東方家族録   作:さまりと

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おはこんばんにちわ。さまりとです。
いきなり戦闘です。
表現難しいですね、書いててほんとに思いますが。
では、ゆっくりどうぞ。


第1話 【明渡 信】

 

 

……まずは状況を整理しよう。

 スーパーで買い物を済ませてから帰ろうとして、いつもは通らない脇道にそれて、ぬけたら森。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「なにが起きたんだよ」

 

 とりあえず帰らなければ。今日の夕飯をつくらなければ下の弟たちが泣いてしまう。

 

「とりあえず歩くか」

 

 分からないときは考えるより動けが自分の中のセオリーだ。このままここで立ち往生してても帰れるとは思えないし……。

 そんなことを考えながら未知の森に歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結構歩いたげど人一人いないな。しかもなんか足跡あるし……これ動物のとは思えないしな。。てかこれ異世界に来ちゃったんじゃないか? ほんとは喜びたい状況なんだけどなぁ……」

 

 そんなことを呟いていると前方から声が聞こえてきた。

 

「だ・・・か・・・・・・けて」

「声?第一村人発見か?なんかいい情報があればいいけどなあ……」

 

 そのような思考ははっきりと聞こえた次の言葉でかき消された。

 

「だれかっ!助けてっ!!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺は荷物を強く握りしめ、走り出していた。

 

 

side change

 

 

「だれかっ!助けて!!」

 

 まさかこんなことになるなんて。神社にお参りに行こうとしたら大量の妖怪達に遭遇してしまった。

 

「こんな所に誰も来ねぇーよ」

「俺 内臓食べる」

「肉っ!肉っ!!」

 

 捕まったら死ぬ。本能も理性もそう言っている。だが全速力で逃げていても相手は妖怪だ。逃げ切れるわけない。それでも死ぬわけにはいかない。

 

 彼は逃げた。必死に、全力で。だが現実は酷く、無情だ。不運にも木の根に足を引っかけてしまった。

 

「っ痛ぅ…逃げなきゃ…うっ」

 

 立ち上がろうと足に力を入れると激痛が走った。どうやら転んだ時に足を捻ってしまったようだ。妖怪達の声はすぐそこまで迫ってきている。……もう助からない。そう頭で思っているなか、4体の妖怪が姿を表した。

 

「もう鬼ごっこはおしまいかぁ~?」

「早く食べたい」

「肉っ!!」

「みんなの分もとっておかないと。この頃食料不足なんだから」

 

(もう終わるんだ。逃げられないし助けも来ない。ああ、死ぬ前に妹の顔を一回でも見たかったな)

 

「へっへっへ。悪く思うなよ。弱肉強食の世界だ。せめて苦しまないようにしてやる」

 

 錆び付いた鉈のようなものを持った妖怪が近づいてくる。

 もうわかってる。助からない事くらい。悪足掻きってことも知ってる。

 

「まだ……死にたくない……」

 

 だが、それが生きることをあきらめていい理由にはならない。

 

「誰かあああああ!助けてっ!!」

 

 無情にも構えられた鉈が勢いよく振り下ろされる

 

(終わるんだ。ごめんね、生まれる前に死んじゃって)

 

 死を覚悟して目をつむる。……が体に痛みが訪れることはなかった。

 変わりに体のすぐ横で何かが叩きつけらたような振動を感じた。恐る恐る目を開けるとそれは先程までとは全く違う光景だった。

 振り下ろされた鉈は自分の真横に突き刺さっており自分の体にはかすりもしていなかった。

 妖怪たちも表情が喜びから驚愕へと一転しており、鉈の妖怪は腕をクロスさせ少し距離を置いていた。

 そして何より、自分の目の前に突然現れた巨大な影。ゆらゆらと長い髪を揺らしながら足を振り上げたような体制をとり、その存在感に圧倒される。

 

 

「ふう……間に合ったか」

 

巨大な影はそうつぶやいた。

 

「あ……あ……」

 

 訳も分からず恐怖と驚愕のみが体を支配して声が出なかった。

 そして、巨大な影は長い髪を揺らしながら振り向き、力強く笑い、短く言い放った。

 

「もう大丈夫。何故かって?俺が来た!!」

 

 その声を聞いた瞬間、ありえないほど。信じられない程。自分の中の恐怖心が消えていくのが分かった。

 

side change

 

 

 声の方向に向かっていると何かに追われていることが何となくわかった。

 もっと進んでみると少年が化け物に追い詰められている。

 

「誰かあああ!助けてっ!!」

 

 助けなければ!!

