東方家族録   作:さまりと

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今回はちょっと長くなってしまいました


第46話【悲しきかな】

コト「全くなんですか主は。そんなにボロボロになって。もっと軽傷で済ませられなかったんですか。」

 

藍と約束したあとコトのところに戻った。何度目となるお説教だ。

 

信「悪かったよ。ほら、ジャーキーやるから。」

コト「ジャーキーなんかに釣られませんよ。早く戻って寝ましょう。」

 

そういいながらしっかりジャーキーはもらっている。

 

信「そういえば藍とやってどっちが勝ったんだ?」

コト「私が勝ちました。」

信「ほう、すごいじゃないか。」

コト「ふふーん。……って誉めてもダメです!」

信「ははっ。じゃあ戻ろうか。」

コト「むぅ。」

 

コトは人型から犬型へと戻った。

 

信『モコ、ちょっ辺りを見渡してくれ。』

モコ『ワウ。』

 

幼少に魔力を使った影響なのかモコは人間の言葉を完璧に理解していた。だからこういう時誰にも見られていないかをモコやコトの視界を共有してから瞬間移動する。

 

信「大丈夫そうだな。コト、戻るぞ。」

コト「はーい。」

 

 

ガラガラッガコンッ

 

信「ただいまー。」

モコ「ワンッ!!」

信「悪いなモコ。」

モコ「クウン。」

愛「信にいおかえりーってどうしたのその傷っ!!グロいよ!!」

信「触るんじゃないぞ。割と本気で痛いからな。」

エマ「信っ!その傷一体どうしたのよ!!」

信「帰ってくる途中で忍者に教われてな。」

エマ&アリサ「「忍者!!」」

エマ「でも学校のみんなはそんなのいないって……。」

信「やべっ!これ言っちゃいけないんだった。……内緒で頼む。」

エマ「ふふーん♪」

アリサ「わかりました、内緒です♪」

 

ご機嫌な様子で2人は今へと戻っていった。

 

愛「あの子達絶対に言いふらすよ。」

静「ですね。」

信「まあ、うまく誤魔化せたからいいだろ。飯はもう食ったか?」

愛「うん。で、今真たちがお風呂に入ってる。」

静「私たちももう入りました。」

信「そうか。飯、俺の分ある?」

愛「もち。」

静「温め直すので待っててください。」

 

そう言った2人は台所へと向かっていった。

 

そのあとは傷を心配されながら食事をとり、激痛に耐えながら風呂に入った。面白がって傷をさわってきた強太の弁当には今度生のピーマンたっぷり入れてやることにした。

 

コト「さ、主早く寝てください。本当なら病院レベルですよっ!」

信「わかったって。……なあコト。」

コト「なんですか?」

信「今日は助かった。お前が藍を足止めしてくれなきゃもっと大変だったと思う。ありがとな

。」

コト「……主も。今日初めて私を頼ってくれました。……嬉しかったです。」

信「そうか。」

コト「それと傷のことは別です。早く寝てください。」

信「はいはい。」

 

そしてコトは不思議な音を奏で始める。落ち着く、ゆったりとした音を。そしてそのまま、信は夢の中へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜3時

静まり返った闇のなかでその2人はいた。

 

?「(本当にやるの?)」

?「(やるよ。そのために来たんだから。)」

?「(でも彼はそんな悪い人には見えないよ。)」

?「(でも、『あれ』を持っているのは事実。あなたも感じてたでしょ?)」

?「(うん。)」

?「(大丈夫。『あれ』さえ無くせればいいの。彼を殺す訳じゃない。それに彼は今すごい弱ってるからね。忍者に感謝しなきゃ。)」

?「(そうだよね。うん。)」

?「(じゃあ、行くよ。)」

 

ターゲットの部屋へとその2人は忍び込んだ。全く音を出さずに、ひっそりと。

 

?「(あそこね。)」

 

部屋の奥に『彼』が眠っているのを発見する。

静に、なにも感じさせない動きで近づく。

 

?「(……よし。)」

 

ついにターゲットの横に着いた。

 

?「(さあ、やるよ。)」

?「(待って、これって……)」

 

