俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような? 作:ボストーク
今回のエピソードで一応はアーシア編……”生徒会室のディアボロス”のエンド・エピソードになります。
まずは、ここまで応援してくださり本当にありがとうございました!
さてチャプター・エンドのエピソードは……アーシアの出した結論と、そしてこの後にきっと繋がる話になってます。
「み、皆様、始めまして! このたび、ソーナ・シトリー様の眷属悪魔になりました”アーシア・アルジェント”と申しまひゅ! あっ、噛んじゃった……」
その瞬間、放課後の生徒会室は生暖かい笑い声に包まれた。
「元
深々と頭を下げる金色の髪の少女に、
「「「「「こちらこそよろしく! アーシア!!」」」」」
生徒会一同は歓迎の声を持って迎え入れた!
「アーシアは近々、駒王学園高等部に編入しますが同時に生徒会に所属してもらいます。役職は一誠と同じく雑務。皆、そちらでも指導をお願いします」
「「「「「はいっ! 会長!」」」」」
さて、状況は……あまり説明する必要はないかもしれないが、アーシアは悪魔に転生することを選択し、そして駒王学園に編入前に一足早く他の眷属と対面となった。
「会長、これでようやく”
こっそりと耳打ちするように囁く椿姫に、
「そうですね」
言葉も表情も相変わらず淡白なソーナだったが、椿姫はその口元が嬉しそうに緩んでるのを見逃さなかった。
本来はアーシアと一誠の歓迎会を兼ねて眷属が勢ぞろいしたことを祝い、冥界にあるシトリー家邸宅で盛大にお披露目式をやるべきことだが……それは長期休暇が取れる夏休みにでもということにして、体育祭などの学園でのイベントを控えた今は身内の中でのお茶会の延長線上でできるささやかな祝宴という形をとった。
正直言えば、ソーナは貴族然とした煌びやかな大祝宴より、こういう気の合う仲間たちが集まるこじんまりしたホームパーティーのような小さな宴を好んでいた。
***
さてさて、アーシアが今まで接触のなかった生徒会メンバーに和気藹々な質問攻めにあっていた頃、
「
「ありがとう、一誠」
執事服姿の一誠が銀のトレーに乗せ、ソーナ愛用のロイヤル・コペンハーゲンのティーカップを運んできた。
ちなみに呼び方は”ソーナお嬢様”ではなく”会長”の生徒会モードで起動してるようだ。
カップに注がれた彼女好みのフレーバーを日々模索してることがわかる琥珀色の液体の香りに満足したソーナは、
「一誠、アーシアを中心とした今回の一件……どう見ますか?」
「正直、驚きました」
あの日、アーシアは「わたし、悪魔になります!」とはっきりと自分の言葉と意思で宣言したのだ。
一誠はその真意を問いただそうとしたのだが、
『一誠、それは野暮というものですよ?』
とソーナに諭されてしまった。
「まさか、神の僕であるより俺と共に生きることを選ぶなんて思ってませんでしたから……」
「そうですか? アーシアの生い立ちや現状、その想いの形を考えれば……私はむしろ順当な判断だと思いますよ?」
「そうなんでしょうか?」
「きっとです。一誠、今の貴方に女心を理解しろなどと無茶は言いません」
「は、はあ」
一誠にしてみれば、ソーナが唐突に話題を変えたように思え困惑してしまうが、
「ですが、男女の機微やその種の心の動きにあまりに疎いのも事実……幸い、アーシアも貴方と同じ長き時を生きるようになったことですし、いい機会なので少しずつでもかまいませんから学びなさい」
「はい。しかし男女の機微と言われても、一体何を学んでよいのか……」
「”
「会長?」
最後のソーナの呟きは、小さすぎて一誠には聞き取れなかったようだった。
***
「少し話題を変えますが……一誠、アーシアの特質と”
「戦車の特性”防御力と攻撃力の上昇”……うん。アーシアとの相性は悪くないと思いますよ? 回復役や補給役は真っ先に狙われますから。攻防の能力引き上げは、ダイレクトに生存率に関わってきそうですから」
「なるほど……そういう考え方も在りますね」
「可能なら単純な強化だけじゃなくて、攻防のパラメータを振り分けたり出来れば、なおいいですが」
「例えば”
「はい。例えばアーシアが『実践に十分耐えられるだけの防御力』を発揮できるなら、悪魔に転生した身なれど文字通り『戦場の天使』として活躍できるかもしれませんよ?」
