東方家族録   作:さまりと

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やっと兄弟全員登場です。あんまりしゃべってない子もいますけど。
プロフィールは全員あとがきにのせます。気が向いたら読んでください。
それでは、ゆっくりどうぞ。


第17話【明渡家14人兄弟とペット】

「「「ただいまー」」」

 

 本日二度目となる帰宅。風人と華はいつもの様な様子に戻り、今ではすっかり元気である。

 

「信兄!」

 

 先程信の無事を全員に知らせた次男が再び出迎える。一週間姿を消し、やっと帰ってきたかと思えば目の前からふっと消え去った兄を前に本物かどうか定める様子も一瞬見られた。 

 兄に落ち着けと言われるとその言葉の通り深呼吸をして気持ちを静める。こんな状況でも随分素直なものだと共は感じた。

 

「みんなは居間か?」

「うん。大変だったんだよこの一週間」

「警察には連絡したか?」

「うん。明日また来るって」

 

 仕方のないことではあるが、やはり警察になんと説明したらよいものかと考えてしまう。それは後でいいかということで、自身の弟妹が待っている居間へと向かった。

 

「ただいま」

「「「「「「「「「「おかえりなさい」」」」」」」」」」

 

 いつものように重なって返されるこの言葉。やっともう一度聞くことが出来たのだと実感し、一瞬涙腺が緩んだ。が、皆の前で涙を流すわけにもいかないのでグッと堪え、いつもの場所に座り込む。

 

「すまんなみんな。心配かけた」

『なあ信』

『なんだ?』

『こいつらを紹介してくれ。お前の兄弟の名前はしっかり把握しておきたい』

『ああ、なら順番に紹介していくな』

 

「本当に、俺たちに何も知らせないで何処に行ってたのさ?」

「ホントだよ!この一週間どれだけ大変だったか……」

『まず、さっき出迎えてくれたこいつが次男の(まこと)、少し日に焼けてるのが長女の(ちか)。俺を抜いたら一番上の2人だ。真が兄で愛が妹の一卵性の双子な。それで二人とも許容オーバーの事が起こるとえらいパニックに陥る』

「お二人を落ち着けるのがどれだけ大変だったと思いますか?」

「大変だったのは俺達の方だっての……」

『俺の次に髪が長いのが次女の(しずか)、目付き悪いのが三男の恭助(きょうすけ)。上二人がダメな時はこの二人が頼りになるな。ただ……』

『ただ?』

「まあどっちかっていうと俺の方が大変だったがな」

「いえ、私の方が大変でした」

『ほら始まった』

 

 少し呆れた、というより困った様子で共に伝えた。何が始まっているのかと一瞬疑問に思うがそれはすぐさま理解できてしまう。

 

「「やるの(か)?」」

『なんかよく分からんところで喧嘩になるんだよ。一週間ぶりだからこの光景落ち着くな』

『止めてやれよ。愛……と、真。かなり困ってるぞ』

 

 声をそろえて敵意をむき出しにする。荒っぽい喋り方だった恭助はともかく、今まで丁寧な話し方をしていた静までこんな様子を見せた事に驚きは隠せない。上二人の名前を特徴と共に頭に記録しながら助け舟を出した。

 

「ほら二人とも座れ。俺はお前たちの喧嘩を見るために帰ってきたわけじゃ……ごめんやっぱりもう少し見て対気がする」

「「(信)兄(ちゃん)!?」」

「まあ兄貴が言う通り、」

「今やる事ではないですね」 

 

 下の弟や妹も見ている前なので、という事なのか恭助はドカッとその場に胡坐をかき、静は音を立てずに正座する。この仕草だけで二人が正反対の性格なのだと共は思った。

 そして何事もなく続けて紹介され始めた為、もう一度集中し直した。

 

「兄上、無事で何より」

「静姉、恭助兄も本調子に戻った」

「「我ら歓喜」」

「二人もさっきやっとこの調子に戻ったんだぜ。本当によかったっよっ……」

「陸余計なことは言わない」

「姉として、罰与える」

『あの武士みたいな話し方で左側の目元にほくろがあるのが三女の(そら)、右側にあるのが四女の(うみ)。で、その二人に今首を絞められてるのが四男の(りく)だ。陸は二人の世話役だから心配しなくても大丈夫だぞ。それと、この三人も一卵性なんだ』

 

