博麗転生譚   作:ヒフカ

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少し今回は短めです。そして滲み出る駄文感。


第十三話

 

 

 

「それにしてもこれが異変ってやつなのかな?」

 

 霊夢が正式に博麗の巫女になってから初めての異変。別に俺が解決するわけでもないのに妙な緊張感を覚える。

 そして霊夢を見送り、一人神社に残った俺は、これといってするべきことも思いつかず先ほどまでの朝食の後片付けをしていた。

 

 

 

 

「よし、片付け終わりっと」

 

 

 台所から居間に戻り赤い中空をぼんやりと見つめる。いつも二人で眺める景色も霧のせいで赤く不気味だ。

 さらに徐々に広がる霧はその濃さを増していた。

 人里も赤い霧に包まれてたし、もしかしたら幻想郷中に広がっているかもしれない。

 しかしこんな広範囲に影響を及ぼすなんてどんな実力者だろうか。異変を起こした犯人を想像して身震いをした。

 霊夢と魔理沙は大丈夫だろうか。…殺されやしないだろうか。えもいわれぬ不気味な感じがあの時の情景を想起し、不安な気持ちが余計に増長していく。

 

「ふふっ…はあ、小心者だよ、つくづく」

 俺は無意識のうちに右肩に手を置いていた。それに気付いて一人苦笑する。

 ああ情けない、まったく。俺は気を紛らわせるために家事をすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、無くなっちゃってたか…」

 掃除の途中、薬を入れていた棚を覗くと俺の痛み止めを切らしてることに気付いた。あまり効かないけど無いよりはマシな痛み止め。古傷が痛むのは時々だけど無いと不安だ。

 

「でも、こんな時に売ってるかな?」

 この赤い霧だしなあ。少々悩んだがそれでも俺は人里に行くことにした。

 人里の様子も気になるしね。念のため棚から護身用に御札と残り少ないお金を取り出して人里の方角へ空を飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、到着っと」

 いつも通り人里の端に降りて辺りをうかがうと、人影は無く閑散としていた。まあここら辺はいつも人は少ない。いつもどおりだと人里の中心へ足を運んだ。

 

 

 

 

 

「ここ人里だよね…?」

 店のある一番の賑わいを見せる通りに出たが、やはり誰もいない。八百屋も薬屋も道具屋も甘味処だって、この時間帯なら多くの人たちがいたはずなのに一人も見当たらない。あらゆる店、民家の戸や窓も閉められていてかなり寂れた雰囲気を醸し出していた。

 

「だ、誰かいませんか〜?」

 俺の声は虚しく無人の人里に木霊するだけだ。

 本格的に人を探そうと、近くの店の戸に手を掛けようとした時、

「そこのお前!何者だ!」

「ん?」

 いきなり背後から声をかけられた。驚いて振り向くとそこには、まず目に入るのが特徴的な程に長い白髪にリボンをいくらか付け、もんぺを履いている少女がいた。その少女はこちらをうかがうように厳しい目つきでこちらを見ている。

 突然声をかけられて対応に困っているとさらに目の前の彼女は口を続ける。

「だんまりか?こんな時に出歩いてるなんて里を襲いにきた妖怪の類だな?」

 

 こちとら人間だ。妖怪扱いされちゃかなわない。

「違う、私はちょっと買い物しに来ただけで」

「この霧の中か?ふん、嘘くさい」

「だから私は妖怪じゃないって」

 

 やっと人に出会えたのになんだこの人は、いきなり疑ってきて。そうこうしているうちにいきなり炎の塊がこちらに飛んできていた。

「わっ!?」

「悪いね、知り合いに頼まれて里の警備の手伝いしてるんだ、だから怪しい奴はとりあえず捕らえさせてもらう」

 

 待て待て、どっちが妖怪だよ!?炎の発生源は目の前の少女だ。腕から火の手が上がり次の攻撃の準備をしているのがよく分かる。

「ど、どっちが妖怪よ!あんたの方が人間じゃないじゃない!!」

「ふふっ、そうかもね、私は人間ではないから。…ところで、覚悟は決まったかしら?」

 

 彼女はより激しく燃え上がった。もう戦闘は避けられないだろう。古傷をチラリと見てまともに戦える自身の無い俺はどうやって逃げるか。そう考えながら懐にある御札に手を伸ばしたその時、別の声が白髪の少女を制した。

 

「まてッ!妹紅!」

 

 第三者の声は女の人の声だが俺はこの声の主を知っている。

 

「先生?」「慧音?」

 

「「…ん?」」

 同時に声を出して思わず見合う。

 この目の前の彼女もどうやら声の主を知っていたらしい。まさか、こいつが言ってた知り合いって…。

 

「妹紅、待て。この子には攻撃するな」

 

「この子ぉ?慧音、こいつと知り合いだったのか?」

 

 俺たちの間に見覚えのある女性が空から降りて来た。

 

「ああ、私の教え子だ」

 間違いない。寺子屋に通っていた頃の先生、上白沢慧音先生だ。

 

 


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