俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ~。
今回のエピソードは……終了したアーシア編(生徒会室のディアボロス)から、フェニックス編の間にあるいくつかの閑話の一つです。

アーシア編の後始末と申しましょうか?
ちょっと「死ぬには惜しい逸材(ぽんこつ)」が、がっつり原作ブレイクで生存フラグ立ててたりして(^^




EXステージ01 ”Dance with Devils”
第22話 ”ぽんこつ堕天使ちゃんの遅刻”


 

 

 

さてさて、アーシア・アルジェントを巡る物語は一端幕を閉じることになった。

ただ、”原作”と呼ばれる平行世界とは異なる事例が、この段階で無数に発生してることもまた事実であり、【ハイスクールD×D】という作品が「一つの世界」として完成しているというのなら、既にその「予定調和」は破綻していると言っていいだろう。

 

例えばこれは、そんな「破綻」の小さな事例の一つと言っていい。

 

 

 

「アーシア・アルジェントを返してもらうッスよぉ~!!」

 

と堕天使、通称「ゴスロリを着た金髪堕天ロリ」こと”ミッテルト”が、何を考えてるのか悪魔の本拠地である駒王学園近所の公園に現れたのは、ちょうどアーシアが悪魔に転生した翌日のことだった。

 

その日、ちょうど土曜日だったこともあり、ソーナの計らいで急遽アーシアを兵藤家に下宿させることになった一誠は、アーシアへの街の案内を兼ねて足りない日用品の買出しに出かけた。

 

ただ、女性の買い物という物が細かいところまで知らない一誠は、主人であるソーナに相談しており、ソーナは快くそれを了承し椿姫を連れ立って合流してくれたのだ。

 

お陰でアーシアの日用雑貨品、ついでにソーナたちは生徒会の少々足りなくなってきた備品の購入も終えた。

購入した荷物は、後でまとめて宅配してもらえるように手配して……

 

『お嬢様たちに心ばかりのお礼を』

 

ということで、一誠は三人をあおの中々に美味しいクレープ屋台が出没する公園へと案内した。

 

「あっ、ここって♪」

 

そう、アーシアと初めて会った時に一緒にクレープを食べた公園である。

そして四人分のお勧めクレープとドリンクを購入した一誠はベンチへと戻り、

 

「ソーナお嬢様、たまにはこういう庶民の食べ物を味わうのも一興かと」

 

「一誠、貴方は時折、私を酷く誤解してるようですが……貴方が思うほど、私は浮世離れしてるわけでもなければ、世間知らずでもありませんからね?」

 

すると椿姫は相槌を打ちながらクスクス笑い、

 

「兵藤君、こう見えてソーナは割と寄り道とかするほうですよ? 帰り道の某カフェ・チェーンで飲む”キャラメル・フラペチーノ”はソーナの鉄板です」

 

「椿姫、余計なことは言わないでよろしい」

 

などと言いつつわりと手馴れた感じにクレープかぶりつくソーナ。

本人の言葉通り、このお嬢様は割と庶民はでもあるらしい。

 

楽しそうの微笑む椿姫とアーシアもそれに習い人心地ついてると、まるで食べ終わるのを見計らうように結界が張られたのだった。

律儀なものである。

 

「やっと見付けたッス!」

 

 

 

***

 

 

 

「まだ生き残りがいたんですか。リアス、ちょっと仕事がやっつけ過ぎですよ?」

 

そうハァっと小さく嘆息するソーナに、

 

「『だてんしがあらわれた』ですか? 選択肢は『たたかう/ぼこる/とうめつする』あたりでしょうか?」

 

意外や意外、わりとオールドファッションのRPGが好きな(そして割と台詞が怖い)椿姫に、

 

「あの……ミッテルトさん、もしかしてずっとわたしを探していたんですか?」

 

つい慈愛に満ちた同情的な目線で見てしまうアーシアであった。

 

 

 

「な、なんすかっ!? なんでうちが可哀想な娘を見る目で見られてるんすかっ!?」

 

予想外の反応に思い切りうろたえるミッテルトだったが、

 

「実際に今、君は可哀想な状態なんだって。えっと……テルミットって言ったっけ?」

 

