俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、おはようございます。
本日も諸事情で早朝アップです(^^

さて、今回のエピソードは……サブタイトルのとおりですが、いよいよアーシアを巡る物語のラストスパートに入ってきます。

重要な役割と立ち位置でありながら、これまで具体的なキャラクターや内面に触れることの無かった”()()()()()()()()()()()()()()()”を中心としたラストスパートに入ってきますよ~。




第17話 ”事後報告の時間です!”

 

 

 

さて、悪魔が人を騙す方法の一つに「九十九の真実の中にたった一つの嘘を混ぜる」というものがある。

 

何が言いたいかと言えば、俺は『フリードが、実は天界のエージェントであり、この騒動には悪魔/堕天使/天使のそれぞれ思惑が絡んでる。それぞれの勢力が、今回の一件から”()()()()()()”を引き出そうとしている』という()()()()()()のみを隠し、残りは真実を……

 

セラフォルーお嬢様も魔王ルシファー様もアザゼル総督もミカエル殿も、全員が望んでるだろう、

 

『主流派中央の統制を外れた”過激派(カルト)堕天使”と、その配下の天界勢力より追放された”はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)”が、リアス・グレモリーとその眷属に喧嘩を売った』

 

という”()()()()()()()()()()()()()”を彼女、グレモリーお嬢様に話したのだ。

僅かながら援護射撃で煽っておいたので、再会したらフリードに昼飯でも奢らせよう。うん。

 

 

 

グレモリーお嬢様は大いに憤慨し、負傷した匙元士郎の回復次第、報復戦を仕掛けるようだ。

これで堕天使と教会(天界)は、三大勢力による「制御の利く三竦みの緊張状態(冷戦構造)」の維持に邪魔な()()()()を合法的に始末できるし、悪魔側にしてみればリアス・グレモリーお嬢様が貴重な実戦経験を積めるし、箔付けも出来る。

 

俺はまあ、アーシア・アルジェントの身柄保護もできたし、特に不満も異論も無い。

実際、あの後にグレモリーお嬢様と眷属は、負傷した匙を抱えて体制の立て直しの為に転移魔法で一時、本拠地(オカ研部室)まで後退。

 

俺とアーシアは普通に徒歩で帰ってきた。

行き場の無いアーシアの居場所確保のため、とりあえず俺の家へ案内。

 

母さん父さんには「婦女暴行されかかってた女の子を助けたけど、まだ町に着いたばかりで右も左も分らなかったので保護した」と、あながち嘘ではない言い訳をしてその日は泊めた。

 

存外、俺は悪魔に向いてるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

まあ、それはいい。

事態は誰もが望むとおりに動いたし、きっと動いてることだろう。

別名でもない限り、俺がこの件でもう動くことは無い。

 

それはいいのだが……

 

「一誠、何か申し開きすることは?」

 

「ありません」

 

はい。何か妙に久しぶりな気がする放課後の生徒会室。

俺、兵藤一誠は執事服姿で正座させられていた。

ぶっちゃけ、石を抱かされないだけマシな状況だと思ってる。

 

なにしろ、我が主……支取蒼那ことソーナ・シトリーお嬢様が、見た感じ大分御立腹なのだ。

いや、多分だけど。

 

「誤解の無いように先んじて言っておきますが、私は別に怒っているわけではありません。ただ、困惑しているのは確かで、貴方から直接事情説明を聞きたいのもまた確かなのです」

 

えっ? どうして分ったんだ?

 

「一誠、貴方は自分で考えてるより表情に出るタイプですよ?」

 

そ、そうなのか?

今までソーナお嬢様以外に指摘されたこと無いんだけど……

 

紅茶をテーブルに置き、会長の椅子に座ったままのソーナお嬢様……ぶっちゃけ怖い。

正座してる俺の前で足を組んで座るものだから、さっきからチラチラ純白のおパンツ様が見えてるのだが、雰囲気的に指摘できない。

 

「まずは……そうですね。一誠、貴方が『魔王レヴィアタン様の地上代理人(エージェント)』とはどういうことですか?」

 

「お嬢様……申し訳ありませんが、それに関してはむしろ俺が聞きたいくらいです」

 

 

 

「やってくれましたね……お姉様」

 

それが俺の説明を聞き終わった後のソーナお嬢様の第一声だった。

俺が知る限りの経緯を、()()()()()()話した。

例えば、流石に”天界地上代行特務(イスカリオテ)機関”などは省いた。それは冥界ではなく天界の事情だし、必要であればセラフォルーお嬢様自身が伝えるだろう。

 

「状況はともかく、事態と現状は大体察しました。一誠、災難でしたね?」

 

「あはは……」

 

もはや苦笑いしか出ない。

 

「一応、一通りの説明はレヴィアタン様から受けてましたが……ですが、一誠」

 

「はい」

 

ソーナお嬢様は微妙な顔で、

 

「リアスには一切知らせずお忍びでおいでなったサーゼクス・ルシファー様から、アザゼル総督とミカエル天使長からの事態収拾の協力と感謝が記された”()()”を手渡された時の私の気持ちって……わかるかしら?」

 

「えっ!?」

 

