俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような? 作:ボストーク
久しぶりに一日2話投稿とは行きませんでしたが、とりあえずの深夜アップです。
今回のエピソードは……いよいよアーシア編も本当に大詰めですが、ここで前回からクローズアップされてるソーナ嬢に改めてスポットライトを当ててみたいと思ってます。
彼女の口から語られる主とは? 組織とは? ”悪魔という生物”とは?
そして、一誠への想いは……
非主流
ソーナお嬢様の眷属である俺の手からは、もう離れてると言っていいだろう。
だが、俺の手にはまだ”
そう、保護した”アーシア・アルジェント”のことだ。
アーシアは普通の女の子じゃない。『
そして我が主、ソーナ・シトリーお嬢様は言う。
シトリー家が直接保護するのもシトリー家が全面的な後ろ盾になって俺、兵藤一誠個人が保護するのも一向に構わないと。
『
それを踏まえた上で、お嬢様は改めて俺に問うた。
「一誠……自分を慕う娘が老いて遥かに先に逝くことに、貴方は耐えられますか? その覚悟はありますか?」
***
転生悪魔である俺と人の子であるアーシアは、同じ時間は生きられない。
突きつけられたのは、無常な事実であると共にあまりにも当たり前の現実だった。
「一誠、貴方は悪魔に転生してから日が浅いから、それに実感が湧かないのも理解できます。されど悪魔が、天使が、堕天使が、一般的に『人を見下す』のは相応の理由があるのです。生まれ
ソーナお嬢様は、アメジスト色の瞳にかすかに憂いを滲ませた。
「生命体が力を得るには本来、力を蓄積し己のものとする時間がかかります。人は寿命の短さを繁殖力で補い世代を重ね、時折、環境適応を兼ねた
新鮮だった。
俺は確かに未だ悪魔の自覚は低いのだろう。
そのような解釈で、人を客観的に見ることはなかった。
「されど我々……総括して言うなら”
「なるほど。悪魔は実力主義ってのは、そういう側面があるんですね……」
「少し話はズレますけど……悪魔は”旧72柱”に代表されるように血統を重んじるところがありますが、それは血統を重んじるというより『血統による力の継承』を重んじているというのが正しいのです。強力な悪魔の血の継承者は、同じく強力な悪魔になる確率が高い。すぐには無理でも、時間をかければその可能性は上がる……ここにも時間は関係してくるでしょう? もっとも、血統よりも実力を重んじるという習性は、今の現魔王の皆様を見れば火を見るより明らかですが」
そういえば今の四大魔王様って全員が旧ルシファー、レヴィアタン、ベルゼブブ、アスモデウスと誰一人血の繋がりはなく、先の大戦で活躍した実力派若手上級悪魔から選ばれた襲名だって言ってたっけ。
「さて、一誠……」
ソーナお嬢様はレンズの向こう側の目を細め、
「今の貴方は、そんな悪魔の一人なんですよ?」
***
俺は返すべき言葉がなかった。
アーシアの救助を最優先するばかりで、その先の展望があまりにも無かった。
(嫌になるほど考えなしの
ソーナお嬢様に諭されるまで、それ自体に気付かないとは我ながら呆れる。
「まあ、手は無いわけではないですが……それもアルジェントさんの気持ち次第ですか」
「えっ? ソーナお嬢様、今なんて……?」
だけどソーナお嬢様は有無を言わせぬ視線で、
「どんな形にせよシトリー家が保護すると決めた以上、半端なことをしません。そして、これは一誠……貴方が負うべき責ではなく、私が負うべき責です」
「しかし、お嬢様! これは俺の行動の結果として……」
「確かに貴方の独断専行の結果なら、その言い分を認めるのも吝かではありませんが……今回の一件、『魔王レヴィアタン様とアザゼル総督、ミカエル天使長との高度な政治的取引』の結果の一つである以上、最早貴方個人の責任に帰結できるものでは在りません。いいですね?」
「……すみません」
どうやら俺が一番、現状を把握できてなかったのかもしれない。
事態を見る視点が低すぎたようだ……