「だれが焼夷炸薬(テルミット)っすか!? うちはミッテルトって立派な名前が……」

 

「わかったわかった。ミッドガルド、先に言っておくがアーシアって今、悪魔に転生してるぞ?」

 

「だから、だれが北欧神話体系の人間界だって……へっ?」

 

鳩ならぬカラスが空気銃喰らったような顔をするミッテルトに、

 

「アーシア、翼を展開しなさい」

 

「は、はいっ! ん~!」

 

”ばさっ”

 

ソーナの言葉に従い、可愛く力んだアーシアの背中(正確には腰の辺り)から小ぶりながら悪魔を象徴する”()()()()()()()()()()()()”が生え、同時にソーナや椿姫にも大きさが違うが同じく黒い翼が出現していて……

 

「へっ? へっ? 何この超展開?」

 

「あっ、ちなみに俺は……」

 

一誠の左手にも赤き龍の篭手、神滅具(ロンギヌス)の一つである”赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”が現れ、

 

『Boost !』

 

「赤龍帝のセイクリッド・ギア持ちね?」

 

 

 

***

 

 

 

さて、ミッテルトちゃんの唖然呆然、いやむしろ受難?なステージの始まりである。

 

「まずミッテルト……でしたか? 私は上級悪魔の一人、ソーナ・シトリーです。縁あって先日、アーシア・アルジェントは我が眷属となりましたが……先ほどの言葉、それを踏まえた上でもう一度言えますか?」

 

「えっ? ちょ、なんで魔王レヴィアタンの妹がこんなところに……」

 

「そうそう。ミッテルトさんのお仲間堕天使とその下僕は、既に別の上級悪魔……この地の管理者である”グレモリー様とその眷属”により、下僕のはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)ごとぷちっと殲滅されてるはずですよ? そう報告を読みましたし……あっ、私はソーナの『女王(クィーン)』を務めさせていただいてます真羅椿姫と申します」

 

ミッテルトは考える。

旧72柱にも名を連ねる上級悪魔の跡取りとその『女王』、そして赤龍帝……

 

(うん。無理っす♪)

 

どう考えても過剰戦力(オーバーキル)だ。

一発逆転の手札になるかもしれないアーシアに目がくらんで、敵との戦力差も見抜けずノコノコ前に出た時点で色々詰んでた。

ここは逃げよう。

昔誰かに言われたはずだ。『ポンコツでもいい。逞しく育ってほしい』と。

 

「お、お邪魔しましたっすよぉ~」

 

こっそり逃げようとするミッテルトに、

 

「一誠」

 

眼鏡をキランと輝かせたソーナに、

 

「はい。ソーナお嬢様」

 

今にも全力逃走に移行しようとするミッテルトに左手を向け、

 

「篭手よ、伸びろ!」

 

『Extension !』

 

”ギュオン!”

 

その一誠と赤龍帝(ドライグ)の掛け声と同時に、天使繋がりの某三位一体ロボットの”無限拳”の如く倍化(ブースト)されたエネルギーが肘から先が延伸しながら飛び、

 

”がしっ!”

 

「うきょっ!?」

 

そのままミッテルトの細い足首を掴むと……

 

「せーの」

 

”ばちこーんっ!!”

 

鞭のようにしなりながらミッテルトを地面に叩きつけたのであった。

 

 

 

「みってるとさぁーん!」

 

今は陣営的に敵味方に分かれているとはいえ、顔見知りの文字通り叩きつけられた衝撃に驚いたアーシアが慌てて駆け寄ると、

 

「Q~……」

 

いい感じに違う意味で()()()いるミッテルトがいたりして。

 

 

 

追加能力(エクストラスキル)延伸(エクステン)

平行世界(げんさく)では存在していない”倍化(ブースト)”、”譲渡(トランス)”以外の三つの追加能力”貯蔵(プール)”、”硬化(キュリング)”、”延伸(エクステン)”の中の一つ。

効果は倍加したエネルギーを「延伸に転換する」こと。

現状、まだ発言したばかりの能力であり「篭手を直接的に伸ばす」ことしか出来ないが、一誠の成長により他の事象の延伸(例えば”ブラスト・ショット”の射程延伸)などに効果が付与され、より多様な増幅効果が得られるかもしれない。

今はまだ、他のスキルとのコンビネーションは未熟だが、それぞれの成長によるスキルレベルの上昇で、将来的にはその有機的な組み合わせによる戦術選択肢の拡大も期待できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

 

「一誠、殺さなかった事は評価できますが……何故、そのような判断を?」

 

「生存していても脅威にはならないことと、今回の事件の生き証人として堕天使側への政治的取引材料になります」

 

「いい判断です」

 

ソーナが表情には出さないが満足げに小さく頷いた。

 

(う~ん……うちは一体……?)