まさか俺の知らないところでそんなことになっていようとは……

 

「サーゼクス様が『ソーナ、久しぶりだね? いきなりで悪いが”()()()()()”から君宛の手紙を預かってきたんだよ。ああ、そうそう私が地上に来ていることは、リアスには内密にね?』……そう言いながら軽い感じで手渡された封書が、堕天使と天使の長から親書、それも”直筆の署名入りの()()”だと分ったとき、私は椅子から転げ落ちました」

 

”ぷっ”

 

あっ、なんかその時の情景を思い出したのか、珍しく椿姫先輩が噴き出して声を殺して笑ってる……

 

「椿姫」

 

「ごめんなさい、ソーナ。あんなに慌てふためいた貴女って滅多に見れないもの。録画して兵藤君にも見せてあげたかったくらいだわ」

 

「椿姫、もしそれをやってたら確実に絶交でしたよ?」

 

「はいはい♪」

 

だけど、ソーナお嬢様はふと真顔で俺を見て、

 

「ただ、そのお二方の親書は異なる言い回しで同じように(しめ)られていました。曰く『この永劫ならざる非戦の時に危機訪れたば、我ら再び手を取り合わんことを願って』とのことです」

 

げげっ!?

それって……

 

「要するに『また荒事の芽が出たら、問題解決に手を貸せ』……ですよね? 多分」

 

ソーナお嬢様は無言で頷いた。

椿姫先輩は同情的な目を俺に向けていた……

 

「一誠……貴方はどうやら、とんでもない方々に『使える奴』と判断されてしまったようですね?」

 

う、嬉しくねぇぇぇぇっ!!

 

 

 

***

 

 

 

さて、俺の身の振り方はこの際、どうしようもない。

我が主、ソーナお嬢様に、

 

「申し訳ありません、一誠。貴方に目をかけてらっしゃる方々は、私の持つ地位や権力ではどうにもできないような方々ばかりなので……」

 

それ以上言わせるのも心苦しい。

だからおれは、

 

「かまいません。これもある意味、自業自得。幸い悪魔は寿命が長いですから、今は叶わなくともいつかきっちり執事としての修行はさせていただきますし、今もできることはやらせていただきます」

 

執事とは主を支える存在だ。

であるならば、救われた命の代償としてソーナお嬢様を支えるのが今の俺の目標だ。

 

無論、”憧れ”に手を伸ばし続けることも止めない……それは目標というより、俺の生きる意味でもあるから。

 

「それに俺がそれなりの活躍をすれば、お嬢様の評価もあがりますよね?」

 

「もちろんです」

 

なら、渋る必要はないというものだ。

 

 

 

「さて、一誠……話を変えます」

 

「はい」

 

ふとソーナお嬢様は目を細め、

 

「アーシア・アルジェントは……どうするつもりですか?」

 

「あー……それは」

 

やばい。

あの時は、アーシアの身の安全を確保することを最優先として考えていたから、その先にことを考えてなかった。

俺の反応から情況を察したのか、ソーナお嬢様は嘆息して、

 

「一誠、私は貴方を有能な悪魔だと思っています。しかし、時折なぜか妙に抜けているところがありませんか?」

 

「面目次第もございません」

 

「では、私がいくつか案を提示しましょう。一つは我がシトリー家が彼女を保護すること。もう一つがシトリー家が全面的な後ろ盾になり『()()()()()保護すること』……今回の貴方の活躍の対価を考えれば、どちらも難しくはありません。天界勢力より追放され、堕天使勢力に不信感を抱いた現状では、我々悪魔側が動くのが順当でしょうし」

 

「ですよね……」

 

激レアな回復/治癒系神器持ちを野放しにすれば、またどんな火種になるかわからない……

なら、アーシアの身の安全だけでなく、三勢力にとっても悪くない話だった。

 

「レヴィアタン様も大いに賛成していることですが……ですが一誠、貴方は気付いてますか?」

 

「? なにをです?」

 

するとソーナお嬢様はむしろ哀れむような目で俺を見て、

 

あの娘(アーシア)は、人間です。貴方をどれほど慕っていようと……貴方と同じ時間は生きられないのですよ? ”()()()百年足らずの時間”、人間を保護することなど造作もありません。そう、人間の一生分の時間など悪魔にとりその程度の認識の代物なのです」

 

あっ……

 

「一誠……自分を慕う娘が老いて遥かに先に逝くことに、貴方は耐えられますか? その覚悟はありますか?」

 

 

 

それは、決して避けては通れない話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
ようやくお出ましという感じのソーナ・シトリーを中心としたエピソードは如何だったでしょうか?

リアス・グレモリーとまた違う考え方と人への接し方、一誠に対する想い方や立ち位置の差……そんな雰囲気が出てればいいんですが(^^

原作匙曰く「厳しくて厳しい」らしいソーナですが、しっかり者ではあっても実はけっこう”()()”なところもあったり、逆に抜けてるところもあったりしますからね~。

さて、次回はアーシアの今後にスポットが当たるようですが……ソーナ・シトリーという人物や人柄(悪魔ですが)がわかるような話になればいいなぁ~と。

それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!

もしご感想などいただければ、とても嬉しいです。



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