俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような? 作:ボストーク
わっふる祭りが来たので、とりあえずプロット使って第02話を蘇生してみました(^^
というか、もはや新規書き下ろし……(汗
いっそもう、古いプロットに
とりあえずエピソードは……兵藤家のペットがヒロインです(えっ?
言ってしまえば日常パートでしょうか?
兵藤家の朝は早い。
某月某日、朝5:00……
”むく”
いつもこの部屋の主、兵藤一誠の布団で一緒に寝ることを日課としている兵藤家の
無論、一緒の布団で寝て、主が寝付いたらパジャマの懐に潜り込むのはお約束だった。
愛する主人の匂いと温もりに包まれて眠りたいというのは、雌猫の願いであり本能だろう。
もぞもぞと名残惜しそうにパジャマから黒歌は這い出て、なぜかもう一度布団の中に頭を突っ込む。
そして、そそり立つ”
「にゃっ」
器用に前足を合わせて拝む。
その姿は、どこかトーテムポールに祈りを捧げるシャーマンのようにも見えた。
もしかしたら、存外に信仰心の強い猫なのかもしれない。
例えば日本の道祖神の祠などには、思わず「マ、マーラ様が祭られておるぞっ!!」と思わずツッコミを入れたくなるものが多々ある以上、そう的外れではないのかもしれない。
「にゃ」
本日も主が
ライバルの名は、”目覚まし時計”。
そう『主を目覚めさせる』という崇高な目的と行動を賭け、彼女の前に立ちはだかる存在である。
そして黒歌は、再び猫にあるまじき器用さを発揮し、アラームの”ON”スイッチを”OFF”に切り替えた。
今朝もどうやら彼女が勝利したようだ。
無論、この崇高な役割を
そう、黒歌は苦い敗北の記憶を思い出す。
主人に拾われ命を永らえさせ、この兵藤家を住処としたばかりの頃……せっかく、主人と朝の甘いまどろみを耽溺していたのに、唐突に起きたその無粋な爆音に平和な一時が見るも無残に破壊されてしまったのだ。
そして人間より鋭敏な聴覚をもっていたことが祟り、驚きのあまりに我を忘れた自分は無様にも走り回り、主人に飛びつき、あまつさえ”
『ごめんな、黒歌。驚かせちゃったな?』
服に黄金水をぶちまけたというのに、一誠は欠片ほども怒りもせず背中や頭を撫でててくれたのだ。
彼女は主人の暖かな手触りを今でも良く覚えていた。
ますます惚れ込み、「この人こそが真のご主人様にゃ!!」と更に強く心に刻んだ。
ついでに”
問題ない。
彼女は、”
愛する
『黒歌は偉いな。躾をしてないのに自分でトイレを覚えるなんて』
と誉めてくれたのだから。
***
さて、黒歌の『目覚ましルーチン』におけるファイナル・ミッションのスタートだ。
”ぺろっ”
と優しく一誠の頬を舐める。
いや、主人が起きるまで顔中を何度も何度も何度も何度も何度も、舐める。
耳たぶを甘噛みしたくなる衝動にかられるが、以前にそれをやったら一発で主人が起きてしまったのだ。
無論、甘噛みのときの痺れるような感触は捨てがたいが、主人と睦める時間があまりに短くなるのが難点だった。
そして、しばしの後……
「おはよう。黒歌」
「にゃーん♪」
薄っすら目を開け、自分の頭を昔と同じく優しく撫でる
普段は強さを渇望し、武を追い求める凛々しい主人の、子供よりも無防備でふにゃふにゃの顔を独り占めできるこの瞬間が、黒歌が一日の中で最も幸せを感じる瞬間の一つだった。
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皆さん、おはようございます。
最近、悪魔に転生するというファンタジックな経験をしまった兵藤一誠です。
まっ、堅苦しい挨拶はこれ位にしてと……
俺はとりあえずベッドから降りてパジャマを脱いでトレーニングウェアに着替える。
そして黒歌の首の後ろを摘んで持ち上げ、肩に乗せる。
そして父さんや母さんを起こさないように階下へゴー。キッチンで寝てる間に失った水分を補給してから玄関へ。
「んー」
愛用のランニングシューズを履いて、ストレッチで一晩の間に強張った筋肉をほぐす。
「じゃあ、行くか」
「にゃ」
俺の頭の上に陣取る黒歌から了解を意味するだろう短い鳴き声。
「よっと」
そして日課である15kmのジョギングへ駆け出した。
***
こうして悪魔となった俺だけど、駒王学園の生徒会に強制入会って出来事を除けば基本的には人間であったころとほとんど変わらぬ生活をおくれている。
「せっかく悪魔になったんだから、もう少しトレーニングメニューをハードにしてみるかな?」
「にゃ」
「駄目? なんで?」
「にゃ~ん。にゃんにゃん」
「遊んでもらえる時間が短くなるって……お前ね」
俺は思わず苦笑してしまう。