 

ミッテルトは思い出す。

アーシアとエンカウント。ここまではOK。

だが、アーシアが転生悪魔に。Too Bad !!

しかもすぐそばにアーシアは転移させた上級悪魔(おやだま)とその『女王』。オマケに赤龍帝までいて……そいつに、

 

(ニョロニョロのドーンだっ!?)

 

「むぐぅ~~~~っ!!」

 

意識が覚醒したミッテルトはようやく自分のおかれてる状況、羽ばたけず手足も動かせず言葉も出せない状況を理解するのだった。

 

「ソーナお嬢様、気が付いたようですよ?」

 

「ですね」

 

 

 

どうやら場所はさっきと比べても大きく動いてはないらしい。

まあ。公園の中にある小さな雑木林の中で、小規模な人払いの結界が張ってあった。

その中でミッテルトは力の源である羽に封印術式をかけられた上、ボールギャグを噛まされ、両手両足をそれぞれ縛られてえびぞり状態で改めて両手両足を結び付けられるという……これでそこらへんの木にでも吊るせば”駿河問い”の完成という中々マニアック、あるいは見ようによってはセクシャルな姿で地面に転がされていた。

幸い、駄目維持……じゃなかった。ダメージは、アーシアにより回復されている。

 

ちなみにこの緊縛の手際のよさといっそ芸術的な仕上がりは、椿姫の手柄である。

 

そしてソーナは、同じく椿姫の”()()”である妙に凝った作りのボールギャグを外すように命じ、

 

「ミッテルト、貴女にいくつか質問があります。ああ、嫌なら答えなくてもいいですよ? 私も堕落して堕天使になった存在が、更に堕落するとどうなるか興味はありますから」

 

と言いつつ一誠をチラッと見たりするが、

 

「あの~、お嬢様。()れというならヤりますが……その手のこと、あまり俺に期待しないでくださいよ?」

 

ぶっちゃけてしまえば、”この世界”の一誠、兵藤一誠にあるまじき話ではあるのだが……”()()()()()()”には比較的疎い。

どの程度疎いかと言えば、クラスメートの”エロ眼鏡(♀)”が、「あいつ、卒業まであのまんまだったら……いっそ私が()()させてやろうかしら?」と心配するレベルらしい。

 

「ああ、ここで見るべきは椿姫でしたね」

 

「はい。ソーナ、どうかお任せください♪ じっくりと蝕むように堕落の奈落に落としますから」

 

「ぴいっ!?」

 

ミッテルトが小さな悲鳴を上げたのは無理もない。

口調はいつもどおりだが、椿姫のレンズの向こう側の瞳は獣を思わせる光を爛々と輝かせていたのだから……

 

 

 

***

 

 

 

尋問は、特に滞りなく終わった。

赤龍帝(イッセー)にボロボロになるまで性玩具(オモチャ)にされたほうがまだマシな未来を椿姫の中に見たミッテルトは、非常に「()()()()()()()」にソーナの質問に答えたからだ。

 

結論から言えば、この一件は組織性や計画性のあるものではなく、突き詰めてしまえば「ミッテルトが失踪したアーシアを追いかけている間に、リアスとその眷属が【教会】残党を殲滅していた。ミッテルトはそれを知らず任務を続行していて今に至る」ということらしい。

それはいいのだが……

 

「あら、残念」

 

と呟く本当に「真羅椿姫の真骨頂(裏)」を発揮できないことを残念そうな椿姫にますますミッテルト恐怖を覚えたそうな。

 

 

 

さて問題になったのは、SAN値をガリガリと削られまくったミッテルトのその後であり、

 

