はい、というわけでね。古鷹さんとデートですよ。いや、デートっつーか、二人きりでお出掛け?はい、それデートですね。
………私服はいつも通り(パーカー、Tシャツ、ジーンズ)でいいとして、金はここ最近出かけてないから使ってないし問題ない……よし、大丈夫か。あとは、
「気まずさだな……」
何を会話すればいいのかわからん。
………いや、そんな気合い入れる必要はないか。いつも通りだ。向こうから声をかけてくるまで会話はしない。
「よし、パーペキ!」
いける!……わけねぇだろ!アホか俺は!二人きりで黙り決め込むなんて出来るわけねぇだろ!
何とかして話題を考えないと………………何も思いつかない……!
どこまで口下手というか……コミュ障なんだよ俺は!ある程度の受け答えは出来るとは思っていたが、まさか自分から会話することは出来ないなんて……。
「好きな食べ物はなんですか?」
小学生か俺は!
「好きな服のブランドはどこですか?」
高校生か俺は!
「好きなアニメはなんですか?」
オタク気取りの中学生か俺は!
「好きなジャンプ作品は何ですか?」
ワールドトリガーだ俺は!
「やりたいポジションは何処ですか?」
シューターだ俺は!
「好きなキャラは誰ですか?」
いずみんと綾辻さんだ俺は!………いけそうだな。ワールドトリガートークで10分は稼げそうだ。10分あれば目的地にも着くだろう。やれるっ‼︎
「よし、行くか……!」
俺は部屋を出た。
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鎮守府の前。俺は古鷹さんを待っていた。待ち合わせ時間から5分過ぎているが、特に気にしない。永遠に来なかった例が過去にあったというのもあるが、基本的に俺は待たせるくらいなら待っている方がマシというスタンスだからだ。
それに、待ってる間は携帯を弄ってればいい。携帯、イズ、マイフレンド。
「す、すみません!お待たせしました……!」
古鷹さんが息を切らして鎮守府から出てきた。……私服可愛いなこの人。ていうか、カーディガンは反則だろ。
「………あの、福島さん?」
ジッと見過ぎていた所為か、尋ねられてしまった。
「あ、いや、なんでもないっす。すいません……」
「……ふふ、そうですか」
なんか機嫌良くなったぞこの人。
「えっと……じゃあ、行きますか」
「はい」
こういう時、「私服、かわいいね」なんて主人公どもは天然ジゴロという奴でほざくんだろうが、そんな事リアルでやってみろ?社会的に抹殺されんのがオチだバーロー。
「今日はどこに行くんですか?」
「あー……まずはゲーセン行って、そのあとプラモ屋行って、その後はノープラン」
「………ノープラン?」
「え?はい」
なんだ?今度は落ち込み出したぞ。
「………青葉の嘘つき、何が普通『デートの時はコースは男性がロマンチックなコースを決めてくれてますから大丈夫ですよ!』よ……」
小声で言ってるのがガッツリ聞こえました。なんだ、この子青葉に期待しちゃうようなこと唆されたのか。そうなると少し申し訳ない気もするが、どちらにしろ「ロマンチックなコース」など俺には分からないのでコースは変えない。
というか、女の子にアピールするためにロマンチックなコースにする必要あるのか。女の子を楽しませなきゃという気持ちは分かるが、自分が楽しめなかったらつまんないだろ。女の子を楽しませようとした結果、自分は退屈でそれが女の子に悟られて、結果お通夜のようなデートになるくらいなら、まだ自分の好きなところに行った方がマシだ。
「……あっ、そういえば古鷹さん」
「なんですか?」
「その……言いにくいんですけど……目、どうします?」
「目?………あっ」
他の艦娘は普通の女の子とどこからどう見ても変わらないのだが、古鷹さんの場合は少し特殊だ。
そのため、街に出たら速攻で艦娘とバレる可能性がある。街に住んでる連中の中には、艦娘を良くないと思ってる輩もいるから、少し悩むところだ。
「もし良かったら、サングラス貸しますけど……」
高校の時にMI2のイーサンに影響されて買ったものとは言えない。
「あ……すみません。じゃあ、お借りしますね」
古鷹さんは俺のサングラスを受け取って、装着した。
「どうですか?」
「似合ってないです」
「あ、酷い……!」
酷い、と言いながらも、表情は楽しそうだ。
………あれ、なんだこれ。結構良い雰囲気なんじゃないの?
ワールドトリガーの話題なんて出さなくてもいける気がしてきたし、むしろここでワールドトリガーの話題を出そうものなら、苦笑いが返ってくる気がする。
「じゃあ、今度こそ出発しましょうか」
俺と古鷹さんはようやく出発した。