俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。
今回は思ったより難産でした(^^
ちょっと執筆ペースが落ちてきたなぁ~。

いよいよ第二章も終りに近づき、「まとめとこれから」みたいな話になってきます。
言うならば今回のエピソードは、伏線込みの接続回って感じでしょうか?




第47話 ”旧魔王派ってなんですか?”

 

 

 

俺たちで言うところの”始末屋稼業作戦(オペレーション・パニッシャー)”の成功は、様々なところに波紋と影響を残したようだ。

 

オペレーション・パニッシャーの成功は、即ち大王派の一部勢力にとっての”黒歌襲撃計画”の失敗であり、激しく面子が潰れる結果となった。

しかも最後には、襲撃の成功を待って集まっていたところに自分達が送り込んだ襲撃者が()()されたのだから、ますます立つ瀬は無いだろう

サーゼクス様に言わせれば、

 

『まあ、これで少しは跳ねっ返りも大人しくなるんじゃない? あの”()()便()”に死体だけで爆発物を乗せてなかった意味を分からないほど馬鹿じゃないと思いたいとこだね……分らないなら分らないなりの”()()”もあるけど』

 

『例えば?』

 

『今の時点で大王派との全面衝突(ないせん)()()()得策じゃないからねえ。第一、準備不足さ……だから内部粛清(内ゲバ)でも狙うかな?』

 

実にサーゼクス様らしい言葉を頂戴した。

もっとも、現状において冥界の勢力図は保守派で悪魔純血主義の大王派と、掛け値なしに実力至上主義の改革派の魔王派、この二大勢力の対立……というのであれば、まだ話は簡単なのだけど、実は冥界の片隅に追いやられた”旧魔王派”なんてものまで存在している。

 

 

 

旧魔王派は一言で言えば”悪魔原理主義者”の集団とでもなるだろうか?

彼らの主著王は大概が極端で、端的に言えば「人間は悪魔の餌、悪魔と餌以外は全部死ね」だろう。

少なくとも彼らに”他種族との共存”という概念は無く……言うならば、冥界版の『反社会的過激派危険分子』ってとこだろうか?

 

それもその筈で、旧魔王派の名の通り彼らの血筋はサーゼクス様たち四名が()()し、”先の大戦”で戦死した『本来の四大魔王』の血を引く悪魔とその取り巻きだった。

 

 

 

***

 

 

 

大王派と旧魔王派はよく混同されるが、実は相容れない思想の違いがある。

 

大王派:「冥界は高貴なる正統派純血悪魔によって治められ、冥界は初めて安定する。純血の最上級/上級悪魔を頂点にした階級差のピラミッド構造で統治されるべきなのだ」

 

旧魔王派:「()()()()()()()()()()()()悪魔に統治されることが当然であり、必然なのだ。襲名など認めず、世襲のみで正しい魔王は選ばれねばならない」

 

とまあこんな感じ。

極論すれば、大王派は悪魔版の”選民思想(レイシズム)”であるのに対し、旧魔王派それを飛び越えた血統偏重の”排他主義”なのだ。

大王派は確かに種族間のカースト制を模索し冥界の社会システムを構築しようとするロクデナシの集団だが、それなりに実力主義は導入してるし、また社会上層は一応「純血の上級悪魔以上」とそれなりに間口を開いている。

 

しかし、それより始末に悪いのは旧魔王派で基本的な発想は実力とか無関係に『無条件で一番偉いのは魔王の正統血統を引く自分達だけ』であり、『他は全て下等。餌を除外し悪魔以外は全て滅べ』なのである。

なので、例えば大王派の首魁”ゼクラム・バアル”も自分達の下につくべきと公言しており、更には準備もへったくれも無くいきなり再び戦争を吹っかけそうな怖さがある。

 

ついでに言えばその旧魔王派の首魁である三体、”シャルバ・ベルゼブブ”、”クルゼレイ・アスモデウス”、”カテレア・レヴィアタン”は「旧魔王の血を引いてるだけで”()()()()()()”」といういっそ滑稽な裏事情がある。

その組織の性質上、断絶してない72柱の名門上級悪魔の”()()()()()”大王派にしてみれば、ますます受け入れられる組織じゃない。

というよりむしろ、冥界の政治的主導権を巡り反目してるが、天使や堕天使に対する対応(消極的冷戦構造)などの政策的共通項が多い魔王派の方がまだ手を結び易い。

大王派とて三つ巴の大規模消耗戦など御免なのだ。

 

 

 

