俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。
ちょっと難産でしたがようやくアップです。

今回のエピソードは……前半が悪巧みの続きと、後半が魔王二人の語らいがメインとなります。

サーゼクスから見たイッセーとは一体……?


あと、”後書き”に長めのオマケをいれておきます。
伏線回収と平衡世界(げんさく)に比べ薄すぎる「とある(思春期)要素」の補強なので、そういうのが苦手な方は読み飛ばしてください(^^




第33話 ”中級悪魔ってなんですか?”

 

 

 

「では一誠君、詳細の詰めと計画の下準備は我々に任せてもらおう。なに、”()()()()()()”は相応に慣れてるさ」

 

「では、よろしくお願いします」

 

『大王派の跳ねっ返りに”()()()()()”』を与える目論見は、どうやら俺が提示したそれを叩き台(原案)にして煮詰めるようだ。

 

当然、俺が出したのは原案(アイデア)に過ぎないので、そのままじゃ作戦計画としては使い物にはならない。

この先は作戦を練る本物(プロ)の仕事だろう。

 

「逆に聞くけど、本当に君一人が始末屋(パニッシャー)でいいのかい?」

 

「ええ。赤龍帝(ドライグ)の戦力分析はシビアです。俺の実力を一番知っているのはドライグですから……」

 

 

 

状況が俺からの奇襲。無論、ドライグの戦術指南(サポート)込みだ。

敵の条件は中級/下級悪魔の混成、戦闘力はそれぞれのランクの平均値、ただし部隊としての連携は取れないという条件でドライグが出した結論は……

 

『今の相棒が最良のコンディション全力で戦うこと前提なら、10体までなら楽勝だ。20体までなら目算が立つ。30体までは多少厳しくはなるが、戦術選択を間違えなければどうにかなるかもな。40体以上が大まかな危険ラインだ』

 

とのことだ。もちろん、

 

『ただ実戦には、必ず”敵との()()”ってのがあるからな。単純な実力や戦闘力は大したことなくとも、巡り合せによっちゃあ思わぬ苦戦することは珍しくない。例えば、相棒は現状では遠距離攻撃が限られているし、その射程もそう長いもんじゃない。だからこちらの射程外(アウトレンジ)からしかけてくる……そうだな、”狙撃型(スナイパー)”とは相性が悪い。例え相棒を一撃で()れるパワーがなくても、チマチマ防御を削られたり動きが抑制されたりするだけで厄介だ』

 

数多の戦いを龍としても、神滅具(ロンギヌス)としても潜り抜けた歴戦の古兵(ふるつわもの)らしい釘刺してくるのも忘れない。

 

『相手の長所を潰し、自分の長所を最大限に生かせる戦術を選ぶ。実際に剣を振るい牙を突き立てる前にやれることややることは多い……戦場で示されるのは”()()”であることを忘れるな』

 

「ああ。わかってる」

 

『とはいえサーゼクス・グレモリーの分析だと、黒歌を狙う刺客は10体以上だろうが30体は居ないらしいからな。例え全員が中級悪魔でも、よほど戦術選択をしくじり相棒が力を出せない状況にでもならない限り、おそらくは勝てるだろうよ』

 

 

 

***

 

 

 

「フフ……ドライグ、君が誰かにそうまで入れ込むなんて夢にも思わなかったよ」

 

何が楽しいのか、サーゼクス様はそう茶々を入れるが、

 

『言ったろ? サーゼクス・グレモリー、相棒は色々な意味で”()()()”からな。大成する前に死なれたら、元も子もないだろ?』

 

「なるほど……確かに君の言うとおり、時代は流れるものだな……」

 

そう感慨深げに呟くサーゼクス様。その横顔が不思議とアジュカ様に重なって見えた。

 

()()()()で聞きたいのだがね……ドライグ、一誠君はどの程度までいくと考えているんだい?」

 

『さあな。例えば、サーゼクス・グレモリー……人も悪魔も、よくその「存在のキャパシティ」を表すときに”()”、器量という言葉を使うだろう?』

 

「ああ。確かに」

 

『だが相棒には器自体がない』

 

ちょっ、ドライグそれはあんまりなんじゃないのか?

確かに俺は才能って意味じゃ……

 

『慌てるな。正確に言うなら相棒の場合、器の形も大きさもまだ定まっちゃいないのさ。成長の余地とか()()()()とかって意味じゃねえ。才能や器量以前の、もっと根本的な部分が不確定なんだよ』

 

「それは随分と興味深いね?」

 

『この先のことは俺にもわからん。だが。今度のミッション自体は問題ないだろうよ。俺が保障してやる』

 

「赤龍帝の太鼓判とは心強い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************************

 

 

 

 

 

「サーゼクスちゃんただいまぁ~☆」

 

「セラ、お帰り」

 

兵藤一誠君と黒歌ちゃんを彼の部屋まで送ってきたセラフォルーの帰着に、サーゼクスは小さな笑みと共に迎えた。

 

現在、メイドモードのグレイフィアは気を利かせて新しいお茶の準備を始めていた。

 

