俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ。
さて、早速今回のエピソードは……前回からの続きですね~。
ラストに登場した、サブタイに答えが書いてある”謎の少女(棒)”が本格参戦です。

前半はいつもどおり語り部はイッセー。後半はちょっと珍しい視点から一人称で語られます。

白猫は()()()、何を見て何を考えたんでしょうね?





第06話 ”仔猫、邂逅です!”

 

 

 

「じぃー」

 

ダブルノックダウン状態で、仲良く草地に大の字になってる俺と祐斗を見つめる体操服姿の童女……

短い白い髪が特徴の、ちょっと不思議な雰囲気の娘だった。

 

そう、この場所に着いた時から居たのは気付いていたけど、祐斗が紹介するまで聞くのは遠慮していたが……

 

「この娘、だれ?」

 

こうまでガン見されたら、めちゃくちゃ気になる!

 

「えっと、その娘は……」

 

だが祐斗が紹介する前に、その娘は女の子座りをしたままひょいと前脚……じゃなかった右手をあげて、

 

「ども」

 

「やあ」

 

俺も寝転んだまま右手を上げる。

うん、なんかシュールだ。

 

「一年の”塔城小猫(とうじょう・こねこ)”。オカ研所属で祐斗先輩の後輩にあたります」

 

「ああ、君が」

 

なるほど。

この娘が、元浜(ロリコン)が言ってた『駒王学園の小さき至宝』ね。

 

「? 私のこと、御存知なんですか?」

 

「クラスメートが騒いでた。オカ研にえらい可愛い1年生がいるってさ」

 

本当はこの後に、「美人の御姉様二人に可愛いロリ後輩……オカ研に死角なしっ!!」と盛り上がっていたが、言わぬが花だろう。

正直、同類に思われたくない。

 

「可愛い……ですか?」

 

表情は薄いが、不思議そうに小首をかしげる塔城に、

 

「客観的に見て、可愛いんじゃないか?」

 

うちの愛猫(黒歌)には負けるが。

ああ、なるほど。塔城の可愛さは、女の子ってよりそっち(小動物)系の可愛さか。

 

「どうも」

 

「? 別に礼を言われることじゃないと思うけど?」

 

 

 

「祐斗、この娘もグレモリーお嬢様の眷属なのか?」

 

「そうだよ」

 

「昨日の夜、祐斗先輩が電話した後、妙に嬉しそうだったので問い詰めてみました。そうしたら前々から噂を伺っていた兵藤先輩と鍛錬すると聞き出したので、興味本位でついてきてみました」

 

「祐斗……」

 

「ごめん。待ち伏せされて振り切れなかった……」

 

視線を逸らす木場きゅんである。

力関係のよくわかる話しだなぁ、おい。

祐斗の性格上、女の子を強引に振り切ってとかできそうもないしな。

 

「いや、別に謝るようなことでもないし。というかあの時間まで一緒に居るって……」

 

そこそこ遅い時間だったぞ?

 

「もしかしてデート中だったとか?」

 

「まさか」

 

「ないよ」

 

うん。二人同時にスパンと切り落としてきた。

そこまで切れ味鋭くしなくてもいいんじゃないか?

 

 

 

「単純に新人さん研修を兼ねて、オカ研全員で”はぐれ悪魔”退治に行ってただけです」

 

「えっ? オカ研にも新人さん入ったんだ。ああ、そう考えれば塔城もそうか」

 

「いえ。厳密には私は違います」

 

塔城は首を横に振り、

 

「確かに一年の私はオカ研部員としては新入部員ですが、部長の眷属悪魔としては数年来になりますので、新人悪魔(ビギナー)というわけではありませんので」

 

「部員としても転生悪魔としても新人なのは、2年C組の”匙元士郎(さじ・げんしろう)”君って子だよ」

 

そうフォロー入れてくれるのは祐斗で、

 

「部長の使い魔を人間と勘違いして、車に轢かれそうになったところを身を挺して庇ったみたいです。その時、瀕死になって悪魔に転生しました」

 

へぇ~。テンプレ神様転生物の始まりっぽいけど、リアルで実行するなんて……

 

「優しくていい奴じゃないか?」

 

うん。シチュエーション的に一般人なら普通は動かないはずの体を動かしたのだから、中々大したものだと思うぞ?

 

「僕もそう思うよ」

 

祐斗は同意し、

 

「あれで部長や副部長のおっぱいをチラチラ盗み見て、鼻の下を伸ばしながらデレデレしなければ、素直に尊敬できるんですが……」

 

「こ、小猫ちゃん!?」

 

この娘、しれっと毒を吐くタイプか?