 首絞めだけではなくヘッドロックまで食らっているが、まあ信がそういうならと共は納得した。一瞬顔が青くなり始めた様にも見えたが、信がそう言うのだ。納得。

 

「それで信兄どこに行ってたのさ!」

「あらいざらい吐いてよ!」

「罪をこくはくするみたいに!」

「三人とも落ち着いてね~。信兄はちゃんとここにいるから~」

『で、同じ顔の三人が五男の強太(きょうた)、六男の高太(こうた)、七男の深太(しんた)、その横でゆっくり喋ってるのが三人と一緒に生まれた五女の広美(ひろみ)だ。生まれた順に強太→広美→高太→深太な。この四人も一卵性だ』

『えっと……三人の見分けがつかないんだが』

「強太、高太、深太。俺は何日くらいこの家を空けてたっけ?」

「「「えーと、たしか……」」」

『こうやって考えてるときに顎をさわるのが強太、こめかみを掻くのが高太、腕を組むのが深太だ』

『……外見的な違いは?』

『無い』

「一週間と1日だ!」

「あ゛ー負けたっ!」

「ぐぬぬ……わかったのに……」

 

 今回の勝者は強太で、他の二人は負けたことを悔しがっていた。悔しがっているが、誰が誰だかわからないので、現時点で見分けることを断念する。

 

「信兄ちゃん次はいつ行くの!?」

「またみんなと遊びたい!!」

『最後に六女の華に八男の風人。二人は二卵性だな。これが俺の弟妹だが、覚えれたか?』

『一卵性ばかりじゃないか……そんな頻繁に生まれるものだったか?』

 

 もっともな意見だ。1卵生の双子が生まれる確率は一般に0.3%~0.4%と言われている。それが一家に3組。更には双子だけではなく三つ子や四つ子までもがいるのだ。こんな条件が揃った兄弟ができる確率は天文学的な数値のはずだろう。

 

「信兄、そろそろ説明してくれない?今までどこで何してたのか」

 

 待ちきれないといったように真が切り出す。落ち着きを取り戻したことによって今までため込んでいた様々な感情が混ざり合い、それを周りに悟られない為に表に出さずに切り出した。狂気の存在である共は正直頼りない印象しか持てなかったが、その一瞬の気遣いからガラリと評価が変わる。彼は優秀な人物であると。

 

「最初から話すぞ?真と愛と別れて買い物を済ませた後、見慣れない道を見つけたもんでそこを通ることにした。そしたら見たことが無い森の中にいたんだ」

「……なんか急にファンタジーになったね」

「続けるぞ?とりあえず歩いてたら妖怪に襲われてる子供がいてな、助けたんだ」

「兄貴、それはまさか女か?」

「いや、男だよ。ケンっていってな、ちょうど陸たちと同じくらいだな」

 

 ケンが男だということを聞くとなぜか恭助は安心したように息をついた。チラリと目線を泳がせたようにも見えたが一瞬のことで特に変わったことでは無いのだろうと結論付け話をつづけた

 

「そのケンに色々聞いてな。俺が迷い混んだのは『幻想郷』って言うところで、妖怪もいれば吸血鬼もいるそれこそファンタジーな世界だ」

「いいなー。俺も行ってみたかった」

「でもな強太。妖怪は人を食べるんだぞ?」

「強いの?」

「力はな。それに滅茶苦茶でかい奴もいたぞ?俺の倍くらい」

「やっぱり行かなくていいや」

 

 異世界でファンタジーと聞けば一度は行く、もしくは見てみたいというのが人間の性質だ。しかしその危険性を知った強太は好奇心ではなく自制心を内で勝たせ、自分の命を優先させる。

 

「ただ、そんなやつらだけじゃないぞ。ケンに教えてもらって博麗神社ってところで寝泊まりしてたんだが」

真&愛&静&恭助&空&広美「「「「「「それ本当(ですか)!!?」」」」」」

 

 突如幻想郷に行ったのあたりから黙っていた六人が身を乗り出して信に問い詰める。目を見開き、普段冷静な静やゆっくりしている広美さえも大きな声を出したので信もかなり驚いている。

 

「うわっ!どうしたんだいきなり」

「幻想郷に博麗神社って本当に行ったの!?」

「あ、ああ」

「もしかしてその神社に誰かいなかった?例えば脇が空いた巫女服の人とか!?」

 

