俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような?   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。
さて、今回のエピソードは……前半は、現場に残されたアーシアの元へ初登場の”姫”が飛んできます。
さてさて、どんな出会いになるのか?

後半は、視点変わってイッセーとフリードのバトルステージの開幕です。
まだ禁手化には至ってなくとも、平行世界(げんさく)とまた異なる”この世界”のイッセーならではスキルが出てきそうですよ?




第14話 ”姫、来たりてです!”

 

 

 

「ゲンシロー、無事なのっ!?」

 

唐突にその部屋の中でグレモリー家の紋章が紅く輝き、それを転移門として姿を現れたのは燃えるような紅の髪と、抜群のプロポーションを誇る女性……上級悪魔だった。

 

「ひっ!?」

 

何の前触れもなく起きた現象に、アーシア・アルジェントは短い悲鳴を上げた。

だが、その紅毛の女性は、匙とアーシアを交互に見やり、

 

「もしかして、貴女が()ったのかしら……?」

 

それは酷く、氷のように冷たく響く声だった。

アーシアは心臓を鷲掴みにされたような錯覚を覚え、呼吸を止めた。

 

「ちが……そのこ、じゃ……ちが」

 

「ゲンシロー、喋っちゃ駄目!」

 

殺気を霧散させ、慌てて悪魔の少年に駆け寄る女性……

呼吸を復活させたアーシアは、勇気を振り絞って声を張り上げる。

 

「あ、あの! その方の主のグレモリーさんですかっ!!」

 

するとその紅毛の女性はアーシアをゆっくり降り向き、さっきとは打って変わったきょとんとして顔で、

 

「えっ? そうだけど……」

 

「それじゃあ、その方に刺さった剣を一振りずつ抜いてください! すぐに止血しながら治癒(ヒール)を開始します!」

 

「はっ? 貴女は一体……?」

 

「早く! 今は一刻を争います!!」

 

リアスはなんとなく「救助活動を行う救急救命士を前にした一般人って、こんな気分なのかしら?」と頭の片隅で思いながら、

 

「わ、わかったわ! どれから抜けばいいのかしら?」

 

「まずこの剣を……ゆっくりでかまいませんから、傷口を広げないように丁寧に抜いてください」

 

と慌てて匙少年の体を貫く何本もの剣を、アーシアに指示されるままされるまま一振りずつ引っこ抜き始めるのだった。

 

 

 

アーシア・アルジェント。

一誠と出会い、覚悟の意味を知り、生来持つ強さが輝き始めた少女。

”紅髪の滅殺姫(ルインプリンセス)”の二つ名を持つ上級悪魔、リアス・グレモリーを気迫で凌駕した数少ない存在でもある。

 

 

 

***

 

 

 

「さっきはごめんなさい。貴女のことを誤解してしまって……」

 

上級悪魔としては少々軽率なほど、自分の下僕……眷属悪魔である匙元士郎(さじ・げんしろう)を治療するアーシアに頭を下げるリアス……

上級悪魔としてはともかく、素直に頭を下げられるのは人間としては間違いなく美徳だろう。

 

「いえ、いいんです。あの場面なら仕方のないことですし……主もきっとお許しになりますよ?」

 

気にしてないと屈託なく微笑むアーシアにリアスは苦笑で返し、

 

「悪魔に神の救済を説かれても……ねえ?」

 

いつの間にか転移してきたグレモリーの眷属たち。

最初は怪訝な様子で部長と見知らぬ修道女(シスター)を見ていたが、彼女(アーシア)が何をしているかを理解したとき、自然と襟元を正した。

 

 

 

「これでもう、命の危険は去ったはずですよ?」

 

珠の様な汗を浮かべ、少し疲れたように……でも無理してアーシアは優しい笑みを浮かべる。

治癒の術式は術者だけでなく、怪我の急速回復のために治癒される本人も少なからず疲労する。

そのせいか匙はいつの間にか眠りについていた。

アーシアは匙の髪を撫で、

 

「良く頑張りましたね」

 

と優しく微笑んだ。

その慈母のような笑みに一瞬、リアスは見蕩れそうになるが、

 

「先ずは我が眷属の命を救ってくれたことにお礼を言わせて貰うわ。本当にありがとう」

 

自分がすべきことを思い出して優先させた。

 

「いえ。わたしは当然のことをしただけですから」

 

少しはにかんだ表情のアーシアだったが、リアスは心底感心したように、

 

「それにしても……あれだけ重傷の悪魔をああも簡単に治癒してしまうなんて凄い力ね? 貴女、一体何者なのかしら?」

 

「あっ、えっと、わたしアーシア・アージェントと申しまして……あっ、そうだ」

 

彼女はポケットから思い出したように一枚のチラシを取り出し、

 

