俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。
本日は予定の都合上、午前中アップです(^^

さて、今回のエピソードは……いよいよ明らかになる神父の正体と舞台裏、そして「頭の痛くなる様なありえない誤認」が発覚します。

いや、誰の頭が痛くなるのかは……




第15話 ”怪しい神父と密談です!”

 

 

 

ここは駒王町郊外、とある廃棄されたビルの屋上。

 

俺、兵藤一誠は【教会】残党……と()()()()白髪で赤い瞳が印象的な……同年代に見える神父と鍔迫り合いを演じていた。

だけど、

 

 

「”カラス(堕天使)”が二羽……こそこそ尾行してきて、覗き見してるのに気付いてるか?」

 

そう俺だけに聞こえるように小声で話しかけてきた。

 

「当然」

 

その鬱陶しい気配と視線にへきへきしていた俺は即座に返した。

 

「時代遅れのボディコン女は()()る。コートマッチョの方は頼めるか?」

 

「あいよ」

 

頷く俺に躊躇いはなかったし、不思議にも思わなかった。

神父の戦いっぷりから、なんとなくこうなる予感はしてたからだ。

 

「3」

 

神父がカウントダウンを刻み始め、

 

「2」

 

俺がそれに続く。

 

「1」

 

そして、

 

「「ZERO !!」」

 

 

 

”ババッ!”

 

俺と神父は再び間合いを取るように反対方向へ跳び、

 

(”電磁力場砲身(フォース・バレル)”、展開……!!)

 

下準備を行いつつ振り向きざまに……

 

「”赤龍の雷炎弾(ブラスト・ショット)”、フルチャージ・リリース(全エネルギー圧縮解放)!!」

 

『Explosion !!』

 

倍化(ブースト)”で増幅し、”貯蔵(プール)”でありったけ溜め込んだ全てのエネルギーを圧縮した人の身長よりも巨大な火球を放つ!

 

上空の一点に向けて高速で放たれたそれは……

 

「馬鹿なっ!?」

 

”ジュワッ!!”

 

オッサン堕天使を飲み込み、そのまま跡形もなく蒸発させると更なる上空へと呼び去った……って、おい。

いや、確かに一発で消し飛ばすに越したことはないし、遺体処理のいらないクリーンな殺し方だけどさ……

 

「あれ? もしかして過剰威力(オーバーキル)だった……?」

 

いや、誰が見てもそうだろう。

 

龍の吐息(ドラゴン・ブレス)の直撃を喰らえば、小童(こわっぱ)堕天使など消し炭も残らずああなるさ』

 

なあ、ドライグ……なにか篭手からとても愉快そうなあるいは満足そうな気配がするのは気のせいか?

オーバーキルは、戦術としては無駄に入るんだが。

 

『ドラゴン・ブレスは龍の本能にして本質。気にするな、相棒』

 

そういうもんか?

さて、神父の方はっと……

 

 

 

***

 

 

 

「ぎゃあぁぁぁっ!!」

 

いつの間にかボディコン女堕天使の全身には、刀身部分に”()()”が差し込まれたサーベルサイズの無数の銃剣が突き刺さり……

 

「神罰執行! ”フレイム・ボルト”!!」

 

”キュバッ!”

 

神父が発動呪文を叫ぶと同時に”紙片”が煌き、太陽を思わせる凶悪な閃光と共に堕天使を完全に()()させた。

文字通りに跡形もなく、だ。

 

そして神父は小さく十字を切り、

 

「エイメン……!」

 

堕落から解放された、かつて聖なる存在だった者への祈りを捧げた。

 

 

 

『驚いたな……あの小僧、片鱗とはいえ熾天使(セラフ)の力を召還して行使しやがったぜ? 相棒』

 

ヲイヲイ……なんだその悪魔の天敵みたいな力は?

 

『今の相棒でも、一撃で滅ぼされかねんな』

 

おっかねぇ話だ

だけど、これであいつの正体は確定だな。

 

『ああ』

 

 

 

俺はシュタッと着地した白髪神父を警戒させないために正面に移動し、

 

「お前さんが噂の”天界のエージェント”……でいいのか?」

 

すると今までと印象の違う柔らかい雰囲気で神父は、

 

「とりあえず、廃ビルの中で話しましょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

********************************

 

 

 

 

 

 

「情況は、だいたい察していただいてるようですが……まずは」

 

と白髪頭の少年神父は、顔を揉み解すような仕草をすると……

 

「うそん……」

 

白い髪は変わらない。赤い瞳も変わらない。

顔の骨格だって変わったわけじゃないだろう。

だが……

 

「女の……子?」

 

「いえ、きっちり男ですって。さすがにテンション高過ぎの”はぐれ悪魔祓い(あのキャラ)”で交渉をするのは、かなり厳しいですから」

 

即座に苦笑と共に返されてしまったが……

いやホント、さっきの凶状持ちのヤサグレ神父から一変、ぶっちゃけ”男の娘”とつい言いたくなるような、どちらかと言えば童顔で、もろに女顔の美少年に変貌していたのだ。

この心境はなんと表現したらいいのだろう?