「一誠、貴方がなし崩し的にエージェントにされてしまったことは、同情を禁じえません。周囲から……少なくとも三大勢力のトップから認識されてしまった以上、もはや辞退することは難しいでしょう。どんな組織であれ政治的宿命を持つ以上は、上層部には必ず『事態が起こる現場』にフリーハンドで随時、任意に介入できる”
ソーナお嬢様は一度言葉を切り、紅茶で喉を潤してから続ける。
「現場を知らぬ上層部も、上層を信用できない現場も、どちらも組織にとっては有害です。貴方にはこれからも困難が降りかかるでしょう……レヴィアタン様をはじめ、魔王様が貴方を”
「お嬢様……」
正直、嬉しかった。
俺を思ってくれる、心を痛めてくれるお嬢様が。
厳しく見えるけど、本人も努めて「規範となるべき姿」を貫こうとしてるけど……それでもやはり心優しい人だった。
「であるならば、私は貴方の主として出来る限りのフォローもバックアップもしましょう。それがせめてもの主としての務めです」
ソーナお嬢様はそう区切って、
「椿姫」
「はい」
「アーシア・アルジェント嬢を案内してきてください。『兵藤一誠の主である上級悪魔シトリー家のソーナが折り入って話がある。余人を交えず面談したい』と。くれぐれも失礼の無いように」
「かしこまりました」
「ソーナお嬢様……?」
一体、何を……?
「心配は要りませんよ、一誠」
お嬢様は優しく微笑み、
「決して悪いようにはしませんから」
*************************************
さて、ソーナ・シトリーは『余人を交えず話をしたい』とアーシア・アルジェントに伝えた。
その約束どおり、今、生徒会室に附属した応接室には一人の上級悪魔と一人の元聖女しかいなかった。
「お初にお目にかかりますね? アーシア・アルジェントさん。私が兵藤一誠の主であり、上級悪魔72柱が一つシトリー家次期当主……ソーナ・シトリーです。聞き及んでるかもしれませんが、この駒王学園の生徒会長も勤めさせていただいてます」
厳格でありながら、その気品と優雅さを兼ね備えた仕草と空気はなるほど確かに「悪魔の名門貴族令嬢」と納得させるものだった。
女性としての魅力溢れた華やかさと色香を持つリアス・グレモリーとは対極であり、同時に並び立つカリスマを彼女もまた持っていた。
「ご、御丁寧にありがとうございましゅ! か、噛んじゃった……わ、わたしはアーシア・アルジェントと申しまして、”
対してアーシアは緊張してるせいか、噛み噛みだった。
正しく小動物系の魅力の持ち主だろう。
「そう緊張しないで……と、とりあえずお座りなさい」
そうソーナはソファへと促した。
「ひゃ、ひゃい!」
***
ソーナ自らが淹れた甘く上質な紅茶の香りが漂う中、
「アルジェントさん、単刀直入にお聞きします」
「は、はい」
「貴女は人ととしての生を全うするのと、一誠と同じ時間を生きるのと……選べるとしたら、どちらの生き方を望みますか?」
「えっ……?」
皆様、ご愛読ありがとうございました。
これまであるようでなかったソーナ・シトリーが腰をすえてじっくりイッセーと話し合うエピソードは如何だったでしょうか?
正直、”この世界”のソーナについて作者的には「あやふやでキャラがはっきり描けてない」という懸念があったんですよ。
だから、このアーシアを巡る話の最後に、「悪魔としてのソーナ」「主としてのソーナ」を目鼻立ちが、キャラとしての輪郭がはっきりするよう記しておきたいと考えたわけです(^^
皆様にとって、”この世界”のソーナ・シトリーという少女はどう映ってるのでしょうか?
気に入っていただければ、作者としてはとても喜ばしいのですが……
目下、ソーナを「原作リアスとはまた別の魅力を秘めたヒロイン」として描くというのもこのシリーズの目標です。
次回はちょっと閑話……では無いですが、あえて秘めていた”兵藤一誠という少年”のアウトラインに触れてみようかと。
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!
もしご感想などをいただければ、とても嬉しいです。