俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような? 作:ボストーク
さて、今回のエピソードは……アジュカとドライグの
何やら過去に因縁のある二人の間で今、語られるのは……
アジュカ・ベルゼブブ
四大魔王の一角にして、この世の全ての事象を数式化、方程式化して読み解き操る『
アジュカからの求めと、アーシアの転生に使われた”
『アーシア君に使われた駒は変異の駒の中でもかなりの
というミューテーション・ピースの中でも超レア……というより前例がない性質を持つ駒だと判明した。
『ミクロ的な解釈をするなら進化に必要なファクターは”変数化する要素”と”情報の変動幅”さ。強いて言うならば『進化に必要不可欠な”
アジュカの解析によれば、それらの要素をアーシアの
つまり様々な外的要因や内的要因で、生物が環境適応……環境に自らの身体特性を遺伝子レベルで最適化するように、アーシアの駒は『突然変異を含む自己進化』をするのだという。
ただし、前例のない特性を持つ駒ゆえに、定期的に自分へ診せるようにとアジュカは命じた。
とここまではいいのだが……
それは、一誠がアーシアの特性から「戦車の駒のパラメータ上昇値を再配分できないか?」と持ちかけたことに始まる。
『どうだい? ここは悪魔らしく交換条件といこうじゃないか』
アジュカは楽しそうにそう切り出し、彼の要求はと言えば……
『赤龍帝と”
***
「
その意味がわからず、困惑してしまうのは一誠だった。
「ああ。そうだ。
すると一誠は意識を集中させるように目を瞑り、
「ドライグも了承と言ってます。アジュカ様、俺はどうすればいいでしょう?」
「魔術でしばらく眠ってくれればいいよ。その間、アーシア君は……そうだな」
彼は手元のボタンを押し、
「お呼びでしょうか?
現れたのは先ほど二人をこの部屋に案内した瀟洒な銀髪メイドで、
「”シャクティア”、アーシア君にお茶会の準備を。当家自慢のスィーツを存分に振舞ってくれ」
「かしこまりました」
この魔王、存外に気配りができるタイプらしい。
「アーシア、悪いけど席をはずしてくれるか?」
「はい。イッセーさん」
「後でスィーツの感想でも聞かせてくれ」
「はい♪」
そして、メイドに案内されて部屋を出るアーシアを見送った後、
「じゃあ、はじめようか?」
「お手柔らかに」
***
一誠はアジュカの術で深い深い眠りに落ちる。
そして……
「そろそろいいか? ”ドライグ”」
『久しいな。アジュカ・アスタロト……いや、今の名はアジュカ・ベルゼブブだったか?』
「どっちでもいいさ。こうして話すのは”先の大戦”以来だな」
まるで旧友に語りかけるような口調のアジュカ。ドライグも尊大な雰囲気は変わらぬものの、どこか懐かしむような雰囲気があった。
『ああ。俺が篭手に封じられて以来だ。メフィスト・フェレスも息災か?』
「元気だよ。旧魔王派が放逐された今でも、悠々自適に研究三昧さ」
実はドライグにアジュカ、そしてメフィストは非常によく見知った仲だった。
正確には、先の大戦の最中に私的なケンカで暴れまわり結果、三大勢力連合から調伏された二天龍、
「それにしても驚いたな……
直接会うのは久方ぶりだが、実はアジュカ自身は極秘裏に堕天使総督アザゼルと手を組み、歴代の”
その時に集めた資料によれば、ドライグが禁手に至る前に明確な意識覚醒をすることは、ほぼ無いはずだった。
だが、アジュカは固有能力の”
正直、前々から一誠に面会を要請していたのは、今代の”
その驚きを表面に出さず、務めて冷静に対処しようとしたのは上級悪魔にして魔王の一角たる彼を持ってしても、中々に難儀だったようだが。
『”相棒”は中々にユニークかつ
「イレギュラー、ね……」
『アジュカ・アスタロト、わざわざ俺とサシで話す場を作ったのだろう? 何が聞きたい?』
「ああ、そうだったな。先ず聞きたいのは、お前が”相棒”と呼ぶ今代のユーザーについてだ」
アジュカは不意に怜悧な科学者の目になり、
「兵藤一誠とは……”
***
『何者、か……漠然としすぎてるな? お前には「
「……全力で
『それで出た結論はなんだ?』
「”
『フフ。流石は”
「詳細を……残り二割を聞かせてもらえるか?」
『アジュカ・アスタロト……他言無用を誓えるか? 他の魔王にもだ』
アジュカはしっかりと頷き、
「ドライグ、お前と
悪魔にとり契約の意味を知るドライグは、
『いいだろう。端的に言ってしまえば相棒は「人の世に拡散した”
「? どういう意味だ?」
『多くの神話体系の龍は、かつて戯れに……時には人の姿に変化して、人との間に子をなした。多くの英雄豪傑、あるいは”
「だが……変化が起きた?」
『察しの通りだ。その力や存在を察知できんぬほど拡散し、薄まった龍の血だが……だが、どのような加減なのか力を顕現されぬまま少しずつ少しずつ「一つの人の血脈」に合流していった。細い小川が大河に合流するように、親から子へ、子から孫へ世代を重ねるたびに薄まった龍の血が集まっていった。細かい理屈は俺にもわからんが……存外、潜在化していても龍の血が惹かれあったのかもしれんな』
「そんなことが……」
『誰が意図したわけでも操作したわけでもない。自然発生的に散った血は、気が遠くなるような時間の果てに集まり「人の姿をした龍」へと結実した……それが相棒、”兵藤一誠”の偽らざる正体さ。おそらく、”
ドライグは愉悦の気配を出しながら、
『俺もまた呼ばれたのだろうな……”
皆様、ご愛読ありがとうございました。
ドライグの口から一誠の正体、その一端が明かされるエピソードは如何だったでしょうか?
一誠が色んな意味で
そして、どうやらドライグとアジュカは「先の大戦」以来の付き合いで、単純な敵味方ってわけでもないみたいですね~。
どうやらメフィストも知ってるみたいだし。
さて、次回は対話の続き……もうちょっと掘り下げた話になるような?
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!
もしご感想などなどをいただけると、とても嬉しいです。