俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

24 / 52
皆様、こんにちわ。
さて、今回のエピソードは……アジュカとドライグの()()がメインとなります。

何やら過去に因縁のある二人の間で今、語られるのは……




第24話 ”ア・ドライグ・ゴッホはかく語りき”

 

 

 

アジュカ・ベルゼブブ

四大魔王の一角にして、この世の全ての事象を数式化、方程式化して読み解き操る『覇軍の方程式(カンカラー・フォーミュラ)』なる力を持つ、サーゼクス・ルシファーと並ぶ”超越者”……

 

アジュカからの求めと、アーシアの転生に使われた”変異の駒(ミューテーション・ピース)”のマッチング確認の為に、かの魔王の地上拠点……駒王町に程近い場所にある瀟洒な洋館を訪れた兵藤一誠とアーシア・アルジェントは意外な答えを聞くことになる。

 

『アーシア君に使われた駒は変異の駒の中でもかなりの()()()だよ。要約してしまえば変異の駒というより、むしろ”進化の駒(エボリューション・ピース)”と呼びたくなるくらいにね』

 

というミューテーション・ピースの中でも超レア……というより前例がない性質を持つ駒だと判明した。

 

『ミクロ的な解釈をするなら進化に必要なファクターは”変数化する要素”と”情報の変動幅”さ。強いて言うならば『進化に必要不可欠な”()()()()()”』ってことになるかな?』

 

アジュカの解析によれば、それらの要素をアーシアの戦車(ルーク)の駒は持っていたというのだ。

つまり様々な外的要因や内的要因で、生物が環境適応……環境に自らの身体特性を遺伝子レベルで最適化するように、アーシアの駒は『突然変異を含む自己進化』をするのだという。

 

ただし、前例のない特性を持つ駒ゆえに、定期的に自分へ診せるようにとアジュカは命じた。

とここまではいいのだが……

 

 

 

それは、一誠がアーシアの特性から「戦車の駒のパラメータ上昇値を再配分できないか?」と持ちかけたことに始まる。

 

『どうだい? ここは悪魔らしく交換条件といこうじゃないか』

 

アジュカは楽しそうにそう切り出し、彼の要求はと言えば……

 

『赤龍帝と”()()()”対話をしてみたい』

 

 

 

***

 

 

 

赤龍帝(ドライグ)……とですか?」

 

その意味がわからず、困惑してしまうのは一誠だった。

 

「ああ。そうだ。ウェルシュ・ドラゴン(赤い龍)、”ア・ドライグ・ゴッホ”と話がしたい。全く知らない仲……というわけでもないからね」

 

すると一誠は意識を集中させるように目を瞑り、

 

「ドライグも了承と言ってます。アジュカ様、俺はどうすればいいでしょう?」

 

「魔術でしばらく眠ってくれればいいよ。その間、アーシア君は……そうだな」

 

彼は手元のボタンを押し、

 

「お呼びでしょうか? ご主人様(マスター)

 

現れたのは先ほど二人をこの部屋に案内した瀟洒な銀髪メイドで、

 

「”シャクティア”、アーシア君にお茶会の準備を。当家自慢のスィーツを存分に振舞ってくれ」

 

「かしこまりました」

 

この魔王、存外に気配りができるタイプらしい。

 

 

 

「アーシア、悪いけど席をはずしてくれるか?」

 

「はい。イッセーさん」

 

「後でスィーツの感想でも聞かせてくれ」

 

「はい♪」

 

そして、メイドに案内されて部屋を出るアーシアを見送った後、

 

「じゃあ、はじめようか?」

 

「お手柔らかに」

 

 

 

***

 

 

 

一誠はアジュカの術で深い深い眠りに落ちる。

そして……

 

「そろそろいいか? ”ドライグ”」

 

『久しいな。アジュカ・アスタロト……いや、今の名はアジュカ・ベルゼブブだったか?』

 

「どっちでもいいさ。こうして話すのは”先の大戦”以来だな」

 

まるで旧友に語りかけるような口調のアジュカ。ドライグも尊大な雰囲気は変わらぬものの、どこか懐かしむような雰囲気があった。

 

『ああ。俺が篭手に封じられて以来だ。メフィスト・フェレスも息災か?』

 

「元気だよ。旧魔王派が放逐された今でも、悠々自適に研究三昧さ」

 

 

 

実はドライグにアジュカ、そしてメフィストは非常によく見知った仲だった。

正確には、先の大戦の最中に私的なケンカで暴れまわり結果、三大勢力連合から調伏された二天龍、赤龍帝(ドライグ)白龍皇(アルビオン)の封印の儀に悪魔側の代表として立ち会ったのが人間界でも「錬金術師ヨハン・ファウストと地獄巡りをした悪魔」として名を残す重鎮メフィストと、当時若手の新進気鋭の冥界科学者だったアジュカだったのだ。

 

「それにしても驚いたな……宿主(ユーザー)が”禁手”に至ってもないのに、ドライグが既に意識の完全覚醒に至ってるとはね」

 