悪魔になっても大半のことは今までどおりだったけど、かといって全く問題がなかったわけじゃない。
今は元通りになってるけど、特に黒歌との関係がまずかった。
黒歌は、俺が数年前……まだ小学生の頃に拾ってきた黒猫だ。
出会った時は、どんな目に合ったのか酷い怪我をしていて、見るからに瀕死だった。
慌てて動物病院に連れてき、何夜もつきっきりで看病したことを今でも良く覚えている。
ああ、言い忘れていたけど”黒歌”って名前は首輪に付いていたネームプレートに刻まれていた名前をそのまま使っている。
本来は飼い主を探した方がよかったのかもしれないけど、観てもらった獣医によれば怪我の具合から『飼い主による虐待』の可能性が高かったらしい。、
なんでも怪我の酷さもさることながら、それ以前に随分衰弱していたみたいだったらしい。
そんな場所へ帰すことなどできるわきゃないから、父さん母さんに頼み込んで家で引き取ることにしたんだ。
何故かその時、二人は『物騒なことしか興味の無かった一誠が、動物をいたわる優しい心をもってくれるなんて』とか、『これも情操教育の賜物ね♪』と涙を流して喜んでいた。
どうやら俺は、無自覚のまま両親に心配をかけまくっていたとんだ親不孝者な子供だったらしい。
***
それ以降、看病していたせいか黒歌に懐かれた俺は、ずっと一緒に同じ時間を過ごしてきた。
俺はあんまり友達を作るのが上手いほうじゃなかったから、長い時間付き合った友達は、黒歌だけだった。
誰がボッチだって?
うん。その通りだけどさ。
だけど、悪魔になり帰った夜……
『ふーーーーっ!』
本気で怯えられ、毛を逆立てられた。
正直、これは堪えた……本気で凹んだ。
物理的には悪魔化で打たれ強くなってるはずなのに、どうやら心はそうじゃなかったらしい。
動物は人間より遥かに敏感だ。
きっと俺が人の道を外れ、悪魔になったことを勘付いたのだろう。
黒歌に拒絶された俺は、なんのやる気も起きなくなってベッドにもぐりこんだ。
泣きはしなかったけど、泣きたい気分だった。
でも、さ。
『にゃあ……』
布団に
黒歌は賢い
そして俺も、なんとなくわかる……ような気がしていた。
いやでもほら、なんか会話が成立してるし。
そして俺は話した。
悪魔になったその経緯を。
堕天使って西洋妖怪に襲われ、死にかけたところに会長……”ソーナお嬢様”に命を救ってもらったことを。
もしかしたら受け入れてもらえないかもしれないけど……
『にゃーん♪』
でも、最後は黒歌はわかってくれたみたいだ。
それが何よりも嬉しかった。
***
「なあ、黒歌……」
「にゃ?」
「お前、何年も大きくなってないけど……もしかして妖怪、”
いや、悪魔だの天使だの堕天使だのってファンタジックな存在が存在した上、実は人に擬態して大腕振って人間界を闊歩していたという衝撃の事実に頭を抱えたけど、ならもしかして妖怪もいてもいいよな~って軽い気持ちで聞いたんだけど……
「にゃん♪」
えっ!?
マジで……?
***
黒歌
種族:
”SS級はぐれ悪魔”として現在でも悪魔より指名手配中ではあるが、数年前より仙術により普通の猫に擬態し、追っ手を巻く為に兵藤家に潜伏……というのは建前。
追っ手に見つからないように普通の猫に擬態してるまでは同じだが、基本的には飼い猫ライフを満喫している。
ただの猫としか思われてなかったので、ある意味やりたい放題。
命の恩人である一誠にぞっこんであるようだが、悪魔化は生い立ちから考えて複雑だったらしい。
しかし、今は「
皆様、ご愛読ありがとうございました。
黒歌(ただし猫モード)が好き放題やってるエピソードは、いかがだったでしょうか?
ちなみにイッセーの顔中嘗め回したり、砂箱の描写とかは女の子モードの黒歌で脳内再生してしてはいけないのはお約束です。
良い子のみんなはしてないですよね?
作者は当然してますが(えっ?
いや、女の子モードでイメージしてから黒猫に変換するのが、紳士の
イッセーは自分で思ってるほどボッチじゃないんですが……いかんせん脇目も降らず武に傾向しすぎた少年時代を送ったせいで、友達作りとか苦手です。
その分、黒歌とは種族を超えた共依存気味のような……?
それでは、またお会いできることを期待して!
もしご感想やお気に入り登録、評価などをいただけたらとてもはげみになります。
***
追記:”猫しょう”の表記について
鬼へんの”しょう”が表記できなかったので、やむなく”猖”という読みが同じ漢字をこのシリーズでは当てていきます。
御了承ください。
ちなみに”猖”を選んだ理由は……
”猖”の意味 → ”猛々しい”、”凶暴な”(えっ? + のさばり放題(ヲイ……
という訳です(^^