俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ。
さて、今回のエピソードは……黒歌を狩ろうと集められた大王派の跳ねっ返りが集めたらしい”中/下級悪魔(てっぽうだま)”対策の話になります。

イッセーが悪魔っぽく腹黒く、龍っぽく好戦的になってるような……?




第32話 ”パニッシャーってなんですか?”

 

 

 

俺、兵藤一誠はどういうわけかセラフォルーお嬢様に導かれ、城塞や神殿と見間違うようなグレモリー本宅、それもサーゼクス・ルシファー様の執務室に愛猫の黒歌と共に来ていた。

 

その用件は、実は妖怪の”猫又”だった黒歌が半ば冤罪じみた罪状で”SS級はぐれ悪魔”認定されていたことと、それがセラフォルーお嬢様やサーゼクス様の尽力で嫌疑が晴れ、事実である上級悪魔殺しの罪自体は消えなかったが『セラフォルーお嬢様を後ろ盾とし、シトリー家預かりの保護観察処分』という穏健な形で落ち着いた。

 

これで穏便に黒歌を俺の使い魔に出来ると思いきや……

 

『まあでもね、表立って動かなくてもちょ~っと面白くない動きする連中もいるだよねぇ……』

 

つまりはこういうことだ。

黒歌がかつて殺した上級悪魔は「純粋悪魔以外の種族は全てKS。転生悪魔の眷属をどう扱おうが自由」という悪い意味でのジャイアニズムを当然と考える”大王派(守旧派)”だった。

 

黒歌の処分が軽くなったことに面子を潰されたと考えた、死亡上級悪魔の”御同類(跳ねっ返り)”は、当然の権利として自分達で黒歌に報復しようと画策した。

 

しかし、サーゼクス様の恫喝が利いてる上に四大魔王のうち三人と、そのバックについてる家を敵に回す……ましてや大王派全体の粛清に繋がりかねない口実を与えるわけにはいかない大王派の跳ねっ返り上級悪魔は、自分達の直接の子飼いを動かすわけにはいかなかった。

 

そこで目を付けたのが、『転生悪魔の眷属化を快く思ってない、上級悪魔の眷属入りしたい中級/下級悪魔』達だった。

大王派は、おそらくこう(そそのか)した。

 

「はぐれ悪魔の黒猫を始末すれば報酬も眷属入りも思いのままだ」

 

悪魔らしいやり口だ。

こうして”()()()”を手に入れた大王派は動き出した。

黒歌が惨めな死体になれば、自分達の面子は守られると。

 

もしかしたら、「生意気な魔王派に一泡吹かせられるかもしれない」とか考えてるかもしれない。

 

いいだろう。

上等だ。

転生悪魔で下級悪魔とはいえ、俺も悪魔は悪魔だ。

なら……

 

(悪魔なら、悪魔らしいやり方で応じてやるだけさ……!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

追っ手(チェイサー)は皆殺し、もしくはそれに近い状態にしましょう」

 

そう俺はサーゼクス様に告げる。

 

「随分とまた物騒じゃないか?」

 

台詞だけ聞くと乱暴な提案を(とが)めてるようにも聞こえるが、口調や表情を見る限り台詞とは裏腹に興味を惹かれたようだ。

 

「野心だか野望だか知りませんが、哀れな鉄砲玉(チェイサー)が自らの命を掛け金代わりにベットするというなら、それを支払ってもらうだけですよ。この”()()()()”の仕掛け人(ディーラー)として」

 

「その意図は?」

 

(けしか)けた大王派の跳ねっ返りに”教訓”を与え、抑止力とすることです。『黒歌の首を狙うなら、その代償は数十倍程度の命で足りると思うな』と」

 

「方法は?」

 

「搦め手……囮と偽情報を使います」

 

「例えばどんな?」

 

どうやらサーゼクス様は乗ってきてくれたようだ。

これなら、具体案を練れるかな?

 

「そうですね……例えば、こんなのはどうでしょう? 『かけられた嫌疑の減罪を知り説得に応じた黒歌は自ら投降し、妹と同じくサーゼクス様に身柄を保護され、グレモリー領からシトリー領に護送される。なお護衛はわずかな模様』とか」

 

「悪くないね」

 

ニヤリと笑うサーゼクス様。

なるほど、たしかにこのお方は魔王だわ。

 

「基本的に護送車両は空でいきましょう。ルートは襲撃ポイントが特定し易いコースを選び、事前に網を張って起きましょう。そうすれば襲撃者が何処に集合しても後手に回らずに済む」

 

「いいだろう。だが、肝心の”始末屋(パニッシャー)役”はどうする?」

 

「あっ、わたしやるよぉ~☆」

 

と自己推薦が俺の右側から聞こえる。

というか正確には自分お胸の谷間に俺の右腕を挟み込むように抱きついたまんまのセラフォルーお嬢様だ。

 

「却下」

 

さすがサーゼクス様。一言の元に切り捨てた。

 

