東方家族録   作:さまりと

35 / 69
第32話【方法】

~~~~~~~~~数時間前~~~~~~~~~

 

 

「むにゃむにゃ。」

『寝てるな。』

『寝てるぞ?。』

『どうするの?』

『ん~...一旦戻るか。流石にこんなに早く起こすのは可哀想だしな。』

 

そう言ってもう一度能力を使い家に戻ろうとした時

 

「紫様っ!!お怪我はありませんか!!」

 

部屋の障子が勢いよく開け放たれはじめて会う人物が現れた。

 

「何者だっ!!」

「怪しい者じゃないよ。俺は明渡 信。ここへ来たのはゆかりんに聞きたいことがあったんだからなんだ。」

「む、君が信か。急に怒鳴って悪かった。紫様から話は聞いているよ。」

「こっちもこんな時間に悪いな。」

「むにゃむにゃ...なによ騒々しい...。」

「おはようゆかりん。」

「あら信じゃない...。おやすみなさい。」

「いや起きたんなら話を聞いてくれよ。」

「ふわあ、分かったわよ...今何時?」

「4時。」

「...。」

 

紫がもう一度布団に戻ろうと回れ右をするがそれはすでに先程の女性によって片付けられてしまっている。

 

「よいっしょっと。では紫様、ここではなんですし移動しましょうか。」

「...そうしましょうか。」

 

 

 

 

 

場所を変えて居間のようなところにいる。TVがあったのは流石に少し驚いたが。

「どうぞ。」

「ありがとう。ズズッ。」

「挨拶がまだだったな。私は八雲 藍。紫様に遣えている。」

「よろしくな。」

「それで?話ってなにかしら。」

「ああ、昨日異変があったのは知ってるよな。」

「ええ、大活躍だったわね。」

「だろ?...でその異変の首謀者が色々事情があってな。」

「本能に飲み込まれたんでしょう?それがどうしたのよ。」

「その本能が恐らく強くなる。だから次の満月でも今回みたいなのが起きると思うんだ。」

 

それから魔鬼の事や妖怪のボスのことを話した。

 

「なるほどね。要するにその妖怪が暴れなくていい方法は無いかと。」

「そういうことだ。なにかいい方法は無いか?」

「あるわよ。」

「本当かっ!?」

「ええ、ただしその妖怪が了承してくれればの話。でもあなたが向こうの体に入って本能を黙らせた方が手っ取り早くないかしら?」

「魔鬼の話だとどんな状況であれ暴れているときはあいつの心に負荷をかけるらしいんだ。俺と本能がやったら恐らくあいつの心が持たない。」

「ふむ、分かったわ。その方法を教えましょう。」

「助かるよ。」

「その方法はその妖怪をあなたの式神にする事。」

「式神?」

「ええ。因みにここにいる藍がわたしの式神。」

「へえ~。その式神ってのになると何がいいんだ?」

「まず式になった者の力が増幅するわね。」

「他には?」

「一瞬で主の元に現れることもできるわ。それと意志も疎通できるわね。」

 

 

 

~~~~~~~~そして現在~~~~~~~~

 

 

 

「という訳だ。」

「ちょっと待つんだぜ信!人間が妖怪を式神にするなんて聞いたことがないぜ!」

 

説明を聞いていた魔理沙が抑えきれないっといった感じで問いかける。アリスも同じような意見のようだ。

 

「前例がないだけさ。それに妖怪よりも素質が上の人間って言うのもそうそういないだろうしな。」

「でもリスクは無いの?今聞いた話だとなんの見返りもなしに力を得られるみたいだけど。」

「リスクはないがデメリットがある。これが一番厄介だ。」

 

この言葉にその場にいた全員が気を引き締める。

 

「式神となったものは主には一生、何があっても逆らえない。例え『死ね』という命令も従わなければならないんだ。」

「「ッ!!」」

 

妖怪たちは動揺を隠せない。自分達の大切な人を救う唯一の方法に、その様な条件があったのだから無理はない。

 

「決めるのはお前達だ。もちろん断ったとしてもお前の本能が暴走しないように全力で協力するつもりだ。」

 

だが、その動揺はすぐに落ち着いた。

 

「ボス...。」

「多分俺はお前達と同じことを考えてるよ。」

 

妖怪のボスは信と向かい合い、片膝をついた。

 

「その提案、ありがたく承諾させていただきます。我が身をあなたに委ねましょう。」

 

覚悟の言葉だった。一切の揺らぎを感じさせない覚悟の言葉だった。

 

「いいのか?一生俺に逆らえないんだぞ?」

「ただそれだけのことしょう?」

「「「・・・・」」」

 

一生逆らえないことを、『ただそれだけのこと』と答えた。相当のことを言っているのだがその場にいるものは皆不思議と共感してしまう。

 

「お前たちはいいのか?ボスを止めなくても。今ならまだ間に合うぞ?」

 

信は子分の妖怪たちに問いかける。

 

「我々も同じ考えだ。あんたにならボスを任せられる。」

 

その言葉は1人の妖怪しか話さなかったが、他の全ての妖怪たちも全く同じことを話しているかのような気迫だった。

 

「...よしっ、分かった。」

 

その覚悟を受け取り、信は酒瓶と盃をもってその場に胡座をかく。

 

「お前も楽にしろ。」

 

そう言われて素直に従う。

 

「式神にする方法は3つあってな。媒体になる者に札を貼る方法と、体の中の力を少し交換する方法。そして盃を交わす方法がある。」

 

説明しながら2つの盃に酒を入れていく。

 

「一生を左右する儀式だ。盛大にいこう。堅苦しいのもこれから無しだ。」

 

その1つを妖怪のボスに渡す。

 

「主従の関係と言ってもそれはあくまで形だ。お前が困ったら迷わず俺を呼べ。全力で助ける。だからお前も俺が困ったときはを助けてくれ。」

「もちろんだ。」

「そうだ。お前の名前は?」

「ギン。昔、ある人間にそうつけてもらった。」

「そうか。ギン、これからよろしく頼むぞ?」

「こっちこそ。これから世話になる、信。」

 

そして2人はその大きな盃に入った酒を一気に飲み干した。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。