俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。
本日も諸事情で半端な時間にアップです(^^

今回のエピソードは……冒頭は一誠パパの意外な一面が垣間見える小話です。
しかし、ほとんどが……サブタイ通りにこの人がこの時点で、イッセー×アーシアと接触するのは(^^





第23話 ”いや、この人(悪魔だけど)がこの時点で出たら駄目っしょ?”

 

 

 

なにやらEX(おまけ)ステージだか隠しイベントぽかった”ミッテルトちゃん返り討ち事件”も幕を閉じ、そして翌日の日曜日……

 

「イッセーさん、オートバイ……ですか?」

 

ガレージから引っ張り出してきた赤いバイクにアーシアは眼を丸くする。

 

「ああ。SUZUKIの”GSR400ABS”ってモデルだよ」

 

さて、兵藤一誠という少年、実は4月生れでありほぼ高校入学と同時に普通二輪車免許を取っていた。

幸い、私立駒王学園はバイクの免許習得に関しては特に禁止はしていない。

もちろん、安全面の関係で通学に使うことは禁止されているが。

 

「アーシアにとってはしなびたオッサンに見えるかもしれないけど……ああ見えても、若い頃はけっこうバイク乗ってブイブイ言わせてたらしくてさ。いつか子供が生まれたら一緒にツーリングするのが夢だったらしくてね」

 

「しなびたなんてとんでもないですぅ! 素敵なお父様じゃないですかぁ~♪」

 

そうニッコリ微笑むアーシア。

その素直すぎる言葉に、ちょっと気恥ずかしくなった一誠はそっぽを向きながら、

 

「まあ、そんな訳でバイクの免許取ると同時にもらったんだよ。親父にお下がりだけどね……一応、消耗品の交換を兼ねたカスタムとかは自分で金を出したけど」

 

そう言いながらシートラインに沿うように配管された、「ヨシムラ」製のスリップオンタイプの”Tri-Ovalサイクロン EXPORT SPEC”という排気管(マフラー)を軽く撫でる。

どうやら、ただ父親からのお下がりのバイクというより、1年間乗り続けたパートナーとして一誠もそれなりの思い入れがあるようだ。

 

「アーシア、悪いんだけどさ」

 

「はい?」

 

「今日、町外まで出るから後ろに乗ってくれるか?」

 

 

 

***

 

 

 

実は一誠がわざわざバイクを引っ張り出したのは、「二人乗りできる自転車」を持っていないからで、アーシアが自転車に慣れてるなら二人揃ってサイクリングがてらに……というプランもあったのだが、それは今後の課題だろう。

ということはつまり、

 

「わたし、オートバイに乗せてもらうの初めてです~」

 

こういうシチュエーションになるわけだった。

 

「怖くないか?」

 

「はい! むしろ気持ちいいですぅ♪」

 

足を揃えた”女の子座り”のアーシアをリアシートに乗せ、赤いバイクは本来のスペックから考えれば大人しいスピードで街並みを駆け抜け、郊外へと進路を向けた。

 

本当だったらアーシアもシートを跨いで乗るほうが安定するのだが、まあそこは持ち前のライディング・スキルでなんとかする一誠であった。

 

本人はトレーニングもできる自転車(ロードバイク)のほうを好んでるようだが、ゴールデンウィークや夏休み、冬休みに花見を兼ねた春休みと出かけた家族ロングツーリングなどとそこそこバイクでも距離は乗っているのだ。

 

「ちょっと夢が叶ったかな?」

 

「えっ?」

 

「いや……リアシートに女の子乗せて走るの、少し憧れてたんだ」

 

普段の彼からやその能力から考えればささやか過ぎる憧れ、「()()()()()()()()()()」とはまた別の、日常の中にある小さな憧れ……それを聞けたこと、その対象が自分であったことにアーシアは心から悦びを覚えていた。

 