 

強いて言うなら『目の前いたのが”飢えた獰猛な白狼”かと思ったら、実はそれが()()()()で、それを脱いだら中から現れたのは”愛らしい白兎”でした』か?

 

しかも感じる強さは白狼と変わらぬまま……いや、むしろ”偽りの毛皮(着ぐるみ)”を脱いだ今の方が、本来彼が持つだろうより強力な力の片鱗を感じられるなんて、いくらなんでも(タチ)が悪すぎる。

 

 

 

「改めまして”赤龍帝”」

 

そう一礼しながら、

 

四大天使(セラフ)直轄、【天界地上代行特務(イスカリオテ)機関】所属。コードネーム:神父(ファーザー)”フリード・セルゼン”です。よろしければ以後、お見知りおきのほどを」

 

とても優雅で丁寧な口調で少年神父……フリードはそう言った。

 

 

 

***

 

 

 

「”イスカリオテ”? それは『()()()()()()()()()()』を意味するイスカリオテ(カリオテ人)……その解釈でいいのか?」

 

カリオテというのは本来は地名であり、そこに住まう”シモンの子”という存在は聖書では一人しか該当しない。

するとフリード、何故か嬉しそうに……

 

「”右手に短刀と毒薬、左手に銀貨三十と荒縄”……信徒にして信徒に非ず、教徒にして教徒に非ずのイスカリオテです。よく御存知ですね?」

 

ああ。大体分った。

 

「これでも悪魔の端くれだからな。”()()()()”のことは、そりゃ一通り調べるさ。『彼を知り己を知れば百戦危うからず。彼を知らずして己を知れば一勝一敗。 彼を知らず己を知らざれば戦うごとに必ず危うし』だろ?」

 

「孫子ですか?」

 

「ああ。孫子やクラウセヴィッツは、兵法書の基本だろ?」

 

そして俺は真っ直ぐに神父を見て、

 

「だからお前さんの立ち位置もなんとなくわかったよ。『”裏切り者(ユダ)”の汚名を着ることで、汝その信仰を示せ』、か。なるほど……だからこその特務機関、だからこその”はぐれ神父”。だからこその”堕天使陣営への潜伏”か?」

 

「早速、御納得いただけたようで幸いですよ。こちらも細かい説明の手間が省けます」

 

「納得せざる得ないだろ? ”天界からのエージェント”が駒王町に入り込んでることは、アザゼル総督から聞いてたし。ところで特務機関(イスカリオテ)の存在、俺に明かしちまってよかったのか? 一応、機密事項だろ?」

 

「いえ、赤龍帝に情報伝えるのは、むしろ()()()()()()()()()なのですよ」

 

「はぁ? どういう意味だよ?」

 

いや、流石に天使……それも四大天使に面識ないし、ましてやコネなんかないぞ?

 

「いえ。どうやらアザゼル総督に『おいミカエル、今代の赤龍帝は頭回るし政治できっぞ? ああいう手合いは下手に隠し立てするより、ある程度の情報開示/共有化して巻き込んでしまった方が有効だ』と進言なさったそうで」

 

「あ、あの()天使総督、なんてこと口走りやがるっ!?」

 

俺の知らないところで、俺がわけのわからない立ち位置に立たされていた。

つーか、いやホントどうなってんだよ!?

 

 

 

「というわけでミカエル様は、『ならイスカリオテの情報も開示した方がいいでしょう。これも緊張緩和(デタント)工作の一環です』とおっしゃられて」

 

「ヲイヲイヲイ……ミカエル殿は何を考えてるんだっ!? どいつもこいつも一介の新米下級悪魔に要求するこっちゃねーだろっ!?」

 

「えっ?」

 

神父はきょとんとした顔で、

 

「赤龍帝は、四大魔王の一角で外交を取り仕切るセラフォルー・レヴィアタン殿の”地上代理人(エージェント)”じゃないのですか? 僕はそう聞いてましたし、そのつもりでこうして接触したんですが?」

 

「……誰だよ? 途中で情報捻じ曲げた奴は?」

 

アザゼル総督か? ミカエル殿か?

