東方家族録   作:さまりと

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第58話【VS霊夢】

「『運任』〈ドキドキわくわく抽選会〉」

 

以下略

 

「準備は出来た?」

「おう。いつでも来い」

「それじゃあ遠慮なく!」

 

本当に遠慮なく霊夢は信にむけて札を投げつけた

 

「ホーミング性あるのか……。『武刃』〈秋水〉」

 

逃げても着いてくることを確認し、回避できないとわかると容赦なくそれらを斬り落とす。

 

「はあっ!」

「ふっ!」

 

するとお祓い棒を構えて突進してきた。だがそれを難なく受け止める。

 

「本当に馬鹿力ね」

「そりゃあ毎日鍛えてるからな。霊夢も一緒にどうだ?」

「私が修行嫌いなの知ってるでしょ?」

「おっと、こいつは失礼。じゃあ明日からどうだ?『迷惑』〈刃の舞〉」

「やらないって言ってるでしょっ!『霊符』〈夢想妙珠〉」

「なんの!『迷走』〈亡霊達の歩〉」

 

刃の舞は全てかわし、切り抜けたところで反撃のスペカを唱えた。それに対して信ももう1枚のスペカで対抗する。互いのスペルがぶつかり合い、相殺される。全てが無くなった後、2人の間には静かな時間が流れた

 

「そういえばなんだかんだで霊夢とやるのは初めてだな」

「そういえばそうね。どうして私とは戦らなかったのよ」

「魔理沙とかチルノとかが毎日来るからな。あんまり気にならなかった」

「なんだか負けた気分ね……」

「まあいいじゃないか。今こうして霊夢と戦ってるんだからさ」

「それもそうね」

「それじゃあ仕切り直しといこうか。俺が勝ったら霊夢は巫女としての修行にきちんと取り組むこと」

「仕方ないわね……。私が勝ったら異変の元凶の情報、そしてプリンを貰うわ。覚悟しなさい」

「もう負けるのはこりごりなんだ。だから……」

「私も博麗の巫女として異変を解決しなくちゃいけない。だから……」

 

 

 

「「この勝負は俺(私)が勝たせてもらう(わ)っ!!」」

「『一刀』〈陰鉄〉!」

「『霊符』〈夢想封印〉!」

 

 

 

 

side change

 

 

 

 

「霊夢も珍しいわね。あんなにムキになるなんて」

「そうなんですか?」

「霊夢は基本、何事にも無関心。あんな風に感情を剥き出しにして弾幕ごっこをやるなんてのは中々見ないわね。やっぱりこれも」

「あいつのせいだろうな」

「それよりも。さっきとは随分雰囲気が違うわね。端からみてたら怒っているように見えたのだけれど?」

「そんなこと無いぜ」

「あら?その口ぶりだとなにか知ってるようね」

「その通りだぜレミリア。ずっと霊夢は信と戦りたがってたんだぜ」

「霊夢が?」

「ああ。ずっとな」

「今まで戦ったことなかったんですか?」

「それが適当に理由つけて戦ろうとしたらしいんだが、毎回恥ずかしくなって実行できなかったらしいぜ」

「「へぇ~」」

 

その場のみんなが霊夢の意外にも乙女な部分に興味を持つ。そしてアリスが納得した様子で答えた

 

「そんな中で今の異変。霊夢にとって好都合だったわけね」

「ああ。それに、霊夢は最初っから信が異変の元凶を知ってることが分かってたらしいぜ」

「じゃあ昨日はどうして私たちの所に来たんですかね?」

「信には自分の全てをぶつけたかったそうだ。そのためのイメージを固めるための予行練習ってところらしいのぜ」

「ってことは……霊夢は『あれ』を使うの?」

「かもしれないな」

「『あれ』とは一体何かしら?」

「レミリア達は知らないか。簡単に言うと霊夢の切り札だな。私も一回だけ使わせたことがあるんだが……正直反則過ぎるんだぜ」

「まったくね」

「魔理沙にそこまで言わせるってことは相当のものでしょう?」

「ああ。もし、霊夢があれを使うとしたら………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「信が勝つことは絶対ありえないんだぜ」

 

 

 

side change

 

 

 

「『霊符』〈夢想封印 散〉!」

「そういうやり方もあるのか……。勉強になるな」

「余計なことを考えてると痛い目に遇うわよ」

「余計じゃないさ。弾幕ごっこのエキスパートのスペカだからな。その技術を盗まない手はない」

「そ、そう?」

「余計なこと考えてると痛い目に遇うぞっ!『光符』〈豪華絢爛〉!!」

「うっ!」

「さあ、『迷惑』なやつらが帰ってくるぞ?」

「しまっ」

 

信の言葉に反応して咄嗟に防御の体制をとる。その瞬間、何十もの斬撃のような衝撃が体に叩き込まれた

 

「やられたわ……」

「どんどん行くからな」

 

そういった信は大量の弾幕を展開する。感覚が狭く、人1人が通れればいいくらいの間隔だ。

 

