俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。
今回のエピソードは……イッセーの戦いを見守る妙に豪華な面子が揃ったギャラリーからの視点になります。

そしてセラフォルーおぜう様のちょっとした武力エピソードなんかも出てきますが、ミッテルトちゃんが割りとはしゃぎ、アザゼル総督の切れ味が色々鋭いみたいですよ?




第45話 ”絶対零度の魔弾ってなんですか?”

 

 

 

「ウチとイッセー様の出会いは、まさに衝撃的でしたッス!」

 

「そりゃ鷲掴みにされて地面に叩きつけられりゃ、衝撃ぐらい走るだろーよ」

 

瞳をキラキラさせるポンコツ部下(ミッテルト)に対し、思わず呆れたような溜息を突くアザゼルだった。

 

「ウチはあの時、運命を感じちゃったッスよぉ~♪ なんて言うか……一度バラバラにされてイッセー様の為に作り直された……みたいな?」

 

「そりゃ骨折込みの全身打撲になった上、”聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)”使いに治癒されりゃ、そう思い込むのも無理ねーわさ」

 

「テートク! なんでさっきから全否定なんデース!?」

 

「いきなりキャラをぶれさせるな。お前は某高速戦艦四姉妹の長女か? それと俺は提督じゃなくて総督な」

 

そしてアザゼルはセラフォルーを見て、

 

「という訳でな……赤龍帝(イッセー)との出会いのせいで、このポンコツ娘は色々と開いちゃいけないドアを開いたらしい。まあ、欲に負けて天上より堕ちた堕天使らしいっちゃあらしいんだが……でも”虚仮(コケ)の一念、岩をも通す”とも言うだろ? 『下級堕天使じゃあ、もう赤龍帝は相手してくんないじゃないか?』とか冗談で言ったら……」

 

「ぴーす♪」

 

アヘ顔……もとい。ドヤ顔ダブピーのミッテルトにアザゼルは軽い頭痛を感じながら、

 

「わずかな間に”四枚羽根(中級堕天使)”に成長、つーか変な進化しやがった……もう、何が何やらだぜ」

 

「子宮の疼きがウチを激しく進化させたッス♪ ああ、ウチの胎内(なか)をイッセー様の液体赤ちゃんの素で満たして欲しいっすよぉ……」

 

 

 

「ふ~ん……」

 

欲望で悪堕ちした堕天使らしい台詞ではしゃぐミッテルトに、冷ややかな表情を浮かべるのはセラフォルーで……

 

「ミッテルトちゃん」

 

「な、なんでしょう?」

 

セラフォルーは満面の笑みで、ただし目だけは氷使いらしく実に冷え冷えとした……いや、むしろ氷河期が今にも到来しそうな光を浮かべ、

 

「比喩的表現だけど……”()()()()()”さえ守る気があるなら、私は煩いことは言わないよ?」

 

「Mam, Yes Mam !!」

 

有無を言わさぬ迫力に、思わず軍隊式敬礼をしてしまうミッテルト。

彼女の視界の端には、セラフォルーが解除しない限り永久に溶けることはないだろう、悪魔を題材……とうか()()にした”愉快な氷のオブジェ”が映った。

 

(このまま人間界の悪魔研究家や悪魔崇拝者(サタニスト)あたりに売りつけたら、いい値が付きそうッス……)

 

『あるいは研究素材として”黒魔術結社(マジック・キャバル)”とかでもいいかもしれない』ともミッテルトは考える。

無論、彼女とてこれが現実逃避だということくらい分っていた。

というか怖くてまともにセラフォルーが見れない。

”蛇に睨まれた蛙”どころか”メデューサに睨まれたLv1&初期装備の冒険者”の気分が味わえた。

 

 

 

(そう言えばレヴィアタンって蛇の化身でしたっけ……)

 

胎内に熱い白濁液の代わりに氷水を流し込まれたような薄ら寒さを感じるミッテルト……

 

(やはり魔王はマヂぱねぇッスね~)

 

これは所詮、中級堕天使の自分じゃまだまだ太刀打ちできないことを自覚するミッテルト。

ただし一誠への想いは別腹。

それにセラフォルーがどういう心積もりかは分らないが、比喩的に「”()()()()()”こと事態」は拒絶されてないではないか。

 

