俺、悪魔になりました!……でも契約先とか色々違うような? 作:ボストーク
なんとなく始まって、昔のプロットにペンの赴くまま肉付けして作品として仕上げるという手法で書いてるこのシリーズもついに二桁です。
とりあえずここまで書いてこられたのも、皆様の応援があればこそです。
本当にありがとうございました。
さて、今回のエピソードは前回と打って変わって、またまた日常パートなのですが……イッセーに「この時点ではありえないお客様」が来てたりして(^^
アーシアを教会の見える位置にまで送り、学校に戻った俺は「治癒もしくは回復系の神器持ちの聖職者」と遭遇し、【教会】残党との接触の為に天界勢力に放棄された教会に向かったと、椿姫先輩と生徒会室に待機していたソーナお嬢様に報告した。
無論、先ずは「接触したなら、何故すぐに報告しなかったの?」と叱責された。
組織において独断専行は忌避されるべきものであり、「
俺はそれを半ば意図的に無視してアーシアと接触し続けたのだから、会長……ソーナお嬢様の叱責は的を射たものだった。
だから俺は叱責を受けた後、
「一誠、何か申し開きはありますか?」
そうソーナお嬢様に問われたとき……
「独断専行の成果を御報告申し上げたいのですが?」
詳細情報と予想される事態、それに対応する対策を述べた。
「……そこまで考えられるのに、どうして貴方は人を心配させるような行動をとるんですか?」
と今度は呆れられた後、普通にお説教されてしまった。
どうやら申し訳ないことに、ソーナお嬢様に大きな心配をかけてしまったらしい。
お嬢様を宥める椿姫先輩が目で訴えていた。
「ソーナお嬢様、心配かけてすみませんでした。そして、」
俺は頭を下げ、
「心配していただいて、ありがとうございます」
「もういいです」
”ぷいっ”とソーナお嬢様は横を向いてしまった。
ちょ、ど、どうしよう……こんな拗ねたようなお嬢様なんて初めて見たから、どう対応していいかわからないんだけど……
「ソーナ、そろそろ許してあげたら? 兵藤君、本気で戸惑ってるわ」
クスクス笑う椿姫先輩に、
「いつも飄々としてる一誠を困らせられたら、少し溜飲が下がりました」
えっ?
俺ってそんな飄々としてるっけ?
「一誠、こういうことは二度とないようにしてくださいね?」
「はいっ!」
「単独行動をするなとは言いません。臨機応変に動かねばならないことがあるくらい、私も理解してます。だけど、」
お嬢様は胸が痛くなるほど真っ直ぐに俺を見つめた……
「連絡くらい入れなさい。貴方を心配する存在は、貴方が考えてるより多いかもしれませんから」
「はい……!」
大いに反省だな。
うん、肝に銘じておこう。
俺は幸せ者だって。
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さて、ソーナお嬢様と別れて俺は帰宅の徒につく。
時間的にはギリギリ夕飯に間に合ったろう。
そして、母さんに帰宅したことを伝えるとそのまま階段を上がる。
部屋のドアを開けると……
「にゃ☆」
「にゃおん♪」
「にゃにゃにゃ?」
「にゃ~ん」
”バタン”
俺は徐にドアを閉めて深呼吸。
うん、きっと見間違いだ。
断じて俺の部屋に、『我が家の
”ガチャリ”
さあ、もう一度ドアを開こう。
錯覚は消えてるはずだ。
「あっ、イッセーちゃんお帰り~☆」
「にゃん♪」
どうして希望というのはこうも儚いんだろうか?
***
俺のベッドに陣取っていたのは、ツインテールの黒髪にソーナお嬢様の眼鏡を外して思い切り童顔にした代わりに胸を増量し、ついでに『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』のコスプレをさせたような少女……
「四大魔王の一角、”セラフォルー・レヴィアタン”様がこんな場末の男子高校生の部屋で何をやってるんですか?」
俺は思わず頭を抱えたくなった。
というか本気で頭痛がしてきた。
「えっ? イッセーちゃんに会いに来たに決まってるじゃない☆」
「魔王様ともあろうお方が、友達の家に遊びに来る感覚で来られてもですね……」
「ノンノン☆ 私のことは『レヴィアたん』って呼んでね☆って言ったじゃない? イッセーちゃん、もう忘れちゃったの?」
「いえ、よ~く覚えてます」
覚えてますとも。
というか、いっそ忘れさせて欲しい。
実は俺、兵藤一誠はレヴィアタン様と何の因果かつい最近、お知り合いになってしまったのだった。
思い返せばソーナお嬢様の眷属になった翌日、いきなり部屋の床にシトリー家の紋章が浮かび、中から召還悪魔よろしく現れたのが、このレヴィアタン様だったのだ。
実は今はセラフォルー・レヴィアタンと名乗ってるこのお方、悪魔のお国事情(?)で四大魔王の一つであるレヴィアタン姓を襲名する前の名は、セラフォルー・シトリーと言ってソーナお嬢様……ソーナ・シトリー様の実の姉君なのだ。
そして、俺の部屋を電撃訪問した理由は、
『え~、だってソーナちゃんが男の子を眷属にしたんだよ? お姉ちゃんとしては気になって当然じゃない☆』
知らんがな。
要するに俺の品定めだったらしい。
単純すぎる説明をすれば、レヴィアタン様は極度のシスコン……”ソーナお嬢様☆LOVE”なお方のようだ。
ただ、自己紹介のときの台詞が、
『はじめまして☆ 私、魔王セラフォルー・レヴィアタンです☆ ”レヴィアたん”って呼んでね☆』
だったのは、流石に度肝を抜かれた。
ま、まあ魔王様だけあって、色々破格なのは間違いない。うん、本当に色々な意味で……
まあ、ともかくその日は何に満足したかはわからないが満足げに帰っいったのだけど……
(まさか、こんなにも早く再降臨するとは……)
「レヴィアタン様、この度はどのようなご用向きで?」
「口調が固いゾォ~☆ それと私のことは”レヴィアたん”って呼んでって言ったじゃない☆」
「しかし、レヴィアタン様……」
「レ・ヴィ・ア・た・ん☆」
「……”セラフォルーお嬢様”で勘弁してください」
俺は仕方なく”
「ぬふふ~☆ イッセーちゃんはソーナちゃんの執事見習いだもんね? えっへん! くるしゅうない☆ 特にその呼び名をさし許すぞよ☆」
「ありがたき幸せにゴザイマス」
これはひょっとしてパワーハラスメントという奴じゃないだろうか?
それとセラフォルーお嬢様、”えっへん!”で胸を思い切り胸を張らないでください。
ぶるんとゆれて、目のやり場に困ります。
***
「話は戻しますが……セラフォルーお嬢様、今回はどのようなご用向きで?」
「イッセーちゃんは、私が冥界の外交担当で各勢力に太いパイプがあるのは知ってるよね?」
「もちろん」
「昨日、イッセーちゃんから送られた『【教会】を僭称する堕天使を中核とする非主流好戦的集団における駒王町における活動概要』なんだけどね……あれ、イッセーちゃんの要望どおりにアザゼルちゃんにも
いや、直接送る必要があったかは謎だが……
それでも俺の希望通りにセラフォルーお嬢様が動いてくれたのはありがたい。
堕天使主流派中央の統制から外れた過激派にどこまでコントロールが利くか不明だが、少なくとも『堕天使陣営とは無関係な末端組織の暴走』というお墨付きがもらえれば、こちらとしても色々動き易くなる。
いや、それはともかく……
(
「”アザゼルちゃん”って、まさか……堕天使
「そだよ☆」
か、軽い……
「それでね、アザゼルちゃんがイッセーちゃんのレポートを読んだら、今度はイッセーちゃんに興味を持ってね……」
あれ?
なんだか雲行きが……
「私に聞いてきたから『アザゼルちゃんのとこの外れ中ボス天使を相打ちにした、元人間の男の子で、ソーナちゃんが眷属悪魔に転生させたら、なんとびっくり赤龍帝だったんだぁ☆』って教えてあげたの☆」
「なっ!?」
な……なんてことをしてくれるんだ、この魔王少女はっ!?
「だってだってぇ。『今代の赤龍帝は悪魔サイドなんだよぉ~☆』って周知するのは、すっごく強い外交カードになるんだよ?」
どんなにノリが軽くても、さすがは魔王と言うべきか?
腹黒く在るべきところは、しっかり腹黒い。
(いや、もしかしたらこのノリの軽さも擬態なのかもな……)
「そうしたら今度はアザゼルちゃん、イッセーちゃんと直接お話したいって言い出してね」
「はあっ!?」
なんで堕天使の総督なんて一勢力の長が、俺みたいな転生したてホヤホヤの新米下級悪魔に?
「でねでね、『ちょうどいい機会だからいいよぉ~☆』って。キャハ☆」
「キャハ☆っじゃねