俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。
さて、今回からEXステージ02に入ります。

本編ではフォローしきれなかったキャラやエピソードにスポットライトを当てていこうと思ってますが、その第一弾は……




EXステージ02 ”Steps on Offstage”
第51話 ”サキュバス”


 

 

 

それは世界のどこにも物理的には存在しない場所……

霧に包まれたような、そんな”不確かな場所”に、ふと”()()”が出現する。

 

「ドライグ、やっほ~♪」

 

『来たか。”アイカ・()()()()()()”』

 

「んふふ。”計画通り”にシトリーのおぜう様を、篭絡できたみたいね?」

 

『ああ。お前が「夢を通じて」相棒を鍛えてくれたお陰だ。感謝する』

 

「いいよ別に? どっちにしても兵藤が女の子に興味持たないままだったら、同じクラスのうちに”()()”させて()るつもりだったし」

 

『意外だな? そんなに相棒を気に入ってたのか?』

 

「当たり前じゃない? ”女夢魔(サキュバス)”としてこれだけ堕とし甲斐がある”獲物”なんて、滅多にいないもの♪」

 

『そういうものか? ならば俺は余計なことをしたのかもしれんな』

 

「ううん。最初は”先の大戦”で仇敵だったドライグ(アンタ)に突然、『夢渡り』の最中で接触されたときは、そりゃ驚いたけどさ……」

 

そのボンテージ姿の少女は艶かしく微笑み、

 

「こういうのも悪くないわ」

 

 

 

このドライグと、強いて言うならこの”隔離拠(かくりよ)”で会う、隠すべきところを隠さずむしろピアスを入れて強調してるかのようなのボンテージ少女……背中に三対六枚の蝙蝠のような翼を生やして宙に浮かんではいるが、紛れも無くその()()は、イッセーのクラスメートで”エロ眼鏡(♀)”こと”桐生藍華(きりゅう・あいか)”その者であった。

 

そう、桐生藍華こと”アイカ・アスモデウス”の正体は日本語で女夢魔、あるいは女淫魔と現される”サキュバス”だった。

それも、ファミリーネームから分るように傍流では在るが四大魔王の一角、”アスモデウス”の血に連なるほどのとびっきりな上位女悪魔だ。

 

聖書における【Septem peccata mortalia(七つの大罪)】において、色欲を司るのはまさに悪魔アスモデウスであり、またアスモデウスはサキュバス、山羊、蠍、兎を象徴してるとも言われている。

 

そういう意味においては桐生藍華、いやアイカ・アスモデウスは正しくアスモデウスの血を体現するサキュバスといえよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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実はドライグとアイカの付き合いは”先の大戦”まで遡る。

当時、ドライグが相対した悪魔の一柱がアイカであり、そして見事に旧四大魔王が全滅したあの戦場で生き残ってみせた。

実際、彼女と牙を交えたドライグは、

 

『たかが淫魔の分際で、中々やるじゃないか?』

 

『現在、絶賛大暴れ中の赤龍帝にそう評されるなんて光栄ね?』

 

などというやりとりをしたらしい。

実際、ドライグの記憶に鮮烈な印象を残したサキュバスなど、彼女一人だろう。

そもそもサキュバスの語源はラテン語の”succubo(スキューボ)”、意味は『下に寝る』だ。

もうこの時点で既にこの悪魔の本質を現しているが、伝承によればサキュバスとは……

 

・睡眠中の男性を襲い、誘惑して精を奪う

・襲われる人の理想像に化け、服を着ず下半身は裸で現れる

 

という存在なのだ。

言うならばストーキングと侵入と色欲のエキスパートというところだろうか?