この時の邂逅がミッテルトに更なる進化の方向性を位置づけることになるのだが……それはまた別の話、まだまだ未来の話だった。

 

 

 

***

 

 

 

「おいおいセラ。あんまうちの若いのビビらせんでくれよ? お前の場合、気の抜けた魔力光をパコパコ撃ってる間が華で、ガチになった途端に呪術『()()()()()』が発動するんだからよ」

 

「ぶーぶー☆ 私、そんな物騒じゃないもん☆」

 

反論するセラフォルーに今度こそアザゼルは呆れ顔で、

 

「よく言うぜ。対象を空間ごと、分子レベルで運動量0の状態にする……あ~、確か”零と雫の霧雪(セルシウス・クロス・トリガー)”つったけ? あんなヤバイ技繰り出しておいてよ」

 

「違うよー☆ ”零と雫の霧雪(セルシウス・クロス・トリガー)”は相手や空間のエントロピーを反転させる相転移系の熱ベクトル操作技だよぉ☆ 熱量変化の空間干渉で分子運動量を0にするのは”静謐の停止世界(サイレント・ワールド・トリガー)”の方☆」

 

「……お前、どんだけヤバめの技のストックあんだよ?」

 

「そんなにはないって☆」

 

「セラの場合、遊び抜きに魔力弾を作ると、普通に”絶対零度の魔弾(サブゼロ・ブリット)”になるからねえ。しかも誘導機能付きで」

 

ちなみに目の前の”悪魔入り氷柱”を作り上げたのはそのサブゼロ・ブリットで、しかも命中させたのではなく目の前で破裂させ、その圧縮させた膨大な冷気を解放して周囲の空気ごと凍りつかせたのだ。

 

「え、エゲツねぇ~」

 

「サーゼクスちゃんには言われたくないよぉー☆ ”滅びの力(ルイン・フォース)”の方がもっと剣呑な力でしょ? ”超越者”なんだし」

 

「私としては、セラが”超越者”の候補にすらノミネートされないのが不思議で仕方ないんだけどね」

 

 

 

セラフォルーの力の本質は、「氷を操る」ことではない。それはあくまで”()()”であり、その本質は『(温度)と気流への干渉と操作』だった。

特に『マイナス方向への熱ベクトルの操作』が非常に上手く、そうであるが故に”氷の女王(クィーン・オブ・アイス)”と目されているが、彼女の能力から考えると本来は”温度の征服者(サーマル・コンクェスター)”という方が近い。

 

彼女の温度に関する干渉と操作は多岐に及び、例えば普段景気よくぶっ放す多彩な”魔女っ娘ビーム”の数々も、その正体は「任意の空間や対象から熱を奪い(吸熱し)、それを集束して()()()()()()()()として投射する」という代物であり、立派に熱エントロピー操作の賜物だった。

おかげで上記のビームを撃ってる限りはほとんど魔力を消費しない燃費のよさを誇り、何気に持久戦向きなのだ。

セラフォルーの場合、これに気流操作のスキルも加わるのでより効率よく熱を集められるだろう。

 

コスプレな見かけや花畑的言動に騙されがちだが、その魔法少女的な戦術にも相応に合理的な理由はある……もっともそうでなければ、四大魔王の一角など務めていないだろうが。

 

「そりゃあれだ、サーゼクス。セラの普段の言動や格好が、どれほど”上層部の古株(ろうがい)”共に不評を買ってると思ってんだ? 自分を超越者呼ばわりさせないため、”()()()”だよ。コイツは」

 

アザゼルの言葉にセラフォルーは唇を尖らせ、

 

「むー☆ 魔法少女☆レヴィアたんは、そんなにお腹の中真っ黒じゃないもん☆」

 

「言ってろ。この魔王少女め」

 

 

 

***

 

 

 

「ところでアザゼル……お前は一誠をどう見る?」

 

もはや終盤も終盤、倒れたまま動けない相手に火球を撃ち込む”()()”に入っていた一誠を見ながら、アジュカは堕天使総督に問うた。

 

