食戟のソーマ 十席番外 第零席に座る者   作:北方守護

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久し振りの投稿です。



第10話 微かな想い

一色と再会した武昭は一色用の十傑の部屋に来ていた。(部屋は作者のオリジナル設定です)

 

「はい、コーヒーだよ。砂糖とミルクは自由に入れてね」

 

「ありがとうございます……ふぅ、美味しい………」

 

「口に合ってよかったよ、それよりもアキ君と再会出来るなんて思わなかったよ」

 

「それは、俺も同じだよケイ兄………あっ、昔と同じに呼んだらダメだね」

 

「ううん、僕は気にしないよ、アキ君が呼びたい様にして構わないよ」

 

「そっか、じゃあケイ兄って呼ばせてもらうよ」

武昭はコーヒーを飲んだ。

 

「少し気になったんだけどアキ君は何処に住んでるんだい?」

 

「あぁ、俺はここに住んでるんだ」

 

「この場所は……確か空き家が一軒あった筈の住所だね……」

 

「その家は俺にとって…………」

 

「なるほど、そういう事ならアキ君が住むに相応しい場所だね」

一色は武昭から聞いた住所の事を考えていたが理由を聞いて納得した。

 

「それよりケイ兄は何処に住んでるの?」

 

「うん?僕は極星寮と呼ばれてる所だよ」

 

「極星寮?」

 

「あぁ、かなりの昔からある場所でね、そこの敷地を借りて畑を作ったり

他の寮生達が自分達がしたい事を自由にやってるんだ」

 

「へぇ、そんな所があるんだ………おっと、そろそろ俺は帰るよ

時間も時間だしね」

 

「そうかい、僕はまだ仕事があるから また暇な時にでも来ても良いよ」

 

「分かったよ、じゃあねケイ兄」

武昭は一色の部屋から出て行った。

 

武昭と一色が再会してから数日経った日曜日………

 

「今日は久し振りにカレーが食べたいな………

買い物は行かないで冷蔵庫の中の物を使った普通にシンプルな物だな」

武昭はキッチンに向かうと作業を開始した。

 

 

その頃………

 

「うーん………今日は何をしようかなぁ………

司も用事があるって言うし………ん?………

何処かからカレーの匂いがするな…………向こうからだ」

校内を歩いていた竜胆は匂いがした方に向かった。

 

 

竜胆が来た場所は武昭の家だった。

 

「武昭の家からしてたのか………

うん、ちょうどいいからご馳走になるとするかな(笑)」

竜胆は猫の様に笑うと家の中に入った。

 

「おーい、武昭ー居るかー?」

 

「あっ、すいません竜胆先輩、来てたのに気付かなくて」

 

「いや、私が勝手に入って来たから気にするなよ

それよりも、美味そうな匂いがしてるんだけどよ………」

 

「そうでしたか、じゃあ一緒に食べませんか?」

 

「あぁ、ありがたくいただくぜ!」

武昭は竜胆が座ったのを確認すると自分が作ったカレーを配膳した。

 

「ふーん 普通に人参、玉葱、ジャガイモに肉が入った奴なんだな」

 

「えぇ、冷蔵庫にあった物を使ったんです それじゃ」

 

『いただきます(まーす)』

二人は、そう言うとカレーを食べ始めた。

 

(おぉっ!なんだこのカレーは!?)

一口食べた竜胆はその味に驚いていた。

 

(特に豪華な食材を使ってる訳でも無いのに、こんなカレーを食べるのは初めてだ!

スパイス、野菜、肉、それぞれの味がケンカする事なく纏まった味を出してるなんて!)

 

「竜胆先輩?まだ食べるならお代わりいりますか?」

 

「え?なっ!いつの間に……悪いけど、もう一杯くれ」

竜胆は自分がカレーを気付かないうちに食べ切っていた事を確認するとお代わりをした。

 

「はい、構いませんよ」

 

「(うん……もう一杯食べても、どうしたらこんな味が出るのか分からない……)

なぁ武昭、このカレーってどうやって作ったんだ?」

 

「え?どうやってって……普通に作っただけですよ」

 

「いや!そんな筈は無いんだ!絶対何か秘密があるんだろ!!」

 

「秘密って言っても本当に何も無いんですよ ()()()()()()()()()()()

 

「普通に作っただけ……悪いけど、キッチンを見せてもらっても良いか?」

 

「はい、構いませんよ。こっちです」

武昭は竜胆を連れてキッチンに向かった。

 

キッチンに案内された竜胆は室内を見回していた。

 

「うーん……確かに特に変わった材料とかは無いし使った形跡も見当たらないなぁ…」

 

「ほら、俺が言った通りじゃないですか」

 

「そうだな、だったら何で、あんなに旨いカレーが作れたんだ?」

 

「だから、何回も言ってますけど普通に作っただけですよ

普通に野菜の皮を剥いて肉と同じ大きさに切り揃えたら

油で炒めてルーを入れて煮込んで出来上がりです」

 

「確かに普通だな……ん?武昭、野菜の皮はどうしたんだ?」

 

「皮ですか?綺麗に洗って水から煮込んで出汁を取りましたよ

それでカレーを作りました」

 

「そうか!ベジブロスか!!いや、それだけじゃあの味には……」

 

「その後は残った皮を細かく刻んだり乾煎りしたりしてルーに混ぜました」

 

「皮まで……本当だ!よく見るとルーに細かい物が入っている……

(そうか、武昭は無駄を出さない様に全ての材料を使ったんだ………)」

 

「俺は何をしても食べれない物以外は全ての食材を使い切るんです………

それが俺の信念で料理人だと俺は思ってます」

 

(なんだ、武昭のこの考えは……今まで私が出会って来た、どんな奴とも違う…)

 

「そして、美味しい料理は皆で食べる、どんな人間でも必ず腹が減りますから」

 

(なっ!?なんだよ武昭の今の笑顔は!すっげー純粋無垢な表情じゃん!!)

武昭の笑顔を見た竜胆は顔を逸らしたが真っ赤になっていた。

 

「先輩?どうかしましたか?」

 

「あぁーっ!悪いけど急用を思い出したから私は帰らせてもらうな!

それと……又、今度食べに来て良いか?」

 

「はい、何時でも来て下さい さっきも言いましたけど料理は皆で食べると美味しいですから」

 

「そうか!今度は私が何か作ってやるからな!」

竜胆は武昭の家から出たが赤い顔をしながら笑顔になっていた。

 

 


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