「ここは正規の手順で……セラフォルーお嬢様のルートで堕天使主流派、確か【神の子を見張る者(グリゴリ)】でしたっけ? そこと捕虜交換についての交渉というのはいかがでしょう?」

 

「たしかにそれが順当ですね? では一誠、そのように手配を」

 

「え~っと……ここは普通、お嬢様が御連絡とるのが組織工学的に順当ではないのかなぁ~と」

 

するとソーナはいっそ爽やかに微笑み、

 

「何を言ってるのです、一誠? こういうときこそ”レヴィアタン様の地上代理人(エージェント)”たる貴方の出番でしょう?」

 

 

 

***

 

 

 

その後、一誠からダイレクト回線で電話を受け取ったセラフォルーは、

 

『やっほぉ~☆ 愛しのイッセーちゃんから電話嬉しいよぉ☆ ところでどおしたのかなぁ?』

 

と相変わらずテンション高めのキャラメルヴォイスで対応。

事情を説明すると、即座にセラフォルー直参……というか眷属が転移してきた、拘束されたままのミッテルトを連行していった。

セラフォルーが、

 

『悪いようにはしないよぉ☆』

 

と言っていたので、後は任せていいだろう。

 

 

 

さて、ふと唐突に巻き起こったこの小さな事件、いうならば”ミッテルト生存フラグ事件”ともいうべきこれは、後にどんな影響を及ぼすかはわからない。

わからないが、

 

「ところで椿姫先輩、なんでボールギャグなんて持ち歩いてたんです?」

 

()()の小道具ですから。それに今回のように何かと必要になるかもしれないでしょう?」

 

一誠の言葉に椿姫は、「何を当たり前な?」という雰囲気で返した。

 

「いや、今回の事例は特殊すぎますって。それにあの堕天使縛るのも、妙に手馴れていたというか……」

 

「緊縛は日本の文化ですよ? 特に刑罰史には欠かせません。いい機会ですし、兵藤君も手習いとしてアーシアさんを練習台に覚えてみてはどうですか? 梱包とかも使いまわし出来ますし、わりと便利ですよ?」

 

「わ、わたしイッセーさんの為に頑張ります!」

 

「いや、そこは頑張るとこなのか?」

 

 

 

なにやら後に色々爪痕ならぬ()()を残しそうなエンドであった。

例えば、主にアーシアの白い肌とかに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
普段より、ほんの僅かにエロ分含有のエピソードは如何だったでしょうか?

実は”ミッテルト生存√”のエピソードは、本来はアーシア編本編に組み込みたかったのですが、どうにも失敗してしまいこうして独立短編として成立させました(^^

ミッテルトちゃんは色々と使い勝手がよさそうなので(黒笑

そして地味に開示される赤龍帝の篭手の追加能力と、椿姫さんの趣味……うん。一体どこで間違った?(汗
ソーナにその真骨頂(裏)とやらを使ってないことを祈りましょう。

次回もちょっと原作にはないエピソードになるかもしれません。
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!

ご感想などなどをいただけると、とても嬉しいです。




***



オマケ
ここまで読んでくださった皆様に感謝を込めて♪
気まぐれの落書きみたいなものですが、よろしければどうぞ(^^


後日、兵藤家に真羅椿姫より小包が届くことになる。
郵送物欄には”教本と教材”と達筆に書かれており、その大き目のダンボールを一誠が部屋に持ち帰り開けてみると……

「んげっ!?」

一番上に入っていたのは、確かに本だった。
丁寧な装飾で豪華そうな和装の本……ただし、タイトルは、

「”緊縛ノススメ”……椿姫先輩って一体……?」

「わぁ~。赤い縄とか赤い蝋燭とかも同梱されてますよぉ?」

()()()()に色々な意味で興味津々のアーシアであった。

これがどういう結果(騒動)を引き起こしたのかはいずれ語られるかもしれない。
ただし、今言えるのは一誠がいないときアーシアがこっそり()()を隠れ読んでたとか、家に誰もいないとき愛猫(ペット)の黒猫や居てはいけない通りすがりの魔王少女が隠してあるはずの()()を熟読していた……例えば、そんな噂だけだったりする。







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