俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、おはようございます。
本日も時間の都合上、午前中アップです。

さて、今回のエピソードは……言ってしまえば答え合わせの回でしょうか?

イッセーとフリード、後々まで因縁……ではなく、陣営は違えど同じく”暗躍する者(エージェント)”として何度も(まみ)えることになる二人の最初の邂逅、そのラストシーンになります。




第16話 ”戦い終わりて、です!”

 

 

 

ある夜、俺は”はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)”という肩書き堕天使の過激は組織に潜入していた”天界のエージェント”、四大天使の【地上代行特務(イスカリオテ)機関】の神父、コードネーム”フリード・セルゼン”と邂逅した。

 

こそこそ尾行していたカラス(堕天使)二羽を共謀して焼き鳥にした俺とフリード神父は、廃ビルの中で正体を明かしあう。

 

ところが……

 

「なあ、神父。もう一度、確認したいんだが……一体、誰がレヴィアタン様の地上代理人(エージェント)だって?」

 

「もちろん貴方のことですよ? 赤龍帝。あっ、僕のことはフリードでいいですよ?」

 

「じゃあ、俺も一誠でいいよ。いや、そうじゃなくてさ……俺は確かに赤龍帝(ドライグ)を宿しちゃいるが、基本的には転生したての新人悪魔で、ソーナ・シトリー様の眷属悪魔の兵隊(ポーン)。ついでに言えば駒王学園高等部生徒会の雑用係で、シトリー家の執事見習いだ」

 

「そういう”偽装設定(カバーストーリー)”なんですか?」

 

「いやガチだっての。”()()設定”だよ!」

 

 

 

***

 

 

 

(何故だ……どうしてこうなった?)

 

『本人与り知らぬ所で、魔王の地上代理人(エージェント)に仕立てられてたうえに、それが三大勢力のトップに周知されてた件について』

 

誰か説明プリーズ!

何故、俺の存在につて三大陣営の間で妙な共通認識(コンセンサス)が出来上がってるんだ!?

 

 

 

「ところで赤龍帝、じゃなかったイッセーさん。一つ質問があるんですけど……いいですか?」

 

「ん? いや、別にいいけど?」

 

そう、今ここで嘆いても意味はない。

フリードだって、俺がそういう存在だって教えられただけだ。

真犯人は別にいる。

 

「一体、いつから僕が”天界のエージェント”だって分ってたんです? 断罪現場(あの家)に居た時から気付いてたみたいに見えましたが」

 

「ああ、それか。フリードが剣山風の愉快なオブジェにしてた……多分、グレモリー眷属の(さじ)って奴だと思うけど」

 

「ええ、あの少年の名は”ゲンシロー・サジ”。間違いなくグレモリー眷属の新人転生悪魔です」

 

俺は頷き、

 

「アイツに刺さった剣……銃剣と傷口を見たとき、違和感を感じたんだよ」

 

「違和感……ですか?」

 

首を傾げるフリードに、

 

「違和感の正体は大きく分けて二つ。まず、刺さってたのが普通の”鋼の剣”だったこと。フリード、お前のセイクリッド・ギア、確か”バヨネッタ・アンデルセン”って叫んでたっけ? その名前でいいのか?」

 

「はい。日本語風に意訳すれば”祝福されし無限の銃剣”って感じの意味になります」

 

「なら、確定だな。それって『瞬間練成が可能な()()()()()』だろ? 形やサイズは固定かもしれないけど、刃の素材は色々変えられるんじゃないか? 例えば、そうだな……」

 

俺は少し考えて、

 

「”聖水で焼きを入れし、祝福と洗礼を受けた銀の刃”とかな」

 

うん。

自分で言っておいてなんだけど、いきなり悪魔が大ダメージ受けそうな武器だな。

 

「……ええ。確かにそういうものも練成できます」

 

その言い方だと、「それ以上の代物も可能」ってことか。

『聖なる光の術式を刃に刻んだ魔導銀(ミスリル)製のバヨネット』とかも出てきそうだな。

 

「結構。なら確実に悪魔、それも下級悪魔風情なら簡単に仕留められる手札を持ちながら、それを使わなかったのは何故だ?ってのが取っ掛かりさ」

 

「ちょ、ちょっと待ってください? イッセーさんは、最初から僕が”錬金型(アルケミー)神器”持ちだって判断してたってことですか?」

 

「確証は無かったけどさ。匙ともう一人の遺体に刺さってた銃剣の数を考えたら、普通は持ち歩ける量でもしまっておける量でもないだろ? だったら、瞬時練成で生み出すのが一番合理的かなっと」

 

もっとも、これは祐斗の同じく瞬時練成系(クリエイト)神器である”魔剣創造(ソード・バース)”を知ってたからってのも大きいだろう。

 

 

 

「そしてもう一つは……フリード、お前の腕が良すぎたせいだよ」

 

「はっ?」

 

きょとんとした顔をされてしまうが、

 

「二桁近いサーベルサイズの銃剣が体を貫通してるのに、致命傷が1ヶ所も無く、急所に刺さってるのも一振りも無いとなれば、流石に不審に思うだろ? ぶっちゃけ、あれだけの剣を刺して全部急所を外すのは、むしろ全部を急所に突き刺すよりよほど難しい。おまけに後遺症が残るようなところも刺したり斬ったりしてねぇんだ……いくらなんでも、あからさまだろ?」

 

「ああ~。言われてみれば確かに」

 

こいつ(フリード)、意外と天然だったりするのか?