 真に続き、愛も自身の体を用いながら説明を要求する。本当に何事なのかと動揺するも伝えることは自分の義務なのだからと落ち着く前に続けた。

 

「いたよ。博麗霊夢っていう巫女が」

真&愛&恭助&空&広美「「「「「キタアアアアアアア!!」」」」」

「本当にどうしたんだお前ら」

 

 五人は完全に興奮しており、その5人とは別に静も嬉しそうな表情で静かにガッツポーズをとっていた。

 

「前に真が東方プロジェクトっていうのを紹介したよね!」

「紹介されたけど、それがどうした?」

「博麗霊夢はそのゲームの主人公なんだよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(゜ロ゜)?」

「こんな顔したお兄さん初めて見ました」

「待て待て、霊夢がゲームの主人公?じゃあ魔理沙は?アリスは?咲夜は?」

「全員登場人物だよ!」

「マジか……」

 

 まさかそんなことが、いや自身が実際に体験してきたことなのだからと混乱し実はあれは全て夢だったのではないかと一瞬自身の能力が存在しているかすら一度確認した。ちゃんとあり、共もちゃんといる。そこから少しづつ思い出すと、一週間前真は美鈴の、愛はアリスの名前を出していた。なぜもっと早く気付かない俺のバカ野郎と内心自分を罵倒すらし始める。

 

「で、他に誰と向こうで会ったんだぁ?」

「あと俺が向こうであったのは、もこたん、慧音、こーりん、ルーミア、チルノ、大妖精、リグル、ミスティア、レミリア、フラン、パチュリー、美鈴、小悪魔、ゆかりん、etc...」

「妖夢や幽々子にはまだ会っていないのですか?」

「誰だそれ?」

 

 東方プロジェクトを知っている者たちがなんとなく感付く。それを代表するように、真が問いかける。

 

「もしかして信兄、紅い霧とか見た?」

「あぁ、異変だよな。それがどうした?」

「ちょっと集合。信にいは待ってて」

 

 東方を知ってる者達が小さく円を作り会議を始めた。議題はもちろん信に何を伝えて何を伝えないかを明確にすることだ。

 

「兄貴は実際に紅霧異変を体験したわけか」

「言っちゃっても大丈夫なの?これからなにが起こるのか」

「ダメだろうな。ネタバレしたら次に向こうに信兄が行った時になんか悪いことが起きるかもしれない」

「例えば?」

「場合によっては何かしらの異変が解決されずに幻想郷が無くなっちまう可能性もある。」

「それだけは避けねぇとな」

「具体的にはどうすればいいのかな~?」

「信兄に、これ以上一切の幻想郷についての知識を与えないことだ。それに知識を持ってる俺達も行っちゃいけない」

 

 やる事、やってはいけないことを明確にするとこうなった原因に全員目を向けた。

 

「次はいつフランちゃんたちと遊べるかな?」

「明日にでも連れてってやるさ。あいつらも一緒に遊んでて楽しそうだったからな」

「やったー!」

 

 信の膝の上で無邪気に笑う双子を見て全員が和んだ。信がいなくなったことで一番わかりやすく落ち込んでいたのはあの二人なので、その兄姉は嬉しさを滲み出してしまう。

 

「羨ましい……じゃなくて、あいつらはどうする?」

 

 その中でも恭助だけは何故かこれから犯罪が起きそうな雰囲気を醸し出している。

 

「多分大丈夫。知識もないし、向こうで仲良くやってるんだったらあの子達はいってもあんまり影響受けないと思うよ?」

「姉貴、相当影響出るに決まってんだろ。だって風人と華だぞ」

「むしろいかせない方が悪影響だと思う。あの二人フランとも仲良くなってるみたいだから今更会わせないようにしてもそっちの方が悪影響だと思うぞ。そもそも俺はもうあの二人が泣くのを堪えてる顔を見たくない」

 

 彼の言葉で会議組は全員無言になった。しかし思うことは全員同じく、右に同意である。

 

「そうよ恭助。そもそも何か起きそうならお兄さんが何とかしてくれますよ」

「それもそうだなぁ。あとは俺達が我慢するだけ、か」

「残念だけど、私達が幻想郷に行けるのは相当先になりそうだね」

「決まったな。これ以上信兄に東方の知識を与えちゃいけない。もちろんキャラの名前もだ。ここで我慢すれば俺たちも幻想郷に行ける日がきっと来る。全員それまで我慢だ」

「「わかった」」

 