どんな小さなものでも、例えたまたまでも、『ソーナでもなく椿姫でもなく、わたしが叶えた』……

その悦びは確かに無垢ではあった……だが、同時に誰に教えられるまでもなく、アーシアは着実に「己の欲望に忠実」という性質を持つ悪魔という種族に適応しつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*********************************

 

 

 

 

 

 

 

さて、一誠がバイクを寄せたのは駒王町に程近い、だけど町の住所ではない場所に建つ瀟洒な洋館だった。

近代建築のメソッドがきちんと守られ、伝統美や様式美の要素を取り込みながらもきちんと現代の要素で破綻なくまとめられてるあたり、設計した人間の趣味のよさを感じられた。

 

そして、呼び出しベルを押すと……

 

「兵藤一誠様、アーシア・アルジェント様、お待ちしておりました」

 

そう出迎えたのは、アーシアと対になるような見事なシルバーブロンドを持つ、洋館に負けず劣らず瀟洒なメイドだった。

 

 

 

瀟洒が売りの銀髪メイドに案内された部屋は、この洋館の外観からはどう見ても不釣合いな……まるでどこぞの研究所から部屋ごと移設したような”()()()”だった。

 

「やあ、待ってたよ」

 

そして一誠とアーシアを迎えたのは、この部屋の主であり、館の主であり、同時に……

 

「お初にお目にかかります。お会いできて光栄の極みです。魔王”アジュカ・ベルゼブブ”様」

 

 

 

***

 

 

 

そう、このフォレスト・グリーンの髪を持つ美丈夫こそ、四大魔王の一人にして『この世のあらゆる秘密を解く鍵の持ち主』……全ての現象を解析し、数式化と方程式化し自在に操る驚異的固有技能【覇軍の方程式(カンカラー・フォーミュラ)】の持ち主である”()()()”、アジュカ・ベルゼブブ本人であった。

 

「まず、僕の個人的探究心を満たす前に、先に懸念すべき案件を片付けてしまおう」

 

そう切り出したアジュカは、

 

「ではアーシア君、君の駒……”戦車(ルーク)”の変異の駒(ミューテーション・ピース)を見せて貰うよ?」

 

さて、気が付くと一誠もアーシアも敬称の”様”こそつけているが既に名前呼びだった。

これはアジュカからのリクエストでもあるし、飾らない気取らない、ついでに言えば研究者気質(かたぎ)のアジュカの人柄によるものも大きいだろう。

 

「は、はい! あの、服を脱いだほうがいいでしょうか?」

 

「いや、別にかまわないさ」

 

とアジュカは淡白に返し、アーシアのささやかな膨らみを持つ胸の谷間に触れると……

 

「よっと」

 

軽い調子でアーシアから”悪魔の駒(イーヴィル・ピース)”を抜き出した。

この辺りの鮮やかさは、流石は駒の製作者(クリエイター)の面目躍如と呼べるだろう。

 

「ふむふむ……これは!? なるほど面白い変化、いや”()()”をしてるねぇ~」

 

そう実に愉快そうにアジュカは微笑んだ。

 

 

 

「結論を先に言うよ? まずアーシア君に使われたミューテーション・ピースは害だけで言うなら()()では完全に無害だ。むしろ、通常のルークの攻防力上昇以外に、もしかしたら”有形無形の様々な恩恵”をアーシア君に与えるかもしれないね?」

 

「ん? アジュカ様、それってなんとなく曖昧な見解のような……?」

 

一誠の言葉にアジュカはニンマリと笑い、

 

「そう聞こえるだろうね~。アーシア君に使われた駒は変異の駒の中でもかなりの()()()だよ。要約してしまえば変異の駒というより、むしろ”進化の駒(エボリューション・ピース)”と呼びたくなるくらいにね」

 

「へっ?」

 

言われた単語の意味がわからずぽかーんとするアーシアに、アジュカは優しい表情になると、

 

「進化には必要な要素がいくつかあるんだけど……一誠君はわかるかい?」

 

「進化が環境適応と同義となるなら、環境という”外的要因”とその進化に対応する遺伝構造や進化速度などの”内的要因”ですか?」

 

