俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ。
なんか、あっさり完成してしまったので本日は久しぶりに一日二話アップとなりました(^^

そしてついに、この「俺、悪魔」も30話になりました♪
ここまでこれたのも、本当に応援してくださる皆様のお陰です。
これまで、ありがとうございました! これからもよろしくお願いします。

さて今回のエピソードは……黒歌の()()がセラフォルーの口から語られ、”黒歌事件”の舞台裏、悪魔社会に潜む深い問題が出てきます。

そして原作より著しく乖離するかもしれません……




第30話 ”大王派ってなんですか?”

 

 

 

俺はセラフォルーお嬢様から、黒歌の過去……そしてその真相と真実を聞かされる。

 

黒歌が猫又だってことは知ってたけど、とある上級悪魔の元・眷属で今は主殺しの嫌疑がかけられた『SS級危険指定の”()()()()()”』だということだった。

 

ただ、その経緯は冥界で”黒歌事件事実”として認識されてる一般的な”はぐれ悪魔”となる理由である『力に溺れた挙句の主殺し』などではなく、『無体な真似をしようとした主から妹を守る』ための自衛処置だったという顛末だ。

 

悪魔ではなく日本人的な感覚で言えば、正当防衛ではなく過剰防衛の範疇ではあるが、情状酌量の余地くらいはある案件だろう。

 

まあ、その辺りは力が物をいい、力こそが地位であり正義である悪魔の世界だ。

地位がある者が秩序を作るのは人間も悪魔も同じで、また地位も力もある権力者によって都合のいいように事実が捻じ曲げるのもまた同じだった。

一応、冥界にも法と秩序はあるが、どちらかと言えば不文律の”掟”とかが優先されてそうな傾向があるからなぁ……

 

 

 

「黒歌ちゃんの証言もとれたし、実はこの件も再調査……内偵を行ってたんだよぉ☆ それでねそれでね、当時のその上級悪魔の生き残った関係者や親族とちょっと”O・HA・NA・SHI☆”して……」

 

うん。絶対に普通の意味の”お話”じゃないだろうな。

そういや年齢無視して魔法少女と言い張ってたあのシリーズの”白い魔王”の「高町式交渉術(先ず吹っ飛ばす。話はそれから聞いてやる……お前が話せる状態ならばな)」もこんな感じだったっけ?

 

「大体、黒歌ちゃんの証言どおりだったよ。いきなり主殺しの罪自体は消えないけど、”SS級はぐれ悪魔”って看板は消せそうだよ? サーゼクスちゃんが『頭が固いというより錆び付いてる”大王派(守旧派)”にぶっとい釘を刺せる』って喜んでたよぉ☆」

 

 

 

***

 

 

 

セラフォルーお嬢様の言葉には少し解説が要るだろう。

お嬢様によれば、

 

「黒歌ちゃんの一件、その根底にあるのは大王派(守旧派)魔王派(革新派)の深刻な対立や確執なんだよね~☆」

 

非常に大雑把な言い方になってしまうけど……

 

基本的に三大勢力が入り乱れて二天龍に引っ掻き回されながら三つ巴の消耗戦を演じた”先の大戦”()()の『伝統的な悪魔の在り方』を重視するのが”大王派(守旧派)”であり、それ()()……”先の大戦”を手痛い教訓にし、戦後に世襲ではなく襲名で今の名を得た若い魔王達を中心とする『戦後の悪魔の価値観』を代表するのが”魔王派(革新派)”だった。

 

大王派(守旧派)”の特徴は「古典的悪魔の価値観の継承」であり、他の種族を塵芥とみなす”純血悪魔族至上主義”で、悪魔らしく実力主義なのは確かだが同時に純血悪魔であることと血統を重んじる”血統原理主義”でもある。

彼らにとり眷属にした”転生悪魔”など所詮”手駒(消耗品)”に過ぎず、「壊れた」ところでいくらでも代えが利くのだ。

それは中級以下の悪魔だって同じような感覚だろう。

 

魔王派(革新派)”は、「先の大戦からの甚大な消耗を鑑み、悪魔の種と社会存続を最優先とした合理主義」とみなし、積極的な転生悪魔の徴用と重用を積極的に行い、その地位向上を目指している。基本的には「種族や血統にこだわらないより純粋な実力主義」と言い換えてもいい。

究極的には「種の再興と再繁栄」を目的としていて、そのためにはかつて敵対し、今は同じく激しく消耗し、表立っての大規模衝突は避けている停戦状態の堕天使や天界勢力との緊張緩和(デタント)やその先の共存共栄すら模索している。

 

