一同「「「ごちそうさまでした。」」」
信「いやー食った食った。」
真「もう入んない。」
愛「美味しかったー。」
恭助「おろしポン酢。」
静「みたらし。」
信「まだ言ってるのか。」
食べ始めてから約1時間後、外はもう暗くなっている。恐ろしいことに14人で全体の約3/10の餅を平らげてしまった。
信「幻想郷のみんなの分はどうなってるかな?」
お裾分けする分の餅はクーラーを効かせ、涼しく乾いた部屋においてある。6時間日に当てていたからそろそろいいはずだ。
信「おっ、いい感じだな。早めに持っていくか。」
頃合いがよいためすぐに持っていくことにする。
信「餅いい感じだからみんなに配ってくるな。」
他「「「行ってらっしゃーい。」」」
簡単に容器に分けていれ、袋につめる。さすがに全部を一気に持っていくことはできないので何回かに分ける。
(まずは霊夢のところに行くか。)
移動した先には縁側に座ってお茶を飲んでいる霊夢がいた。
「あら、信。こんな時間に来るなんて珍しいわね。」
「ようっ、霊夢。お裾分けに来たぞ。」
霊夢に餅を差し出す。
「餅?なんでこんな時期に?」
「弟が今日が十五夜って勘違いしててな。しかも大量に作っちゃったからみんなにも食べてもらおうと思ってな。」
「そう。ありがたく貰っておくわ。」
「じゃあ俺はこれで。他のみんなにも配んないといけないし。」
「待って信。お茶でも飲んでいかない?」
「でも他のやつにも配らないといけないし...。」
「今日はいい月が出てるのよ。少し位ゆっくりしてもいいんじゃない?」
「う~ん...。せっかくだし貰おうかな。」
「ちょっと待ってて。」
そういった霊夢は台所に行って一つ湯呑みをもって戻ってきた。
「どうぞ。」
「ありがとう。」
受け取ったお茶を一口すする。
「ズズッ、うまい。」
「よかった。」
・・・・・・・・・・・・・
「なあ、霊夢。」
「なに?」
「満月の日って物騒だったりするのか?」
「いきなりどうしたのよ。」
「いや、興味本意でな。満月の夜って妖怪が強くなるイメージがあるからさ。」
「強くはなるわよ、個体差はあるけど。でも私が退治できないほど強くなるやつなんていないからね。」
「流石ですな。」
「フフッ、もっと誉めなさい。」
なんだか久々に霊夢とゆっくり話した気がする。
「静かな夜だな...。」
ドゴオオオオオオンッッ!!!!
突如とてつもなく大きな爆音が響いた。
「静かじゃないわね。」
「今のは一体なんの音だ?」
「分からないわ。でもいってみた方が良さそうね。」
「あぁ、そうだな。」
湯呑みを置き、2人が飛び立とうとしたとき
「...さんっ!信さんっ!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「この声は...ケンか。」
そう確信して鳥井の方へいくとケンはもう1人いた別の人物に背負われていた。
「お前はっ...」
「よかった...。いてくれた。」
そこにいたのは、はじめて幻想郷に来たときにケンに止めを刺そうとしていた妖怪だった。
「何をしに来た?」
ケンのことを降ろし、その妖怪はその場に座り込み、拳と額を地面につけた。
「明渡 信!無理は承知だ!だが頼みを聞いてほしい!この通り...。」
「...わかった、話してみろ。」
「助かります。」
その妖怪は立ち上がり話をし始めた。
「俺たちのボスが...今苦しんでるんだ。助けてほしい。」
「状況を説明しろ。」
「満月の夜になると俺たち妖怪は強くなる。」
「あぁ、それは知ってる。」
「ボスも満月の夜は強くなるんだ。でもそれとは別にあることが起きる。」
「それってなんだ?」
「満月の夜はボスの本能が活性化するんだ。ボスは今それに飲まれ掛けて苦しんでる」
「ん?妖怪なのにお前達は平気なのか?」
「ボスが特例なんだ。昔恐ろしくて狂暴な妖怪だったボスが他人と繋がりたくて今みたいになったんだ。でも満月の夜はそれが活性化して暴れだす。他の満月の日だったらボスも抑えられてたんだけど今日は月が最も低く近く位置してる。だから今日は抑えられなかったんだ」
「今まではどうしてたんだ?」
「今までは今日みたいな時だけ冬眠みたいな状態に入ってたんだ。でもそれには相当のエネルギーが必用になる。でも最近は全然獲物が取れなくて...。」
(そういえば前も食料不足とか言ってたな。)
「でもなんでケンが一緒にいるんだ?」
「あんたが最近人里にいるって聞いてたんだ。だからそっちに行ってみたら。」
「いなかったわけか。」
それに続けてケンが話す。
「その時たまたま里の入り口を通りかかった僕に声をかけてきたんです。『頼むっ!明渡 信と話をさせてほしい!』って。」
「でもあんたは人里に居なかった。そしたらこいつがここにならいるかもしれないって教えてくれたんだ。」
「でもなんで一緒に来たんだ?」
「ボスにここに近づくなって言われてて、博麗神社の正確な場所がわからなかったんだ。」
「なるほど。最後の質問だ。どうして俺なんだ?霊夢がいるだろ?」
「...今のボスをみたら問答無用で退治されると思ったんだ。」
「多分するわね。」
「なるほど。事情はわかった。協力しよう。」
「いいのか?」
「よくなきゃこんなにしっかり話は聞かないよ。」
「うぅ...。ありがとう。本当にありがとう。」
「感謝はお前たちのボスを助けてからにしてくれ。」
「うぐっ...ああ。」
「信、私もいくわ。」
「そうか。でも力加減間違って退治するなよ?」
「私をだれだとおもってるの?」
「愚問だったな。ケン、お前はここに残ってろ。今から人里にいくと巻き込まれる可能性がある。」
「わかりました。」
「よしっ、いくか。場所は?」
「魔法の森って呼ばれてるところだ。」
「魔法の森!?まずいな。あそこには魔理沙やアリスがいる。急ごう。」
3人は空を飛び、目的の場所まで急いだ。
「いたっ!」
森のある部分に大きな穴が見える。木が何十本も薙ぎ倒されているようだ。
「アリスっ!、魔理沙っ!」
その近くを飛んでいる2人を見つけた。
「信っ!キャッ!!」
「うわっ!!」
こちらに気づいた瞬間なにかに吹き飛ばされたように信の所に吹っ飛んできた。
「おっと。大丈夫か?」
「あぁ、すまないんだぜ。」
「助かったわ。」
「いったいあいつはなんなんだぜ?あんなの見たことないぜ。」
魔理沙が顔を向けた方向に目を向ける。
「おいおいマジかよ。本当にあれがお前たちのボスか?」
「ギャウウウウウウウウウっ!!」
そこには以前見たボスとは全くかけはなれていた。
身長は前回より2mくらいでかくなっており、頭からは角が生えている。そして何より脇腹の辺りから左右1本ずつ、肩甲骨の辺りから左右1本ずつ剛腕が生えている。その新たに生えた4本の腕の先には、手の代わりに鎌のような強靭な鉤爪がついていた。
その姿はまさに、化け物そのものだった。
「ギャウウウウウウウウウ!!!」
異形な化け物の叫びは、静かな夜に響き渡った。