 以上をまとめ終えると真がそれを伝える。彼が話すのを信は時折聞き返し、自分の中で考えをまとめそれが終わると了解の意を伝える。何事もなく終えると安心して肩を落とした。

 それは他の皆も同じで緊張した空気がやっと無くなったことで、全員がやっと本当に聞きたいことを聞く質問タイムが始まる。

 

「そういえばお兄さん。弾幕ごっこはもうやったんですか?」

「やったよ、ほら」

 

 手の平から小さな霊力弾をいくつも放出した。それはまるで暗闇に漂う蛍のように美しく、手で包み込んだり、息を吹きかけて見たり、食べてみたりと対応は様々だがその場の全員がそれに夢中になった。

 

「ついでに飛べるぞ」

 

 弟妹の反応が嬉しかったのか、ご機嫌になり次を披露することにした。丁度前を空が通っていたので彼女を捕まえ、膝に乗せがら宙を舞い始める。

 

「我困惑!兄上放す!じゃなくて放さない!!」

「はっはっは!」

 

 固定もあくまで信の腕だけ、更に縦の回転もちょいちょい加えるのでそこらの絶叫マシンより普通に怖い。

 

「信兄すげえええ!!」

「次僕!」

「私もやりたーい!」

 

 高身長による肩車のように、下のメンバーによって予約がみるみる埋まっていく。この一週間あまり見ることが出来なかったであろう賑やかな光景が居間に溢れた。

 

「信兄、頼みがあるんだけど」

「なんだ?」

「幻想郷であった事は色々話してくれない?行かないとは決めたけど、やっぱり何があるかは気になるしさ」

「もちろん。楽しみにしとけよ?」

「やったー!」

 

 現在空中にいる愛が両手を挙げて喜んでいる。それは地面に足をつけていてメンバーも同じことで、皆がそろって歓喜の声を上げた。そしてこの質問タイムは、就寝時間ギリギリまで賑やかに続いた。

 

 

 

 皆が自室に戻り始めた頃、名前を覚えきることが出来たのか今まで無言だった共が和んだ雰囲気で話した。

 

『確かに、紫をあんなに怒るのも今なら分かる。戻れてよかったな』

『ああ。戻ってこれてよかった』

 

 自分が最後になった居間の電気を消し、ゆっくり歩きながらそう心の中で何度も繰り返す。それだけ嬉しく、重大なことなのだ。

 時刻は23時。普段なら既に寝ているはずの彼の歩みは暫くぶりの自室ではなくちょっとした事件が起こりかけた玄関に向かっていた。

 

「コト。話がある」

「クゥウン」

 

 玄関にいるのはそこで眠っているコト、モコの二匹だ。しかしコトに対して今の信だからこそ持つ違和感があった。一言だけで事は彼の後を付いていき、今度こそ信の自室に向かっていった。

 向かってゆっくり座り込むと、さっそく本題に入り疑問をぶつけ始めた

 

「単刀直入に聞くぞ。お前、普通の犬じゃないな?」

「……遂にその膨大な力をモノにしましたね。(あるじ)

 

 特異とは言っても相手は犬。言葉を理解することは出来ても話すことは出来ない。その常識の元『共有する程度の能力』でモコの思考を共有して対話を行おうとしていたのに当たり前の用意喋りだしたので流石の信もこれには驚いた。

 

「話せるのか……でも聞きたいことは変わらないぞ。普通の犬じゃないよな?」

「はい」

 

 すぐさま肯定の意が帰ってくる。では結局何者なのだと思いその続きを待つが、再度口を開く素振りが全く見えない。 

 

「終わりか?」

「質問にはお答えしたと思いますが……」

 

 不思議そうな顔で返されてしまったため信も少し困惑した後、「ああ……」と納得した。あくまで聞いたのは『普通の犬かどうか?』という質問だけでYESかNOで答えてしまえばそれで終わりなのだと。コトはかなり頭が固いことを頭に入れて質問を改める。

 

「悪い、今のはこっちが悪かったな。お前は何者なのか、モコはどこから連れてきたのか、どうして倒れていたのか、なぜ話せるのか。これを教えてくれるか?」

「御意。最初の質問ですが、私は俗に『神狼』と呼ばれる者です。何の力も持つことが出来なかった……ただの神狼です」

「『無かった』って言うのはどういうことだ?」

「私は生まれてすぐに力を集める事が出来なかったのです」

「なんで出来なかったんだ?」

「我々神の類いは、主に誰かの強い願い等によって生まれ、その者達の信仰によって力を得ます。質問の順序は変わりますが、私の場合はそれを得られず、弱り、倒れてしまいました」