「イッセーさんの、その……お友達です。多分」

 

何か最後はひどく自身無さげだったが……

 

「えっ!? 一誠君の?」

 

「えっ? 一誠先輩のですか?」

 

それが目立たずに済んだのは、それ以上の大きな声で驚いた祐斗と小猫の声にかき消されたからだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

俺と白髪の神父は、”()()()()()()()()()()()()”ように戦いながら移動していた。

 

「ひゃっほう! ”祝福されし無限の銃剣(バヨネッタ・アンデルセン)”をくっらいやがれぇぇ~~~っ!」

 

あの神父の長剣、鍔はないし妙な形してると思ったら、ナイフ型が主流になる現代より前の時代……マスケット銃時代のバヨネット(銃剣)そっくりだったのか。

妙に納得がいったぜ。

 

「喧しい! ”赤龍の雷炎弾(ブラスト・ショット)”!」

 

投擲される特大サイズの銃剣(?)のお返しとばかり、俺は左腕の肘から指先まで覆う篭手の掌に埋め込まれた宝玉(オーブ)型の発動体から、電磁力場球体に封入した高密度圧縮プラズマ火球を射出する!

 

赤い龍(ドライグ)は、古来より炎と雷を象徴する存在だ。

その特性を利用して球体状の電磁力場の中に高温プラズマを封入し、”倍化(Boost)”の能力で圧縮、同じく電磁場で形成した不可視の加速砲身(リニアバレル)で打ち出すのが、この”ブラスト・ショット”だった。

 

俺が人間時代から放てる数少ない遠距離対応の技で、ドライグに言わせれば本物に比べれば確かに威力は小さいが、それでも立派に「龍の吐息(ドラゴン・ブレス)」の変異亜種らしい。

実はレイナーレの胴体に風穴開けたのもこの技だ。

 

 

 

もっとも悪魔化によって手に入れた強靭で高いポテンシャルをもつ肉体と毎夜のドライグとの夢領域での特訓の成果で、今となっては同じ技でも威力は段違いであり、またそのエネルギーを別方向……例えば、速射性や持続射撃性能も”()()()()”られるようになった。

 

レイナーレに放った頃の威力を30口径(7.62mm)クラスのライフルに例えるなら、今の俺が十分な時間をかけて最大限の”倍化(ブースト)”を行った場合のそれは、10式(現用)戦車の主砲である120mm滑腔砲(かっこうほう)にも匹敵する。

だだ、フルチャージ・ショットはこういう相手が人間サイズで激しく動き回るような戦いにはチャージまでの時間が長く、1発の威力が()()()()()威力過剰(オーバーキル)になってしまい、回避された場合の二次被害など取り回しが悪いなど逆に不利になってしまう。

そこでさっき出てきた”振り分け”が意味を持ってくる。

 

イメージ的には溜め込んだエネルギーを分割パッケージ化してる感じ……さっきの例えを持ち出すなら120mm砲弾の弾頭と火薬を瞬間練成で再構成し、同じ重さになる分量だけ小銃(ライフル)弾を作った感じだろうか?

 

例えば、今白髪神父に向けて発射してる火球の威力は、精々米軍の”XM25 IAWS”で使う25mm×40グレネードの”サーモバリック弾”とどっこいだけど……発射速度では300発/分(毎秒5発)の速度をキープでき、今の威力と発射速度でなら現状で200発程度は撃てる。

 

最も連射を続けたら200発などすぐに弾切れになること請け合いのなので、基本は三発一区切りのトリプル・バースト(三点分射)で撃ってるが。

これは残存エネルギーは10秒ごとに倍化(ブースト)されるから、俺の限界許容量《キャパシティ》一杯までは、常に補充される形になるのでかなり便利だ。

 

もっともこんな小器用な真似が出来るのは、倍化(ブースト)の力だけじゃない。

”振り分け”を行う前段階、リミットは俺の限界に依存してしまうが、倍化させた力(エネルギー)を一時的に溜め込む”()()()()()()()()()”……倍化発動と同時に自動起動する”貯蔵(プール)”もその意味が大きい。

 

 

 

***

 

 

 

どうやら俺は「人間状態でドライグの意識とリンクすれば、一発で人の姿を失い二度と戻れぬ”龍化”する」レベルなほど龍の力と親和性が高かったらしく、ドライグ曰く……

 

『相棒は、人としての姿を持って生まれてきたこと自体が間違いのような奴だからな』

 

とのことらしい。

評価は微妙だが、お陰でドライグが倍化(ブースト)させた力を”貯蔵(プール)”で溜め込み柔軟かつ多様に使えるし、他にも他者にエネルギーを伝達する”譲渡(トランス)”や、”硬化(キュリング)”、”延伸(エクステン)”なんかの能力を使えるようになってる……いや、正確にはまだ単純に使えるだけで、実戦レベル使()()()()()()までには至ってないんだが……それでもありがたい。