 

「俺から言えることじゃないけど、相手は思春期真っ只中の男子高校生だ。健全な男子の正常反応を許してやれとは言わないけど、大目には見てくれると嬉しいね」

 

 

 

「……兵藤先輩は、そういう雰囲気ないですね?」

 

「基本、クラスでボッチの悪魔ですから」

 

「それは私も祐斗先輩も同じです」

 

「こ、小猫ちゃん……」

 

言いにくいことをホントさらっと言う娘だなぁ~。

 

「まあ、なんだ……」

 

さて、どう言えばいいんだ?

 

「まあ、武一辺倒の無骨者に色恋沙汰を問うのも無粋ってもんだろ? そういう意味じゃ、現代の男子高校生としては不健全なんだよ。俺はさ」

 

 

 

***

 

 

 

「ではその不健全な兵藤先輩に、無骨さを見込んでお願いがあるんですが……」

 

「とりあえず言ってみなよ」

 

表情乏しい感じだけど、でも反面、意外とグイグイ来る押しの強い娘なのかな?

いや、こういうタイプは自分に忠実で嫌いじゃないけど。

 

「眷属悪魔同士の親睦を兼ねて、ちょっと稽古つけて欲しいかなっと」

 

そう意外でもない申し出だった。

 

「一誠君、できれば聞いてあげて欲しいんだ。小猫ちゃんが初対面の人とこれだけ饒舌に話すというのは、とても珍しいことだから」

 

「祐斗先輩、推薦してもらえるのは嬉しいですけど……不要な情報が混入してます」

 

 

 

なんかこの二人のコントをしばらく見ていたい気もするけど……

 

「俺でよければいいよ。ただ、俺の体術はかなり我流入ってるけど?」

 

「かまいません」

 

「そっか……よっと」

 

ダメージも回復した俺は跳ね立って、

 

「じゃあ、さっそくやろっか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****************************************

 

 

 

 

 

あっ、どうも。

こんにちはです。

いきなり視線が切り替わって驚かれたかもしれませんが……塔城小猫です。

今、私は念願だった兵藤先輩との組み手を実現しています。

 

というより、今日こそ兵藤先輩に会おうと強引に祐斗先輩についてきた甲斐がありました。

 

私が兵藤先輩を知ったのは、そう昔のことではなく……そう、ちょうど半年前くらいのことでしょうか?

高等部に上がる前から部長の眷属として私も祐斗先輩も活動していましたが、ある日、祐斗先輩から漂う雰囲気が柔らかくなったことに気が付いたんです。

 

私は基本、他の方が転生悪魔……部長の眷属になった理由を深くは聞きませんし、そのスタンスは今でも崩してません。

誰にでも話したくない過去はありますし、もちろん私だって例外じゃないですから。

 

でも祐斗先輩のどこか笑顔の裏に壁を作ったような……ピンと一線を張り、そこから誰も中に入れないような張り詰めた雰囲気は気になってはいました。

 

でも、いつの頃からか祐斗先輩の笑顔が変質したことに気付いたんです。

 

綺麗で整ってはいるけど血の暖かさが感じられない”()()()()()()端正な笑顔”……それが私の持っていた祐斗先輩の笑顔のイメージでした。

 

だけど半年くらい前に、柔和に……悪魔なのにこんな言い方はおかしいかもしれませんが、血の気が通った”()()()()()笑顔”を祐斗先輩は浮かべるようになっていたんです。

 

これで興味がわかなければ嘘でしょう?

というわけで、私は早速祐斗先輩に逃げられないようにマウントポジションをとりつつ、顔をキスが出来そうな距離まで近づけ瞳を真っ直ぐに覗き込んでっと……副部長式”レッツ・尋問♪”のお時間です。

 

 

 

『その……友達ができたんだ。一緒に高みを目指せる友達が』

 

その時、私が受けた衝撃をなんと表現すればいいんでしょう?

はっきり言って、『僕、彼女ができたんだ。実はもう妊娠してるんだよ』って言われたほうがまだ衝撃は少なかったでしょう。

 

いえ、祐斗先輩は基本的にイケメンという生物でおモテになりますから、むしろ浮いた話一つないほうが不自然なくらいですし。

 

でも、「友達」なんて未知な単語が出てきた以上、しかも相手はどうやら人間だというのに「一緒に高みを目指せる」なんて祐斗先輩にあるまじき手放しの賛辞……これは聞かないと夜も眠れません。

夜も眠れなければ、昼間……授業中に寝るしかないので、私の成績が悲惨なことになること請け合いです。

ならば、ここはそのような事態を避けるために根掘り葉掘り聞くのが吉というものでしょう。

 

話したくない過去ではなく、現時進行形の出来事なので問題ないですよね?