するとソーナはちょっと意外そうな顔をして、
「一誠は時折、酷くロマンチストな発言をしますね? 貴方の事だからてっきり『戦場の装甲救急車』あたりを言うかと思ってました」
「いや、実はその表現も頭の片隅を過ぎってました」
と一誠は主の言葉に小さな苦笑で返す。
「ところで一誠……私はアーシアの転生に用いた駒が、”
「いえ、初耳ですが……そもそも、”ミューテーション・ピース”とは何なのです?」
「名前の通り『突然変異を起こした
「”知られている”という事は、”未知の特性”があるということですか?」
ソーナは無言で頷き、
「例えば、アーシアに用いたルークなのですが……私の元に届いたときは、確かに”
だが、一誠は何故か面白そうな顔で、
「悪魔の身で言うのもなんですが……中々、オカルトチックな話ですね? 会長がお手持ちのうちに突然変異を起こしたのか、それとも最初から普通の駒に”
するとソーナは不思議そうに、
「? どうしてそこでリアスの名前が出てくるのです?」
「えっ? グレモリーお嬢様が率いてるのは”オカルト研究部”でしょう?」
「ああ、そういう意味ですか……一誠、」
「はい」
「リアスにそういう類の物を期待してはいけません」
「へっ?」
「正直、未使用の駒がそれしかなかったとはいえ、ちょっと心配ではありますね。転生の儀式も特に異常はなかったですし、取り立てて問題はないようですが……」
「普通に考えれば、『普通の戦車の駒で転生に事足りたアーシアに、オーバースペックの駒を使ってしまった』で済む話でしょうけど」
「何しろ”|悪魔の駒《イーヴィル・ピース”は肝心な部分がブラックボックス化されてますから、使用者の私が言う話ではないのですが”隠しスペック”が多いんです。おそらく全容を把握してるのは、開発者である四大魔王のお一人【アジュカ・ベルゼブブ】様くらいしか……」
「えっ? ベルゼブブ様ですか?」
あからさまに驚いてみせる一誠に、ソーナの形のよい眉がピクンと跳ね上がった。
「そのリアクションの意味……教えてもらいますよ?」
「あっ、いえ、その……」
一誠は少し慌てた様子で、
「特に機密指定は受けてなかったミッションですが……セラフォルー様ルートで、ベルゼブブ様の地上にある”
「あの姉は……」
今のソーナの表情は「ちょっと夢に見そうだな~」とか思う一誠であった。
もっとも彼の夢の時間は、ほぼ
「一誠は指定された日にベルゼブブ様のところへ訪問する際、アーシアを同行させてください。その件については”
「は、はい!」
***
「あ……そう言えばもう一つ、一誠に伝えねばならないことがありました」
ふとソーナにしては珍しく何か忘れていたことを思い出すような仕草で、
「アーシアには今後、兵藤家に下宿してもらうことになりましたから」
「へっ……!?」
「この度、駒王学園が取り入れた新規の『留学生受入長期ホームステイ制度』のモデルケースということでご両親にはお話しております。無論、快く御承諾していただけました」
「ちょ!? いつの間に……」
「無論、アーシアの生活全般にかかる費用は全て
「いえ、その銭金の問題ではなくて!」
「フフ……一誠、貴方はなぜ私がアーシアを眷属にしようと思い立ったのか……その根本を少し考えてみるべきですね?」
「えっ?」
「一誠……この先、きっと苦難で理不尽な道を行くだろう、私の眷属よ……」
ソーナはそっと彼の頬を触れた。
「そ、そ、ソーナお嬢様……?」
彼女はレンズの奥にあるアメジスト色の瞳に真剣な光を宿し、告げる。
「主として命じます。アーシア・アルジェントを教え育て、終生共に在る『
皆様、ご愛読ありがとうございました。
第一章、実質的にチュートリアル・チャプターのアーシア編改め”生徒会室のディアボロス”はいかがだったでしょうか?
アーシアは悪魔として生きることを決めましたが、
というかなり”いわく付き”な代物のようです(^^
そして、ソーナお嬢様の無茶振り(笑
どうやら原作と同じくアーシアはイッセーの家に住むようになるようですが……
とにもかくにもようやく第一章も終了。
なんとかここまで来れたのも、応援してくださった皆様のお陰です。
それでは皆様、また次章で会えることを期待して!