東方家族録   作:さまりと

8 / 69
おはこんばんにちわ。さまりとです。
書くことなくなりました。
では、ゆっくりどうぞ


第5話 【能力】

「嘘……魔理沙が負けた?」

「流石に私も驚いたわね。」

「魔理沙ってそんなに強いのか?」

 

 観戦者の二人は全く同じ意見の様で目を見開いていた。息を整えその様子に気が付いた信は、勝利の高揚感からか少し失礼な言い方で疑問を唱えるが、今はそれを咎める者は誰もいない。

 

「この幻想郷じゃトップクラスね」

「なら、俺もトップクラスの仲間入りだな。魔理沙、今回は俺の勝ちだ。またその内戦ろうな」

「あー負けた!でも次は私が勝つんだぜ!」

 

 地面に倒れこんでいる魔理沙に近づき、念を押すように再び自身の勝利を口にする。魔理沙も悔しそうにはするが決して嫌な顔はせず、信が差し出した手を取り体を起こして汚れを払った。

 一連の動作が終わり、改めて彼は切り出した。今回の勝者に与えられる権利についてだ。

 

「それじゃあ、俺の言うことを聞いてもらおうか」

「チッ!覚えてたか……」

「まさか負けると思ってなかったら約束はなし。何て言わないよな?約束では『敗者は勝者の言うことをなんでも聞く』だったよな。なにお願いしようかな~♪」

 

 ゆっくりと魔理沙の回りながらニヤニヤとした表情で事実のみを並べていく。しかし、約束の内容が内容だけに何を商品にするのかは信次第の為、少しばかり嫌な想像くらいはしてしまう。

 

霊「エッチ」 ア「スケベ」 魔「変態」

 

 そんな態度をとってしまったらそりゃ言葉の矛先を向けられたとしても仕方がない。

 

「冗談は程々にして真剣な話だ。魔理沙、俺に空の飛びかたを教えてくれ」

「わかったぜ。って言っても、私は、飛ぶ事にはそこまで苦労しなかったからあまり期待するなよ?」

「おう」

「私の感覚はそうだな……さっきアリスが言ったように魔力とかは皮膚の下に薄い膜を張ってるような感じなんだが、体を動かすのと同じで魔力自体を動かすんだ。右手と左手でそれぞれ違う動きをするみたいにな。魔力は常に全身を回ってるからそれ全部を一気に動かすとやりやすいと思うんだぜ。浮いた後は聞くより自分で試す方が早と思うぞ」

「なるほど」

 

 足を肩幅に開き、手はだらんと脱力させる。体を動かすことと別に考えるのであれば今は体に意識が向かない楽な姿勢をとるのがいいと考えた為である。ここからが本番というように息を深く吐き、全身に流れている霊力に意識を集中させた。

 

「外に出さないで……全身を……一気に動かっあああああああああああああああああ!!!」

 

 瞬間、彼の体は高速で夜空に舞い上がった。いや、それは少し語弊がある。舞い上がったというほど優雅なものではない。直立のまま後方に回転させながら打ち上げられたように地面との距離を広げていった。

 

「はっはっは!見るんだぜ二人とも!めっちゃ回ってるぜ!」

「どこまで行くかしら?」

「笑ってる場合じゃ……フフッ」

 

 地上にいる三人は気楽なものである。

 逆に現在高速回転打ち上げに成功した信はとにかく止まる事をイメージし続けていた。

 

「止まる止まる止まる止まる止まる止まる止まる止まる止まる止まる!!!!!」

 

 しかしイメージだけでは止まるはずもない。ちゃんと霊力を用いて体の回転を止め、重力に負けない程度の浮遊感を持たせなければならないのだ。止まる事ばかりを意識していた彼を次に襲ったのは。

 

「今度は落ちるのかよおおおおおおおおお!!!!」

「ハハハハハハハハハハハ!!!」

「「……」」

 

 急降下ではなく墜落である。地面に当たればの話ではあるが。その様子に魔理沙は一切遠慮なく大笑いし、アリスと霊夢はせめてもの慈悲なのか口元を抑えて堪えている。

 そんな地上の様子も知る由もなく、しばらくの間高速の上下運動を繰り返していた。

 

 

 

「はあ……はあ……」

 

 ようやく空中で停滞することが出来た信だが、今はその達成感よりも疲労感の方が大きかった。その結果空中で膝をつくという不思議な光景が作り出されている。

 

「やっと止まったな……クッ……」

「お陰様でな……はあ」

「まあまあそう怒るなって。ほら上見て見ろよ」

 