 荷物をその場におき駆け出す。振り下ろされた鉈に蹴りをいれて軌道をずらした。

 

 間一髪。あとコンマ一秒でも遅れていたら少年はよくても致命傷を負っていただろう。

 化け物を観察してみると3体が驚愕の表情を浮かべていたが、鉈の妖怪だけが一瞬で戦闘する心構えに切り替えたようだった。

 すかさずそのまま回転して蹴りを入れる。間髪なく入れたはずだがしっかりとガードで防がれた。ちょっと悔しい。

 

「ふう……間に合ったか」

 

 何はともあれ少年を助けることは成功した。ふと振り返ってみるとその顔は死にかけたこともあり涙で濡れている。安心させるために何を言えばいいか。

 その時、最近読んだ漫画のあるワンシーンが脳裏に浮かんだ。

 

(これが一番か...)

 

 少年をまっすぐ見て、力強く笑いながら俺は言った。

 

「もう大丈夫。何故かって?俺が来た!!」

 

 

 

 

 さぁ、ここからどうしよう。鉈を蹴った感触からこいつらは相当馬鹿力だ。……まぁ大丈夫か。

 

「少年、名前はなんだ?」

「ッ!!えと……ケン…です」

 

 いきなり名前を聞かれて驚いたようだ。

 

「そうか...ケンこいつらは俺がどうにかするからお前は逃げろ」

「でも...足が」

 

 足を見ると腫れてしまっている。これじゃ逃げられないな

 

「じゃあ俺の荷物のところまで連れていくからそこでまってt「俺達のコトは無視ですかッッ!!」」

 

 妖怪の1人が痺れを切らして問いてきた。今すぐ襲われ直すわけにもいかないのでとりあえず……

 

「ちょっと待ってて。こいつ怪我してるんだ」

「せっかくの獲物を逃がすわけないだろ!!」

「じゃあ荷物をここに持ってくるからそれまで待っててくれ」

「だから、なんで待たないといけない?」

「喰われる人間の最後の頼みだ。聞いてくれてもいいだろう?」

「……わかった。早くしろ」

 

 無駄に聞き分けのいい奴で助かった。荷物のところまで戻り、持ってくる。

 

「ケン」

「は、はい」

「こいつらとやりあわないといけないからここから絶対動くな。ここにいれば、俺はお前を守れる」

「……わかりました」

「もういいか?」

 

 我慢の限界といった様子で聞いてきた。その声は先程よりわずかに低くなっている。

 

「あぁ。いいよ」

「話を聞く限り俺達4人をひとりで相手にするみたいだが、お前、死にたがりか?」

 

 鉈の妖怪が不思議がるように聞いてきた。それもそうだろう。人間が化け物4人の前に突然現れてケンカを売ってきたような物なのだ。普通に考えたらそんなことをするのは自殺志願者かバカしかいない。

 

「いいや?俺は死ぬつもりはない。こんな小さい子供が必死に助けを求めてたら迷わず助けにはいるのが普通だと思うが?」

「ああ、なるほど。お前馬鹿か」

 

 納得したようにそう言い、化け物は構えた。

 どうにも自分一人で相手をするという感じだ。完全になめられている。でもまあ仕方ないことだ。相手は化け物、こっちは人間。舐められて当然。

 

「一つ気になってたことがある」

 

 だから忠告の意味も込め、背後から飛んできた矢を後頭部を貫く寸前のところで止めた。

 

「「「「ッ!!!」」」」

 

