだろ!古鷹さんだって困った顔して……、と、思ったらこっちに背中を向けていた。

 

「あ、あの……どうぞ」

 

バッチコイ!とでも言わんばかりだった。いいか、行くのか福島相馬(22)、中学の時のあだ名は福島県相馬市。まて、向こうが「どうぞ」と言ってるんだぞ?行っちゃいけない理由がないだろ。

いやいやいやいや、待て待て待て待て。それ立場を利用してるクズ男と同じだろ。セクハラ、ダメ、絶対。

待て、しかし古鷹さんは「どうぞ」と言った。これはつまり、「抱いてください」とも解釈できるんじゃないか?

つまり、これは……、

抱き締めるべきだッ‼︎

俺は目を見開いて古鷹さんの後ろで、両手を上げて抱き締めようとした。華奢な背中が俺と対面している。

直後、パシャッとシャッター音がした。

……まるで襲おうとしてる所を撮られてしまった。

 

「……と、撮られちゃいましたね」

 

苦笑いを浮かべる古鷹さん。……抱き損ねた、ちくしょう。

心の中で後悔してると、プリクラがまた声を発した。

 

『次は、彼女ちゃんが彼氏に抱き付いてみよう』

 

続いて何をほざいてやがんだコノヤロウ‼︎そんな事……!古鷹さんがしてくれるわけねぇだろ‼︎

 

「あ、あの……福島さん……」

 

「へっ?なっ、何?」

 

「し、失礼しますっ」

 

キュッと俺の腕に抱き付いてきた。

ふ、ふおおおお!オッパイが!古鷹さんのそこそこあるオッパイが腕に……!

 

『はい、チーズ』

 

また撮られた。こ、今度のはすごいゲスい顔になってしまった気が……。

 

『次のポーズは〜……』

 

「ちょっとは休ませろよ!」

 

ついついツッコんでしまった。

 

 


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