 面白そうに笑う彼女の言葉につられ何も考えず空を見上げる。恐らく彼は、この時見た光景を一生忘れる事は無いだろう。

 今まであまりに激しい移動を行っていた為、今になって初めて現在の位置を正確に把握する。雲の上だ。いつもは見上げるだけで決して近づくことのできない。ましてや生身の人間が道具も使わずこの高さに来ることなど本来はあり得ないのだ。それ故に、遮るものは一切ないのだ。

 見上げた瞬間視界の八割をそれは覆いつくす。人間ならば誰もが見たことがあり、ごく少数ならそこに足を踏み入れた者もいる。優しく白い、加えてうっすらと黄色い暖色も交えながら地上を照らす。普段見るそれとは圧倒的に距離が違う。両手を広げ、全身で一段と明るい光を受け止めた。あまりに普段と違う光景の為、子供のように思わず手を伸ばしてしまう。

 

「月ってこんなにデカかったんだな」

「気に入ったか?幻想郷ここは邪魔するやつもいないし、少し飛んできたらどうだ?」

「ああ、そうさせてもらう」

 

 先程までの絶叫が嘘のように自身の意志で上下左右に飛行する。月の光を全身に浴びながら、ただ何の邪魔もない大空を飛び続けた。時に雲海の中を泳ぐようにしゆったりと漂い、時にただ広い空で眠るような体制で制止し、時に肌が風を受ける感覚を楽しむように今の最速で滑空する。

 一通りやりたい事を終えた後、先に戻っていた魔理沙に続いて神社に着地する。飛行時間が長かった為か一瞬足が浮くような感覚があったが決して不快ではない。

 

「ほんとに飲み込みが早いんだぜ。」

「教え方がいいんだよ」

「へへっ。ちょっと照れるぜ」

 

 お互いの価値観を少し共有した二人は子供のように無邪気に笑っていた。この和気あいあいとした空気の中で、何やら疑問がずっと残り続けていたのであろう人物が別の話題を切り出し始めた。

 

「えっと、信。少し聞いていいかしら?」

「何だアリス?」

「なんであなた魔力も使えるの?」

「……………え?」

 

 疑問を投げかけられ疑問が増える。彼自身はそのことに関して一切意識出来ていないものだとその様子から誰もが分かるだろう。

 

「やっぱり無意識だったのね。霊夢、魔理沙。彼、魔力と霊力と両方使っていたわよね?」

「最初垂れ流してる時も一緒に出てたし」

「さっきの弾幕ごっこでも使ってたな」

「えっ?ほんとに使ってた?」

「バッチリ使ってたぜ」

 

 三人に言われてはそうなのだろうと彼は上空に向かって手をかざし何発か放出するが、やはり霊力弾しか出てこない。

 

「でないけど?」

「さっきは間違いなく使ってたぜ」

「なら、試しに霊力弾を出してみなさい。それで今使ってる霊力の他にも体の中にエネルギーを感じない?」

 

 再び彼は自身の手に意識を集中させる。霊力の流れは今もしっかりと感じ取ることが出来る。それ以外に流れているエネルギーを模索する。

 

「あった。霊力より内側に流れてる」

「霊力と同じ要領で出してみなさい」

 

 言われた通り今度は左手で一つ放出すると、魔理沙やアリスと同じ青い魔力弾が出現した。

 

「ほんとに出た!」

「しかし妙ね」

「あぁ」「そうね」

 

 驚きの実の信とは別に他の三人は全員不可解な表情を浮かべる。

 

「なにか変なことがあるのか?」

「普通人間は魔力と霊力、そのどちらかだけしか持ってない筈なのよ」

「じゃあ俺変じゃん」

「えぇ。変ね」「変よね」「変態だぜ」

「おい最後のやつ!」

「だから多分あなたはなにか能力を持ってると思うの」

「能力?」

「幻想郷には程度の能力って言うのを持っているやつが結構いるのよ。私の場合は『空を飛ぶ程度の能力』」

「私は『魔法を操る程度の能力』だぜ」

「私も『魔法を操る程度の能力』よ」

 

 何それ凄い欲しい。と心の中では思っているが外には出さない。現代を生きる男子ならば一度は夢見る自分だけの異能力。それが自分の中にあると言われて興奮しない者はいない。

 

「それがどんな能力かってのは調べられないか?」

「元々そのつもりだったからね。ちょっとここに立ってくれるかしら?」

 

