俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような? 作:ボストーク
さて、今回のエピソードは……サブタイ通りにアーシアとのエンカウントですが、どうも
「
金色の長い髪に白い肌、おっとりした感じの翡翠色の柔らかな光を浮かべた瞳……中々に愛らしい感じの西洋人の少女だった。
「Yes!
「
「一応、少し喋れますけど……あの、十分に英語でコミュニケーションとれてますよ?」
「No way, A little Sister. I can speak English just like a "child talk". (可愛いシスターさん、馬鹿を言っちゃあいけない。俺が喋れる英語なんて精々”赤ちゃん言葉”程度のもんさ) 」
「やっぱり喋れるじゃないですかっ!?」
これが俺と、運命の相手……と言えば大袈裟だが、ソーナお嬢様達同様に長い永い時間共に過ごすことになるパートナー、”アーシア・アルジェント”との出会いだった。
***
さて、俺は愛用の
一応、道案内という名目もつけてあるが……
「へ、へぇ~……この駒王町の教会に赴任ねぇ」
おいおい嘘だろ……
当たりも当たり、大当たりだ。
どうせ当たるなら、一番くじとかのラスワン賞とかを引き当てたいとこだ。
このシスター、やっぱりコスプレとかではなく本物のシスターだった。
やはり祈るのが魔王レヴィアタン様では駄目だったみたいだ。
でも本人にそれを言ったら、
『やったねイッセーちゃん! 可愛い女の子にエンカウントできるなんてバッチリじゃない♪ さすが恋と愛の魔法少女”マジカル☆レヴィアたん”のご加護だネ♪』
とか返されそうだ。
(いっそ、信仰する魔王をルシファー様にでも変えるか?)
いや、駄目だ。
ソーナお嬢様の話を聞く限り、いきなり事態が「
「イッセーさん? どうされたんですか?」
突然、黙り込んでしまう俺にアーシアは呼びかけてくる。
ああ、名乗られたときにアーシアと呼んで欲しいと言われたので、特に反対する理由もなかったのでそうしている。
その代わり俺もファーストネーム呼びでいいとしたけど。
「いや……信仰の意義について、少しな」
「信仰は大事で大切ですよ? 祈ればきっと主は聞き入れてくださいますから」
悪魔が祈ったらどうなるか?
浄化されて消滅したりして。
***
さて、ちょっとここで確認したほうがいいだろう。
この娘が潜伏中の【教会】残党に合流する不穏分子かどうか。
俺はちょっとした公園の傍を通るときに、
「なあ、アーシア……」
「あっ! イッセーさん、ちょっと待ってください!」
そうアーシアが駆け寄っていった先には、公園で泣いてる子供だ。
「泣かない泣かない。ちょっとお姉ちゃんに怪我を見せてね?」
へぇ~。アーシアって子供あやすの上手いんだな……
”ズキッ”
「!? なんだ……?」
左手に一瞬走った疼くような違和感……
そして視線をアーシアに向けると、
「!?」
子供の怪我を文字通り”
「GN粒子じゃあるまいし……」
(ドライグ)
『なんだ? 相棒』
毎夜の夢の中の特訓でドライグと同調してるせいか、いつの間にか俺はドライグといつでも
正直、これはありがたい。
正しく百戦錬磨、人間が及びもつかない時間を戦いに費やした戦闘指南役が常にそばについていてくれるようなものだ。
(アーシアが使った”力”って)
『ああ。相棒の想像通り、名前は知らんが回復系の”神器”だろうな』
ったく。なんてこったい……
”セイクリッド・ギア”持ちのシスターが堕天使しかいなさそうな「空き家の教会」に行くって理由はそう多くはない。
おまけにどの選択肢をとっても敵対以外はないだろう。
『人間のわりにはかなり強力な
「こりゃ、どうやら本気で
もし、神や悪魔すらも越えた運命というのがあるのなら、俺は少し呪いたくなった。
***
さて、子供の治療を終えたアーシアに俺は公園に寄っていこうと声をかけた。
幸い、この公園はそこそこの広さでクレープの屋台なんかもこうして出ている。
そこのベンチでアーシアには待ってもらってる。
「とりあえず、
俺が持ってきたのは焼き立てのクレープ。
実はこの公園のクレープ屋台は何気に評判がいい。実際に旨いし。
去年は、たまに祐斗と買い食いしたっけ。
「えっと……これは?」
「お嬢様、本日のおやつは生クリームとチョコ、薄切りのイチゴにブルーベリー&ラズベリーのダブルベリーソースのクレープでございます」
なんかぎこちない執事言葉でクレープを差し出すと、
「えっ? えっ? えっ?」
目を白黒させるアーシアだった。
ああ、そういえばこのタイプのラップ・クレープって、”原宿スタイル”って呼ばれる日本で独自進化した物だっけ?
