俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。
今回のエピソードは……ソーナおぜう様の意外な一面が見えたり、一誠の求める強さが「肉体などの個としての一元的な強さ」って訳ではないような部分が見えてくるかもしれませんです(^^

せっかく生徒会に所属し戦術家/策士のソーナに仕えてるので、頭を使ってもらおうって感じです(笑

そしてラストには……





第07話 ”パトロールです!”

 

 

 

さてさて、時は優雅な放課後。場所はいつもの生徒会室。

俺、兵藤一誠は会長ことソーナお嬢様に生徒会終了後、とあるプランを提示していた。

 

「チラシ配りのついでにパトロールですか?」

 

「ええ」

 

俺は頷く。

オカ研の新人君……(さじ)だったっけ?

ともかく彼同様に俺も悪魔の新人研修を受けている。

具体的には、悪魔契約勧誘のチラシ配りと契約がとれた場合、その履行だった。

一種の街頭営業ということだ。

これも一種の通過儀礼(イニシエーション)、悪魔として上に昇るための1stステップなので決して蔑ろにしていい物じゃない。

 

「実際、駒王町には『()()()()()()』以降、天界勢力が撤退したことで空いた小さな組織力学的空白に、代わって堕天使勢力が入り込んでる……奇しくも俺自身の命でそれを証明してしまいましたから」

 

と俺は思わず苦笑してしまう。

 

「一誠、笑い事じゃないですよ? ”リアスの前任管理者”のことを貴方が何処でどう知ったのかは、あえて聞きませんが……深入りはしてませんよね?」

 

じっと、心の奥を覗き込むように俺を見るソーナお嬢様のアメジスト色の瞳は、相変わらず綺麗だ。

 

「”Curiosity killed the cat(好奇心は猫をも殺す)”……猫好きには無視できない諺です」

 

「結構」

 

ソーナお嬢様は満足げに小さく頷き、

 

「こちらにも一応、情報が回ってきましたが……一誠、貴方が倒した中級堕天使はレイナーレで間違いないですね?」

 

「ええ。偽称じゃなければ。まあ、あの時のレイナーレの様子から見て、”たかが人間風情”に偽称する必要があったとは思えませんが」

 

「だとしたら一誠、貴方はけっこうな大物を討伐したことになります。お手柄ですね?」

 

「えっ?」

 

「レイナーレは、どうやらただの中級堕天使という訳ではなかったようです」

 

「というと?」

 

スッとお嬢様は目を細め、

 

「【教会】を僭称する、『過激(カルト)な非主流派の好戦的堕天使と、その下僕となった本家本元の教会から追放された”()()()悪魔祓い(エクソシスト)”の寄り合い所帯』……そう呼ぶべき組織の”()()”だったようですね? 組織の存在意義的に悪魔の殺害やテロを目論んでいたようですが……」

 

エクソシストを配下におくならそりゃそうか。

堕天使ってのは要するに力や欲に溺れ天使にあるまじき行いをした「堕落した天使」なのだから、元を考えれば悪魔を殲滅するほうが気楽なんだろう。

 

「……拠点は判明してるんですか?」

 

「最新の情報によれば、天界勢力が先ほど話題に出た”前任者”の時代に使っていた、町()()()教会を無断使用してるみたいですよ?」

 

「笑わせてくれますね~。悪魔蔓延(はびこ)る”背徳と背信の街”に、唯一つ建つ教会は主の加護を失い堕落した者共(ひしめ)く”暴力教会”? どこかの漫画じゃあるまいし」

 

するとお嬢様はクスクスと笑い出し、

 

TPボート(魚雷艇)に乗った運び屋一味に、各国マフィアの出張所に南米産の重武装メイドが居れば完璧ですね?」

 

えっ?