 霊夢に誘導された場所に移動すると、そのまま彼女は手をかざして目をつむった。信の周りをお札が周回し、何やら読むことのできない文字を空中に記していく。それに目を通した霊夢は一瞬顔をしかめると能力の詳細が分かったことを三人に知らせた。

 

「一体どんな能力なんだぜ?」

「なかなかずるい能力よ。『共有する程度の能力』それがあなたの能力」

「「『共有する程度の能力』?」」

 

 能力の名前を聞くとその所持者は何やら考え事をするように黙り始めた。目を一点から動かさず、ぶつぶつと誰にも聞き取れない声で何かを話している。

 

「なにか思い当たる節があるみたいね?」

「あぁ。試してみる」

「どうやるんだぜ?」

「魔理沙。お前さっき飯食ったばっかりだろ。なんでもう腹減ってるんだ?」

「ッ!!なんでお腹が減ってることがわかったんだぜ?」

「今、お前の考えていることを『共有』した。俺の能力のほかにこれからなにか食えないかん考えてたな」

「じゃあ考えてること全部お見通しなのか?」

「他にも感情がわかったりするな。そこらへんは俺のさじ加減だ。それと……」

 

 不自然に会話を切ったと思うと言葉の代わりにゆっくり目を閉じる。再び目を開けると、他の三人が自身の異変に気が付く。

 

「え……いやどういうこと?」

「なんで私が……いやアリスも」

「これ慣れないと気持ち悪いわね」

「悪い。これで分かったと思うけど、俺の能力はどうやら共有す・る・だけじゃなく共有さ・せ・る・ことも出来るみたいだ。今は三人の視界を俺に共有させた」

 

 彼が解除すると、それぞれ首を振ったり長めに瞬きをしたりと対処する。突然やったことを謝りながら、彼はさらに続けた。

 

「それともうひとつ」

「まだあるのぜ?」

「魔理沙、ちょっと怖いが協力しれくれるか?」

「あぁ。こうなったらとことん付き合うぜ」

「魔理沙。お前の『視覚』を持っていく。許可してほしい」

「?いいぜ?...!?」

 

 彼女がいいといった瞬間、その様子が変わる。腰が急に低くなったかと思うと、恐る恐ると手を誰もいない方向にゆっくり震えながら伸ばしたりし始めた。

 

「なぁ、信、霊夢、アリスそこにいるのか?」

「?いるわよ」

「本当か?何処にいるんだ?真っ暗だぜ」

「どういうこと?」

「落ち着け魔理沙。今返す」

「戻った。結構きついぜ」

 

 一瞬の事ではあったが息が上がっていた。それを整えようと深く長く空気を吐く。

 

「信。何をしたの?」

「俺の能力は対象の相手の許可さえあればなにかしら奪えるみたいなんだ。共有した時点で所持権は二人になるるだろ?それを元の所有者がいらないと宣言すれば、解除した時それは俺のところだけに残る」

「なにそれ怖い」

「試してみるか?」

「遠慮するわ」

「私も」

 

 能力の開設が終わり少しの不気味さがあたりを包み始めた頃、雲はもう帰り時だと示すように月を隠した。




主人公のステータスが大体出たのでプロフィールを公開します。
明渡 信 (17) O型 身長186cm 誕生日 4/2 長い髪を後ろでひとつ結いにしている。
習得している格闘技・武道:空手、柔道、剣道、弓道、合気道、サバット、護道、槍術、鎌術
能力 『共有する程度の能力』

趣味:料理
好きな物:努力 甘い物 激辛料理 家族
嫌いな物:ズル 殺生(自分)
得意教科:なし
苦手教科:なし

 明渡家14人兄弟の長男。両親、両祖父母がみんな別々の格闘技を持っていたため誰が信に教えるか喧嘩になりそうだったところを2歳の信が「全部やりたい!」といい放ち、解決。
 10歳の時には親達からおしえられたことは全部できるようになっていた。槍術、鎌術は独学。そして、親達は家事ができないので4歳から始め5歳には万能になってしまった。疲れた親達を癒すためにマッサージも極めている。
 部活には入っていないが、よく空手部などで練習の相手をお願いされる。努力すること事態が好きなので勉強もできる(全国40位くらい)。
 弟や妹たちには尊敬され、親達には感謝されているのをよくわかっているので、それがうれしく余計に頑張る。負の感情にはするどいが、良の感情には鈍い。
 アニメ、ゲーム、マンガは家族全体が好き。ニコニ○動画もよくみるのでネタもよくわかる。
 東方は名前しか知らない。





▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。