「その倒れていたお前を拾ってきたのが俺か」

 

 その通りですとコトは頷く。信は今まで目の前にあった非現実的なことをゆっくりと噛み砕き、受け入れてながら更に話されるコトの事情を聴き続ける。

 

「弱り切っていた私は力を取り入れる必要がありました。ですので主から漏れ出ている霊力を少しばかり拝借させて頂き、私は回復することができました。ですので現在、私に必要なのは信仰の力ではなく霊力となっています」

「一週間も居なかったが大丈夫だったのか?」

「その辺はご心配なく。最初は主から霊力を頂いておりましたが、ご飯を食べれば自分で生成出来るのだと七年程前に分かりましたので、それからはずっと自給自足です」

「拾ってきてすぐの時は全然ご飯食べなかっのはたそういうわけか。あの時すごい心配したんだからな」

「申し訳ありません」

 

 ピンと立てていた尻尾を倒し、申し訳なさそうに謝罪した。根本的な習性はやはり犬に近いのかと少し面白く感じる。

 

「でも良かったよ。お前が少し特異だって分ってから少し警戒してたんだ。「フハハハハハ!!!よくも今まで気付かず力を与えてくれたものだ!」とか言い出したらどうしようかと思ってからな」

「主は私を一体何だと思っておられたのですか?」

 

 声色と共に倒れた尻尾をブンッ、ブンッと振り始め分かりやすく不機嫌になった。

 

「俺の霊力とコトの霊力の性質がほとんど同じだったからな。量もそれなりにあったし警戒するさ」

「それもそうですが……ですが私は「フハハハハハ!!!」などと笑ったりましません」

「悪かったよ。でも今はこうしてお前自身からちゃんと色々聞けて良かった。改めてよろしくな、コト」

「……はい。こちらこそよろしくお願いします!主」

 

 

 信に頭をやさしくなでられ自信を本当に受け入れて貰ったことから再び尻尾の振り方が変化する。今度はご機嫌なようで、この様子だけなら本当にただのワンコである。

 一番の心配事も取り除かれたので信は部屋においてあるペットボトルのお茶に手を伸ばした。ここまで話しっぱなしだったので少しのどが渇いたのだ。

 

「それで、モコはなんなんだ?お前が急につれてきたが」

 

 モコとは3ヶ月程前にコトが背中にのせてきた子犬だ。ほとんど普通の犬と変わらないがおかしいと思っていたところはある。

 

「あんなに恐ろしい早さで成長する犬見たこと無いぞ?」

 

 そう。おかしな点とは成長速度である。

 本来ワンコは1~3ヶ月が幼児期、4~6ヶ月が少年期と言われており少年期の成長が最も激しい。そのはずだが、モコは3ヶ月だというのに中型犬程の大きさに既になっていたのだ。成長が早い犬にしても早すぎる。

 ただそれも、今までの事から気を張って聞くようなことでは無いとお茶を一口飲みながら聞く。

 

「モコはニホンオオカミとホッキョクオオカミとハイイロオオカミの血が混じってはいますが普通の狼です」

「ゴフッ!!」

 

 普通に有名で異例な言葉を同時に複数聞いたため、普通にむせた。まず犬じゃなくて狼。次に狼の中でも有名な三種が何故か掛け合わされている。最後に絶滅したはずのニホンオオカミが混ざっている。これ聞いたら普通に誰でも驚く。

 

「大丈夫ですか主!?」

「ゲホッ……大丈夫だ。ニホンオオカミって絶滅したんじゃないのか?」

「彼らは数は減らしましたがひっそりと生きています。それで、モコを連れてきた理由ですが、モコは群れから追い出されたのです。あの子は生まれつき体が弱く、病気も持っていました。手を出すべきでは無いと思ったのですが……生きたいと必死に、何日も何日も吠え続けていましたので」

「病気はもう大丈夫なのか?」

「はい、それは既に解決しているのですが……」

 

 何やら煮え切らない返事をするが、それにも色々訳があったのだ。まずモコをここに連れてきたのは、病気を治すことも自分にはできないが、せめて最後くらいは家族の温かさを知って欲しかったからだという。