いずれにせよ、戦闘向きの能力ではない。

だが、その中でも例外的な強さを誇った……ドラゴンとガチに戦って、勝てないまでも生き残りなおかつ離脱できた規格外のサキュバスこそ、アイカだったのだ。

 

 

 

だが、アイカは”先の大戦”が自然停戦に陥ったとき、忽然と姿を消した。

一説には、他勢力の刺客に暗殺されたとか、戦後を考え「アスモデウスの名を持ち、武勇にも優れ名を馳せたサキュバス」という歪んだ存在ゆえに、戦後の冥界支配体制の中で彼女の存在を疎んだ悪魔により粛清されたなど諸説ある。

 

だが、その真相はいずれでもなかった。

停戦直前、単なる三大勢力の消耗に終わった戦いに言いようの無い虚しさを感じ、冥界に戻る気も起きずに、自ら望んで”MIA(作戦中行方不明)”になったのだ。

 

彼女の名は未帰還者名簿に綴られ、以後、”アイカという響きの”を軸にした名を名乗り、長きに渡り人の世界で生きてゆくことになる。

 

基本、若く美しいままの彼女は人の世に紛れ、周囲の親交のある人間に合わせて人なら老いる歳に忽然と現実世界より姿を消し、サキュバスの特性のまま夢を渡り歩き気に入った男の精を(すす)り、自分を知りうる者が全て天に召されるとまた現世に姿を現す……その繰り返しだった。

 

そして時には男の夢に潜み、世界を渡り歩きやがてこの”駒王町”に辿り着いたのだった。

 

 

 

『それにしても……目と鼻の先に魔王の妹達がいるのに、よくこの街に潜もうとしたものだな?』

 

「バッカにしないで! セラフォルーやサーゼクス本人ならともかく、まだ毛も生え揃ってないような小娘(おぼこ)に勘付かれるほど衰えてないわよ。目の前にいたってやり過ごせる自信くらいあるわ」

 

とフンと鼻を鳴らし、

 

「サキュバスのスキルを舐めないでよね? 淫行が本職だけど、陰行だってプロフェッショナルよ。私に忍び込めない寝所なんてないわ!」

 

『もっとも俺には勘付かれたがな』

 

「ぐっ……まさか()()()()がこんなところにいたとは思わなかったわよ」

 

リアスやソーナが同じ学校にいながらアイカの存在を感知できない大きな要素の一つは、二人が「アイカの存在を知らない」ことが大きい。

彼女の陰行能力(ステルス)はそこまで高く、悪魔としての気配をほぼ0まで隠蔽できる。

だが、それさえもアイカの気配をよく知り、しっかり覚えていたドライグの持つ”龍の超知覚”を誤魔化しきれなかったようだ。

 

もっともそれは、サキュバスの本懐たる『夢渡り』、つまり夢を回廊にして男たちの意識へ入り込み、精を啜る行動中だったせいもある。

悪魔が悪魔らしい行動を行おうとすれば、どれほど微弱でも広義な意味での”()()”は出る。

もっともそれを捉えることができたのは、この街ではドライグくらいだろうが。

 

 

 

***

 

 

 

『夢渡り』の最中に干渉され、引っ張り込まれたのがこの空間である。

抗おうにも例えるならいきなり腕を捕まえられた状態、圧倒的な力の差はどうにもならなかった。

そしてアイカが再会したのは懐かしくも会いたくなかった顔……即ちかつて自分に死の恐怖をこれでもかと植えつけた赤龍帝だった。

 

しかし、そこで彼女は意外な提案をされる。

曰く、

 

『相棒に異性への肉欲的な興味を持たせると同時に、性技を鍛えてやってくれ』

 

なんでもドライグは自分を「偶然見つけた」のではなかったらしい。

リンクしてる兵藤一誠の記憶から自分、桐生藍華というクラスメートがかつて自分が対峙した戦闘系サキュバスという珍しい存在と酷似していたことを疑念に思い、”相棒”……兵藤一誠を夢で鍛える間、網を張っていたらしい。

 

お気に入りのクラスメート……とびっきりの御馳走と考え、つまみ食いせず残していた一誠の中に赤龍帝が眠っていたことは痛恨だったが、かといって彼の提案はアイカにとってそう悪いものじゃなかった。

 

 

 

”憧れ”に対する焦がれ……強すぎるその思いゆえに、ドライグから見て一誠は「強さを求める」ことに固執しすぎていた。

強さを求めることは悪いことじゃない。いや龍という戦闘種族にとり、力や強さを追い求めるのは本能であり正義だ。

一誠は強さが一種類だけではないことを若くして気付いただけでも及第点だったが……

 

だが、『天空の彼方に輝く白銀の翼』に手を伸ばそうとするばかり、他者との繋がりをおざなりにする傾向があった。

無自覚のまま”孤高の強さ”を求める……悪いことではないが、ドライグは『それだけでは届かない領域』があることを、多勢に無勢で封じられた過去の自分とその先に得た多くの宿主(人間)達との交流で知ってしまった。