「確かにそれは正しい解釈だ。それらは必要であることは間違いないが……また別の側面から語ってみようか?」

 

アジュカにとり、一誠は中々教え甲斐のある出来のよい生徒に見えたのかもしれない。

 

「マクロ的に言えば一誠君の言うとおりだ。だが、ミクロ的な解釈をするなら進化に必要なファクターは”変数化する要素”と”情報の変動幅”さ。強いて言うならば『進化に必要不可欠な”()()()()()”』ってことになるかな?」

 

彼は満足そうな表情と共に、

 

「アーシア君の駒が持ってるのは、まさに”()()”なんだよ」

 

 

 

***

 

 

 

「つまり、アーシアの”戦車(ルーク)”は、自己進化すると?」

 

「そうだね。ただ正常進化だけとは限らない。進化の過程の中には『突然変異』という要素も組み込まれて然るべきだ。例えば、本来のルークを”古代の戦車(チャリオット)”に例えるなら、アーシア君のそれは戦車……装甲化陸戦兵器という繋がりで”現用(10式)戦車”まで能力を進化させる可能性もあれば、突然変異を起こし同じ陸軍兵器でも空を飛ぶ”AH-64Eアパッチ・ガーディアン”攻撃ヘリや、そもそも軍種が違う”F-22ラプター”戦闘機なんてものに化けるかもしれないってことさ。下手をすれば兵器以外に進化するかもね」

 

いきなり兵器の話をされてもアーシアにはちんぷんかんぷんだが、しっかり食いついてきたのが一誠で、

 

「そりゃまた難儀な……というか出鱈目ですね?」

 

「だけど、現時点でもルークとしての基礎機能はあるわけだし、『付加価値』だと割り切れば、かなりお得ではあると思うよ? ただし……」

 

アジュカは一誠とアーシアを交互に見て、

 

「俺が地上に居るときは、可能な限りアーシア君を定期的に()せに来ることだ。正直、自己進化性をデフォでもってる駒なんて初めてでね……興味深い研究対象ってのもあるけど、後々どんなリスクが出てくるかわからない」

 

「わかりました」

 

「はいっ! アジュカ様、これからもよろしくお願いします!」

 

深々と頭を下げる二人の素直さを、アジュカは好意的に捉えていた。

 

 

 

「ところでアジュカ様……物は相談なんですが」

 

「なんだい? 一誠君」

 

「ルークの攻防パラメータ上昇を再分配し、攻撃力の上昇値を防御と魔力増大に振り分けることは可能ですか?」

 

「可能不可能で言えばもちろん、可能だが。そもそも俺の作品には全て『隠し要素』を入れてるしな。だが……ふむ」

 

アジュカは一誠の顔を見て、

 

「どうだい? ここは悪魔らしく交換条件といこうじゃないか」

 

「というと?」

 

「一誠君、君が僕の願いを聞いてくれるならアーシア君の駒の再セッティングや必要な術式付与は、責任もって受け持とう」

 

「それはとてもありがたい申し出ですが……では、アジュカ様からのご要望は?」

 

彼はクセのある笑みを浮かべ、

 

「赤龍帝と”()()()”対話をしてみたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
アーシアにほんのちょっぴり悪魔化した影響が見え隠れするエピソードはいかがだったでしょうか?
まさかこれも”緊縛ノススメ(第22話後書き参照)”の影響なんてことは……?(汗

さてさて、名前だけは出てきてましたがまさかの御本人前倒し登場のアジュカたまでした~……って、この人がこの時点で接触するのはかなりまずいような? 主に原作ブレイクアウト・タイフーン的な意味で(^^

それにしてもアーシアのルーク、実は変異の駒(ミューテーション・ピース)の中でも前例のない”進化の駒(エボリューション・ピース)”という超レア物だった件。
神器といい、彼女にはレアを引き当てる星の巡りがあるのか?

そして次回はアジュカとドライグのある意味、”禁断の邂逅”が実現……?
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!

ご感想などなどをいただけたら、とても嬉しいです。




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