 全員の顔が再び驚愕へと変わる。まるで信じられないといったように。

 さらに周りからはざわざわ話し声のようなものが無数に聞こえる。

 

「お前ら、4人じゃねえだろ?ざっと4~50ってところか……」

「……それが分かっててなぜ来た?」

「簡単さ」

 

 瞬間、無数の話し声も、風の音も、木々の揺らぎも無くなり、まるで深海の様な静寂に包まれるように思えた。

 

「守る為だ」

 

 矢を握りつぶし、構える。いつ、どこから、何体が襲ってきてもいいように全身の神経を化け物達に向ける。

 そして、()()()()()に、宣戦布告する。

 

「来いよ、化け物。人間をなめるんじゃねぇぞッ!!」

 

 戦いの火蓋が切っておとされた。

 

 

 

 

 化け物達は一斉に襲ってきた。

 

(武器が欲しいな)

 

 流石に丸腰で武器を持った化け物を相手にするのは危険だ。しかも今はケンを守りながらやらなきゃいけない。そこに一体の化け物の武器が視界に入った。

 

(太刀みたいだな。あれを頂戴しよう。)

 

 割りとすぐの位置にいるがこの場を離れるわけにはいかない。近いやつから対処していく。

 まずは最初にいた4体の内の3体の化け物が攻撃してきた。勢いよく突進してくる。

 1体目の攻撃を足をかけて転ばしながら回避する。その後の2、3体目の攻撃を流す。流した攻撃はケンの真横を通ったので、ビクンッと体を震わせていた。

 そのまま回転。2体の化け物に当て身をし、転ばせたやつの顎を思いきり蹴飛ばした。

 

「ッ痛!!」

「野郎!!」

「肉ぅ・・・」

 

 顎を蹴飛ばした妖怪のみが体から力が抜けた。

 バカ力だけではなく体も頑丈。当身はほぼ意味がないようだ。

 と、そこに太刀をもった化け物が上段の構えで突っ込んできた。太刀を振り下ろしてきたタイミングに合わせて持ち手に手を添え、そのまま突っ込んできたときの勢いを利用して背負い投げる。

 

「うお!!」

 

 投げられ視界が回転したのに驚き声を漏らした。だが、驚くのはそこではない。

 彼がこの時気を付けたのは『方向』と『距離感』。太刀の化け物を投げた先には当身を試した2体の化け物が体勢を崩している。

 つまり彼が狙ったのは……

 

「がっ!」

「うっ!」

 

 投げた妖怪の踵を2体の妖怪の後頭部に叩きつけることだった。

 勢いと遠心力を最大限に利用した強烈な両踵落としは見事命中。2体の妖怪の意識を断ち切ることに成功する。

 まだ終わらない。投げられた妖怪の体は当然地面に落ちる。が、先に足がつくようにしたため地面への衝突によるダメージがほぼない。よって

 

「よっ」

 

 投げ落とした瞬間軽くジャンプし、無防備となった妖怪の腹部に肩を垂直に入れる。

 全体重をかけめりめりと沈み込んだため「ごふっ!」と口から息を強制的にすべて吐き出し意識を失った。

 太刀を手に回転して素早く起き上がる。

 

「ふぅ……」

 

 一瞬で4体の妖怪がやられた。その事実が目の前で見せつけられた為他の妖怪たちが動きを止めてしまった。

 

「どうした?もう終わりか?」

「……さっきの言葉は訂正する」

 

 鉈の妖怪が静かに、だが臆することなく言い放った。

 

「お前は強い。だから、こっちも全力で狩らせてもらう」

 

 その言葉で周りの妖怪たちもニヤニヤとした表情が真剣になる。

 

「ああ。どんどん来い」

 

 第2ラウンドの幕開けだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖怪たちの攻撃は恐ろしく統率が取れていた。

 それぞれが互いの攻撃の邪魔にならないように、加えて常に連続して別々の方向から……特に死角からの攻撃を加えていた。全方位からの途切れることのない攻撃に苦戦を強いられる……

 

「よっと」

「ぬあ!!」

 