 

 

そうなると当然、当然黒歌を眷属にしていたのは……「上級悪魔である私が、()()()に過ぎない下級悪魔扱いの転生悪魔をどう扱おうが私の自由だ」な大王派の悪魔だった。

そして黒歌の証言とセラフォルーお嬢様や自分の眷属を秘密裏に動かして”お話(尋問)”して得た情報を元に、魔王サーゼクス・ルシファー様は……

 

『テメェらよぉ、今の冥界には「眷属管理義務」ってのがあるの知ってかぁ? 主の不始末、眷属に背負わせてんじゃねぇぞコラ! 大体、テメェの子飼いにプチッと潰されるような弱っちいチンKSのケツ拭く必要あんのか? ああん?』

 

と黒歌を「定型方(テンプレート)に力と欲望に狂ったはぐれ悪魔」と主張する大王派に詰め寄ったらしい。

一応、誤解のないように言っておくが……サーゼクス様はここまでガラは悪くないはず。

台詞はあくまでイメージです。

ただ、セラフォルーお嬢様によれば……

 

「サーゼクスちゃんの眷属が完全武装……レーティングゲーム用のそれじゃなくて”()()()”装備で人前出たのってはじめてかもね~☆」

 

それって「いつでも武力鎮圧OK!」って意思表示なんじゃ……?

 

 

 

「というかサーゼクス様……黒歌の件にかこつけて、政敵に対する露骨な圧力かけに利用してませんか?」

 

「イッセーちゃん、それを言ったらメッだよ?」

 

……なんかサーゼクス様とは、セラフォルーお嬢様やアジュカ様とはまた別の意味で話が合いそうな気がしてきたぞ?

 

 

 

***

 

 

 

サーゼクス様の戒厳令一歩手前じみた明らかな()()行動や、「まっ、私も”騎士(ナイト)”ちゃんとかリースしたけどネッ☆」というセラフォルーお嬢様の活躍もあり、

 

「基本的には、『私が後ろ盾で、身分的にはシトリー家預かりの()()()()()()()()』ってことになるはずだよ? そうすれば少なくとも表立って黒歌ちゃんに因縁つけてくる有象無象は減るはずんじゃないかなぁ~って☆」

 

「なんか、色々骨を折っていただきありがとうございました!」

 

「にゃ!」

 

俺と黒歌は同時に頭を下げる。

 

「いいっていいって☆ それに私の”地上代理人(エージェント)”を引き受けさせちゃったとき、言ったよね? 『私、イッセーちゃんに返せるもの、色々あると思うよ?』って☆」

 

「あっ……」

 

アザゼル総督と非公式通信会談やったとき、確かにそんなこと言われたような……

 

「今回もその”()()()()()()()”の一つと思ってくれればいいよぉ~☆」

 

「セラフォルーお嬢様……」

 

 

 

まずいな……まずいぞ。

ソーナお嬢様の眷属でいることも、執事見習いとしてお仕えすることも幸せだけど、同時にセラフォルーお嬢様のエージェントでいることも悪くないって……確かに俺は思ってしまったのだから。

 

 

 

***

 

 

 

「まあでもね、表立って動かなくてもちょ~っと面白くない動きする連中もいるだよねぇ……」

 

「? どういう意味です?」

 

するとセラフォルーお嬢様は少し困った顔をして、

 

「お恥ずかしい話なんだけど……どうやら今回の一件で面子を潰されたと思った一部の大王派の()()()()()が、黒歌ちゃんの首に賞金をかけた臭いんだよねぇ~☆ 内々に」

 

「えっ?」

 

ちょっ……またなんつー暴挙を!

 

 

 

「えっとね……まず前提から言うけど、転生悪魔でいきなりソーナちゃんの兵隊(ポーン)になったイッセーちゃんには分りにくいかもしれないけど、一般に転生悪魔じゃない、生粋の悪魔でも力の弱い下級悪魔や中級悪魔にとって”駒を得て上級悪魔の眷属になる”のは『()()()()()()()()』だってことは理解してくれるかな? 実際、それを生涯の目標に掲げてる悪魔は多く要るんだよ」

 

「ええ、まあ」

 

「それでね、そんな彼ら彼女らにとって元々の悪魔である自分達を差し置いて『他の種族から”()()()()()()()()()()”転生悪魔』は、多かれ少なかれ嫉妬と憎悪の対象なんだぁ……残念ながらね」

 

「そういうのはわかります。人間でも民族紛争やら移民排斥やらでよく聞く話ですから」

 