こんな狂信的で物騒な集団だった為に、珍しく共闘した魔王派と大王派により彼らは”魔王の後継者”を名乗ることも許されず、冥界の奥地に追放刑となった。

もっともそれを反省するつもりも無いらしく、未だ『自分達が正統な魔王だ』と息巻いてるらしい。

こんな不穏分子を生かしておく理由があるのか?とサーゼクス様に聞いたら、

 

『今のところは生かしておいた方がメリットがあるんだよ。証拠も揃ってることだし、粛清自体はいつでもできるしね』

 

とのこと。

あの笑顔からして本当に何か使い道があるようだけど……どうにもロクでもないことを考えてるようにしか見えないのが難点だ。

 

「『魔王派にも大王派にも受け入れられない不穏分子や過激派の”()()()”としては便利なんだよなー。一元管理できるし』あるいは『大王派への牽制になる。あるいは共通の敵が冥界に居たほう方がいざ手を組む必要が出来たときにやりやすい』……とか考えてません?」

 

そう投げかけたら少し考えた後……なぜかサーゼクス様に携帯番号とメアドを聞かれた。

そういや教えてなかったっけ?

セラフォルーお嬢様にでも聞けばいいと思うんだけど?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

 

「さてと……」

 

俺はキーボードから手を離しうーんと背伸びする。

使っているのはノーパソではなくデスクトップタイプのパソコン……のような”()()”。

微妙な言い方だってのは分るけど、要するにアジュカ様から事務処理用の貰った支給品の情報端末だ。

いや、パソコンに見えるし機能的にも同じように見えるけど……絶対、これって妖しい技術使われてるよな?

例えばメインCPUが”バイオ光ニューロチップ”……いや、なんなのさ?

なんか、ダンガムF91やシャロン・アプリコットに搭載されてそうなんだけど?

しかもOSが”マクスウェル10”……ってヲイ。

アジュカ様によれば、

 

『やっぱり創造系(クリエイター)は”マクス”だよなー。モバイルとの親和性高いし。汎用性は”ラプラス”のが上だけど……ああ、それ基本OSはマクスだけどラプラスをかなり高次でイミュレートできるから、使い辛ければラプラスで使ってみろよ』

 

知らんがな。

きっと悪魔界の二大OSなんだろうけど……察するに一般民生でも使いやすいラプラスは某”窓”で、玄人好みマクスウェルが”林檎”ってとこだろうか?

ちなみに俺は見栄を張らずラプラスで使ってます。

というか使い勝手がまんま窓……

 

もし人間界のそれと違うとすれば”冥界文字(デモニカ)”やその他の悪魔が使う文字や言語に対応してることくらいか?

 

いや、それより人間のパソコン用周辺機材が普通に接続できるのは何故だ?

実際繋いでるのはキヤ○ンの複合プリンターだし。

 

俺は書き上げた今回の一連をまとめた報告書をサーゼクス様に暗号化してメール送信し、更にプリントアウトする。

ああ、そういえば人間界のインターネットと違うのは、悪魔が誰でも使うインターネットと基本同じ公開の汎用ネットと、専用回線があるようだ。

無論、四大魔王様へのメール送受信は専用回線で、その辺のカスタマイズはハード/ソフト共に処理してあるらしい。

きっと暗号化も術式処理かなんかかもしれない。

 

俺はプリントした書類を綴じながら椅子ごと振り向き、

 

「よくよく考えれば、これって変じゃないですか? 表向き高校生、かくしてその正体は、ソーナお嬢様の眷属転生悪魔でシトリー家の執事見習い……のはずですよね?」

 

「そだよー☆」

 

と笑顔で返してくれるのは、相変わらずの魔王少女モードでコロンとベッドに寝転がり、お腹の上の黒歌とじゃれてるセラフォルーお嬢様だ。

 

「それじゃあなんで、”始末屋稼業作戦(オペレーション・パニッシャー)”の報告書……表沙汰にできない公文書とか書いてるんでしょう?」

 

ベッドから立ち上がる気配も無いので、俺は立ち上がりプリントアウトしたばかりの報告書(レポート)をセラフォルーお嬢様に手渡した。

 

なんでもセラフォルーお嬢様はディスプレイで見るより、紙媒体で読むの方がお好みらしい。変な所でアナログチックだ。

 

報告書に目を通しながら、俺にベッドに座るように促すセラフォルーお嬢様。

ベッドが俺が座った重みで小さく軋むのを確認すると、

 

「書類仕事も”地上代理人(エージェント)”のお仕事のうちだよ? 派手にバトルだけしていたいのはわかるけどねー☆」

 

 

 

***

 

 

 

「ところでセラフォルーお嬢様、そんな短いスカートでゴロゴロしてると、おぱんつ様が丸見えですよ?」

 

ちなみけっこう少女趣味だ。

もしかして下着まで魔法少女っぽくしてるんだろうか?

