俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、おはようございます。
さて、今回のエピソードは……主人公(イッセー)が出てきません(えっ?
主役は、強いて言うならサーゼクスとアザゼルでしょうか?
バトルステージの終了と顛末みたいな話です。

そしてどうやら、紅毛の魔王様はブラック・ユーモアがお好きなようで(^^





第46話 ”悪魔清掃組合ってなんですか?”

 

 

 

「なあ、兵藤一誠ってのは()()なんだ?」

 

それが一誠の戦いを初めて直で見た、堕天使総督の言葉だった。

 

「アザゼル、それはどういう意味だい?」

 

代表して質問を受けたのは、種族を超えた悪友兼親友であるサーゼクスだ。

 

「魔力……にしちゃあ変だが、エネルギー総量のわりには戦闘力が高過ぎる。さっきも言ったが、これも疑問ちゃあ疑問なんだけどよ」

 

アザゼルは腕を組み、

 

「赤龍帝の……いや、イッセーの奴、いくらなんでも命を奪うのに躊躇無さ過ぎだろ? アイツが元悪魔祓い(エクソシスト)だったてんならまだ分るが、ちょっと前まで一般人なはずだ」

 

「殺すのに忌避感が無いのが不自然だと?」

 

「ああ」

 

サーゼクスの言葉にアザゼルは頷き、

 

「イッセーが殺人衝動者(シリアルキラー)快楽殺人者(サイコキラー)ってんなら話は別だが……見た感じそれもねーだろ? 『戦闘に対する(たか)ぶり』はあっても『殺しへの高揚感』はありゃしない。散弾ぶっ放した前と後の反応見りゃ明らかだぜ。イッセーにとり散弾撃つまでが戦いで、その後はサーゼクスの言うとおり単なる()()だ。高ぶりも高揚感も冷めた顔で淡々と”後始末”をしてやがる……サイコパス野郎なら、殺す行為自体に快楽を覚えるし殺害事態が目的になる。相手が無抵抗の瀕死なら、むしろ嬉々として蹂躙するんじゃねぇのか?」

 

「つまり?」

 

「なぁ、サーゼクス。人間だけじゃねぇ。悪魔も堕天使も天使も本能的に”同族殺し”を嫌う。何故だか分るか? 俺達が揃いも揃って”()()()()()”だからさ。いくら俺達が人間よりエゴが強かろうと基本的には自分達が”所属する社会(コミュニティー)”を大事にする。理由は言うまでも無くコミュニティーが生まれた根本的な理由、つまり『一人より寄り集まったほうが自己の生存率が上がる』からさ。だから同族殺しは普通、『コミュニティーの維持に不都合な者に対する制裁』として行われる。それ以外の同族殺しは、コミュニティーに不利益になることが多い」

 

「君が犯罪心理学や社会学まで修めてるとは想わなかったよ」

 

「茶化すなよ。恨みとかの感情や殺すことで得られる何らかの利益があれば、そりゃあ殺すかもしれん。だが、イッセーとあの雑魚どもにはそういう繋がりはねーはずだろ?」

 

 

 

「んー……動機ならあるよ? だってあいつら、黒歌ちゃんを害そうとした不貞の輩だもん☆」

 

「にゃあ」

 

アザゼルの台詞に意見を返したのは、サーゼクスではなくセラフォルー&黒歌コンビだった。

 

「それが動機にしちゃあ()()だろ? それにアイツの戦い方は、『必要だと割り切り()()として(こな)してる』奴の典型的な戦い方さ。”心は熱く、頭はクールに”ってな」

 

納得しかねる表情のセラフォルー達だったが、アザゼルは意に介した様子も無く続けた。

 

「サーゼクスやセラフォルーが命じたから仕事として割り切る……ってのもあるかもしれんが、」

 

しかし、アザゼルはまだ気付いていてはいない。

この作戦はサーゼクス達が命じたのではなく、むしろ逆に『一誠の提案にサーゼクス達が乗った』という事実に。

 

「だからと言ってあそこまで淡々と、あるいは粛々と『呼吸するように自然に殺せる』ってのは、経験不足の新米がやろうと思ってできるもんじゃねぇよ。それなりの場数を踏んだ奴じゃないとあんな風にはならん。少なくとも『”赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”を宿しただけの素人(トーシロ)』じゃ無理な話さ」

 

だからこそもう一度問う。

 

「サーゼクス、兵藤一誠ってのは何者なんだよ? ”転生したての新人悪魔”って言い訳じゃ誰も信じんぞ」

 

そう釘を刺してから、

 

「お前たちは一体、何を隠してんだ?」

 

 

 

***

 

 

 

「別に何も隠してないさ。一誠君は元一般人で、成り立ての転生悪魔さ。それ以上でもそれ以下でもない。変わったところがあるとすれば、君の言うとおり”赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”の今代マスターというところかな?」