 

『特に相棒は成長期だからな。多くの協力があって困ることは無い』

 

「アンタも変わったもんね?」

 

それがドライグの計画(プラン)を聞いたときのアイカの素直な感想だった。

 

「それにしても、牝を手懐けて”群れ(ハーレム)”を作らせようなんてどういう心境の変化?」

 

『組織という強さは無視できん。そして龍としての性質を考えれば相棒に向くのはその形態だ』

 

「なるほどねー。納得できる理由も貰ったし、私にも多大なメリットがある話だから、それは受けてあげてもいいけど……」

 

彼女はにんまりと笑い、

 

「ただし趣味に走るよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、合意を得たその日から彼女は昼間は桐生藍華として一誠との馬鹿話に興じ、夜はドライグとの戦闘訓練に興じる一誠の夢……無意識領域へと入り込んだ。

 

ドライグとのリンクが一種のバックドアとなり、一誠の夢に入り込むのは児戯にも等しい行為だった。

 

そしてアイカは宣言どおりの行動を開始した。

無垢な……無垢すぎた一誠の無意識を犯し汚し、真っ白なそれをどす黒く染め上げる作業に終始した。

そして、女の体の柔らかさと扱いを刻みつけたあと、今度は喜ばせ方を仕込んだ。

 

そして、彼女は最後に自身の趣味である「サディスティックなご主人様」に成長させるべく、倒錯的な愛の形を教育する。

 

思ったより順調に進んだのは、椿姫が渡した”()()”とアーシアという”()()”により下拵えができていたからだろう。

 

アーシアに関しては自分が誘導したりもしたが椿姫のそれは偶然であり、それには感謝していた。

 

参考までに言えば、アイカにしてみれば黒歌はともかくセラフォルーに行ったそれは、「まだ手緩い」程度のそれであった。

 

「大体、セラフォルーって元は”性愛の悪魔(シトリー家)”でしょ? あの程度でぶっ壊れるような可愛げのあるタマじゃないわよ」

 

シトリーは、自分が血を引くアスモデウスやベルファゴールに並ぶエロ悪魔の家系だ。

その為そっち方面の実力もよく知っていた。

少なくとも自分と同じ血筋なのに、全然アスモデウスらしくない辺境に追いやられてふんぞり返ってる小物よりは遥かにツワモノだろう。

 

それに夢の中の仮初の肉体とはいえ、自分を蹂躙し調教し、一晩で何度と無く絶頂へ導く実力に至った一誠の実力は、まだまだこんなもんじゃないはずだった。

 

 

 

***

 

 

 

そして、その過剰で過激な経験を毎晩彼女は厳重に封印して帰っていた。

暴走せぬよう、”使うべき時”に備えて。

 

そしてそれが先ごろ成就したのだ。

以下の仕掛けたトラップは発動し、フラッシュバックとなり脳内に再生されたそれは、一誠を衝動と欲望により突き動かされる存在へと変貌させた。

 

それでもドライグとリンクしてリアルタイムで見ていたアイカにしてみれば、()()()にはなったが、期待してたほどは激しくはなかった。

 

(これも兵藤の強すぎる自制心のせいかな……?)

 

だが、今はそれでいい。

自制心やら道徳心やらを溶かすのはサキュバスの得意技だ。

 

 

 

「まだまだ楽しめそうね♪」

 

そうアイカ・アスモデウスは淫魔に相応しく妖艶に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
桐生の正体が明らかになるエピソードは如何だったでしょうか?

いや~、ようやく前々から書きたかった桐生の招待明かし回がようやく書けました(^^
実は彼女、サキュバスですが傍流ではあっても旧魔王の名門アスモデウスの血を引く上級、下手をすれば最上級クラスの悪魔なんですね。
何気にクルゼレイ・アスモデウスの親戚(笑

ただ、何一つメリットの無かった”先の大戦”終盤で嫌気が差し、MIAとなり面白おかしく地上でサキュバスらしく暮らしております。
ついでにイッセー暴走の元凶(^^;

さて、次はどんなエピソードになるのでしょうか?
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!



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