信「奥手の日本人男子に夜這いってのはあまりお勧めしないな。」

 

?&?「っ!!」

信「さて、これは一体どういうつもりだ?エマ、アリサ。」

エマ「……どうして気づいたの?」

信「一応警戒はしてたんだ。2人とも普段の動きがなにかしら訓練を受けた動きだったからな。」

コト『ウガア゛ッ』

アリサ「あっあの、出来れば話だけでも聞いてくれませんか?」

信「ああ、落ち着けコト。」

コト『しかし主、こいつら。』

信『落ち着け。』

コト『……はい。』

信「もう夜遅いし外で話そう。弟たちを起こしたくない。」

 

 

~~~~~移動中~~~~~

 

 

信「さて、話を聞こうか。」

エマ「私たちはコトがつけてるそのネックレスを探してきたの。」

信「これをか?ってことは……」

アリサ「知ってるみたいですね。私たちのご先祖は昔、その優れた力で悪霊を封じ込めました。」

信『お前まだ悪霊だと思われてるぞ。』

フェリーチェ『みたいだね。』

ノーム『フェリーチェ急にいなくなったと思ったら人間に封じ込められてたんだね。』

フェリーチェ『うん。』

エマ「その封じ込めた悪霊に関する文献が最近見つかったの。その悪霊は世界に影響を与えるほどの力を持ってるって。」

フェリーチェ『まあ、間違ってはいないね。』

アリサ「ネックレスを探すために急遽留学することになって一時はどうなるかと思いましたが幸運でした。まさかたらい回しにされ行き着いたところに目当てのネックレスがあったのですから。」

信「たらい回しなんて難しい言葉よく覚えたな。」

アリサ「エヘヘ。」

エマ「アリサッ!……でも見つけたネックレスに悪霊の力は感じなかった。でもすぐに見つかったわ。」

信「それが俺か。」

エマ「そういうこと。」

アリサ「悪霊さえ滅せれればそれでいいんです。大人しくしてもらえませんか?」

信「ん~。」

信『どうする?フェリーチェ差し出すか?』

魔鬼『よし、やろう。』

フェリーチェ『嫌だよ。』

ノーム『同じ四大精霊としてはあまりやってほしくないな~。』

フェリーチェ『もっと強くいってよノーム!』

共『魔鬼はここぞとばかりに仕返しするな。』

信「すまんがその悪霊とは仲良くやってるんだ。見逃してくれないか?」

エマ「そう……。なら仕方ないね。」

アリサ「ほ、本当にダメなんですか?」

信「本人も嫌だって言ってるしな。」

アリサ「……それならやむを得ません。」

2人の体に霊力が流れていくのを感じる。そこそこ大きい。

共『どうするんだ?』

信『まあ、事情を説明すればわかってくれるだろう。でも俺の霊力は今ほとんどスッカラカンだしなぁ。』

フェリーチェ『なら私の力を使ってよ。なんか悪霊だって言われてたらムカついてきた。』

信『じゃあ借りるぞ。』

 

霊力の代わりにフェリーチェの妖力を体に流す。どうやら霊力で身体能力をあげるよりも効果が高いらしい。

 

エマ「っ!?なにその力。」

信「え?」

アリサ「一体何人いるんですか?」

(まさか...。)

信『共、ちょっと力借りるぞ。』

魔鬼『なんか嫌な予感がしてきたんだが……』

信「悪霊ってのはこいつか?」

共の魔力を流し込みながら質問する。

エマ「違う。」

アリサ「違います。」

信『……魔鬼。』

魔鬼『やってくれ。』

 

そして魔鬼の妖力を流す。

 

エマ&アリサ「それっ!」

フェリーチェ『ははははっ!』

共『ぐふっ!』

魔鬼『なんだよ共まで!!』

共『すwまwwない。でもwwwこwれwwはwww。』

魔鬼『やめろっ!もうしゃべるなっ!!』

信「くくっ………。」

エマ「……信?」

アリサ「どうしたのですか?」

信『いや、何でもない。』

 

もう一度フェリーチェの妖力を体に流す。

 

信「さ、早く来いよ。悪霊を滅するんだろ?」

フェリーチェ『悪ww霊w。』

エマ「じゃあ、行くよ。」

アリサ「手加減はしません。」

信「おう。どんとこい!」

 