あの後、他にいくつかの話をし、程なくお開きとなった。

少々話し込んでしまったが、それでも明日の授業に響くほどの夜更かしにはなってないだろう。

 

「サーゼクスちゃん、イッセーちゃんと始めて会った感想はどうだった?」

 

「率直に言って……彼がソーナ君の眷属でよかったよ。それとも、妹の眷属じゃなくてよかったと言うべきかな? 魔王ではなく一人の兄の心情としては」

 

「んー……どういう意味かな?」

 

「『リーアじゃ兵藤一誠君を使いこなせない。きっと持て余す』……それだけの話さ」

 

「そう、なの?」

 

要領を得ないのか、ちょっと小首をかしげるセラフォルーだったが、

 

「ああ。彼が眉一つ動かさず『追っ手(チェイサー)は皆殺し、もしくはそれに近い状態にしましょう』と言ったとき、私が何を思ったかわかるかい?」

 

「うーん……わかんない☆」

 

「”実に悪魔らしく、龍らしい”だよ。あの時、私の頭からは彼が転生悪魔だという事実は完全に消えていたよ。正直、彼の在り方に感服すらしたさ」

 

サーゼクスはそう苦笑し、

 

「だからこそ今のリーアであれば、きっと理解できずにぶつかってしまう……『悪魔の在り方として正しく、龍として()()()()()存在』である彼とはね」

 

サーゼクスは、一部では”シスコン疑惑”をかけられるほど妹に甘く、溺愛しているとされていたが、それはあくまで私人としてだ。

公人……当代の四大魔王の一角、魔王”ルシファー”としてはまた別の見解を持っていた。

大雑把に言えば「一柱の悪魔としてのリアス・グレモリー」を客観視できる視点と才覚と判断力はきっちりあるということだ。

 

 

 

***

 

 

 

「あー、リアスちゃんて確かに悪魔らしくないとこあるもんねー☆ グレモリーの一族としては大正解だと思うけど☆」

 

「それは誉められたと思っていいのかな?」

 

「どちらかと言えば、事実を言っただけだよぉ? でもソーナちゃんなら安心って論拠も聞かせて欲しいかも?」

 

「ソーナ君は、感情面で対立するリスクは少ないだろうからね。彼女はリーアより自分の立ち位置を客観視する能力や自制心に長けている。私の見立てでは一誠君はかなり義理堅い一面もあるみたいだしね……互いに一線引くべきとこは引くだろう? なら感情的な衝突をこじらせて……というのは考えにくい」

 

「さすがはサーゼクスちゃんって言いたいところだけどぉ……」

 

「ん? 何か問題が?」

 

「自己の客観視や強すぎる自制心って、女の子としてはあんまり幸せになれないんじゃないかなぁ~ってお姉ちゃんは心配だよぉ☆」

 

禁欲的(ストイック)って意味では、ソーナ君もまたリーアと違う方向性で悪魔らしくない、か……やれやれ、中々難儀なもんだな?」

 

苦くではなく少し微笑ましい雰囲気で笑うサーゼクス。

多感な若いうちに色々あるのは、どうやら人も悪魔も同じらしい。

 

「とはいえ、一誠君にちょっかいかけることを止める気はないんだろ?」

 

「うん☆」

 

セラフォルーは満面の笑みで、

 

「私がイッセーちゃんを気に入ってるのは別腹だよぉ☆ ”あれはあれ、これはこれ”ってこと☆ 黒歌ちゃんとの”()()()()”もあるしネッ☆」

 

「まったくもってセラらしいよ」

 

「だって私も、自分の欲望に忠実な悪魔ですからぁ☆」

 

 

 

***

 

 

 

「まあいいさ。だが、魔王としては一つの判断は下したいところだね」

 

「どんな?」

 

「無論、今回の一件で彼の()()を見せてもらってから最終的な決定を行うつもりだけど……」

 

サーゼクスは少し考え、

 

「もし十分な能力があるなら、可能な限り早い段階で”中級悪魔”に昇格させたほうが後々のためになるかもね?」

 

 

 

セラフォルーはサーゼクスの言葉の意味を考える。考えた上で、

 

「いつまでも”()()()()()”はできないって事?」

 

「ああ。赤龍帝が語った兵藤一誠君の戦闘力が事実なら……逆に隠蔽したほうがいらぬ火種になるかもしれないからね。疑念と疑心暗鬼は火種としては定番だ」

 

「んー、でも今の『新米転生下級悪魔』の”地上代理人(エージェント)”のほうが色々、有利だと思うよぉ?」

 

「別に『目立たぬ下級悪魔しか』エージェントができないわけじゃないだろ? そもそも”新米”なんて肩書きはいつまでも使えるものじゃないし、何より『一介の下級悪魔』が()()()()()()上級悪魔並みのスペックを持ってることの方が問題さ……大きさも形も現時点では不明な『不確定の器』まで考慮したら、”隠し戦力”としては些か大きすぎる」

 

さらりとドライグは言っていたが、”あの実力”が額面どおりの事実なら本来は由々しき事態だ。

計算上、「少なくとも中級悪魔10体以上は倒せる」というのはそういうことだ。

 

「今回の件は別にしても、”()()()()()()()”実績を積ませて、その存在をアピールすればまた別の用途があるのさ」

 

「もしかして……牽制と抑止力?」

 

サーゼクスは頷き、

 

「力の誇示は、悪魔の基本中の基本だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
何か色々と不穏当な言動が多かったエピソードはいかがだったでしょうか?