 だが、不測の事態が起きた。連れてこられたモコに信が近づいた途端、彼の中にある魔力を利用して自身の中に魔方陣を形成。そのまま病気を完治させたという事だ。

 しかもモコはそのことを覚えておらず、形成された魔方陣はコトにも全く理解のできないものだったという。

 

「元々ニホンオオカミは八百万の神々に遣える動物だったという説があります。その神々ならもしかすると不治の病を治すことのできる魔法を開発できてもおかしくありません。それに、あの日は綺麗な満月だったので、それに関係しているかもしれません。古くから魔法と月は切っても切り離せない関係なので」

 

 淡々と説明するコト。だが、話したことは全て仮説や想像に過ぎない。

 つまりモコが魔法を使えた理由というのは……

 

「簡単にいうと、よくわかんないってことだな」

「はい。よくわかりません」

 

 知識が無く分からないものはもうどうしようもないという事でこの話は終わった。切り替えの早さは主人に似たのかコトも次の話に乗り移る。

 

「最後に何故喋れるのかという事ですが、声帯だけ人間の物に変えているのです」

「へ~(完全に忘れてたなんて言えない)……ってことは人間になれるのか?」

「人の形を模したものにはなることが可能です」

「ちょっとやってみてくれ」

「主の願いならば、喜んで」

 

 クルンとその巨体で軽やかに宙返りすると、漫画やアニメでよくみられる煙と共にコトの姿は変化する。

 

「これが私の人間時の姿です」

 

 人間となったモコの姿は、身長は170cm弱、犬の時とおなじ白い髪をセミロングにしている。尻尾は腰のあたりから生えており、耳も犬のようなものが頭部から生えていた。顔は整っているが高めの身長にしては少し幼い印象を覚える。そして胸もそれなりに膨らんでいて成人した女性の平均よりも大きそうだ。

 

「……服着ようか」

「そうですね」

 

 無からウールや絹が生成されるはずもなく、彼女の裸体を隠すものは当然ない。なにも無い!

 

「ちょっと待ってろ。確か俺が昔来てたのがまだどっかにあったはずだ」

「「信兄。ちょっと話……が……」」

 

 コトに着せるための服を捜索していたところ、突然信の部屋の扉が開けられた。

 

「げっ……」

「真殿、愛殿。ご無沙汰しております」

「え、ちょ、なっ!」

「見ちゃダメ真。まだあなたには早い」

 

 2人の目の前には素っ裸の犬耳を生やした女性が座っている。更には誰に見られようとたわわな丘を隠そうとしないのだ。そんな光景に完全に混乱している双子の兄の両目を塞ぎ、もう一人の兄には軽蔑の目を向ける。

 

「お兄ちゃんのエッチ!変態!ケモ耳マニア!!」

「ちょっと待て!話せばわかる!頼むから待ってくれ!!」

「厄介なことになりましたね」

 

 明渡兄弟のいざこざはまだ続く。

 

 




明渡 空 (あけど そら) (12) O型 身長148cm 誕生日4/10 セミロング Aカップ
会得している格闘技・武道:剣道
明渡家14人兄弟の三女。一卵性の三つ子の一番上。
剣道は信と父方の祖父に習った。マッサージも海と一緒に信から教わった。
料理は愛に習ったから簡単なものは作れる。それ以外はまだできない。
頭はいいが、たまに天然。
膨らむ気配の無い胸に不安を覚えている。
左側の目元にほくろがあるのが空。
東方は兄がプレイしているのをよく見ている。好きなキャラは妹紅と輝夜。




明渡 海 (あけど うみ) (12) O型 身長148cm 誕生日4/10 セミロング Bカップ
会得している格闘技・武道:剣道
明渡家14人兄弟の四女。一卵性の三つ子の真ん中。
剣道は信と父方の祖父に習った。空と海が一緒にマッサージした人は溶ける。
頭はいいわけではないが上の兄弟によく教わるので成績は優秀。
最近膨らみ始めた胸を気にしている。
右側の目元にほくろがあるのが海。
東方は空に聞いただけでキャラしか知らない。好きなキャラは魔理沙。




