東方家族録   作:さまりと

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第40話【友人の式神の式神の思い】

「幻想郷ってこんなに冬が長いのか?」

 

そういうのも現在はすでに5月。本来なら雪ではなく桜の花びらが降るはずの季節である。

 

「いえ、紫が言うには外界とほとんど同じらしいわ。こんなに長いのは初めて。」

 

霊夢に答えられると「だよな」と答える。季節は外界とあまり変わらないということはこの雪は異常事態。つまり幻想郷で言うところの

 

「...ってことはこれも異h「霊夢ううっ!」」

 

勢いのある声と共に先程信が開けた障子が再び勢いよく開けられた。

 

「久しぶりだな、魔理沙」

「信じゃないか、久しぶりなんだぜ。ってか霊夢!なにやってるんだ、異変だぜ!」

「やっぱりか」

「2人ともこたつに入ってぬくぬくしやがって。けしからんのぜ」

 

開けられた障子から入ってきた魔理沙は、説教じみたことをいいながらこたつに入ってきた。ごそごそといい感じのポジションに収まったのかホッコリした表情でそのまま落ち着いた。

 

「お前も入るんかい!」

「こんな寒い中で目の前にこたつがあるんだぜ?入らないわけないだろ」

「それもそうだな。んでこの異変のことだけd「お邪魔するわね」」

 

再び信の言葉を遮ったのは突然現れた紅魔館のメイド。十六夜咲夜だ。突然現れたのは持ち前の能力によるものだろう。

 

「咲夜、人の家に勝手に入るなんて失礼なんじゃないか?」

「そうだそうだ!」

「あんたたちが言うの?」

「ってか久しぶりだな咲夜。元気そうだな」

「久しぶりね、信」

「フランたちも元気にしてたか?」

「あなたが居なくなってから大変だったのよ。妹様が『お兄さまに会いたい!!』って暴れなさるんだから。お陰で美鈴がボロボロよ。」

「そうか……後でちゃんと行かないとな。.……そう言えば咲夜はなにしに来たんだ?」

「その前に私も入っていいかしら」

 

よく見ると咲夜の頭には雪が積もっていた。まだ極寒の冬である幻想郷をあの短いスカートで歩いていたせいか体も小刻みに震えていた。それでもなお冷静を装い続ける様は流石だ。

 

「どうぞどうぞ。」

「ありがとう。(ゴソゴソ) お嬢様にこの異変の解決に協力してきなさいと言われてね。」

「レミリアに?」

「それはまたどういった心境の変化なんだぜ?」

 

魔理沙がそう思っても不思議ではない。レミリアはカリスマ溢れプライドの高い吸血鬼。進んで人助けなんかをするような質ではないからだ。きっとなにか深い事情があるに違いない。

 

「こんなに寒い季節がそう長く続いてほしくないそうよ」

「なる」

 

……まあ自分の気持ちに素直でもある。

 

「霊夢、どこに黒幕がいるとか分かるか?」

「...とりあえず地上に居ないってことは確かね」

「地上に居ない?」

 

霊夢以外の3人が首を傾げる。地上ではないとはいったい?

 

「ええ。今はそれくらい」

「どうする?ゆかりんにでも聞いてみるか?」

「あいつは多分冬眠中よ」

「そうか~。じゃあまずは情報収集か」

「情報なら文のが一番早いぞ?」

「どうやら私が必要とされているようですね~」

 

といつの間にか勝手に上がり込んでいる烏天狗。

彼女もまた、頭や背中の翼に雪をのせブルブルと震えている。鼻や頬、耳までもが真っ赤に染まっていて誰がどうみても寒そうにしていた

 

「おお、相変わらず唐突だな。」

「で?ここに来たからには何か情報があるんだろうな。」

「わ、私はこ、こここの異変にたたた対して、解決者たちがど、どどうどう対処するのか記事にしようとおもおもも思いいましてね。...ま、まさか仲良くこたつに入ってるとは思いませんでしたけど(ブルブル)」

「...入るか?」

「か、感謝します」

 

雪を払いこたつに入ると「ほふぅ~」という声を漏らしながら安心していた。

 

「で、本当に何もないの?」

「精々ここに来る途中でスキマ妖怪の式神の式神が居たことくらいですね」

「橙にか?...ちょっとつれてくるか」

「私もいくわ」

「いいよ。俺なら一瞬だし。じゃあいってくる」

 

咲夜が申し出るが自分だけでやった方が効率がよいと判断した。

 

~~~3秒後~~~

 

「連れてきたぞ」

「は~な~せ~!」

「本当に一瞬でしたね」

 

帰って来た信の腕には橙が抱えられていた。そしてその様子はまるで人見知りの飼い猫を無理矢理抱き上げたようだった。

信の腕の中で腕も足も上半身も下半身もブンブンと暴れさせている。

 

「は、博麗の巫女!」

「本当に何か知ってるみたいね」

「ら、藍様に何も話すなって言われてるんだ~!」

「確定ね」

「ここで惚けとけばすぐ戻れただろうに」

「はっ!」

 

しまったと言うような表情とともに自らの手で口を押さえた。だが、もう遅い。

 

「さ、何を知ってるのか話すんだぜ」

「な、何があっても口を割るもんか!」

「はなすんだぜ!!」

「絶対にお断りだ!!!」

 

橙はドジであったりやらかしたりすることもあるが基本的には藍や紫の言うことをちゃんと聞く。気を引き締めたかのじょから

 

「出来ればお前も実行させたくないんだろ?」

「うぐっ!」

「どういうこと?」

「ちょっと感情を共有したらこいつもなんか乗り気じゃないみたいなんだよ」

「なら話せばいいじゃない」

「でっでも、話したら解決しにいくでしょ?」

「そりゃあな。」

「や、やっぱり話せない。」

「こいつからは無理そうなんだぜ」

「...悪いけど無理矢理聞くか。橙、この異変の首謀者はどこにいる?」

「...」

 

沈黙して答えることを拒否する橙。答えるか答えないかは今関係ない。

 

「冥界だそうだ」

「なっ!」

「冥界?」

「どこにあるんだぜ?」

「どっかに結界がありそうね。……空ね」

 

霊夢が得意の勘を働かせて調べる場所が判明した。

 

「なら決まりだぜ」

「空のどっかに結界があるからそれを探す」

「まあ、霊夢の勘を頼りにすればすぐ見つかるだろ」

「それじゃあ出発しましょうか」

「悪いな橙。いきなり連れてきて情報を無理矢理引き出して」

「……この異変は紫様のご友人が発生させたんだ」

「ん?」

「本当は紫様も藍様も嫌なんだ。そのはずなんだ、でも……。……あの人たちを止めてほしい。藍様のや紫様の悲しむ顔を見たくない」

 

静かな……というよりも暗い声で橙は話た。その話し方や声の暗さ、重さから主人の命令に背いている罪悪感が感じ取れる。

 

「...よく話してくれたな」

「どうやら今回は少々規模が大きいようですね」

 

幻想郷の賢者とその友人が首謀者の異変だ。1筋縄ではいかないだろう。

 

「それじゃあ、行きましょうか」

「こんな話を聞かされたからには絶対解決してやるんだぜ!」

「主君を思う気持ちは私にもよく分かるわ」

「ああ。任せろ橙。俺たちがゆかりん達を止めてやるからな」

 

橙の秘めた思いを胸に納め、幻想郷の異変解決者たちは冥界へと向かった。


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