「なんでよぉ~」

 

「セラフォルーお嬢様が直々に始末しそれが万が一にもばれた日には、それは魔王派による”()()()()()()()”になってしまいますって」

 

それじゃあこの場合はまずいのだ。

話が大きくなりすぎる。

今の時点で武力であれ政治的対立であれ、突発的な全面衝突は魔王派とて望むところじゃないだろう。

 

「サーゼクス様がわざわざ”パニッシャー”って言い方をしたのは、それを避けるためですよ」

 

「どゆこと?」

 

「”PUNISHER(パニッシャー)”っていうのは直訳すれば”処罰人”。語義的には『法が不備な場合に、法に代わって処罰する存在』なんですよ。要は体制側でもなんでも、人知れず非合法な”濡れ仕事(ミッション)”を実行する役目なんです」

 

サーゼクス様が無言で頷いてるので、この解釈で間違いはないだろう。

 

「それにセラフォルーお嬢様、それにこういうのは言いだしっぺの法則っていうのがあるんですよ?」

 

「???」

 

「ドライグ」

 

『呼んだか? 相棒』

 

俺の呼びかけと同時に龍を象る赤い篭手、”赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”が左手に現れた。

 

 

 

***

 

 

 

『ん? ”セラフォルー・()()()()”もそうだが、随分と懐かしい顔が居るな? 久しいな”サーゼクス・()()()()()”』

 

「あはは~☆ 赤龍帝ちゃん、やっほ~☆ こうして顔を合わせるのは”先の大戦”以来だねぇ~☆」

 

『実は俺に言わせるとそうでもないんだがな。俺は夢を介在して相棒を鍛えてると同時に、その時に記憶を共有してるからな。夢はそもそも記憶の整理機能の一つだ』

 

「そうなんだぁ?」

 

『お前はしょっちゅう、相棒の家に来てるからな』

 

「えへへ~☆」

 

ドライグと盛り上がってるところなんですけど……今更ですがセラフォルーお嬢様、それって魔王様としては結構問題ある行動なのでは?

 

「驚いたな……アジュカから聞いてはいたが、本当にまだ”禁手化(バランスブレイカー)”に至ってないのに、赤龍帝の意識が完全に覚醒状態にあるとはね……」

 

『まあ、今代の相棒は色々と”規格外(イレギュラー)”でな。俺も禁手発動までおちおちと寝てるわけにはいかなかったってことさ』

 

「なるほど……」

 

『それにしても、小僧と小娘が今のルシファーとレヴィアタンとはな……時代は確かに流れてるようだな?』

 

「そうだね……あれから色々あったのは事実だよ」

 

『俺も魔王サーゼクス・ルシファー殿と魔王セラフォルー・レヴィアタン殿と呼んでやろうか?』

 

「よしてくれ。あれだけ大暴れしたお前さんに言われると、なんだかこそばゆい」

 

「同じくだよぉ~☆ 赤龍帝ちゃんならセラフォルー・シトリーでいいって☆ ねえねえ、私もドライグちゃんって呼んでいい? その代わり私も”セラ”でいいから☆」

 

『別にかまわんが』

 

ドライグ、篭手に封じられた程度じゃ大物の威厳は消えないってことか?

ホント、現役魔王様相手に欠片ほども物怖じしない……むしろ相応の敬意を払われてるんだから、改めて伝説の龍ってのは凄いと思う。。

 

 

 

「ドライグ、少し聞きたいんだけどさ……純粋悪魔相手に俺はどの程度戦える? どの程度の()までなら対抗できる?」

 

『脅威度と状況は?』

 

「脅威度は中級/下級悪魔の混成。目安は安全マージン考えて半々。ただし敵は『部隊としての連携は取れてない』公算が大きい。戦術は奇襲からの展開かな?」

 

『大雑把な概算でかまわないか?』

 

「ああ」

 

『今の相棒が最良のコンディション全力で戦うこと前提なら、10体までなら楽勝だ。20体までなら目算が立つ。30体までは多少厳しくはなるが、戦術選択を間違えなければどうにかなるかもな。40体以上が大まかな危険ラインだ』

 

なるほど……ということは、

 

「どうやら今回のパニッシャー役……」

 

口元が歪むのが自分でも分った。

 

「俺でも務まりそうですね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
ドライグとサーゼクスという赤と紅が邂逅したエピソードはいかがだったでしょうか?

どうやら平行世界(げんさく)のポケ○ン……もとい。使い魔ハントから一転、舞台は”デビルハント”になるような予感が……(汗

それにしても、”この世界”のイッセーはホント、地雷原に自ら飛び込むのが好きみたいですね~(^^
魔王様たちに一目置かれるってのは、「平穏無事とは程遠い生き様の確定フラグ」のような気もしますが……これも悪魔に転生した上に、流れる龍の血脈のなせる業か?

それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!

ご感想などなdそをいただけると、嬉しいです。



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