俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような? 作:ボストーク
いよいよ今回から、”第二章 放課後のケットシー”のラストイベントに入ります。
果たしてイッセーは、どのような方法で『黒歌の首を狙う悪漢共を返り討ち』にしようとするのでしょうか……?
「やあ。また会えて嬉しいよ」
「今回はご協力ありがとうございます。サーゼクス様、それにアジュカ様も」
「ああ、気にしないでくれ。俺は特性の”
冥界にやってきた俺は、グレモリー邸にてサーゼクス・ルシファー様とアジュカ・ベルゼブブ様と再会していた。
とはいえアジュカ様のところにはアーシアを連れて定期的に検診に行ってるので、正直久しぶり感はなかったけど。
***
少し背景を振り返ってみれば……
俺、兵藤一誠の愛猫”
更に言えば、とある上位悪魔の眷属だったことがある。
しかし、黒歌はかつてその上級悪魔を殺し、”はぐれ悪魔”になった。
その理由は、”妹を守るため”。
セラフォルーお嬢様やサーゼクス様達の力添えで、”主人殺し”の罪自体は払拭できなかったものの、情状酌量の余地があり、「シトリー家預かりで保護観察処分」という建前の軽い扱いに落ち着いた。
だが、その判定に納得しない悪魔達も居た。
例えば、その殺された悪魔の仲間/友人達だ。
その上位悪魔は、たまたまサーゼクス様を筆頭とする若手の襲名四大魔王を中心とする”
本来なら処刑しかありえない”はぐれ悪魔”なのに、黒歌が軽い処分で済んだことに面子を潰されたと思った大王派の一部”
というまるでギャングの抗争のような図式が現状だった。
それを是正するための今回の
先ずその作戦目的は、『雇われたチェイサーを残らず返り討ちにし、大王派への教訓と警告とし、黒歌の今後の身の安全を図る』というものだ。
そして、それを実行するために潜んだチェイサーを誘い出し、一網打尽にするのが骨子であり、そのためにサーゼクス様はとある情報を”
それは漏れ出た情報一つ一つは大きな意味を持つことは無いが……それをジグソーパズルのように重ね合わせると、
【黒歌が自首し、身柄が拘束されているされてるグレモリー領から、保護地であるシトリー領へ極秘裏に移送される】
という”
あからさまな情報漏洩は警戒されるだろうし、ジグソーパズルを完成させられないような敵なら逆に考慮する必要はない。
そして、パズルを解けたらおそらくそこにで「こちらの暗号を読み解けた」と判断し、移送
『政治的に明らかに悪手である”黒歌君の襲撃”を、面子優先で選ぶような集団だよ? こちらの秘密が解けたと考えてからなお慎重な判断が出来るなら、そもそもこんな手は取りはしないさ』
とはサーゼクス様の弁。
情報を統制/操作し相手の選択できる行動に制限をかけ、こちらの都合のいいように動かす……諜報戦の基本だが、なるほどサーゼクス様は魔王筆頭を名乗るに相応しい手並みだった。
もっとサーゼクス様に言わせせると、
『その
ファルビウムというのはおそらく俺がまだ会ったことのない四大魔王の最後の一人”ファルビウム・アスモデウス”様のことだろう。
一体、どんな方だろうか?と興味が無いわけではないが、今は好奇心は放置だ。
ともかく、いくら大王派の跳ねっ返りとはいえ黒歌が正式にシトリー家預かりになれば、魔界の名門のシトリー家と四大魔王、さらに魔王のバックにいる名門全てと全面対決する覚悟がなければ手が出せなくなってしまう。
大王派全体で言えば今、正面きっての全面抗争は避けたいところだろう。
であるなら、正式にシトリー家預かりになって手を出せば、逆に粛清対象になるのは自分達だと跳ねっ返り達は自覚していた。
なら移送中の今回しか機会は無い……少なくともそう結論が出るように誘導されていたのだった。
***
そして、この作戦に用意されたのはアジュカ様特性の”