瞬間、2人は同時に駆け出した。その速度はおおよそ15、6歳の少女の出せるものではない。

 

(ま、戦う気は全くないんだがな。)

 

信は右手を仰向けの状態で前につきだし、優しく振り上げた。

 

アリサ「きゃっ!」

エマ「なに……これ……。」

 

突然舞い上がった突風によって2人は浮かび上がってしまう。それにどう対処したらわからないといった表情だ。

 

信「ん?2人は自分で飛べないのか?」

 

地上から10mほど離れたところで話を進める。

 

エマ「人間が飛べるわけないでしょ!」

信「それだと俺は人間じゃなくなるんだが……。」

アリサ「人間じゃなかったんですか!?」

信「人間だよ。……まずは色々誤解を解かないとな。話を聞いてくれるな?」

エマ「降ろしてよ。」

信「……出来ればもう少し見てたいんだが。」

エマ「信の変態!」

アリサ「これが日本のHENTAI……」

信「眼福眼福。」

 

ふざけながら2人の体を地面に近づけていく。すると2人共地に足をつけて着地したからやはりなにか高度な訓練を受けていたようだ。

 

信「じゃあまず、さっき2人がいってた悪霊の力だけどな、あれはネックレスの中にはいってた奴じゃないぞ。」

エマ「え!?」

アリサ「本当ですか?」

信「ああ。そいつは生まれも育ちも日本だから間違いないな。それともう1つ、根本的に違うのはネックレスに封じ込められてたのは悪霊じゃないってことだ。」

エマ&アリサ「じゃあなんなの(ですか)?」

信『いっちゃっても言いかな。』

フェリーチェ『私は隠す気は元々無いよ。』

信「四大精霊って知ってるか?」

エマ「うん。」

アリサ「サラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノームのことですよね。」

信「ネックレスに封じ込められてたのはそのシルフだ。」

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

エマ&アリサ「えええええええええっ!!」

信「コントみたいな反応だな。」

エマ「え、ちょっと待って。悪霊は精霊で、悪い力は悪霊じゃなくて……」

アリサ「ってことは私たちのご先祖は四大精霊を悪霊と間違えて封じ込めたんですか!?」

信「うん。」

エマ「証拠見せてよっ!」

(混乱して頭が追い付かなくなってきたな。)

信「まあいっか。2名様ご案な~い。」

エマ&アリサ「っ!!」

 

2人が見せられたのは信の中の住人が集う場所。つまり信の魂だ。

 

共「明度 共だ。」

ノーム「僕はノーム。よろしくね~。」

フェリーチェ「それで私が君達のご先祖に封じ込められたシルフのフェリーチェだよ~。」

エマ&アリサ「・・・・・。」

2人はとても信じられないといった表情でビックリしている。無理もない。

ノーム「ん?」

エマ「そっちの人は……。」

魔鬼「お前たちに悪霊に間違えられた明度 魔鬼だよっこの野郎っ!!!」

エマ&アリサ「ひっ!」

信「まあ見てわかる通り俺の中はとても賑やかだ。これで信じてくれたか?」

エマ「……うん。」

アリサ「すごいです。」

 

能力を解除する。

 

信「とまあ魔鬼はとても不機嫌になっちゃったわけだけど、これで全部の誤解はとけたな。」

ノーム『信。』

信『どうしたノーム。』

ノーム『彼女たちがつけてるイヤリングと指輪、僕が作ったのだ。』

 

エマはイヤリングを、アリサは指輪を常に身につけていた。

 

信『……え、マジ?ってことは……』

ノーム『うん、たぶん入ってると思う。』

信『でもフェリーチェはなんにも感じないんだろ?』

フェリーチェ『うん。でも2人は真面目だからね、多分ちゃんと自分の力を抑え込んでるんだと思う。』

信『見習ったらどうなんだ?』

フェリーチェ『それより信っ!早く確かめようよ。』

信『わかったよ。』

信「エマ、アリサ。俺をこんな時間に興したお詫びとして頼みがあるんだけど。」