 

「ヲイヲイ。サーゼクス、そりゃないぜ」

 

「正直に言えば、彼や赤龍帝に関しては謎が多いのさ。君が言う”兵藤一誠の()()()”に疑問を持つのは理解も出来るが、現状ではっきり言えるのは今言ったことだけだよ」

 

アザゼルは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。

サーゼクスが喋ってるのが建前と方便だということは分っていたが、

 

「それにアザゼル、赤龍帝は不明でも”()()()()()()”に関してはむしろ君の方が詳しいんじゃないか?」

 

と切れ味鋭い返し刀を喰らっては、中々深く追求し辛くなってしまう。

 

「……ここいらで引いとけってことか?」

 

「良き将は引き際を弁えてるものだよ?」

 

サーゼクスはどこか胡散臭い笑みで返した。

無論、その笑みの意味は『この場でこれ以上の情報を与える気は無い』である。

 

実際、サーゼクスがわざわざアザゼルをこの”殺戮ショー”に招待したのは、別に友人だからという理由ではない。

駒王町に現れた”はぐれ堕天使”の一件で一誠の存在を掴んだアザゼルに、”一誠の現状のスペック”を見せた上で公開できる”()()()()()()”を示すことで『必要以上の深入り無用』と牽制するためだった。

 

サーゼクス・ルシファー……彼もまた一国を率いる首魁なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

 

()()()()()を終えた後、一誠は現場より姿を消す。

彼自身が長距離の転移魔法を使えるわけではないが、合流地点にはサーゼクスが用意した”回収チーム”が待ってるはずだった。

 

荒野に残されたいっそ無残と言っていい二十数体分の悪魔の躯は、”後処理チーム”が拾い集めていた。

無論、紅毛の魔王はせっかくなので遺体まで有効利用するつもりだろう。

 

一誠のみならずバックアップの各チームも有機的な連動を行いながら淀みなく与えられた作業をこなす。

なるほど、こういう”()()()()”を滞りなくさらりとこなせる体制を持ち、運用してるあたりサーゼクスが魔王筆頭なのも伊達ではないと頷かせる。

 

政治が綺麗事では済まされないのは、悪魔も人間も同じなのだろう。

暗闘も考えようによっては政治の一幕というのは強弁過ぎるか?

ただ、戦争も所詮は政治の一形態である以上は、さほど的外れではあるまい。

 

 

 

***

 

 

 

さて、舞台は変わり……ここは冥界のとある大王派の上級悪魔が仕切る都市、

 

「報告はまだか?」

 

「ああ。予定通りなら、もう襲撃は終わっているはずなのだが……」

 

その一角にある高級レストランだ。

この街の領主をはじめとして、特に大王派の比較的若い上級悪魔達が好んで非公式の会合を開く場所として、知る人には知られていた。

 

”本日、臨時休業”のプレートが下げられたドアから察するに、今日は休業を装った非公開の貸切なのだろう。

 

それもまた無理はなかった。

なにせ本日集まっている上級悪魔達が話している内容が、中々に後ろ暗い。

 

 

 

もうお察しかもしれないが……要するにここに集まっているのは、”黒歌襲撃”をけしかけた()()、いわゆる”大王派の跳ねっ返り”達だった。

 

特徴はと言えば、保守派で古色蒼然とした印象がある”大王派”の構成員にしては若いことだろう。

それもその筈で、彼らは皆いわゆる「戦後世代」、三つ巴の終りなき消耗戦に陥り種の存続の危機にまで至った”先の大戦”が自然休戦に陥った後に生まれた悪魔達なのだ。

 

言うならば、”大王派青年部”というところだろうか?

そして現在、彼らは赤い人曰く「若さゆえの過ち」を重ねるべく議論しているようだ。

 

 

 

***

 

 

 

彼らは金と眷属入りを餌に野良の中級/下級悪魔を抱き込み、襲撃者に仕立てて黒歌を襲わせた。

彼らが優秀と信じて疑わない密使が苦労してかき集められた断片的な情報と、同じく優秀なはずの分析係によって一つ一つは意味の無い情報が繋ぎ合わされ、まるで「ジグソーパズルのように一枚の絵」として芸術的に完成させた結果、黒歌の護送ルートは判明したのだ。

 

グレモリー家やシトリー家が護衛をつけてるかもしれないがそれでも多勢に無勢。

よほどの腕利き……それこそ上級悪魔級でもなければ、護送車に乗せられる程度の人数で二十体を越える襲撃者の群れには対抗できないはずだ。

 

現状、そのような腕利きが今回の護送任務に雇われたという情報は入ってない。

黒歌ごと護衛も一緒に血祭りに挙げられたグレモリーやシトリーは面子を潰されたと怒り狂い、犯人探しを始めるかもしれないが……

 

(それでも問題はないはずだ……)

 

悪魔の一人が内心で呟く。

例え襲撃者が捕まったとしても、自分達との関係や繋がりは浮かぶはずはない。

何しろ、自分達は襲撃者の面々と顔を合わせたこともなければ、名前すら知らないのだ!

