東方家族録   作:さまりと

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第53話【本気は出さなきゃ損をする】

今回仕掛けたのは珍しいことに信であった。美鈴の時のように長い時間相手の出方を伺っていては、米が炊けるのに間に合わないと判断したためであった

これに対して妖夢。その場で受けようとするのではなく、遅れたものの自らも攻めにいく。相手のペースにするのは出来るだけ避けたく、少々無理矢理にでも攻めるべきと判断したためだ。

両者が高速で間を詰め、妖夢は上段に、信は下段に構えた自分の剣を完璧なタイミングで相手にむけて振り切った

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~。腹へったんだぜ…」

「まったく妖夢にも困ったものね。それに何か無理しているようにも見えるし」

「無理?何か悩んでるようには見えなかったけどなぁ」

「精神的にじゃなくて肉体的によ」

「そういうことか。…おっ!信と妖夢がやるみたいだぜ。紫はどっちが勝つと思うんだぜ?」

「どちらが勝つか……ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキンッ!!という金属音を響かせながら両者の剣は交わった

 

「ぐっ……やりますね…。これでも力には自信があったんですが」

「そのなりでこんだけ出来るなら十分だろ。こっちは吹っ飛ばすつもりでやったっていうのに」

「普通の人間はこれで今ので吹っ飛ばせますよ」

「俺が普通じゃないみたいなこと言うなよ」

「普通じゃないですっ!!」

 

鍔迫り合いをの最中言葉を交わすと、妖夢は腕を突きだして信を吹き飛ばした。

 

「はぁあああっ!!!」

 

勢いのある掛け声と共にすぐさま追撃に向かう。

まずは最短で突きを放った。が、信はこれをサイドステップで軽くかわす。かわされた瞬間そのまま横に振り払いうが、今度はバックステップで避けられてしまった。

だが、妖夢はこれを予測していたらしく、振り払うと同時に地面を蹴り、そのまま弧を描くようにしながら楼観剣を振り上げた

 

ガキンッ!!という音が再び響き、両者は力を込めながら相手の出方を伺いあう

 

「……今ので仕留めるつもりだったんですが」

「そんな簡単にいったら長男なんて務まんねえよ」

 

そしてまた妖夢が仕掛ける。振り払い、返し、突き、切り上げ、降り下ろす。息のつく暇もないほどの速さで攻めるが当たらない。先ほどは剣を使っていたのに現在はそれすらもやっていない

 

「なんなら2本目も使ったらどうだ?全力が出せないうちに負けるなんて嫌だろ?」

「随分余裕ですねっ!!」

 

楼観剣を右手のみで降りきりながら左手で白楼剣を抜き、抜き様に信に斬りかかった

 

「ふっ!」

「おっと」

 

それを軽々かわした信はバックステップで距離をとる。だが妖夢はこれを許さない。前の勢いを利用してそのままラッシュを仕掛けた

2本の剣を使う妖夢にたいしてさすがの信も秋水を用いながらの対応となった

切り上げ、払い、返し、突く。2つの剣の流れるような動作に対応が徐々に遅れていく

 

「あなたも2本目を使ったらどうですかっ!」

「そんじゃあ使わせてもらうか。『一刀』〈陰鉄〉」

(ここだっ!)

「はあっ!!」

 

信が陰鉄を手に取った瞬間を狙って妖夢は仕掛けた。完璧な踏み込み。完璧な軌道。完璧なタイミング。どう足掻いても逃げようがない完璧は2太刀は信の首にまっすぐ向かっていった

 

(とったっ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十中八九 信でしょうね。弾幕ごっこでも、剣術でも」

「剣でもか?妖夢は剣術なら相当やるって聞いたぞ」

「それはそうなんだけどね…。昔から妖夢の稽古を見てるけど……」

「あっ(察し)」

「それに信やったとき彼の剣捌きをみたのだけどね。……恐らく妖夢は手も足も出ないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガカキンッ!!!という連なった金属音と共に妖夢の2太刀は防がれた。しかもただ防がれただけではなく楼観剣も白楼剣も手から弾き飛ばされてしまった

 

「なっ!(誘い込まれたっ!!)」

「逃がさん」

 

妖夢はすぐさま距離をとろうとするが、信は陰鉄を消滅させるとその距離を一気に詰めた

 

「ていっ!」

 

妖夢は牽制のつもりで軽いジャブを信の顔面めがけて放った。体重も乗っていないほとんど威力の無い突きを

信はそれを軽くかわしながら腕を横からつかんで自分の方向に思いきり引っ張った

それに気づいた妖夢はすぐさま後ろに体重をのせて掴んでいる腕から逃れようとする。しかし、ここで信は手をパッと離した

 

「なっ!」

 

倒れそうになった妖夢は足を引いて体制を戻そうとするが、信がその足を自分の足に引っ掛けてそれを阻止する

そのまま倒れていく妖夢の体を信は片手で支え、秋水を妖夢の喉元に突きつけ、お約束の言葉も妖夢に言い放った

 

「俺の勝ちだな」

「………」

 

いたずらな笑みを浮かべた信を見て、妖夢は不思議と悔しさも怒りも沸いてこなかった

 

 




完全にSAOのあのシーンですねw

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