 

「まあ、グレモリーの眷属殺しちまったら収拾つかなくなっちまうから、今回は仕方ないにしても……次からの任務にはもう少し気を使えよ? 俺程度に(あら)を見抜かれるようじゃ、歴戦の連中は騙せないからな」

 

「御忠告に感謝を」

 

「いいさ。事態の収拾と収束は、俺の望むところでもあるし。それと、」

 

俺は一端言葉を切り、

 

「”アーシア・アルジェント”の身柄は、悪魔(コチラ)側の確保でいいんだろ? 堕天使側からそう打診されてる筈だけど?」

 

するとフリードは小さく頷き、

 

「もちろん。彼女には同情すべき点は多々ありますが、それでも”破門”による追放処分となった以上、表立って天界勢力が庇護することは出来ませんから」

 

「了解した。じゃあアーシアを”()()()()()()()()”があったことは、俺も不問にするよ」

 

 

 

***

 

 

 

「……ばれてましたか?」

 

「ああ、これもなんとなくだけどさ」

 

フリードは望んで殺す気は無かったが、アーシアを「仕方なく殺害」をする気はあったということだ。

それでもアーシアをフリードがあれだけ脅したり怯えさせたのは、「自発的に逃げ出す」行動を期待してのことだろう。

 

(だが、アーシアは逃げなかった……)

 

「理由は……”()()”と”()()”か?」

 

「ええ。彼女の持つ神器は、『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』と言いましてね……ただでさえ稀少(レア)な回復/治癒系の神器の中でも、最上位級の性能を持ってるんです。そしてその希少性と力が彼女の人生を狂わせ、追放という結果に繋がった……話すことはできませんが、天界としても彼女を追放せざる得ない”()()()()()”があるんですよ」

 

「そして行き場をなくした”()()レア・アイテム持ち”を放置してくれるほど、世界は優しくない……か」

 

そしてフリードは真顔で聞いてくる。

 

()()は教義上、自殺は禁じられてます。敬虔な信徒であるアーシアは、()()を選択できないでしょう。例え、どんな情況になっても……イッセーさんは、死すら救済に思える場面があると思いますか?」

 

笑わしてくれる。

 

「世の中そんな目を覆いたくなるような……正気を放り出したくなるような情景(シーン)ばかりさ。だから自殺ってのが無くならないし減りもしない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

フリードとの折衝は終わった。

カラス二羽を始末し、証拠隠滅も済んだし、アーシアの身柄が俺たち(悪魔側)に移管されることが明らかになった以上、話すこともそれほど無いだろう。

 

いくつかのイレギュラーな事態が起こった場合のすり合わせをし、フリードと俺は別れた。

無論、俺が向かうのはアーシアが待ってるだろう”現場”だ。

 

「イッセーさん!! お帰りなさいですぅ! お怪我はないですかっ!?」

 

飛びつくように抱きついてくるアーシアの柔らかい金髪を撫で、

 

「ただいま。アーシア」

 

 

 

***

 

 

 

幸い、あのホラーチックな惨殺体は()()されてるようで安心した。

死体を横に置いたままアーシアが待っていたなら、いくらなんでも申し訳なさ過ぎる。

 

「コホン!」

 

アーシアと和んでいると、不意に咳払いが聞こえた。

そろそろ潮時か?

 

「アーシア、悪いけど少し離れてくれるか?」

 

「あっ、はい!」

 

俺はその紅髪の女性に執事式の一礼をし、

 

「お初にお目にかかりますグレモリーお嬢様。シトリー家の執事見習いで生徒会とソーナお嬢様の眷属末席につかせていただいております兵藤一誠と申します」

 

 

 

「ええ。貴方のことはソーナから聞いているわ」

 

流石は冥界貴族のお嬢様(生粋の上級悪魔)、こうして(かしず)かれることに慣れてらっしゃる。

まっ、そういう態度を取られた方が俺としてもやりやすい。

 

「先ずはゲンシローの件、お礼を言わせてちょうだい。貴方がアーシアに適切な指示を残していてくれたお陰で、ゲンシローは一命を取り留めたわ」

 

「勿体無き言葉にございます」

 

「本当なら何か褒美を取らせたいところだけど……その前に、何が起こったか状況を聞かせてもらえないかしら? どうやら貴方が一番、情況を理解/把握してそうだもの」

 

「かしこまりましたグレモリーお嬢様。では、僭越ながら……」

 

 

 

グレモリーお嬢様……

気付いてますか?

貴女は今、本当なら一番聞いてはいけない者の言葉を求めたってことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
イッセーとフリード、タイプは違いますが同じくエージェント二人が互いの能力やキャラクターを知ることになったエピソードはいかがだってでしょうか?

さて、今回のエピソードにおいて割とはっきりした部分が、平行世界(げんさく)と比べて明確に違う”()()()()()()()()()()()()()立ち位置(スタンス)の差でしょう。

少なくとも”この世界”のイッセーにとり、リアス・グレモリーは「上級悪魔相手としては()()()()敬意を払うべき存在であっても、”忠誠を誓うべき存在”ではない」ということでしょう。
無論、「ソーナお嬢様の御幼少の頃からの親友」という意味での好意はあっても、それ以上の感情は無い……言ってしまえばそんな感じです。

これが後々、ストーリーにどんな影響を及ぼすか未知数ですが……
次回は、そろそろアーシア編のまとめに入れると思います。
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!

もしご感想などいただければ、とても嬉しいです。



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