東方家族録   作:さまりと

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おはこんばんにちは。さまりとです。
やっと異変です。
ゆっくりどうぞ。


第9話 【紅い霧】

「ムニャムニャ……もう一週間か……」

 

 信が幻想郷に来てから一週間がたっていた。チルノの体質を改善してから5日たち、今日も新しい1日が始まる。

 

「取り敢えず朝の稽古にいくか」

 

 時間は午前4時。朝日がまだ上りはじめばかりだ。そんな中、彼は一人鍛練に励む。

 

「今日は剣術にするか」

 

 彼は一応剣道を父方の祖父から教えられていたが 、どちらかというと剣道というより剣術といった方が近い。流石に居合いや峰打ちなど剣道にはない。その上、防具なんてつけたこともなく、あげくには習い始めて約5年、当時8歳の時にはすでに日本刀で稽古していて、完全に実戦重視のものであった。

 

「『武刃(ぶじん)』〈秋水(しゅうすい)〉」

 

 新しく作ったスペルカードを発動させ一本の日本刀の様な物を召喚する。

 

「重さもサイズもイメージ通りだし、存分に振れるな」

 

 流石にスペルカードが3枚だけは少ないと前日に魔理沙に言われたため、色々作ったがちょっとネタに走ってしまったのはいただけない。

 

「ふっ、はっ、でぇああ!!」

 

 勇ましい掛け声とともに刀を振る。重さは日本刀と変わらないが、それを思わせぬような軽やかな刀捌きで稽古を続ける。

 

「朝から元気ね」

「霊夢。すまん、起こしたか?」

「あんたが早く寝ちゃうから暇になって早く寝たのよ。そしたらこんな時間にもう目が覚めたわよ...。毎日今みたいになのをやってるの?」

「あぁ、習慣だからな。前までは弟や妹ともやってたんだが、今は相手がいないしな……」

「早く帰れるといいわね……」

「まあ、弟も妹もしっかりしてるし大丈夫だろ。俺もこっちの生活は楽しんでるし。帰る方法はのんびり探すさ」

「そう、もうちょっと見てていい?」

「あんまり面白いもんじゃないと思うが、それでもよければ」

 

 そう言って再び信は刀を振り始める。それを霊夢は飽きもせず見続けている。本来霊夢はこの様なことには興味をもたない。その彼女がどうして彼の稽古を見学しているのか?ご想像にお任せする。

 

「そろそろ朝飯作るよ」

「それより汗流してきなさい。私がつくってるから、用意できたら手伝ってちょうだい」

「わかった。ちょっといってくる」

 

 汗を流すために川まできた。そしたら朝早くから以外な人物に会った。

 

「アリス、魔理沙」

「こんな早くから何してるんだぜ?」

「朝の稽古で結構あせかいたからな、ながしに来たんだ。お前達はどうして?」

「朝の散歩よ。早くに目が覚めちゃってね」

「私もだぜ。そしたらそこでばったりアリスと会ってな、そのまま一緒に歩いてるんだぜ」

「シャンハーイッ!」

「面白い偶然も……あるもんだな」

 

 こんな朝早くに友人に遭遇したのは驚きだが、目的は汗を流すことだ。それに邪魔な服を脱ぎ準備を始める。

 

「ちょっ!何してるんだぜ!?」

「いや、だから汗ながしに来たんだよ」

「でっ、でもいきなり脱がなくてもいいじゃない」

「二人ともどうしたんだ?服脱いだくらい……」

 

 そう言いながらやっと気づいたようだ。そして、両腕を胸の前で交差させながら

 

「きゃーエッチー!(棒)」

・・・一瞬の沈黙・・・

「魔理沙……やっちゃいなさい」

「おう。『恋符』〈マスタースp「ストップストップ!!悪かったよ!!」」

 

 流石に何の用意もなくマスパをくらうのは信でも危ない。

 

「そっ、そうだ!朝飯一緒に食わないか?今霊夢が準備してる途中なんだ」

「勝手にそんな約束していいの?」

「あいつなら勘でわかるだろ」

「それもそうだぜ」

「決まりだな。先行っててくれ」

「おう」 「えぇ」

 

 

「なぁ、アリス」

「なに?」

「男の体ってあんなに引き締まってるもんなのか?」

「知らないわよ。見たことないんだもの」

「……なぁ、アリス」

「なに?」

「ムキムキだったな」

「……そうね」

 

 少女二人は朝食を食べに友人宅へと向かう。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「...で、二人もご飯食べに来たわけ?」

「そうだぜ。ゴチになるんだぜ」

「まぁいいわ。二人とも手伝って」

「なにすればいい?」

「じゃあまずは……」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「お待たせー。なに手伝えばいい?」

「やっと来たわね。もうやることないわよ」

「そんなに長く水浴びしたつもりじゃないんだが……」

 

 テーブルの上には4人分の朝食が用意されている。

 

「ボケッとしてないで早く食べましょ」

「そうだな」

「「「「いただきます」」」」

 

