俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような? 作:ボストーク
今日の夜からまた時間が取れなくなりそうなので、前倒し投稿です(^^
さて、今回のエピソードは……
果たして、イッセーはアーシアの危機を救えるヒーローになれるでしょうか……?
ある夜、”その部屋”に現出された光景を端的に表すなら……”
既に息絶えた男性の惨殺死体に……
「うっ……」
全身を細長い……何振りもの
この両者の間に生死の境目があったとするなら、おそらく種族差による
「おやめください! ”セルゼン”
そして、文字通り手も足も出ない状態にされた若い悪魔の前に、今にも消えそうな命の前にアーシア・アルジェントは身を投げ出すようにして庇っていた……
「な~にを言ってるのかなぁ? 新人のアーシアちゃんはぁ? 異端と化物は殺してもいいって教会で習わなかったんでちゅかぁ?」
だけど、そんな彼女を見下すように下衆な嗤いを浮かべるのは、見た目はあちこち串刺しにされた転生悪魔やアーシアと同じくらいの年代に見える”術式処理を施した
特徴的な白い髪に赤い瞳……だが、もっともインパクトがあるのは人差し指と中指の間、中指と薬指の間、薬指と小指の間に一振りずつ、左右合計六振りの薄刃の長剣だった。
造りから見て、少年悪魔を刺し貫いてる物と同じ長剣だ。
「どきなさいってBa♪ じゃないとアーシアちゃんも一緒に刻んじゃうよぉ~ん♪」
本来なら丹精な顔立ちを、悪意に満ちた愉悦で歪ませる神父……その名を”フリード・セルゼン”という。
フリード・セルゼン……
かつては将来を嘱望された”天才
***
「主よ、セルゼン神父の所業をお許しください」
(イッセーさん……)
自分もきっと「悪魔さん」ごとフリードに殺される。
そう
自分に覚悟を問うた……生まれて初めて、「良く頑張った」と誉めてくれた、「もう泣いていいんだよ」と言ってくれた優しい顔だった……
(ごめんなさい、イッセーさん……せっかく貴方があれほど教えてくださったのに、結局わたしは何も分ってなかったみたいです……)
自分はきっと何一つ分ってなかった。
『悪魔と敵対し、滅ぼしあう覚悟』……その意味の重さを。
名残もある。
未練もある。
だけど、アーシアの心には後悔だけは無かった。
あの悪魔を助けたことで教会を追放されたことも、今もこうして悪魔を庇ってることで命を落すことも。
(だけど神様、もしも最後に一つだけ願いが叶うのなら……)
「最後に一目、会いたかったなぁ……イッセーさん」
それが心残りだった。
***
「アーシアちゅわぁんは、そこをどく気はないのかなぁ?」
「はい。どきません」
「ばか……あんた……はやく……にげろ」
串刺しの少年悪魔は息も絶え絶えに言うが、
「いえ。にげません! わたしは助けられる命は助けたいです! 救える命は救いたいんです!」
アーシアの翡翠色の瞳にあったのは怖くても見捨てないという強い意志。
「ひゃっほい! この大ボケシスター言い切りやがったぜぇん! 貴様も異端者らしくグラムいくらの
フリードの刃がアーシアの柔肌を切り刻もうとしたその時……
「神様……!!」
”ガッシャーーーーーン!”
窓ガラスが突き破られ……
”ガツッ!”
「へぼぉ!?」
突き出された赤い拳の一撃を浴びたフリードが壁まで吹き飛び……
「あっ……あっ……」
涙に濡れる
「アーシア……助けられるべき命にも、救われるべき命にもお前だって入ってるんだぜ?」
「イッセーさん!!」
今、”赤き龍”が舞い降りるっ!!