キャラ物じゃない分、まだマシかもしんないけど……でも、セラフォルーお嬢様みたいな小柄だけど出るところは出てる女の子が、女児用のそれと大してデザインの変わらないものを着用してるって、なんだかあざとい。あるいはエグい。

 

「いいよー☆ 見られて恥ずかしいの履いてないし☆ それにイッセーちゃんならむしろ見て欲しいかな?」

 

それはまた魅力的なお誘いで……って、そうじゃなくて。根本的な疑問なんだけど、

 

「今更ですが、いつから俺が公式にエージェントに?」

 

「ホント今更だねー☆」

 

クスクス笑うセラフォルーお嬢様だったけど、

 

「答えは”とっくに”だよぉ☆ 今回のお仕事もエージェントだからって処理だし」

 

げげっ!? そんな裏設定が……

 

「具体的には、私がサーゼクスちゃんとアジュカちゃんに紹介したあたりかな? 公式に……の意味の取り方によっては”まだ”とも言えるけど」

 

やっぱり、このお方が基点になっていたか……

 

「? どういう意味です?」

 

「まだ正式な辞令は降りてないから……」

 

何故かセラフォルーお嬢様はムスッとして、

 

「でも、サーゼクスちゃんたらひどいんだよー! イッセーちゃんを独占しちゃ駄目だって言うんだもん!」

 

ちょっと待て……

とてつもなく嫌な予感が……

 

「えっとね、今のところイッセーちゃんは”()()地上代行者”って扱いでの仮身分で、そういう風に申請していたんだけど……」

 

「セラフォルーお嬢様、その時点で色々アウトな気がします」

 

俺が正直過ぎる感想を言うと、

 

「えー☆ だってそうでもしないと、アーシアちゃんのときも今回もここまで深く関われなかったんだよ?」

 

「そりゃまあそうですけど……」

 

確かに後ろ盾も無い小童(こわっぱ)悪魔が一人粋がったところで、何が出来るわけじゃないけどさ。

 

「でも今回はちょっとまずかったかも……サーゼクスちゃん、イッセーちゃんのこと気に入っちゃって『作戦立案から戦闘まで出来て、かといってバトル馬鹿ではなく政治的見地からも物が見れる……セラ一人が楽をするのはズルイと思わないかい?』とか言い出しちゃってさー☆」

 

「俺、そんな明らかに過大評価受けるようなことしましたっけ?」

 

「なまじ有能なのも考え物だねー? きっと”四大魔王直属”って感じになるんじゃないかな?」

 

じょ、冗談でしょ!?

 

 

 

「でもね、イッセーちゃんにも全くメリットが無いわけじゃないよ? 例えば報酬とかね☆ イッセーちゃん、今はソーナちゃんからの”眷属手当”だけだと思うけど、正式な辞令が降りると遡及してまずエージェントの基本給が出るから☆ イッセーちゃんの場合、危険手当とかじゃなくてまだ一仕事辺りの歩合制な”コントラクト・エージェント”扱いだろうけど……全部あわせて、日本のプロサッカー選手の平均年俸くらいにはなるんじゃないかな?」

 

確か1800万円弱くらいだったっけ?

相場が分らないからなんとも言えないけど……傭兵として考えれば、ミッション二つで1800万円って考えれば、かなりの高給取りかもしれない。

 

「もしかして、割と細かいところまで給与体系とかあったりします?」

 

「えっへん☆ 悪魔は契約社会ですから☆」

 

そう言われれば確かに……いや、そうなのか?

アバウトなところは思い切りアバウトなきがするけど。

 

「それにね……今回の報酬はお金だけじゃないよね?」

 

そう言いながら、セラフォルーお嬢様はお腹の上に座っていた黒歌をひょいっと放り投げる。

 

すると……って、えええ~~~っ!?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
さらっと旧魔王派の情報が出てきたり、セラフォルーお嬢様のおぱんつが少女趣味だったりすることが判明したエピソードは如何だったでしょうか?

旧魔王派って、なんていうか……「実力よりも血筋優先で、実力ともなってないのにプライドだけが不釣合いに高い」って印象がありまして。
冥界編のときも「オーフィスの蛇(ウロボロス)」が付与されて”あの実力”ですからね(^^

しかも、サーゼクスが現時点で滅ぼさない理由も、どうやら原作とは違うみたいですし……
もし、書くとしても原作とは異なる展開になりそうです。

そしてイッセーの外堀が完全に埋められ、次は内堀か……?

次回はいよいよ黒歌の人型形態の登場?
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!


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