和やかな雰囲気とは裏腹に、実は冷静に状況を分析していたサーゼクス様(^^
このあたりは、事実上の”四大魔王筆頭”の面目躍如ですかね?
というか、イッセーが早速詰みそうな気配ガガガ……

そしてセラフォルーのつい出てしまった本音(笑

セラフォルー「ソーナちゃんとイッセーちゃんは別腹だよぉ☆」

やっぱりこの娘も悪魔だわ(--
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!

もしご感想や評価などなどいただけたら嬉しいです。



*********************



R-15的な意味で閲覧注意です。



オマケ ”その頃のイッセー君”



さて、セラフォルーお嬢様に送られ、俺と黒歌は自分の部屋に帰ってきた。

「中々、面倒なことになってきたな」

「にゃあ……」

申し訳なさそうな顔をする黒歌だったけど、

「謝らなくてもいいって。むしろ、望むところさ」

実際、俺の口元には自然と笑みが浮かんでいたのだから。

「悪魔に転生してようやく闘争らしい闘争が出来る……心躍るシチュエーションだよ」

さて、その時……

”knock knock”

「あの、イッセーさんお戻りですか?」

予想通りにアーシアだった。
もっとも、ドアをノックしてから部屋へ入るなんてお行儀がいいのは、この家ではアーシアしかいないので推理もクソもあったものじゃないんだけど。

「ああ。鍵は開いてるよ」

「入りますよ?」

と言いながら入ってきたアーシア。
ただ右手に持っていたのは、聖書ではなくいつぞや椿姫先輩が進呈してくれた少なくとも江戸時代から続く大衆文化(?)を記す教本”緊縛ノススメ”。となれば左手に持っているのは当然、十字架などではなく紅く塗られた荒縄だった。

「今夜も緊縛の練習して欲しいの?」

「駄目……ですか?」

上目遣いで俺を見るアーシア……頬は上気し紅を差し、呼吸は熱っぽく少し荒かった。

「おいで」

「はい♪」

喜色を浮かべ俺に近づくアーシアに、

「ネグリジェをたくし上げるんだ」

ホント縄をベッドにおき、言われるままにネグリジェの裾を持ち、可愛いおへそが見えるまで豪快にたくし上げた。
無論、下着も丸見えになるわけだけど……

「こんなに濡らしちゃ駄目じゃないか? もうアーシアがだらしなく垂れ流した汁で、パンツが透け透けだよ。縛られることを想像しただけでそんなに興奮したの?」

”くちゅ”

俺は用を成さなくなった下着の上からか軽くなぞるように刺激する。

「ひゃうっ!?」

「まったく。元・修道女(シスター)なのに、こんなにえっちな娘になるなんて……天に居る父とやらは、さぞかし嘆いてるんじゃないか?」

「いやぁ……いわないでくださぁい」

ぺたんと床に座り込んで「イヤイヤ」と小さく首を左右に振るアーシア。
でも、下着を内側から湿らす液体はとめどなく溢れ、ますますパンツに滲み……今にも床に小さな水溜りを作りそうな勢いだ。

俺に言葉で嬲られて、余計に火がついたのだろう。
俺もアーシアも、天をネタに淫欲をかきたてるのだから悪魔らしいといえば悪魔らしい。



「本当に駄目な娘だな? アーシアは。きっとアーシアに必要なのは、救いより罰なんだろう」

俺の頭に”様式美”という単語が浮かんだ。

「はいっ♪ 哀れで惨めで罪深いアーシアに、いっぱい罰をください♪」

罪の代償に罰で自分を戒めることを願うシスターの姿はなく、ただただご褒美欲しさに媚びる”()()()()()”の姿がそこにあった。

だが、俺は今のアーシアの方が不思議としっくりくるし、何より好ましい。
きっと淫欲に堕ち、光の消えた瞳に快楽への期待を浮かべたアーシアの方が、前よりずっと綺麗に見えるからだろう。

愛しいと素直にそう思える。
ただそれは、恋愛感情とはまた別な気もした。

(まっ、いいか……)

今は快楽に身を委ね溺れるアーシアを、身を堕した聖女を()()()()()愛でるとしよう。
何故かドライグが愉快そうに嗤ってる気がした。

「いいよ。今夜もいじめてあげる」

「はいっ♪」



***



誤解のないように言っておくが……アーシア・アルジェントは、未だ”処女(おとめ)”である。
純血を()()()()()まま、散らされぬままに縄で快楽を刻まれたのだ。
そして、これからも彼女はゆっくりと着実に刻まれてゆくだろう。
アーシアの行く末は、今は誰にもわからない。








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