 ことはなかった。

 妖怪を投げると同時に次に攻撃してくる妖怪に投げつけ一瞬の間を作り、余裕と威力を 持った膝蹴りやハイキックを的確に急所に命中させる。それでも妖怪たちは攻撃を止めはしないがバタバタと倒れた体によって余計に攻めることができる範囲が限定されてしまい、数が減るスピードだけが加速した。

 と、ある1体が攻撃を自ら外した。

 というのも恐ろしく強い人間は何も1人で勝手に戦っているわけではない。ケンという少年を守りながら戦っているのだ。ならばそれを人質にすればいい。

 そう思い少年へと手を伸ばした。

 

「悪いが、それは悪手だ」

 

 伸ばした手を取られ下段の鋭い蹴り入れられ一瞬で宙に浮かされる。それでは終わらない。蹴りを入れた後止まることはなくそのまま回転して顔面に蹴りを加える。

 まだ終わらない。空中で蹴りを受けた為妖怪の体は空中で前転するように縦回転をしていた。その回転に逆らうように後頭部へと最後の太刀による殴打が加えられた。

 反発効果も加わり恐ろしい威力を食らった妖怪は何をされたのかもわからないままに気を失った。

 

「ケンを狙わないことだな」

「目の前に強者がいるんだ。それから目を離すのは自殺行為と同等だ」

 

 周りに注意するように鉈の妖怪がつぶやいた。やはりこいつがこの集団のボスだと確信した。ボスがいなくなれば戦意は喪失されこの戦いが終わる。

 ここで初めて彼は自分から攻撃を仕掛けた。

 

……だが

 

 ダーン!!ダーン!!!!という地響きがなり攻撃の手を止め警戒した。

 その音はなるたびに大きく、そして近くなっていき、ついのその音の正体が森の闇の中から姿を現した。

 

「……ジン、こいつは何者だ?本当に人間か?」

「「「ボスッ!!」」」

 

 相手の本当のボスが現れた体長はおよそ3、4メートル。さらに巨体だけではなくその肉体は鍛え上げられたプロレスラーのように太かった。

 

「俺はれっきとした人間だよ……あんたがボスか」

「あぁ、子分が随分世話になったな」

「まあな。できればこのまま子分を連れて諦めてくれると助かるんだが……」

「悪いが……俺達には余裕がないんだ。諦めることは諦めてもらおう」

「そうだよなあ。じゃあ……来いよ」

 

 その瞬間、ボスが仕掛けてきた。それが分かっていたように子分の妖怪たちはすぐさま横へと避け邪魔にならないよう行動した。

 大きな拳を振り下ろして叩き潰そうとしてくる。その軌道はまっすぐ自分だけを狙っていた。

 ならやりやすい。最小限の動きでその腕を僅かにずらすと両腕をボスの頭へと回しジャンプと引き付けるが加わった膝蹴りを顎へと食らわせる。

 

「ぐ……」

 

 どんな巨体でも脳があるのであればそれを揺らせば隙が生まれる。そして彼はその隙を見逃さなかった。

 身動きが取れなくなったボスの懐に潜り込み太刀の峰で思い切りすねを打ち付ける。

 踏ん張りがきかなくなったところで足を払い胸ぐらをつかみ、揺れている脳にさらなるダメージを加えため頭から地面に叩きつけた。

 

 

side change

 

 

 

 そこは、数多の瞳が存在する不気味な空間。

 誰もこの空間に立ち入ることはできず、誰もこの空間の存在を認識することはできない。

 

「フフッ♪」

 

 そんな空間にたたずむ一人の存在。

 大きなリボンの着いた帽子を頭にのせ、長い金髪の先はいくつかリボンで束ねられ纏められている。中華風のドレスをその身に纏い、大きな扇子で口元を隠し日も入らないこの空間で日傘を差して。

 そして、その空間の『スキマ』から大量の妖怪が一人の人間に手も足もでない様子を終始観察を続けていた。

 

「なんだか面白そうな子が紛れ混んだわね。楽しくなりそう♪」

 