「何だかんだでみんなの手料理食うの初めてだな」

「そういえばそうね。お味はどう?」

「うまいよ。二人も手伝ったのか?」

「うん。霊夢もまだ準備始めたばかりだったしね」

「流石に黙って待ってるわけにはいかないぜ」

「アリスはともかく、魔理沙も料理できたんだな」

「どういう意味だぜ!?」

「なんとなく魔理沙は料理できなさそうな感じだった」

「お前は私をなんだと思ってるんだぜ」

「野蛮な女」

「「フッ……」」

「霊夢もアリスもなに笑ってるんだ。こっちはちょっと泣きそうだぜ」

「悪かったよ。でもホントにうまいな。誰に習ったんだ?」

「幻想郷では自給自足が基本だからね。普通に暮らしてるだけでもこのくらいできるようになるのよ」

「そういえば……信の兄弟って誰か料理できるの?」

「上の二人ともうひとつ下の弟ができる」

「その言い方だと他にもいるみたいね」

「弟7人、妹6人の14人兄弟だ。ちなみに両親はみんな同じだからな。それと犬と猫を2匹ずつ飼ってる」

「「!!」」

「ははっ。その反応を待ってた」

「そんなにいると大変そうね……」

「そうでもないよ。朝は習慣になっちゃってあんまり苦にならないし、家事は手伝ってくれるし、何より家のなかが賑やかだからな。毎日楽しいよ」

「……早く帰れるといいな」

「俺はこっちの生活も気に入ってるんだ。そんなに重く考えないでくれ。まあ、いつかは帰る気だが」

「そういえば今日はどうするの?寺子屋休みなんでしょ」

「幻想郷を探索しようと思ってる」

「「「なら私があんないする(わ)(ぜ)(わよ)」」」

 

 綺麗に3人ともハモった。3人は驚いたように互いの顔を見ている。

 

「おぉ、俺モテモテだな。でも1人で行くつもりだから案内はいいよ」

 

 3人とも少し残念そうな顔をして了承した。

 

(そんなに落ち込むことか?)

「ご馳走さま。じゃあ早速いってくるよ」

 

 食器を片付けそのまま出かける。

 

「いってらっしゃい」「気をつけてね」「迷子になるなよ」

 

 そう3人の少女から返され、信はそのまま空に飛び立つ。

 

「・・・」「・・・」「・・・」

 

 信が出かけたあと、食卓は急に静かになった。3人とも仲はいいためこんなに気まずい雰囲気になることはないのだが。

 

「...渡さないわよ」

「「ッ!」」

 

 その静寂を破ったのは霊夢の意外な一言だった。

 

「きゅ、急に何を言い出すんだぜ」

「この際だからはっきりいっておくわ。私は他人にこんな感情を持ったのは初めてよ。でも確信できる。私は信が好きよ」

 

 淡々とのべているが今までの霊夢からは信じられない言葉だった。他人に対してとても無関心な霊夢が人を好きになるなんて誰も考えなかったのだから。

 

「どうして急にそんなこと話したんだ?」

「なんとなくわかってるでしょ。ここにライバルが2人もいるからよ」

「霊夢がそこまで言うなら隠す必要もないな。私も霊夢と同じ気持ちだぜ」

「私もよ。こんな気持ち持ったのは彼がはじめて。譲る気はないわ」

 

 3人ともきっかけは1日目に言われたことだ。そのあともこの一週間、彼とふれあってるうちにその気持ちが大きくなってきた。魔理沙の場合は弾幕ごっこの時や、魔法の話をしているときに。アリスな場合は人形のことや、幻想郷のことについて話しているうちに。霊夢の場合は毎日信といる時間を過ごし、なにかを話しているうちに。

 

「やっぱりそう簡単にいかなそうね」

「避けてはは通れなさそうね」

「まったく、3人そろって面倒な相手を好きになっちまったもんだぜ」

 

 よく一緒にいる3人だからこそわかる。これは簡単にはいかないことを。そして宣言する。

 

「「「信の事はゆずらn「ただいまーって、俺がどうかしたか?」

「「「ッ!!」」」

 

 宣言できなかった。

 

「ど、どどどうしたのっ。こんなに早く」

「アリス大丈夫か!?すごい汗だぞ。何かあったのか?」

「べっべ別になっな、なにもないわよ」

「絶対なんかあっただろ。目が泳ぎまくってるぞ。魔理沙もそこでなにやってるんだ?」

「いやっ、た、ただちょっと壁の気分になりたかっただけだぜ」

「どんな気分だよ。霊夢もそれ、湯呑みじゃなくて茶碗だからな」

「ちょっとご飯をのみたかった気分なのよ!」

「ちゃんと噛め。喉つまらせるぞ。やっぱりなんかあっただろ」

「別になにもないわよっ!それよりどうして戻ってきたの?」

「あぁ、忘れ物してな。一応リュック持っていこうとしてたの忘れてた」

 