エマ「私たちに乱暴する気でしょ!」

アリサ「エロ同人みたいに!!」

(ホントにどこでそんな言葉よく覚えてくるんだ?)

信「違くて、お前達のイヤリングと指輪をちょっと貸して欲しいんだ。」

エマ「これを?」

アリサ「いいですけど…。」

 

2人は不思議な顔をしながら渡してくれた。

 

信「ありがとう、すぐ返すから。」

信『魔力と妖力を一緒に流せばいいんだよな。』

ノーム『ちょっと違うんだよね~。』

信『ん?』

ノーム『霊力と魔力と妖力を一緒に流し込んでみて。』

信『3つをか?』

言われた通りに流し込んでみる。すると、2つの中で、なにかが外れた感覚を覚える。

?『ついに我を納められるものが現れたか。』

?『長かった。やっと外の世界を見られる。』

信『マジで居やがったな。』

フェリーチェ『旦那!、ディーネ!!』

ノーム『やっぱりまだいたね。』

旦那『我はサラマンダー。四大精霊の1人、火を司りし大精霊d……ん?旦那?』

ディーネ『フェリーチェ!ノームッ!』

フェリーチェ『ディーネッ!!』

ディーネ『どこへ行っていたのですか。……心配したのですよ。』

フェリーチェ『うん。ごめんね。』

旦那『ディーネまでいるのか!?』

ディーネ『旦那!……お久しぶりです。』

旦那『なんということか。四大精霊がまた1つに集まれるとは……。』

フェリーチェ『うん!あえて嬉しいよ!!』

ノーム『フェリーチェ、紹介しなくていいの?』

フェリーチェ『そうだった!まずは金髪の彼女から。』

共『私からか。』

フェリーチェ『彼女は明度 共。元々はある子の狂気だったんだけどここではその本質が抑えられてるんだ。』

共『よろしく。』

フェリーチェ『そして彼が明度 魔鬼。彼は牛鬼っていう妖怪の本能で』

ディーネ『牛鬼っ!!』

旦那『離れろっ!こいつは危険だ。』

ノーム『知ってるの?』

旦那『極東では悪名高いことで有名な妖怪だ。なぜこんなところに。』

フェリーチェ『待って待って、彼は確かに元は嫌なやつだったけど今は大丈夫だよ。』

魔鬼『この宿主についていくと決めてからはな。明度 魔鬼だ。安心してくれて大丈夫だ。』

旦那『そうか……いきなり無礼をはたらいてしまったな。すまなかった。』

魔鬼『いいよ、実際俺は色々悪いことやってたんだし。これからよろしく頼む。』

フェリーチェ『それで今いるこの体が明度 信だよ。』

信『そういうわけだ。自己紹介はあとでそっちにいくからちょっと待っててくれ。』

エマ「信、なにかわかったの?」

信「色々な。これは返すよ。ありがとう。」

アリサ「説明してくれますか?」

信「またあとでな。今日は遅いから寝よう。」

エマ「私たちを追い出さないの?」

信「別に何かあった訳じゃないしな。睡眠時間削られて傷は治せなかったけどな。」

アリサ「ごめんなさい。」

信「気にすんなって、誰にでも間違いくらいある。だから早く寝よう。」

 

今はディーネや旦那に聞きたい話がたくさんある。だからそのために早く寝たい。

 

信「それじゃあお休み。」

コト「お休みなさい。」

 

エマとアリサと別れ自分の部屋で寝ようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリリリリリリリリリリリリッ!!!!

 

 

 

なんの音か。決まっている。現時刻は午前4時。起床時間だ。

 

コト「お、おはようございます?」

信「……おはよう。」

信『すまないけど、話はまた後日ということで。』

旦那『あ、ああ構わない。』

フェリーチェ『信、頑張って。』

 

精霊に鼓舞され、痛みの走るからだを我慢して動かし、兄弟たちが集う道場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




新キャラの設定は後々公開します。

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