「とりあえず食べないか? 味は保障するから」
「美味しいですぅ~♪」
一口食べた途端に目をキラキラさせるシスター・アージェントでした。
初めて会った女の子をこんな笑顔にさせるなんて、やっぱり甘いものは偉大だぜ。
俺や祐斗が食ってもこうはならんし。
「なあ、アーシア」
「はい?」
ほへぇ~と幸せそうなオーラを出しながら、甘さの余韻に浸るアーシアには悪いが、そろそろ苦い現実の時間だ。
「アーシアは天使や堕天使、悪魔が幻想上の生物ではなく現実に存在するってのは……理解しているのか?」
まずはそこからだ。
「!?」
一瞬、驚いたような顔をして俺の顔をまじまじと見てから……
「……はい」
今にも消え入るような小さな声……だが、はっきりと彼女は肯定した。
「やっぱり君は、”
はい。これで「ただの人間が、何かの手違いでこの町に呼び出された」って可能性が綺麗に消えた。
「ということは……イッセーさんも?」
「ああ。ただし、俺は人間じゃなくて……
「えっ!?」
アーシアが息を呑むのがわかったが、ここでは勢いで続けさせてもらおう。
「俺は堕天使に襲われ、相打ちになり命を落とした”
***
「そんな……そんなことって……」
混乱の気配を見せるアーシアだったけど、
「現実さ。ちなみに俺が堕天使に狙われた理由は、種類は違うがアーシアと同じく『神器を体に宿してたから』さ。その存在を感知した堕天使に『危険
「あ、ありえないです……堕天しても天使様なのに……」
がくがくと震えだすアーシアだったけど、
「そうか? 連中が堕天した理由を考えりゃ、さほど不思議じゃないさ。欲望に忠実なのが連中の売りだろ?」
実はその特性自体は別に嫌いじゃない。欲望に忠実? 結構なことじゃないかとさえ思ってる。
そういう手合いの方が戦い易いのは確かだ。
もっともその流れで言えば、欲望に忠実に襲撃して、人間風情に返り討ちにあってりゃ世話ないけど。
そういう意味ではレイナーレは堕天使というより
そして、この反応を見る限り、
(あちゃ~。この様子じゃ【教会】の実態とか知らないで来たっぽいな)
騙されたわけでもないが、真相を知るわけでもない……一番、微妙なパターンだ。
「それでさ、アーシア」
「……は、はい」
伝えた俺が言うのもなんだけど、顔面が蒼白になってしまっていて少し可哀想に思えた。
でもここまで伝えたら全部言わないと逆に意味がない。
「言いにくいんだけど……アーシアが向かってる
皆様、ご愛読ありがとうございました。
事前に把握していた情報の量と質の差から、原作と異なる行動をイッセーが示したエピソードは如何だったでしょうか?
最早、原作とはあらゆる前提が違いますので、だからこそイッセーの立ち位置も、その立ち位置から下される決断も変わってくる……そんな話でした(^^
もちろん、出会い方が同じでも意味が違えば、その後の結果も自ずと違うはずです。
レイナーレも既に文字通り昇天してますし。
それにしても……祐斗と
さて、真相の一端を知ったアーシアはいかなる決断をするのか?
それでは皆様、また次回でお会いできることを期待して!