東方家族録   作:さまりと

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第24話【誉めて伸ばす】

「おーい慧音、いるか?」

「信か。どうしたんだ?」

「もう少しで寺子屋に通えなくなるからな。それについて説明しに来たんだ。」

 

慧音に夏休みのことについて説明した。

 

「ふむ。...というか、信はまだ学生だったのか。今更だが歳はいくつなんだ?」

「17だよ。ちなみに誕生日は4月2日だ。」

「17か。とてもそうは思えないな。」

「そんなに老けて見えるか?」

「いや、君の雰囲気がそう感じるだけだ。決して老けて見えるわけではない。」

「慧音、少し話が...信?」

 

妹紅が扉を開けて入ってきた。どうやら信がいたことには気がつかなかったようである。

 

「よう、もこたん。」

「やっぱりなんでもない。」

 

そのままUターンして出ていこうとした。

 

「えっ。」

「(ちょっと待て妹紅。信のことについて話に来たんだろう?)」

「(どうしてわかったんだ!っていうかそれがわかってるんなら止めないでくれよ。)」

「(そんなことより、彼なら話しても大丈夫だと思うぞ。)」

「(何を根拠に...。)」

「(なんとなくだよ。お前もそう思ってるから相談しに来たんだろう?)」

「(...うん。でも、)」

「(大丈夫だよ。早くいってこい!)」

 

慧音は妹紅の背中を押し出して信の前に向かわせた。

 

「ちょっ、慧音!まだ心の準備が。」

「俺になにか話があるのか?」

「っ!!」

 

信の目の前に立ち、硬直する。何とも言えない空気がその場に流れる。

 

「...そういえばもこたん。もこたんて何歳なんだ?」

「なっ!?なんでそんなこと聞くんだ?」

「前に自分が年寄りみたいな言い方してたから気になってな。」

「...信用してもいいか?」

「?あぁ。」

「わ、私は...不老不死なんだ。歳は...1300...くらい...。今まで隠しててすまなかった。」

「長生きだな。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「いやもっと他にあるだろっ!!!」

 

一瞬の沈黙を妹紅が破った。

 

「他にって?」

「不老不死のことについてとか、年を取りすぎだとか、もっとこう、他に。」

「不老不死でも1300歳くらいでももこたんはもこたんだろ。それくらいじゃもう驚けないしな。」

 

キョトン。もしくはあっけらかんとした表情で妹紅は固まってしまった。それをみて慧音は笑いを堪えている

 

「すぅううううううっ、はぁあああああああ。」

 

大きく深呼吸をし、真っ白い頭をやり場の無いモヤモヤを込めて力強く掻いた

 

「なんだ、ビクビクしてた私がバカみたいじゃないか。」

「そこもまた可愛い。」

「ふんっ!」

「痛いっ!」

「やっぱり大丈夫だっただろ?」

「そのせいで恥ずかしい思いをしたけどな。」

「それじゃあ、改めまして...」

 

信は妹紅に手を出しながら言った。

 

「明渡家長男、明渡 信17歳。信と呼んで欲しい。」

「藤原 妹紅。好きに呼んでもらって構わない。」

 

何か落ち着いたような、吹っ切れたような、安心したような、嬉しいような。そんな表情をしながら妹紅は握手に応じた

 

「よろしくな、もこたん。」

「あぁ、よろしく。...というか17歳なんだな。」

「慧音にも言われたよ。」

「やっぱり未成年とは思えないよな。」

「見た目はそうでもないんだが、こう、雰囲気が。」

「こう、落ち着いてるっていうのか?凛としているというか、堂々としているというか。」

「とりあえず、たった17年でそんな風になるなんて思えないな。」

「誉め言葉として受け取っておこう。ってかそろそろいくよ。まだやりたいことが残ってるんだ。」

「長居させて悪かったな。」

「問題ない。それじゃあな。

 

そういいながら信はその場から消えた。

 

 

「...なぁ、妹紅。」

「なんだ?慧音。」

「告白はいつするんだ?」

「そっちこそ。」

「なんのことか。」

「信と話してるときだけ完全に女の顔になってるぞ。」

「ほ、本当か?」

「あぁ。まぁ、信は気づいてないみたいだが...。」

「で、いつ告白するんだ?」

「気が向いたらかな。」

 

信が去った空間では、仲のいい2人が初めての恋ばなをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「よう、美鈴。」

「こんにちは信さん。今回は一体どんな用事ですか?」

「ずいぶん遅くなったけど、お前と試合がやりたいと思ってな。」

「ルールは?」

「弾幕の使用は禁止。霊力や妖力のなんかはOK。能力はどうする?」

「無しでお願いします。」

「おk。そんで勝敗は気絶または降参した時点で決まりで。」

「わかりました。」

「面白そうなことしてるわね、美鈴。」

「よう、レミリア。」

「お嬢様っ!これは..えっと...その...。」

「続けなさい、私は観戦させてもらから。無様な試合はしないでちょうだいね?」

「はいっ!ありがとうございます!」

「それじゃあ始めようか。レミリア、合図お願いできるか?」

「えぇ。」

「それじゃあ、やろうか。」

「よろしくお願いします。」

 