明渡 陸 (あけど りく) (12) O型 身長153cm 誕生日4/10 スポーツ刈り
会得している格闘技・武道:柔道
明渡家14人兄弟の四男。一卵性の三つ子の一番下。
剣道は信と母方の祖父に習った。
頭は悪いため兄弟に勉強を教えてもらうことが多い。
手先が器用。空と海の髪のセットをよくやっている。
アニメ『天元突破グレンラガン』を見て男気を学んだ。
東方は名前しか知らない。




明渡 強太 (あけど きょうた) (9) O型 身長140cm 誕生日4/3 短髪
会得している格闘技・武道:無し
明渡家14人兄弟の五男。一卵性の四つ子の一番上。
生まれた順番をあまり気にしていない。4人とも仲がいい。
考えてるときに顎をさわるのが強太。四つ子の中で一番目がいい。
東方は真に聞いたがよくわからなかった。





明渡 広美 (あけど ひろみ) (9) O型 身長140cm 誕生日4/3 背中までのロング
会得している格闘技・武道:無し
明渡家14人兄弟の五女。一卵性の四つ子の二番目。
静を女性としての目標にしているため髪を伸ばしている。
四つ子のなかの抑制係り。
四つ子の中で一番舌がいい。
東方はストーリーは知っている。好きなキャラは慧音。




明渡 高太 (あけど こうた) (9) O型 身長140cm 誕生日4/3 強太と同じ
会得している格闘技・武道:無し
明渡家14人兄弟の六男。一卵性の四つ子の三番目。
四つ子の男3人に外見的な見分け方はない。信と保護者組だけ見分けれる。
兄弟の中で一番信を尊敬している。
考えてるときにこめかみを掻くのが高太。四つ子の中で一番鼻がいい。
東方はきゃらだけ知っている。好きなキャラは咲夜、小悪魔。





明渡 深太 (あけど しんた) (9) O型 身長140cm 誕生日4/3 高太と同じ
会得している格闘技・武道:無し
明渡家14人兄弟の七男。一卵性の四つ子の一番下。
見分けがつかないことを利用してよくイタズラをする。本人たちもたまに間違える。
考えてるときに腕を組むのが深太。四つ子の中で一番耳がいい。
東方は知らない。




明渡 華 (あけど はな) (4) O型 身長113cm 誕生日4/9 ツインテール Aカップ
会得している格闘技・武道:無し
明渡家14人兄弟の六女。二卵性の双子の姉。
無邪気な体力お化け。笑顔が絶えない。甘いものが好き。
東方は知らない。






明渡 風人 (あけど かざと) (4) O型 身長112cm 誕生日4/9 真に似ている
会得している格闘技・武道:無し
明渡家14人兄弟の八男。二卵性の双子の弟。
華ろ同じく無邪気な体力お化け。ご飯を美味しそうに食べる。
東方は知らない。





トモ ♂ (4) 雑種の黒猫。
モモ♀ (5) 雑種の白猫。

4年前に雨の中、段ボールに入って衰弱していたところを真と愛が連れてきた。
明渡家の人間には懐いているが他の人には激しい人見知りを起こす。
寝るときは一緒に寝ている。


モコ ♂ (3ヶ月) 普通の狼。
2ヶ月半前にコトが背中に乗せてきた普通の狼。
コトの事を本当の母親のように慕っている。自分の事を追い出したら群れのことは恨んでいるわけではない。
群れからはぐれた日本狼と密輸入された灰色狼の間に生まれた狼と、逃げ出してきたホッキョクオオカミの間に生まれた。
とても人懐っこい。トモやモモとも仲がいい
毛がもこもこで人をダメにする獣



コト(狼時) ♀ (8) 超白い神狼
体長195cm(鼻の先端から尾の付け根まで)
大分でかい。 真とか愛でも2人で余裕でのれる。
8年前に道端に倒れているところを信が小3の時に連れてきた。
正体を明かそうとしていたがタイミングがつかめず、ずっと犬として過ごしていた。
よく風人や愛が背中にのっている。
体長の問題で定員オーバーになるが、本当はもっと乗せれる。
近所の犬に尊敬されている

コト(人型時) 168cm Fカップ
髪は白く、狼時と同じく頭からは犬耳が、腰からは尻尾が生えている。
服を着る習慣がないためどうしても服に違和感を覚える。
信がこしらえた服はしっくり来るらしい。
狼時よりも霊力の扱いがうまくなる。







狼が云々は全部私が考えたことです。そんな説はあるかもしれないですが多分無いです。この小説のなかだけでの設定ととってください

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