 

「……まさか、ソーナお嬢様も”黒い珊瑚礁”をお読みで?」

 

生徒会は終わってるし、居るのはお嬢様と俺、それに椿姫先輩だけなので呼称は問題ないだろう。

基本、校内授業時間と生徒会は会長&副会長、それ以降&それ以外はソーナお嬢様と椿姫先輩だ。

 

「こう見えてもソーナ、ああいう活劇物(アクション)が存外に好きなんですよ?」

 

い、意外だ……

 

「これでも一応、上級悪魔ですから。アクションもホラーもバイオレンスもドンと来いですよ?」

 

お嬢様の新たな一面を発見した瞬間だった。

 

 

 

***

 

 

 

「それにしても……どんなに末端や瑣末でも、組織一つ運営していたってことは、レイナーレは見た目や言動よりは有能だったみたいですね?」

 

人は見かけによらないと言うけどさ……どうやら堕天使にもそれは当てはまるらしい。

ボンテージもどきの恥ずかしい格好で勝ち誇った高笑いしていた鴉女(レイナーレ)がねぇ……ん? ちょっと待て。

 

「ソーナお嬢様、レイナーレを俺が屠ったってことは……現在、【教会】ってどうなってるんですか?」

 

「一誠、いい質問です。『唐突にトップを失った組織がどう混迷し、瓦解するのか?』といういいモデルケースになるかもしれません」

 

「……つまり、統制を失っている?」

 

「まだ深刻な事態には至ってないようですが、ね」

 

思わず溜息を突きたくなった。

 

「……本格的に迷走する前に、ある程度は先手を打っておいたほうがいいかもしれません」

 

「先手とは?」

 

お嬢様は興味深そうに目で笑った。

 

「この際、今起きてる状況説明とその考察を踏まえ、”魔王レヴィアタン様”に報告書(レポート)として提出。然るべき外交チャンネルを通じて堕天使の上層と連絡/協議し、事態の収拾を図る。最悪でも『堕天使勢力とは()()()()()()()()』としての認定だけもらえれば、今回の一件がどう転ぼうと悪魔と堕天使の大規模衝突には発展しなくなる」

 

”魔王レヴィアタン様”こと”セラフォルー・レヴィアタン”様は、悪魔の世界である『冥界』の外交における最高責任者だ。

他勢力に対する顔の広さ、コネクションの多さは半端じゃない。

 

「一誠、続けなさい」

 

気のせいだと思いたいんだけど……ソーナお嬢様と椿姫さん、なんだか楽しんでね?

 

「そのような情況になれば、【教会】残党殲滅の大義名分が立ちます」

 

要するに外交で筋を通して堕天使主流派の首魁クラスから『【教会】なんてテロ組織、うちとは関係ありません』ってお墨付き貰ってから残党をボコろうってことだ。

 

普通に考えれば、悪魔が実効支配する街で悪魔狩りするなんて正気の沙汰じゃない。

というかこんな一歩間違えば大戦争の引き金になりかねない火薬庫みたいな街に、過激派が居座るなんて、堕天使主流派だって冗談ではないだろう。

ドライグが夢で教えてくれた「勝者なき三つ巴の戦争」の顛末が事実なら、小競り合いならともかく、彼らだって先の大戦の消耗から立ち直りきれてない以上は大規模戦は避けたいはずだ。

 

 

 

「一誠」

 

「はい」

 

「先のパトロールの件は認めましょう。以上のような情勢が情勢ですから、不用意な行動は慎むように」

 

「はっ」

 

そういえば、最初はその話からだったな。

 

「それとレヴィアタン()へのレポート製作と提出、折衝は貴方が責任を持って行いなさい」

 

「えっ!? いや、ですがレヴィアタン様はソーナお嬢様の実の……」

 

「い・い・で・す・ね?」

 

「……はい」

 

 

 

フフ……主の命令に逆らえる執事なんていないのさ。

悪魔でもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************************************

 

 

 

 

 

結局、その日は俺は街頭営業は休止し、ソーナお嬢様から渡されたレヴィアタン様へのレポート製作に勤しむことになった。

ところで俺みたいな新人転生悪魔が、シトリー家の紋章に擬態した封印術式付の”Secret”のスタンプが押された資料を読んでいいのだろうか?と疑問に思うが……

 

「にゃあ♪」

 

「気にしないでいいって?」

 

膝の上に陣取る黒歌の頭を軽く撫で、俺は作業を続行する。

本人ならぬ本猫の自己申告によれば、妖怪”猫又”らしい黒歌は非常に賢い。

 

