東方家族録   作:さまりと

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第23話【さらに】

「ふわぁ。よく寝たな。」

 

チルノの特訓を始めてから6日、簡単にはいかないと思っていたが昨日チルノは冷気を抑えることに成功した。それもチルノの努力の賜物なのであろう。

 

「今日は寺子屋が休みだからな~。」

 

午前中はなにもすることがなく、今日は何をするかを考えた。

 

「午前は空たちと一緒に稽古するか。」

 

三つ子はまだ朝の稽古には参加していないため、平日は夕方、休日は午前中にしていたのだが、最近忙しくて一緒にできなかった。

そう決めていつも通りの朝を過ごす。

 

 

 

信「風人と華を向こうに送ってくるよ。」

真「戻ってくるの?」

信「午前は空たちの稽古に付き合うつもりだよ。」

陸「信にいとやるのは久し振りだな。」

海「私たちの成長を見てもらおうじゃないか。」

空「今日こそ真剣を...。」

信「いってきまーす」

風人&華「「きまーすっ!」」

 

 

信「ただいま。」

空&海&陸「「「おかえり。」」」

信「もう準備し終わってるのか。感心感心。」

海「信にい、今日は真剣持たせてくれる?」

信「その竹刀が操れるようになってからって言ったろ?」

 

明渡家の道場には竹刀が2種類置かれている。普通の竹刀と日本刀と同じくらいの重さのもの。

 

空「ふっふっふ。もう操れていたりする。」

 

そういいながら空と海は1.5kgの竹刀を自在に振り回している。

 

信「おぉ、ずいぶん良くなったな。」

空「でしょ?だから真剣を...」

信「それじゃあ、第2段階だ。」

海&空「「えっ!?」」

信「その竹刀で陸とちょっとやってみろ。」

陸「...え?」

海「約束が違うよ。」

空「この竹刀はもう操れるよ?」

信「やってみれば解るさ。陸、お前はいつも通りやればいい。」

陸「え、あ、うん。」

海「陸だったら余裕だよ。」

空「楽勝。」

 

そうして柔道対剣道の異種混合戦が始まった。

 

 

 

 

海&空「「負けた...。」」

 

10秒ずつやって2人は陸に綺麗に投げられた。

 

信「陸、やってみてどうだった?」

陸「すごい単純だった。」

空&海「「ぐふっ!」」

信「はっはっは。」

 

陸の直球ストレートな言葉にショックを受け2人はその場に寝そべった。

 

信「なんで陸に簡単に負けたかわかるか?」

海「う~ん...。」

空「...予備動作?」

信「そう。戦いのなかでの動きってのは全部全く同じ動きから始まるのが理想だ。でもお前たちの動きは予備動作から何をやってくるのかはっきりわかるんだよ。簡単な話、まだその竹刀に振り回されてるんだよ。それに陸の方が実力が上ってのもあるしな。」

空「悔しい。」

海「でもどうすれば良くなるの?」

信「今までは型や素振りばっかりやって来たからな。これからは2人で試合だ。動きの違いとかをお互い指摘しあって理想に近づけていく。それしかないな。」

海「真剣...。」

信「真剣は陸に勝てるまで無しだからな。日々精進せよ!」

海&空「「は~い。」」

信「それと陸、お前もこれからはもっと技の種類を増やすぞ。」

陸「はいっ!」

 

 

 

 

信「よし、今日はここまで。おつかれさま。」

空&海&陸「「「ありがとうございました。」」」

 

3人との手合わせをしつつ技の練習をしていたらもう昼食の準備をしなければならない時間になっていた。

 

信「後始末頼むぞ。俺は昼飯の準備してくるから。」

 

始末を任せて台所へと向かう。ここ最近昼食の準備は任せっきりだったため今日は自分も作ろうと決めていた。

 

(献立は何にしようか...。)

 

 

 

 

 

 

一同「「「ごちそうさまでした。」」」

真「信にい午後はなんか予定あるの?」

信「今日はこーりんのところにいく約束してるんだ。」

真「ってことは商品の鑑定?」

信「あぁ。外来人の鑑定ほど頼りになるものは無いそうだ。」

 

霖之助の能力で名前と用途がわかっても使い方がわからない道具が香霖堂にはたくさんまだあるそうなのだが、色々あって全然行けてなかった。だから霖之助に今日来るようお願いされたのだ。

 

信「だから洗い物終わったらそのままいってくるよ。」

真「そういえば信にい、帰ってきてからも幻想郷とかに行ってばっかりだけど宿題はいいの?」

信「そんなものは夏休み前に終わらせたわ!」

真「なんと!」

 

 

 

 

 

信「じゃあいってくるよ。」

 

食器を洗い終えて霖之助のもとへと移動する。

 

「やっと来てくれたか。」

「ごめんなこーりん。最近なにかと忙しくて。」

「仕方ないさ。では、早速鑑定してくれないか。ずっとうずうずしてたんだ。」

「了解。まず何からにする?」

「まずはこれだ。」

 

そういって霖之助が持ってきたのは現代を生きる者なら誰しも見たことがある物だった。

 

「自転車かぁ。」

「乗り物だとわかったんだけどね、一体どう乗るのかわからないんだよ。一回乗ってみたら何事もなく横に倒れたし。」

「これは自転車っていってな、こう乗るんだ。」

 

そういって普通に乗った。

 

「一体どうやってるんだい?そんな不安定そうなものでどうやったら倒れないんだ。」

「慣れたら普通に乗れるよ。外界の人は大体できる。」

「なるほど。じゃあ次はこれだ。」

「これはな.....」

 

そういうやりとりがしばらく続いた。

 

 

 

「いやー助かったよ。おかげですっきりした。お礼に一つ、この中から君の好きなものを譲ろう。非売品を除いてだが。」

「本当か!?それじゃあ遠慮なく...。」

たくさんある商品の中からなにか良いものはないかと探し始める。

「これはどうだ?」

「それはダメだ。」

 

「これはどうだ?」

「それはダメだ。」

 

「これはどうだ?」

「それはダメだ。」

「...本当にくれるのか?」

「私が気に入っているものは譲れないんだ。すまないが他のものを探して欲しい。」

「むぅ~...ん?」

 

色々ダメ出しされて少しいじけているとあるものが目にはいった。

 

「こーりん、これはどうだ?」

 

手に取ったのはシンプルなネックレスのようなものだ。女だけでなく男がつけていてもおかしくないデザインだ。

 

「それならいいよ。装飾品は私が持っていても意味がないからね。」

「じゃあこれにするよ。」

 

そういいながら首につける。いい感じだ。

 

「似合うじゃないか。」

「それはどうも。また何かあったら遠慮しないで頼ってくれよ。」

「そうさせてもらうよ。」

「それじゃ、また。」

 

そういって霖之助と別れ、寺子屋に向かう。慧音に寺子屋のことについて伝えなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(珍しい力を持った人間だな。)

 

 


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