「くっ。『霊符』〈夢想封印 集〉!」

 

苦し紛れのスペカで対抗するも簡単にそれは斬り捨てられてしまう

 

「『斬撃(ざんげき)』〈月牙天衝(げつがてんしょう)〉」

 

陰鉄を一度鞘に戻し、両手で秋水を握り、振り払った

くり出したのはその名の通り、斬撃を模した弾幕だ。同じようなことを妖夢もやっていた。

だが、その大きさは桁違い。

 

「まずっ!」

 

必死に信の弾幕を避けていた霊夢だったが、その絶大な大きさをもつ斬撃に成す術もなく飲み込まれていった

凄まじい衝撃波と轟音と共に砂埃が舞い上がり、何も見えなくなってしまう

 

『うはー。随分派手にやったね』

『あんな思いっきりやって大丈夫だったのか?』

「霊夢のことだから心配ないさ。それに……」

『それに?』

「あいつ……月牙天衝にのまれる前になんか唱えてたん……だ…よ……な?」

 

風が吹き、視界がクリアになる

そこには信の予想通り消耗しながらもその足で立っている霊夢の姿があった

だが、信は霊夢の違和感にすぐに気付いた

 

"無傷"

 

仕留めたつもりはなかったが確実に当てた手応えを感じていたのだ。更に月牙天衝は信の中でもそこそこの大技。無傷でいるなどあり得ないと思っていた

 

「あれをかわしたのか?」

「いいえ、直撃よ」

「なら……どうして?」

「これが私の切り札。悪いけど信。あなたには負けてもらうわ」

 

八つの陰陽玉を従えた霊夢は静かに宣言した

 

 

 

side change

 

 

 

「霊夢が追い詰められてるわね」

「まあ、さすがの霊夢でも豪華絢爛からのコンボをかわしきるのは難しいでしょうしね」

「……霊夢……。使うんだな」

「先程の『あれ』のことかしら?」

「ああ。やっぱり信に出し惜s「あれ、不味くないですか?」」

 

魔理沙の言葉を遮った妖夢の言葉に全員が反応する。いや、反応せざるを得なかった

秋水のみを握った信から異様な量の霊力が感じられる。あんなものが放たれ、考えたくもないが直撃したらどうなるか。

 

そして握られた秋水の霊力で型どられた赤い刀身が白く変化し、それを振り払った

 

刹那

 

ドオ゛ーーーン

という轟音と共に衝撃波に乗った小石や砂ぼこりが観戦していた者達を襲った

 

「いでででっ!信のやろう……こんなの隠し持ってやがったのか」

「それどころじゃないでしょう!どう見たって霊夢に今のは直撃したわ」

「まあ慌てるな咲夜。霊夢なら大丈夫だ。ギリギリだったみたいだが、ちゃんと『あれ』を使ってたんだぜ」

「そろそろ教えてくれないですか?反則とまで言う『あれ』とはなんなのか」

「ああ。まずあれの名前だg「ぐおおおおおおおおっ!」」

 

いざ説明しようとした魔理沙の言葉を切ったのはこの場に居なかった、たった今吹っ飛ばされてきた信である

 

 

~~~数秒前~~~

 

 

 

「『花符』〈千本桜 (ちゅう)〉!」

 

空中に大量の桜が生え、その全てが散っていく。最高速で接近してくる霊夢を寄せ付けないためだ。だが…

 

「悪いけど、そんなものはもう効かないわ」

 

細かく、大量に散っていく花びらの弾幕を霊夢は避けることなく真っ直ぐ突っ込んできた。当たるはずの軌道にのっていた花びらは霊夢の体にダメージを与えることなく、すり抜ける

 

「なっ!『怪符』〈破壊光線〉!!」

 

運任によって強化された破壊光線を放つ。だがそれすらも当たることはなく、霊夢を止めることはできなかった

 

「こいつはまずいな……」

「ええ。終わりよ」

 

ある程度近付いたところで陰陽玉から大量のお札が放たれた

 

「うおっ!!」

 

至近距離で不意を突かれその身に大量に弾幕を受けてしまった信はそのまま吹っ飛ばされてしまった

 

(あれは手動か?……一か八か!)

「『幻符』〈かくれんぼ〉!『包囲(ほうい)』〈四面楚歌(しめんそか)〉!!」

 

姿が見えなくなり、霊夢の周りに大量の気配が生み出された

その姿無き気配にむけて、陰陽玉はただひたすらに弾幕を放っていた

 

 

~~~そして現在~~~

 

 

「いってぇ~。なんとかなったな。でもこれからどうしたものか……」

「何やってるんだぜ信」

「おお、魔理沙。話を遮ったみたいだったな。悪かった」

「信はあれがなんなのかわかったのぜ?」

「ん~。まあ、なんとなくな」

「一体なんなんですか?霊夢の切り札の正体は」

「ああ。あれの名前は『夢想天生』。霊夢の『主に空を飛ぶ程度の能力』の本質とも言える技だぜ」

「霊夢の能力って飛べるだけじゃないのか?」

「ちっちっち。あいつの能力は空を飛ぶこと、つまり無重力。

地球の重力も、如何なる重圧も、力による脅しも、霊夢には全く意味が無いんだぜ。相手がどんなに強大だとしても、霊夢の前では意味をなさない。つまり夢想天生ってのは」

「「「「無敵……」」」」

 