 そう言って信は自分が使っている部屋のエナメルバックから、少し小さいリュックを取り出した。

 

「それより何があったんだ?」

「「「なにもないっ!!」」」

「そ、そうか。まあ、いつでも相談にのるからあんまり溜め込むなよ」

「いいから早く行きなさい!」

「そうだぜ。1日なんてあっという間だぜ!」

「だから早く行きなさい!」

 

 少女3人に背中を押されて信はとても戸惑っている。

 

「わかったから押すなって!?じゃあ行ってきます」

「「「行ってらっしゃい!!」」」

 

 今度こそ信は出発した。

 

「「「はぁ、はぁ」」」

 

 3人とも不測の事態に息をきらしていた。

 

「本当に、面倒な相手を好きになっちまったもんだぜ……」

「「本当ね……」」

 

 信に少女の気持ちが伝わるのは相当先の事になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「本当にどうしたんだあいつら。俺のこと話してたみたいだけど...。まさか・・・俺もしかして迷惑がられてる..のか?でもそんなふうには感じなかったし...。考えてもしょうがないし今は探索を楽しもう」

 

 彼は他人の敵意や憎悪など、負の感情に関してはとても敏感だ。勿論、尊敬や親愛などされていることも感じることはできる。しかし、好意などの恋愛感情に対してはとても鈍感なのだ。今まで大家族の家事を一人でやり続けてきたためそのようなことに興味をもとうとしなかった。

 

「取り敢えず、チルノ達に教えてもらった霧の湖にでもいってみるか」

 

 昼間だけ霧が出ていて不思議な湖だと大妖精に教えてもらった。不思議な事にはどうしても興味が湧く。

 

「確か……香霖堂の近くにあるんだよな。」

 

 前日魔理沙に香霖堂というところを紹介してもらった。その店主のこーりんは外界の道具に感心があるらしく、外来人の俺に道具の使い方を目を輝かせ聞いてきた。そのうちまた顔をだそう。

 

「大妖精の話だとそろそろ見えてくるらしいが……」

「しーーーん!!」

 

 どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「ようっチルノ、大ちゃん」

 

 チルノたちの近くにはそこまで大きくはない湖があった。霧は出ていない。

 

「しーーーん!!!」

「うおっ!!」

 

 着地と同時にチルノがタックルしてきた。あの一件からチルノはこういうことをいろんな奴にやるようになった。本当に嬉しいみたいでよかった。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「このくらい平気だよ。それより二人はどうしてここに?」

「あたい達はよくこの湖の近くでいっしょに遊んでるの!そして信っ!今日こそ最強の座をヘンジョーしてもらうわ!!」

「いいだろう。何度でも返り討ちにしてくれる!」

 

 幻想郷に来てから魔理沙に次いで、チルノと弾幕ごっこをやっている。本当に微妙なくらいだが、毎回力をつけているような気がする。

 

「ちょっと待ってて。準備するから」

 

 と言い、準備体操をはじめた。

 

「チルノちゃん、あれから本当に楽しそうなんですよ」

「そうか...。大ちゃん、ちょっと相談がある」

「?何ですか。」

「チルノの冷気のことは俺の能力で改善したけど、まだ俺の能力はわかってないことが多いんだ」

「どういうことですか?」

「今、チルノは俺の体質を『共有』して冷気が出てないわけだけど、この能力がいつまで続くのかわからないんだ。それと可能性として、一定の距離をおいたら能力が働かなくなるってことも考えられる」

「それってまさか……」

「あぁ。チルノの冷気が急にまたでてくる可能性があるんだ」

「そんな……」

「だから大ちゃんにはこの事を頭のすみにいれておいてほしいんだ。あくまで可能性の話だからな。もしチルノの冷気が出てきたら俺に教えてほしい。あいつが落ち込むのはあんまり見たくないしな」

「そうですね。わかりました」

「準備体操おわりっ!さっ信、勝負だ!」

「(それじゃあ頼んだぞ。)おう。やられる覚悟はいいか?」

「今日はあたいが勝つんだからそんな覚悟は要らない……よ……」

「ん?どしたチルノ。って急に辺りが暗くなって来たけど」

「信さん……あれ」

 

 大妖精が袖を引っ張って後方を指差している。その先には少なくとも外界では起きたことがないような現象が起きていた。

 

「紅い……霧?」

 

 明渡 信はその時、はじめて異変をその目に映した。

 

 

 




いつから紅魔館組がでると錯覚していた。
今回は霊夢たちの思いをさらけ出しました。素直な女の子って可愛いですよね?慌てている女の子も可愛いです。でももしこの回を読んで、「こんなの霊夢じゃねえ!!」等の意見があったらすいません。今後もこのような流れでいきたいと思ってます。
それと私は設定とかオリジナルの異変とかは考えていますが、基本的に行き当たりばったりでかいてます。矛盾してる点もあると思いますがどうかよしなに。
次回はあの居眠り門番と対面です。

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