 

実際、倍化と貯蔵、譲渡ははともかく、硬化や延伸はの能力はまだどれをとってもドライグに言わせると「まだよちよち歩きどころかはいはいのレベル」らしく、他の能力と組み合わせて”戦術選択肢の幅を広げられる”ようになるまでもう少し時間がかかるだろうし、ましてや能力単体で「使える」ようなレベルになるのはまだ先だろう。

 

逆に現状において攻防双方に多大で多彩な恩恵のある”赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”の超絶スペックに頼りすぎた戦闘になるのも、一辺倒過ぎて怖い。

実は俺が祐斗に師事を仰いで剣術の修行をしているのも、「左手に頼り過ぎない、右手を有効利用する戦術」ってスタイルを構築したいが為だ。

いや、まだまだ未熟……先は長いけど。

 

 

 

誤解されやすいけど、俺は本質的には臆病だ。

だから、常に「頼りにしていた何かが使えなくなった場合」を考えて予防策を考える。

よく言う”ブレード・オンリー(ブレオン)”なんて情況、俺は考えたくもない。

 

勝つためには手段を選ばないし、卑劣卑怯の(そし)りだけで勝ちが拾えれば安い物だ。

戦いで負ければ、命が取られるのは当たり前だと思ったほうがいい。

真剣勝負ってのは本来、そういうものだ。

命を失えば次に繋がらない……

 

(あの日に見上げた”憧れ”には決して届かなくなる……)

 

それは俺にとって、決して看過できることじゃないから。

 

 

 

***

 

 

 

(それにしても……)

 

こっちの攻撃が当たらないのは、俺がヘボなだけってことで説明つくけど……

 

「のらりくらりと殺気もなく逃げ回られるとかなりやり辛いな……」

 

そう。

さっきから俺と神父は、銃剣と火球の応酬をしながら戦っているように見えるが、実際は「のらりくらりと攻撃を避けながら逃げる神父を俺が追撃してる形」になっていた。

言い方を変えれば、

 

(こりゃ誘導されてるな……)

 

それも街の外……人気(ひとけ)の少ない方向へ。

 

「一体、何を考えている……?」

 

 

 

だが、変化は不意に訪れた。

郊外の廃ビルの屋上で対峙した時、白髪神父がいきなり間合いを詰め、接近戦を挑んできたからだ。

 

”ギィン!”

 

巨大銃剣の刃と篭手の鍵爪が交錯するが……

 

「おい……」

 

刃越しに白髪頭が唐突に話しかけてきた。

 

「なんだよ?」

 

神父は唇を可能な限り動かさぬようにしてこう続ける。

 

「”カラス(堕天使)”が二羽……こそこそ尾行してきて、覗き見してるのに気付いてるか?」

 

「当然」

 

さっきからまとわりつく視線と気配が鬱陶しくて仕方ない。

 

「時代遅れのボディコン女は()()る。コートマッチョの方は頼めるか?」

 

「あいよ」

 

俺は躊躇いなく頷いた。

なぜか、彼の言葉を疑う気はおきない。

 

(いや、違うな……)

 

神父の戦いっぷりから、なんとなくこういう展開になる予感はしていたからだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
滅殺姫の初登場とイッセーの隠し能力(スキル)が明らかになったエピソードはいかがだったでしょうか?

えっ? リアスは無能姫なんかじゃ無いデスヨ?(震え声
ただ、情が厚いので大事な眷族の瀕死の姿を見て動転してしまっただけです。いや~、匙くん愛されてるね~(棒
個人的には匙くん、お姉様二人には好かれやすい性格だと思ってます。
立ち位置的にはまんま、「エロ度低めの原作イッセー」でしょうか?

そして、フリードとの戦い……
いきなり出てきました”祝福されし無限の銃剣(バヨネッタ・アンデルセン)”……まんま”あのお方(化物神父)”の武器です(笑
ただ、フリードの神器級装備はこれだけじゃないみたいですが……

そして、イッセーにも追加能力(スキル)です。
”倍化”、”譲渡”に加え”貯蔵(プール)”、”硬化(キュリング)”、”延伸(エクステン)”という三つの能力が新たに発動してます。
ただ倍化と同時成長する貯蔵もですが、硬化も延伸もまだまだ芽生えたての力、いずれ出てきますがまだ実戦で使うレベルではないし、「他の能力の組み合わせて意味を持つ」タイプの能力だとイッセーは判断してるようです。

さて、ラストでフリードが不穏な発言から、次回は中々の急展開になりそうです。
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!

ご感想などをいただければとても嬉しいです。






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