鎮守府の食堂で働く   作:アルティメットサンダー信雄

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ギコギコ

 

間宮さんと瑞鳳が仲良くお料理教室をした結果、俺はすごい気まずい思いをすることになった。

飯の時間が終わり、自室に帰る途中、目の前に重巡が立ち塞がった。

 

「どうも!恐縮です!」

 

今日、着任した青葉さんだ。

 

「あ、どうも」

 

「少し、お話伺ってもよろしいでしょうか?」

 

「え?良いですけど?」

 

「ふむふむ……まず顔はそこそこ……可愛い系ですか、87点って所ですね」

 

今すごい失礼な採点が聞こえたんだけど。

 

「ではまず、好きな人のタイプは?」

 

「えっ、なに急に」

 

「いいから答えて下さい。大丈夫です、新聞には載せませんから」

 

「載せられてたまるかよ。つーか載せたらお前ほんとマジアレだから。ファイナルディストラクションだから」

 

「何ですかその物騒な技名……」

 

しかし、好きな女性のタイプか……。

 

「髪の毛は黒か茶髪ですね」

 

「ほほう?意外ですね」

 

「そうすか?というか、あんまぶっ飛んだ髪の色の奴は男女両方とも好きじゃないんですよ。生まれつきならまだしも、染めてるんなら『お前それ恥ずかしくないの?』ってなる」

 

中には赤とか青とかにする奴もいるんだからビビる。そんなのが可愛かったりカッコよかったりするのはアニメだけだ。

 

「では、顔は?」

 

「何でも良い。俺、面食いじゃないし。でも、美人か可愛いかで言ったら可愛い系かな」

 

女を選べる立場ではないというのが本音。中学以来、彼女できたことないし、何なら話したこともない。

 

「では、性格は?」

 

「うーん……甘やかしてくれそうな人」

 

「うわあ……」

 

「あと優しい人?」

 

アニメとかならクーデレかアホの子一択なのだが、現実はそうもいかない。クーデレとか俺の精神が持たないだろうし、アホの子は一緒にいてイライラしそう。

 

「スタイル!」

 

「……あの、さっきから何の拷問ですか?」

 

「いいから。ほらほら」

 

「えー……もう一度確認しとくけど、本当に新聞とかに載せないし誰にもバラさないんですね?」

 

「はい」

 

信用ならねぇ……。まぁいいか。バラされた所で一週間くらいからかわれるか、もしくは気にもされないだけだ。

 

「極端にデブとか極端にガリとかじゃなければ特に異存はありませんね」

 

そういう人は自己管理ができてないってことだからな。自分の健康管理も出来ない奴は嫌だ。

 

「……男性の方は胸が大きい方がいいのでは?」

 

「それは人それぞれですよ」

 

「なるほど……」

 

正直、大き過ぎるのはそれはそれで気持ち悪い。平均か平均より少し上がちょうど良いのさ。

 

「では、身長」

 

「何でも」

 

「……テキトーに答えてません?」

 

「いやマジでマジで」

 

慎重なんて気にする男がいるのか?いや、小さいほうが良いってのはよく聞くけど……。

 

「なるほど……よく分かりました。では、失礼します!」

 

「おい、念のため言っときますけどホント誰にも言うなよ」

 

「はい!」

 

良い笑顔で去って行った。

 

 

1

 

 

翌日、鎮守府の壁に俺の好みの書かれた壁新聞が飾られていた。

 

「…………よし、ファイナルディストラクションだ」

 

俺は指をゴキゴキと鳴らしながら、重巡寮に向かおうとした。

 

「あ、おはようございます。福島さん」

 

その俺に、古鷹さんが声を掛けてきた。

 

「あ、どうも……」

 

「そ、その……新聞、見ました………」

 

俺の心、ハートブレイクした。冗談抜きで死にたくなったわ。

 

「……でも、死ぬ前に青葉を道連れにしないと」

 

青葉を殺して俺も死ぬ!

 

「ま、待って下さい!そ、その……わ、私は別にドン引きしたりからかったり、しませんから……」

 

………うーん、何だろうこの子。天使なのかな。可愛いし優しいしで、最近の女学生みたいなだいぶ違う。

思わず感動で泣きそうになってると、古鷹の後ろの廊下の角からこっちを見てカメラを構えてる青葉が見えた。

 

「殺す……!」

 

「へっ?」

 

俺は古鷹さんの真横を通って、青葉の足元にスライディングする。

 

「は、早っ……⁉︎」

 

空中に舞い上がる青葉。スカートから見えたパンツを心のカメラに収めつつ、うつ伏せに落下した青葉の上に、足の方に体を向けて馬乗りになった。

 

「いだ!ちょっ……いきなり何すんですか福島さん!」

 

「ファイナルディストラクションって言ったろ」

 

「な、何ですかそれ!」

 

パタパタさせている足を俺は掴み、膝を折って尻の上に脚を押さえつけると、懐から木刀を取り出した。

その木刀で、押さえつけた足の脛を全力でノコギリで切断するように擦りまくった。

 

「いだだだだだだ‼︎名前の割に地味……!あ、いやゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいごめんなさ……‼︎」

 

「え?何が?」

 

「もうしません!もうしませんから……!」

 

「うるせーよ。とりあえずお前今日一日立てると思うなよ」

 

「あがががが!本当痛いです!ごめんなさいってば!」

 

「だから何で謝ってんの?」

 

「い、いえ……!それは新聞に……いだだだだ!」

 

「ハッキリ喋れハッキリ。何言ってんのか分かんねーよ」

 

「いだだだだだ!で、ですから新聞に載せたことですうううう!」

 

「いやいや、謝る必要なんてないよ」

 

「へっ?」

 

「ファイナルディストラクションやるっつったのに新聞に載せたって事は、ファイナルディストラクションやって欲しいってことだろ?」

 

「えええええ⁉︎ああああいだだだだ‼︎脛が!脛がモゲるううううう‼︎」

 

「だからお前のお望みに答えてやってるんだ。ありがたく思え」

 

「いやそれは流石に無理がああああだだだだだだ‼︎」

 

「北斗の拳?」

 

「違いますッ‼︎ふっ、ふるっ……ふるだがさあああん!だ、だずけでくださああああい!」

 

「いや、今回は流石に青葉が悪いよ……」

 

古鷹さんが苦笑いで青葉を見ていた。

 

「ひ、ひぃ……もう許して……!」

 

「だから許すも何もないって。お前の要望通りに……」

 

「おい、何やってんの?」

 

やべっ……提督だ……。流石にこれやり過ぎはマズイかな……。

 

「えっ、と……アレです」

 

壁新聞を指差した。

 

「ああ、ならいいや。作業しながらで良いから聞いてくれ」

 

「作業⁉︎てか、いいんですか⁉︎司令官⁉︎」

 

絶望的な声をあげる青葉を、俺も提督も無視して話を続けた。

 

「福島くん、明日は休みで良いよ」

 

「へっ?」

 

「なんだかんだ休みあげてなかったじゃん。労働基準法的にアレだし、今日は間宮さんにお休みあげてるから」

 

「マジですか?ありがとうございます!」

 

「けど、今日は一人だから頑張ってね」

 

「オッス!」

 

いやったぜぃ‼︎明日が俄然楽しみになって来た!久々にボッチライフを過ごせる。一人は良いもんだ。誰にも気を使わなくて済むし、好きなことしていられる。明日はとりあえずゲーセンとプラモ屋行くか。

 

「古鷹、同伴しろ」

 

…………今何と?

 

 


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