初めて夢想天生を知った4人が声を揃えて呟いた

 

「ああ。完全に無敵になるんだ!」

「えぐぅ……」

「じゃ、じゃあどうやって勝つんですか!?」

「幸いこれは弾幕ごっこだ。時間制限があるからそれまで逃げまくればいい。ま、そんなことさせてくれるほど霊夢は甘くないんだがな」

「ん~~よっしゃ!決めたっ!」

「覚悟を決めたのか?」

「ああ。夢想天生を打ち破る覚悟をな」

「はっ!?」

「見つけたわ」

 

色々話しているうちに霊夢が直ぐ真上まで接近していた。そして少し苛立ちの表情が伺えた

 

「なにもないところに攻撃しまくってる姿は可愛かったぞ」

「なっ!」

(((((羨ましい……)))))

「それよりっ!もう敗けを認めたら?勝ち目がないのは魔理沙から聞いたでしょう?」

「ああ。勝つための方法がわかった!サンキューな魔理沙」

「えっ?あ、おう」

「逃げまくるつもり?そんなことさせないわ」

「そんなことしないよ。夢想天生、打ち破ってやるさ!!」

 

高らかに宣言した信は1枚のスペカを取り出した

 

「『終ノ符』〈無双乱武〉」

 

それは優しい光を放ちながら姿を変えた。1度は暴走した妖怪を助けた時の物と同じように

 

「『意思』〈ぬのぼこの剣〉」

 

その直剣は漆黒。どんなものにも染まること無い黒

その場にいたものは自分が飲み込まれるような感覚に畏怖し、同時に何かに守られているような安心感に包まれた

 

「試してみるか?」

「望むところよっ!」

 

瞬間、大量の御札が信を襲った。しかし、今回はきっちりそれに対処し霊夢との距離を詰めていく

 

「近付いたら餌食になるって分からなかったのかしら?」

「そんなことはないさ。ただ、霊夢も忘れてるんじゃないか?」

「なんのこと?」

「この剣の性質をさ。『跳躍(ちょうやく)』〈グラスホッパー〉」

 

瞬間、信の足元に妖力で作られた板のようなものが現れた。それを踏み込んだ瞬間、

 

「なっ!」

「その顔が見たかった」

 

一瞬にして霊夢の直ぐ目の前に移動した。そしてその勢いのまま力強く握ったぬのぼこの剣で霊夢の腹を思いきり斬りつけた

 

「……当たらないって聞かなかったの?」

「聞いたさ。だから、これで終わりだ」

 

放ったのは普通の弾幕。恐ろしく速いわけでもなければ威力が高いわけでもない普通の魔力弾。それは霊夢の体をしっかりと捉えていた

 

だがそんなことは関係ない。今の霊夢はいかなる攻撃も効きはしない

 

だから避けようとしなかった。当たるはずがないのだから

 

なにも気にせず、なにも疑わず、ただそのまま霊夢は信に向かって突っ込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが敗因になるなんて微塵も考えずに

 

「なっ!!」

「慢心に加えて油断もしたな。『足止(あしどめ)』〈草結(くさむすび)〉」

 

地面から何らかの植物が生え、それが霊夢の足に巻き付き地に足をつけさせた。

 

「ど、どうして……」

「前に説明したろ?ぬのぼこの剣は思いによって斬るものと強さが変わるって」

 

剣を肩に担ぎながら新しい弾幕を全方位に放った。それは誰に当たるわけでもなく、等間隔に広がっていきある程度離れたところで止まった

 

「夢想天生の『無敵と言う概念』を斬らせてもらった。残念だが今、霊夢は無敵でもなんでもない」

 

そして信は、右手をゆっくりとあげ、不敵に笑った。

 

「『集結(しゅうけつ)』〈魔空包囲弾(まくうほういだん)〉」

 

パチンッ と指をならすと辺りを囲んでいた弾幕が飛ぶことも、避けることも、逃げることも出来なくなった霊夢を容赦なく襲った

その場に倒れこんだ霊夢を見下ろし、ある人物に頼まれていたことを実行する

 

「才能だけで勝てると思うなよ?努力があって才能は輝きを増す。……説教はここまでにして決め台詞といこう。妖夢、お前の言葉ちょっと借りるぞ」

「は、はい」

 

目の前の状況を処理しきれずポカン(゜ロ゜)としている妖夢に許可をもらい、高らかに宣言する

 

「俺の思いを込めたこの『ぬのぼこの剣』に、斬れない物など無い!」

 

こうして、2人の強者の弾幕ごっこは夕日が沈むと同時に決着した

 

 

 




前々からお伝えしていたようにこの回をもって一度、投稿を休ませていただきます
それでは約5ヶ月後にお会いしましょう

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