 不気味な空間に足を組みながら浮かんでいるその美しい女性は、その光景をただただ楽しそうに見続けていた。

 

 

 

side change

 

 

「そんな……ボスが負けた」

 

 子分の化け物達は余程ボスを信頼していたのか信じられないといった表情をしている。

 

「・・すごい」少年ケンも同じ気持ちのようだ。

「じゃあ俺達は行くぞ。文句ないよな?」

「とどめをささないのか?」

「ん?もう復活したのか。まぁ命は食わない限り奪わない主義だし。実際お前の部下は誰一人死んでないはずだぞ」

「ッ!!そうか……」

「それと相当腹を減らしているみたいだから俺が持ってた食料置いてくぞ。野菜とかもあるけど」

「いいのか?と聞くのは野暮だな。ありがたくいたたくよ。最後に名前を聞いていいか?」

「俺の名前は信。明渡(あけど) (しん)だ」

「信。感謝する」

「おぉ。よし、ケン行くぞー」

 

 食料以外の荷物を持ってケンに呼び掛ける。

 

「は、はい!!」

 

 

 

 

 

 ケンをおんぶしながら歩いていると素朴な疑問が浮かんできた。

 

「そういえばお前何であんなところにいたんだ?」

「博霊神社って言うところにお参りにいこうと思って。妹が半年くらいで産まれるので」

「ほう。……兄弟はいるだけで安心できて、幸せになれるからな。いいお兄ちゃんになれよ。」

「はいっ!」

「それともうひとつ質問いいか?」

「なんですか?」

「ここはどこなんだ?」

「えっ?」

「気がついたらこの森にいてな。こんな森近所になかったし」

「なるほど。信さん、ここは幻想郷という世界です。そして、あなたは外来人ということになります」

「外来人?幻想郷?」

「順を追って説明します。まず、あなたがいた世界をここでは外界といいます。そこにいる人、またはそこから来た人を外来人と言います。そしてここは、外界から隔離された世界"幻想郷です」

「おk 理解した。帰る方法は無いのか?」

「今向かってる博霊神社から帰れるはずです。たまに迷い混む外来人もそこから帰れるらしいですし。」

「本当か!それはありがたい」

「やっぱり、帰るんですね...」

「そうだが...問題あるか?」

「いやっ、……何でもないです」

 

 そういうケンはどこか悲しい顔をしていた。

 

「?・・・あとどれくらいd「おなかがすいたのだーッ!!」」

 

 声のする方向に目を向けると金髪の幼い少女が地面に寝そべっていた。

 

「あっ、ルーミア」

「知り合いか?」

「はい。寺子屋の生徒です」

「おなかすいたのだーーーー!!」

 

 俺は学校に持っていってるエナメルバックからチョコ○イをいくつか取り出した。

 

「食べるか?」

「貴方は食べてもいい人間なのかー?」

「駄目だよ。それよりこっちを食え」

「誰なのかー?せんせーが知らない人から何か貰っちゃいけないって言ってたぞー」

「ルーミア、この人は信さん。いい人だよ」

「いい人なのかー。なら食べるのだー」

 

 そう言ってルーミアは俺の手からチョコパ○をとり、口に放り込んだ。袋ごと。

 

「ちょっ!待て!」

「味がしないのだー」

 

 チョコパイの袋を取り外してからルーミアの口に突っ込んだ。

 

「こうやって食べるんだよ」

「ムグムグ……美味しいのだー❤」

 

 残りのチョコパイも袋から出してルーミアに渡した。

 

「ムグムグ・・・美味しかったのだー。ほんとにいい人なのかー」

「変わった子だね」

「一応、妖怪ですし」

「もしかしてさっきのやつらも妖怪なのか?」

 

 ケンは頷いて肯定した。

 

「ケンは何処に行くのかー?」

「博霊神社に行く途中なんだ」

「そーなのかー」

「ケン、そろそろいこう」

「はい」

「またなのだーケン、いい人」

「俺の名前は信だ」

「またなのかー」

「「またね(な)ルーミア」」

 

 俺達はルーミアと別れ、博霊神社に向かった。

 


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