 

 

 

もっとも私が何度も祐斗先輩に兵藤先輩の話をせがむもんですから、部長にはすっかり誤解されてしまい、

 

『最近、祐斗と小猫、やけに仲がいいわね? あんまり羽目を外さなければ煩いこと言わないから、安心していいわよ♪』

 

なんて生暖かい目で見られたときのやるせなさを、皆さんには理解してもらえるでしょうか?

 

 

 

***

 

 

 

こんなことがありまして、兵藤先輩の情報を入手した私はこうして会える日を楽しみにしてたんです。

そして晴れて高校へ入学し、なんら理由をつけて二年の教室に出向いて、偶然を装い接触するチャンスを図っていたのですが……

 

なんと兵藤先輩が中級の堕天使と相打ちになり、鬼籍に入りかけたところにシトリー様の手により悪魔に転生して生きながらえるという予想の斜め上すぎる展開!

 

ともかく、そのような紆余曲折があって、本日このような形で結実してるのですけど……

 

「えい」

 

”ビシッ”

 

(これは想像以上に……)

 

嬉しい誤算と言えば誤算なのですが、さすが祐斗先輩を変えた(おとこ)です。

剛力無双な筈の私の攻撃が一向に()()気配がありません。

 

(どうしたものでしょう……)

 

正直、攻め(あぐ)んでます。

 

 

 

用力(ポンイー)/不用力(イーポンイー)ってやつかな?」

 

えっ? 兵藤先輩、なんですかその謎ワード?

 

「ああ、確か中国武術の考え方だったと思ったけど……塔城って、剛力にこだわるあまり柔軟性に欠けてる。不必要に力んでるところがあって、動きが妙にぎこちないっていうかさ」

 

「そうなんですか……?」

 

「今の塔城に必要なトレーニングってさ、もしかしたら”()()”とかかもしれないぞ? 塔城の体格や筋肉のつき方から考えれば、本来もっと柔軟な動きに対応できると思うし」

 

なんだか面白くなってきそうです……!

 

「柔軟さが出れば俊敏さに繋がる。俊敏さは祐斗のような純粋なスピードスターの専売特許じゃないしな。それに柔軟さや俊敏さで回避力を上げたり”受け流し”をマスターすれば、結果的に相対的防御力は引き上がる、か。塔城は既に力は十分だからな」

 

(ああ、いい人なんだな)

 

いえ、悪魔ですけど。

でも私はついそう思ってしまう。

今日あったばかりの、それも「招かれざる客」として追い返されてもおかしくないのに、それでも真剣に私のトレーニングメニューを考えてくれてる……

 

根っからの武人というのも当たりだろう。自分で言うとこそばゆいけど「磨き甲斐のある原石」があればついほっとけなくなる……そんな気質も見え隠れしている。

 

でも、同じ根っこからの部分でやはり兵藤先輩は善性が見えてしまう。きっと本人の自覚のないままに。

 

いつの間にかリカバリーしていた祐斗先輩と目が合った。

あっ、苦笑している。きっと兵藤先輩にはいつものことなんだろう。

 

 

 

「塔城じゃないです」

 

「えっ?」

 

思考を中断させてしまってすみません。

でも、やはりこれから『()()()()()()()()()()()()()()』なので、やっぱりこう呼んでほしいです。

 

「”()()”ですよ」

 

だって祐斗先輩と同じ、《私の先輩》なんですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
平行世界(げんさく)と比べ、抑揚は相変わらず抑え目ながら饒舌に雄弁に喋る小猫ちゃん登場回はいかがだったでしょうか?

匙がイッセーと立ち位置トレードする感じにオカ研のルーキーになっていて、どうやら”はぐれ悪魔討伐”のチュートリアル・イベントも完了したようです。
ただ、このはぐれ悪魔がバイサーだったかは不明です。

さて、生徒会に入ってしまったイッセーに代わり、オカ研(グレモリー)側の語り部を担うのが実は祐斗と小猫だったりします。

二人揃って生い立ちは原作と大きく変わりませんが、小猫は原作以上に周りを良く見てよく考えているようです。
「これも一種の強化フラグだよな~」と思っていたら、本当に強化(一誠)フラグ(物理/格闘)が祐斗と同じく立ってしまいましたが(^^

小猫はきっと、「原作とはまた形の違う絆」をイッセーとの間に育んでkれるのでは?と作者ながらに期待してたりして(笑

次回からは、なんとなく原作を掠めるような天界になるかもしれませんが……
それでは、また次回にてお会いできることを祈りつつ。

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