両者が距離をとり、構える。

 

「始めっ!」

 

その試合は、レミリアの合図と共に静かに始まった。

 

両者は動かない。互いが相当の手練れであるとわかっている以上、迂闊に踏み込むことは敗北を意味している。

 

「お嬢様、日傘お持ちいたします。」

「あら、咲夜。ずいぶん遅かったわね。」

「申し訳ありません。夕飯のデザートの支度に手間取ってしまいまして。...お嬢様はどっちが勝つと思いますか?」

「貴方もおおよそ分かってるでしょう?」

 

その時、美鈴が仕掛けた。

一気に距離をつめ中段の蹴りを放った。だがそれを信は軽々と受け流し、そのまま回し蹴りを打ち込む。これを屈んで避け1本のみとなった体を支える足を払いにかかる。それを予測してたかのように信は上へ飛ぶ。いや、正確には美鈴の方へと飛んだ。

 

「ッ!!」

 

そのまま踏み込んだ足で美鈴の顔面に蹴りこむ。

間一髪のところで美鈴は体を反らせ、これを回避。だがまだこれで終わりではない。

体を反らせ回避したということは、バランスを崩し背後をとられたということ。

 

(まずいっ!)

 

急いで体勢を立て直そうとするがもう遅い。上体を起こした時には信の腕が美鈴の首に回っていた。

 

"裸締"

 

動脈を圧迫され脳に酸素が通わなくなる。振りほどこうにも力が入らない。その上に相手は信だ。そう簡単に抜けさせてくれるわけがない。

 

(意識がっ...。)

「ここまでだな。」

 

そういって信は裸締を解いた。

 

「げほっ げほっ。はぁ、はぁ。」

 

勝負がついた後の2人の状態は天と地の差だった。信は汗一つかいていないのに対し、美鈴は地に手をつけ必死に酸素を取り込もうとしている。

 

「...まさかここまでとわね。」

「大丈夫か?美鈴。」

「げほっ、平気...です。」

 

明らかに美鈴に余裕がない。

 

「私も近接格闘なら負けない自信があったんですけどね。」

「いやあ強かったよ。あんなに早い攻防したのはいつぶりだろ。」

「今の位のものを以前もやっていたんですか?」

「あぁ、父さんとかと手合わせしたときはいつもこれくらいだな。久々に楽しかったよ。またその内やろう。」

「...質問してもいいですか?」

「ん?なんだ?」

「今のは何割くらいの力でやりましたか?」

「ん~。大体4、5割位だな。」

「あれで...ですか?」

「うん、本気でやると技がもっと複雑になったりとか、あともうちょっと早くできるな。」

「...自信無くしました。」

「お前も十分強かったぞ?」

「私は全力でやったんですよ?それでも5割程度しか出していなかったなんて...。」

「お前はこれからまだまだ伸びるだろうし気にするなよ。」

「...もう一つ質問いいですか?」

「いいよ。」

「最後はなんで絞め技にしたんですか?あの状況だともっと有効な手があったと思うんですが。」

「単純さ。美人に傷を残したら男が廃るだろ?」

「えっ!?そんな理由で...でも蹴りとかは...」

「あれくらいならきっちり避けれると信用できたからやったんだ。」

「...敵わないですね。」

 

微笑みながら手を差し出した。

 

「またお願いします。」

「こっちこそ。」

 

2人が握手を交わしたのを見計らってレミリアが口を開いた。

 

「信。あなたもここで働かない?」

「嬉しい誘いだが、そいつはできないな。俺はまだ学生だからどこかにずっと勤めることはできないんだ。」

「学生?あなた歳は?」

「...17歳です。」

「「「17っ!?」」」

「やっぱりそういう反応するか。」

 

最早お馴染みである。

 

「そろそろ俺帰るよ。夕飯の支度しなきゃいけないし。それと働くことはできないけど困ったときはいつでも言ってくれよ?その時には力になるから。」

「えぇ。」

「それでは信さん、また。」

「おう、またな。」

 

「申し訳ありませんお嬢様。失態をお見せしてしまって。」

「私は楽しめたわよ。それに彼が相当強いから仕方ないでしょう。...で、咲夜。」

「なんでしょうか?」

「早くしないと彼、どんどん高倍率になるわよ。」

「どういうことでしょうか。」

「どうやら美鈴もあなたと同じみたいよ?」

「えっ、べ、別にそういうわけでは...」

「私に隠し通せると思ってる?」

「...負けませんよ?」

「私もそう簡単に勝たせるつもりはないわ。」

(フフッ♪本当に退屈しないわね。)

 

また1人ライバルが増えた。

 




次回はオリジナルの異変をいれていきます。
楽しんでいただけると光栄です。

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