見かけは冥界で使われてる一般的なそれで、車体装甲の強度も通常のそれとは変わらない。
基本的に無人で動き、さも運転席に乗せた
シャーシというのは簡単に言えば、自動車で言えばエンジンやサスペンションが搭載される車両の床下、”土台”にあたる部分で普通は車内からも車外からも見えない。
この特製護送車はそのシャーシ部分に人間一人程度(つまり俺)が潜り込むスペースが確保されており、そこには幾つもの対物理/対魔法の防御装置や防御術式が組み込まれていた。
その強度はアジュカ様謹製なだけに凄まじく、最上級悪魔の最強攻撃でもない限りは内部へのダメージが通らないほどの防御力を誇り、言ってしまえばその部分は一種の”シェルター”になっていたのだ。
要するに「車が派手に吹っ飛んでも、俺が潜り込んでいるシェルター部分はノーダメージ」ってコンセプトになる。
もう大体分ったと思うけど……今回の作戦、正式名称”
「イッセーちゃん……気をつけてね?」
「はい。ありがとうございます」
見送りにきてくれたセラフォルーお嬢様に改めて御礼を言う。
この間、朝まで膝枕をしてもらったことを思い出し、正直ちょっぴり照れくさい。
「セラフォルーお嬢様もどうか黒歌をお願いします」
「うん☆ まかせて☆」
セラフォルーお嬢様は立派な胸をドンと叩き、
「黒歌ちゃんは親友だもん☆ ねー?」
「にゃおん♪」
悪魔が人を騙すには、「99の嘘の中にたった1つの真実を混ぜるか、99の真実の中にたった1つの嘘を混ぜる」という。
どうやらそれは、今でも有効らしく『黒歌がシトリー家へと出向き、身柄預かりの契約をする』という事柄自体は事実だった。
詳しくは知らないが、それも黒歌の”はぐれ悪魔認定”を解く手続きの一環らしいし、何より身柄の保障や身の証にもなる。
ただ、護送車で向かうのではなく、セラフォルーお嬢様の手持ちのキャットバスケットに入り、手荷物扱いでシトリー家邸宅に入るのが流された情報との差異だ。
このような手が使えるのも、黒歌が上級悪魔の眷属や”はぐれ悪魔”になったばかりの頃、『美しい黒髪を持つ成人女性の姿』で暴れまわったせいだ。
お陰で今出回ってる手配書は『その時の姿』で出回ってるらしく、猫又本来の「二本の尻尾を持った成猫」の姿はほとんど知られていないらしい。
加えて黒歌は念には念を入れ、身につけた妖術と仙術を駆使して自らの力を押さえ込み、現在は「一本の尻尾しかもたない仔猫」の姿で兵藤家に居たのだ。
どうりで今まで文字通りに『尻尾をつかませなかった』筈だ。
黒歌は、俺が思ってるより遥かに
「じゃあ行ってきます」
「本当に気をつけてね! 怪我とかしないでねっ!」
「にゃあ!」
セラフォルーお嬢様と黒歌に見送られ、俺は護送車のシェルター部に乗り込む。
そして、いよいよ訪れる実戦……「一切の制限も遠慮も要らず、全力全開で力を振るえる」だろう戦いに思いを馳せた。
「さあ、ドライグ……闘争を
『もちろんだ相棒!』
俺は”
『Boost !!』
待ち受ける戦いに備えて、昂ぶる気持ちと共に力を溜める!!
今まで使う機会が無かった”新たな能力”を解放できることに胸を躍らせながら。
皆様、ご愛読ありがとうございました。
サーゼクスたちの権謀術数が明らかになったエピソードは如何だったでしょうか?
今回から数話はシリアス・パートが続きますが、今回はその触りという感じで(^^
実は原作以上に謀略や諜報戦の上手いサーゼクス様、そこまでこのシリーズが続くかわかりませんが、某アスタロトの坊ちゃんとか旧魔王派とか、原作以上に可哀想なことになるかも……(えっ?
それにしても……前回から、わりかし乙女臭がするセラフォルーお嬢様(笑
次回からちょっと血腥くなると思いますが……
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!
ご感想や評価をいただけると、とても嬉しいです。