「実力があるとか、相応の理由があるから悪魔に転生させてるんだけど……悪魔が原則実力社会だって言っても、その手の輩は『我ら優良種たる悪魔が、他の種族に劣るはずがない』って頑なに思い込んで、”()()()()()()”を認めないんだよね~」

 

「あっ、見えてきました。確かにその手の連中は、”純血主義と悪魔原理主義”を掲げる大王派とは確かに相性良さそうだ。ということは元々、黒歌のような、あるいは俺のような存在は純粋悪魔の一定の割合からは疎まれてるってことですか?」

 

セラフォルーお嬢様は無言で頷いた。

 

「それでも、黒歌ちゃんが”SS級はぐれ悪魔”だった頃は、まだよかったんだけどぉ……」

 

「大体状況は察しました。見つかれば捕縛と処刑が確定の”はぐれ悪魔”なら、その不満分子は溜飲が下げられたけど、それが外れたとなれば当然、不満が出る。おそらくこんなところじゃないですか? 『眷属という名誉ある地位に召抱えられる栄誉に預かりながら、その主たる純血の上級悪魔様を殺すような者を何故、断罪しない!』と」

 

「うん……」

 

ああ、読めたよ。

呆れるほど俗っぽい繋がりが。

 

「なるほど需要と供給の一致ですか? 転生悪魔に否定的な嫉妬心溢れた中/下級悪魔に、面子を潰されたと思い込む大王派上級悪魔……報酬は『成功の暁には謝礼金に加え、眷属にしてやる』あたりですかね?」

 

「多分……そうだと思うよ?」

 

「この様子だと黒歌の妹を早めに処刑しようとしたのも、口封じとか証拠隠滅とか以外に、転生悪魔否定派の中/低級悪魔を取り込むためのパフォーマンスだった可能性があるな……やれやれだ」

 

セラフォルーお嬢様や黒歌には申し訳ないけど、俺は思考を広げ、深め、収斂する作業に没頭する。

 

「こうなってくると、サーゼクス様が黒歌の妹をレスキューしたのは本当にファインプレーだ。もし殺されてれば、黒歌は悪魔って種族を許さなかったろうし、収拾がつかなくなっていた」

 

だから今はまだ、手持ちの情報だけでも状況が見え易い。

 

「なら、相手はどう出る? 普通なら標的の場所を特定次第、急襲や強襲……相手にイニシアチブを握られるのは面白くない。ならいっそ、”偽情報(撒き餌)”をばら撒いて一網打尽にするか? いや、だがこの方法だと内政担当のサーゼクス様の内諾が必要か……冥界で実行するにせよ、駒王町でやるにせよ」

 

俺は思考を言葉にすることでまとめていく。

セラフォルーお嬢様や黒歌には、ブツブツと呟く俺はさぞかし不気味に映るだろう。

引かれるのは嫌だが、今回ばかりは仕方がない。

 

 

 

「あのね、イッセーちゃん☆」

 

「あっ、はい! ほったらかしにしてすみません!」

 

「あっ、それはいいよぉ~☆ 思考の海に浸るイッセーちゃんも、普段は見れない大人びたクールな表情で素敵だったし♪ ねっ? 黒歌ちゃん☆」

 

「にゃっ♪」

 

えっ? 俺、そんな誉められるような顔してたっけ?

 

「それはともかくね……サーゼクスちゃんの協力が必要なら、間違いなく受けられると思うよ? そうだよね?」

 

するとセラフォルーお嬢様が傍らにおいていた妙にマジカルな魔法杖(ステッキ)から、

 

『ああ、かまわないさ。むしろ兵藤君には直接会って、計画(プラン)の詳細を聞かせて欲しいな』

 

イケメンヴォイスが聞こえてきたのでした……って、はあっ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
セラフォルーと黒歌のヒロイン力上昇と、最後の最後にとんでもない人が登場したエピソードはいかがだったでしょうか?

いや~、書いておいてなんですが……まだ悪魔になって1ヶ月経ったか立ってないかというのに、イッセーは知って(知らされて)しまいましたね?
”悪魔社会の深遠”、大王派(守旧派)魔王派(革新派)の根深い対立を(^^

魔王様たちは一体何を考え、イッセーをどうしたいんでしょうかね~?(棒

しかもラストにはお兄ちゃん魔王……もとい。”紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)”っぽい人も出てくるし。

平行世界(げんさく)では、『生徒会vsオカ研・ドッヂボール大会 → 使い魔ゲットだぜ!』という平和な流れでしたが、どうやら”この世界”では血腥いことになりそうな予感が……

それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!

ご感想などなどをいただけると、とても嬉しいです。





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