「随分と漠然としてるな? 少なくても命乞いの類は通じねぇってのはわかったが……」

 

実際、眼下では明らかに戦意を喪失し命乞いと思しき動作をした悪魔の頭部を、一誠は何の躊躇いも無く火球で消し飛ばしていた。

 

「まあ、一誠も悪魔だからな」

 

とアジュカ。

でも彼とてその言葉が正解だなんて思ってない。

むしろ、あの行動は”力と戦いの象徴”たる「龍の衝動」によるものだろう。

ここが戦場である以上、そして捕虜を取る必要が無い……目の前の悪魔達が捕虜としての価値が無い、”捨て駒”にもなれなかった者と認識している以上、慈悲を欠ける意味もまた無い。

 

だが、限りなく「人の姿をした龍」に近い一誠の本質をアザゼルに教える義理はないともアジュカは思っていた。

 

「それ以外の着眼点が在るとすれば……技の威力はあるように見えるが、実は現状のエネルギー総量は、大したことないんじゃねぇのか?」

 

さすがは堕天使総督と、アジュカは目を見開いた。

一誠本人が語っていたことだが、先ほどの”殲滅の剣龍散弾(ドラゴン・クレイモア)”、具体的には「旧ソ連の14.5x114mm機銃の徹甲榴弾相当のエネルギー散弾を2400発」投射するのに、彼は”内包エネルギーの何割か”を使っているようだ。

何割かということは最低でも一割以上、仮に一割とすれば彼の総エネルギーは現状で「14.5x114mm機銃弾24000発相当」ということになる。

 

ここで思い出して欲しいのは、第一期TVシリーズの対フェニックス編の合宿で見せた、原作イッセーの”フルチャージ・ドラゴンショット”だ。

あれはそう小さくない山の山頂を吹き飛ばしている。

あの現象が、「()()()24000発の14.5mm機銃弾」で可能か?ということだ。

参考までに言っておくと14.5mm機銃弾の威力は、よく映画やアニメに出てくる”バレットM82対装甲ライフル・シリーズ”で使われる50BMG弾のちょうど倍くらいだ。

 

 

 

「だがな……知っての通り、戦闘力とエネルギー総量は必ずしも一致しない。特に”赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”の代表的特性の一つ、『10秒ごとの”倍化(ブースト)”』があれば尚更さ。なあ、アジュカ……赤龍帝の小僧、もしかして戦闘が始まってから保有エネルギーを『()()()()()()()』にさせてないんじゃねぇのか?」

 

「だろうね。一誠君ならきっと『ハエを殺すのにバズーカ砲を持ち出す馬鹿は居ない』とか言うんじゃないかな?」

 

とは話に割り込んできたサーゼクスの弁。

 

「だったら、なおのこと腑に落ちん……エネルギー任せで殲滅すらならまだ理解も出来るが、エネルギー総量に比べて戦闘力が()()()()。天才的な戦闘センスってのとはまた違う種類の……強いて言うなら『自分の力と限界を知り尽くしている故に、出来ることと出来ないことを見極め、無駄を徹底的に省いた効率的戦術』……そう、()()()()()ってのを感じんだよ。まだ神滅具(ロンギヌス)を顕現させて1ヶ月やそこらのガキにな」

 

アザゼルは腕を組み、スッと鋭く知性に満ちた目でサーゼクスを見て……

 

「なあ、兵藤一誠ってのは()()なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
堕天使部下上司コンビが思いのほか動いてくれたエピソードは如何だったでしょうか?

それにしてもアザゼル様、ツッコミに容赦ない(^^
もしかしたら気付いた方もいらっしゃるかもしれませんが、このシリーズにおける”堕天使サイドの成長株”を担当してもらうのが、ミッテルトちゃんだったりします。

天界側は実はもう登場してる”祝福の銃剣使い”君ですが、あっちはあっちで洒落にならないくらい強いしで(笑

さて、どうやらアザゼルもイッセーの()()()に気が付き始めたみたいです。
まだ明らかにしてません(というか存在を秘匿している)が、ヴァーリを抱えてんのは彼ですから……原作とは違う意味で色々と面倒なことになりそうな?

それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!


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