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「ほう、これはこれはこれはわぁ~~~っ!! 悪魔の助っ人ちゃん、参上ですかぁ?」
顔面への打撃……それも、”
(殴った感触も、なんか妙だったしな……)
俺は軽く剣山だかハリネズミだかって印象の姿になってる俺と同年代の外見っぽい悪魔を見やり、
「生憎と俺とは眷族違いだ」
「ほほ~う。流石は悪魔でちゅねぇ~。仲間が串刺しになってるのに、顔色一つ変えないでちゅかぁ?」
だから眷属違いだと言ってるだろうに。
こっちは血塗れの瀕死体なんて、人間だった頃から見慣れてる。
「俺はアーシアの俺を呼ぶ声に導かれて来ただけだ。それ以上でも以下でもないさ」
「イッセーさん……」
「チラシ、捨てずに持っていてくれたんだな?」
”うるっ”
へたりこんで涙で滲むアーシアの頭を軽く撫で、
「アーシアの声、確かに届いたから」
「ふ……ふぇぇぇぇん」
張り詰めていた気が一気に切れたせいだろう。
泣き出すアーシアの頭を、俺はもう一度撫でた。
***
「ああ~んっ!? アーシアちゃんったら、悪魔の召還アイテムでももってたんですかぁ? 悪魔に貰ったグッズを大事に持ってるなんて駄目駄目なシスターちゃんですねぇ~」
凄む白髪頭に、
「そう硬いこと言うなよ? 神父。男としちゃあ、可愛い女の子が自分があげた物を大事にしてもらえるってのは、嬉しいものだろ?」
「知っかよ! バーカ!」
お互い油断なく見ながらも、俺はチラリと串刺しにされた同年代の悪魔を見る。
(もしかしたら、こいつが祐斗達が言ってた”
しかし、俺はその姿に奇妙な違和感を覚えた。
そう、まだ明確なことはいえないが……何かが明らかにおかしいのだ。
(あっ、そうか……そういうことか)
俺はその違和感の正体に気付いた。
「なあ、神父……この部屋の中じゃあ、俺やお前が暴れるのは狭すぎやしないか?」
「ああ~ん? 悪魔ちゃんは俺っちの
「そうだ。どうせ『
「HA-HA-HA !! この悪魔ってば言ってくれちゃうじゃないですかぁ! ボクちん、気に入ちゃったよぉ~ん!!」
すっと神父は指に挟んだ刃を俺に向け、
「おい、クソ悪魔……出ろよ! 望みどおり外で決着つけてやんよ!!」
「心得た」
俺はアーシアを見て、
「アーシア、もうすぐ異変に気付いたその少年の主が来るはずだ。そうしたら、俺の名とそのチラシを見せて、少年の剣を抜いてもらってくれ。その時、そいつの傷を治癒してくれると助かる」
「は、はい! でもイッセーさんは……」
「ここで待っててくれ。すぐ戻る……多分、これからやって来るのはグレモリーって赤い髪の女性だと思うけど、その人にも俺の所在を聞かれたらそう答えておいてくれ」
「はいっ!」
「うっひょう! このこって
「さあね。『
「ケッ! さっさと表に出やがれ!」
「わかったぜ」
最後に俺はアーシアに振り向き、
「アーシア、”また後で”」
「はい。イッセーさんをここで”待ってますから”」
そして前に分かれたときと同じ、無理に作った涙の笑顔で見送ってくれた。
皆様、ご愛読ありがとうございました。
供覧の神父、フリード・セルゼン初登場のエピソードはいかがだったでしょうか?
いや~、「
それにしても不運なのは匙ですね~(^^
原作イッセーとほぼ同じ手順でフリードとエンカウントした上に、フリード自体がイッセー同様にかなり強化されてますから。
なんとなく”この世界”のフリードは、某ヘルシングの”化物神父”が神職繋がりで混入してそうですし(えっ?
ただ、フリードの行動も原作以上に怪しいっちゃ怪しいんですが(笑
次回はバトルの続きもですが、なにやらまた誰かが登場しそうな……?
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!
もしご感想などいただければ、とても嬉しいです。