 

(まさか、セラフォルーお嬢様があちこちで喧伝してるなんてことは……)

 

 

 

『きゃる~ん☆ イッセーちゃんはレヴィアたんのエージェントさんだよぉ☆ みんなよろしくねぇ~☆』

 

 

 

あかん。

変な幻影(ヴィジョン)が浮かんだ。

きっと俺の妄想の産物だ。そうに違いない。

 

(疲れてるのかな……俺?)

 

いや、建設的に考えよう。

きっとセラフォルーお嬢様と一緒にアザゼル総督と通信会談したときに、変な誤認をされたんだろう。

 

「赤龍帝、僕は基本的に対堕天使工作専門のエージェントで、駒王町が悪魔の地上領地である以上、これから先も動く場合もあるので今のうちにエージェント同士が面通ししておくのは、悪魔にとっても無用な衝突を事前に避けれるメリットがあると思いますよ?」

 

「いや、俺はエージェントじゃねぇって。神父、そりゃお前さんの言ってることは間違ってないけど……本来、面通しするのはこの地の管理人であるグレモリーお嬢様や駒王学園の運営や領地の運営補佐する立場のソーナお嬢様じゃないのか?」

 

するとフリードは首を横に振り、

 

「上級悪魔お二方への『()()()()()』での接触は禁じられてます。特にグレモリー殿には……”はぐれ神父”としてならかまいませんが」

 

思わず、溜息を突きたくなった。

俺はいつからこんな悪魔、堕天使、天使の裏事情じみた深みに片足突っ込むような情況になったんだ?

 

「つまり、今回は非主流派の好戦的(カルト)堕天使組織をグレモリーお嬢様とその眷属にぶつけて処分する……その関係上って解釈でいいのか?」

 

「はい。”()()()()()()”はその通りです。とはいえ、仕込み……『グレモリー一派に対する()()()()』は既に終了してますから、後は結果を待つだけですが」

 

”挑発行動”?

ああ、さっきの”()()()”ね。

 

「グレモリーお嬢様が無事に動くといいけど……」

 

「動くでしょう。元々、上級悪魔は対面や面子にこだわりますし、そもそもグレモリー家は家族/一族や眷属同士の情愛や仲間意識が篤いことで知られてます。グレモリー殿が進んでその評価を捨てるとは思えませんし」

 

「なるほどね」

 

「それに今回の一件、そろそろ”サーゼクス・ルシファー”殿ルートで『【教会】残党は潰してもかまわない組織』という情報が伝わってるでしょうし」

 

「なんだ……魔王ルシファー様まで一枚噛んでたのか」

 

いや、考えてみればそれも当然か。

まがいなりにも”()の管理地”での事象だ。

 

「この大規模衝突がありえない現状で、『貴重で()()な実戦経験を積ませ、妹の成長を促す』……魔王とはいえ、よき兄君のようですね?」

 

「……そうなるのかな? どうも素直には頷けないけど」

 

 

 

今後の展開を確認するためにも、どうやらもう少し神父と話しておいたほうが良さそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
フリードが天界のエージェントどころか、四大天使(セラフ)直属の”地上代行者(イスカリオテ)”だったエピソードは如何だったでしょうか?

四大天使の威光(ラ・ルミナス・セラフ)”を自分を触媒に地上に降臨させられるフリードは、マヂ強いです(^^
現状でのパワーバランスは、相性的に「フリード>イッセー」だったりします。
フリードはイッセーを「()()()()()()()」をいくつももってますが、イッセーはそうじゃありませんから(汗
あっ、ちなみに”地上代行者(イスカリオテ)モード”のときのフリードは、中の人繋がりで「某地下迷宮の白兎さん」のビジュアルイメージで(^^

セラフォルー、アザゼル、ミカエルの三大勢力トップによる”情報学的ジェットストリーム・アタック”で、赤龍帝は多大なダメージ(主にメンタル)を受けた!

本当に本人与り知らぬ所で「セラフォルーの地上代理人(エージェント)」認定され、フリードからも同類だと思われてしまったイッセーの明日はどっちだ?(笑

次回はもう少しフリードとの折衝と対話がありそうですが、イッセー曰く「誤解と誤認」は解けるのか?
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!

もし、ご感想などいただけるととても嬉しいです。


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