直接会うのは久方ぶりだが、実はアジュカ自身は極秘裏に堕天使総督アザゼルと手を組み、歴代の”神滅具の持ち主達(ロンギヌス・ユーザー)”達を追跡調査してきた。

 

その時に集めた資料によれば、ドライグが禁手に至る前に明確な意識覚醒をすることは、ほぼ無いはずだった。

だが、アジュカは固有能力の”覇軍の方程式(カンカラー・フォーミュラ)”により、「兵藤一誠以外の意識」が存在してることに気付いてしまったのだ。

 

正直、前々から一誠に面会を要請していたのは、今代の”赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”のユーザーに顔つなぎする程度の目的だったのであり、アジュカにしてみても「意識だけならドライグが完全覚醒状態にある」など予想外もいいところだった。

 

その驚きを表面に出さず、務めて冷静に対処しようとしたのは上級悪魔にして魔王の一角たる彼を持ってしても、中々に難儀だったようだが。

 

『”相棒”は中々にユニークかつ規格外(イレギュラー)でな。俺も寝てる場合じゃなかったのさ。おかげで退屈せずに済む』

 

「イレギュラー、ね……」

 

『アジュカ・アスタロト、わざわざ俺とサシで話す場を作ったのだろう? 何が聞きたい?』

 

「ああ、そうだったな。先ず聞きたいのは、お前が”相棒”と呼ぶ今代のユーザーについてだ」

 

アジュカは不意に怜悧な科学者の目になり、

 

「兵藤一誠とは……”()()”なんだ?」

 

 

 

***

 

 

 

『何者、か……漠然としすぎてるな? お前には「()()()()()」いた?』

 

「……全力で()()()()()()()()()()()()ような方程式と数式だったよ。俺の解析じゃな。転生悪魔だとかなんだとかって()()()な話じゃない。そもそも転生による悪魔への因子転換も、印象的には”人の姿をとどめるための()()()”にしかなってない感じがする」

 

『それで出た結論はなんだ?』

 

「”()()()()”さ、兵藤一誠は。その数値は”()()()”……龍王から悪魔に転生した”タンニーン”に近いが、決定的に差異がある。そもそも兵藤一誠は、『龍が人の姿に擬態』してるわけでなく、人の姿こそがデフォなわけだろ?」

 

『フフ。流石は”覇軍の方程式(カンカラー・フォーミュラ)”の持ち主と言ってやろう。八割がた正解だ』

 

「詳細を……残り二割を聞かせてもらえるか?」

 

『アジュカ・アスタロト……他言無用を誓えるか? 他の魔王にもだ』

 

アジュカはしっかりと頷き、

 

「ドライグ、お前と()()しよう。秘密の対価に約束の厳守を」

 

悪魔にとり契約の意味を知るドライグは、

 

『いいだろう。端的に言ってしまえば相棒は「人の世に拡散した”()()()()”」、その”()()()”のような存在なのさ』

 

 

 

「? どういう意味だ?」

 

『多くの神話体系の龍は、かつて戯れに……時には人の姿に変化して、人との間に子をなした。多くの英雄豪傑、あるいは”()()”を生み出しながらな。だが人は数が多く世代交代も早い……龍の血は時の流れの中に細分化され、龍の力を顕現できぬほど薄まった。血は(我ら)にとり命であり力その物だ。これも当然と言えば当然の話だ』

 

「だが……変化が起きた?」

 

『察しの通りだ。その力や存在を察知できんぬほど拡散し、薄まった龍の血だが……だが、どのような加減なのか力を顕現されぬまま少しずつ少しずつ「一つの人の血脈」に合流していった。細い小川が大河に合流するように、親から子へ、子から孫へ世代を重ねるたびに薄まった龍の血が集まっていった。細かい理屈は俺にもわからんが……存外、潜在化していても龍の血が惹かれあったのかもしれんな』

 

「そんなことが……」

 

『誰が意図したわけでも操作したわけでもない。自然発生的に散った血は、気が遠くなるような時間の果てに集まり「人の姿をした龍」へと結実した……それが相棒、”兵藤一誠”の偽らざる正体さ。おそらく、”赤龍帝の籠手(オレ)”が相棒の体に顕現したのも偶然じゃないのだろう』

 

ドライグは愉悦の気配を出しながら、

 

『俺もまた呼ばれたのだろうな……”新生の龍(あいぼう)”にな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
ドライグの口から一誠の正体、その一端が明かされるエピソードは如何だったでしょうか?

一誠が色んな意味で()()()()している理由は、どうやらその龍の血脈を源とする”存在その物”が解答だったようです。

そして、どうやらドライグとアジュカは「先の大戦」以来の付き合いで、単純な敵味方ってわけでもないみたいですね~。
どうやらメフィストも知ってるみたいだし。

さて、次回は対話の続き……もうちょっと掘り下げた話になるような?
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!

もしご感想などなどをいただけると、とても嬉しいです。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。