実際、俺の膝の上にちょこんと座りスリスリしてくる以外はなんの邪魔もしないし、それどころか面倒な仕事で疲れた頭と心に癒しを与えてくれる。

 

「黒歌、ありがとうな。いつも傍にいてくれて」

 

「にゃおん☆」

 

日付が変わるころ、俺はようやくまとまったレポートをソーナお嬢様から「シトリー家の執事なら、例え見習いでも必需品」として貰った専用端末からレヴィアタン様のところへ転送し、ようやく眠りにつけたのだった。

 

ん? ちょっと待て……

ソーナお嬢様からレヴィアタン様への直通転送が出来る端末を貰ったってことは、

 

「これからも連絡役、俺がやれってこと?」

 

やめよう。

なんかロクでもない未来しか浮かんでこない。

 

 

 

***

 

 

 

さて翌日である。

生徒会終了し、昨日の経過報告をソーナお嬢様に告げると、本日は早々に愛用の赤い自転車(ロードバイク)で街に繰り出す。

本当なら俺は自転車通学じゃなかったんだけど、今日からの任務の関係上、昨日のうちに生徒会長(ソーナお嬢様)直々に許可を貰ってある。

 

もちろんチラシ配りなどの新人悪魔研修兼務のパトロールだけど、機動力はあって困ることはない。

 

(そろそろコンポーネントも交換するかなぁ……)

 

俺の愛車、スペシャライズド社の”ターマック・エリート”ってモデルだが、消耗品のタイヤやチェーンは定期的に、元々物足りなかったホイールも既に交換してあるんだけど、ギアとか変速機とかの「コンポーネントもそろそろ交換したほうがいいかもしれない。

元々去年からトレーニングの一環で毎日相応に乗ってたせいで磨耗してるような気がしてたけど、悪魔になって入力するパワーが上がったせいか、一気にそれが進んだ気がする。

とどのつまり、コンポーネントも程度の差こそあれ消耗品だ。

 

(いっそ”アルテグラ”にでもすっかな……高いけど)

 

もともと俺の自転車についていたのは”105”ってShimanoのロード用コンポーネントの中でも中級グレードで、アルテグラからは上級グレードだ。

自転車の部品の場合グレード差=価格差は、モロに精度と強度に跳ね返ってくる。

 

 

 

そんなことを考えながら街を流していると……

 

「んっ?」

 

視界の先には、でっかいトランクを置いてなにやら手に持った紙片を見ている『()()()()()らしきものを着た少女』がいた。

 

(シスター……だって?)

 

いくらなんでも不自然だ。

ソーナお嬢様はなんて言ってた?

この町の教会は一つしかなく、しかもそこは既に「本来の役目を失っている」のだから。

 

「まさかさっそくパトロールの効果がでるなんてな……」

 

俺は頭を抱えたくなる気分になりながら、

 

(せめてコスプレかなんかであってくれよ……)

 

俺の心配が杞憂で終わることを神ではなく魔王……関係的にレヴィアタン様に祈って、少女に声をかけることにした。

 

レヴィアタン様に祈ってる時点で、もうホントなんだか色々駄目な気がするけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
実は、それなりに色々考えてるイッセーの一面が出てきたエピソードはいかがだったでしょうか?

ぶっちゃけ、彼の行動パターンの違いは生い立ちの違いでもあるし、また仕える主君の違いもあるし、無意識で刻み込まれた”見習い執事”という兵隊(ポーン)とはまた違う立ち位置の影響もあります。

実際、「強くなる」のは体を鍛えるだけでなく、戦術や戦略を理解し倒すべき相手にあったプランを選択する上でも頭も鍛えないと強くなれません。
ソーナが一誠にもとめる基準は、リアスより厳しいですからね。性格的に(^^
一誠がある程度”出来る”と判断されれば尚更です。
そして執事は主を補佐するのが仕事ですから。

さて、ラストにでてきたのはもちろん、あの”シスター”ですが……果たしてどれだけ原作と乖離するのか?
それでは皆様、また次回でお会いできることを祈りつつ。

もしご感想や評価、登録などなどをしていただければ嬉しいです。



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