権力者が自分の手を血や泥で汚したがらないのは、どうやら人間も悪魔も同じらしい。

 

 

今回の面子は、”裏課業専門の口入(仲介)屋”を通して集められたそれであり、面識はない。

口入屋を通して報酬の半分を前金で払い、襲撃に成功して黒歌(もしくはその遺体)を持ち帰ったときに成功報酬として残り半分を払う手はずだった。

当然、金銭のやりとりは直接ではなく口入屋を通してだ。

 

眷属入りは……実はこの場の面子全員が、真面目には考えていない。

正直、適当にあしらえばいいと思っていた。

所詮、悪魔は実力社会、騙される者が悪いし弱いのはそれ自体が罪だ。

弱者救済などという概念は、悪魔社会にありはしない。

 

身の程を弁えず、小生意気にも「約束の反故だ!」などと言ってきたり、欲をかこうとするならば……その時は、身元不明の死体が増えるだけのことだ。

野良犬がどこの路地裏で死んでいようと気にする悪魔は居ない。

 

 

 

ただ、前金半分を持ち逃げされても癪に障るので、襲撃予定地には見張りと観測を兼ねて自分達の”手駒”を配したのではあるが……

 

 

 

「遅いな……」

 

彼らが待っていたのは、その手駒からの報告だった。

襲撃が終了したなら、その報告がもう入ってきてもいい頃合のはずだ。

 

つまるところ、彼らは”()()()()()()”している四大魔王のことをよくわかっていなかったのだ。

戦場帰りの意味も、「実力で四大魔王を襲名した」という意味も。

 

自分達の作戦が「成功することを前提」としているあたりからもそれは伺えるし、例えば彼らが仲介を依頼した”口入屋”の不特定人数が実はエージェントである可能性など考えもしていないのだろう。

 

彼らは魔王派を侮りすぎていたし、情報管理にしても脇が甘すぎた。

だから……

 

”DuGaaaaaA--------------N !!!”

 

そのツケを払わされることになる。

 

 

 

***

 

 

 

休業中のレストランに前触れなく尻から突っ込んできたのは、何の変哲もない”()()()”だった。

ちなみに、人間世界でのテロを参考に無人遠隔操作に改造されたものである。

しかも御丁寧なことに探知阻害や認識阻害/結界破砕の術式がこっそりかけられ、突っ込むと同時に術式自体が自動消去されるように細工してあったようだ。

 

この会合を勘付かれたくないために護衛も目立つ外にはつけず、また店自体に強固な防御魔法を展開してなかったことが仇にもなった。

 

最初は何が起こったかわからなかった悪魔達だったが……

 

”ガチャン”

 

彼らの見てる前で護送車のドアロックが外れ、中から「”赤黒い何か”」が流れ出した……

 

「うげっ!?」

 

それが何なのかを理解した悪魔の一体は、顔色を変えて小さな悲鳴を上げる。

食べた料理を胃の中から逆流する者が続出した。

 

その時、とある悪魔が護送車の横に筆跡がわからぬように書かれた文字列を見付けた。

そこにはこう描かれていた。

 

 

 

()()()()()の仕方が適切ではなかったので返送いたします。

 

                           悪魔清掃組合”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
闘争の終了と後片付けのエピソードはいかがだったでしょうか?

前半の主役がサーゼクスとアザゼル、後半が名も無き大王派上級悪魔だなんて誰得なんだか(^^

それにしてもサーゼクス様が平行世界(げんさく)に比べてちょっぴり(?)黒い。
というか今回でてきた魔王×3+総督も原作と比べて、強化あるいは先鋭化されてそうですが。

サーゼクス
腹黒強化(政治力/統治力UP)+それぞれの分野に特化した複数の”特殊任務群(タスクフォース)”を使役
効果:対大王派対応力UP、旧魔王派の殲滅率上昇(旧魔王派の謀反施工率低下)

アジュカ
マッドサイエンティスト度UP(開発力全分野上昇)+眷属補正+アザゼルとの共同開発フラグ
効果:悪魔/堕天使用の原作未搭乗アイテムの開発。眷属補正により戦闘ステータスの全面的上昇、開発速度の上昇。

セラフォルー
戦闘力の全面上昇(ステータス全域の底上げ)+乙女回路の実装(イッセーからの好感度UP)+黒歌との同盟(イッセーからの好感度UP)+眷属補正
効果:ヒロイン力の大幅上昇。対イッセーの「巨乳キャラの好感度マイナス補正」を無効化。底上げ+眷属補正により戦闘力の大幅上昇。

という感じでしょうか?
さて、次回もしくは次々回くらいで第二章は終了予定です。
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!







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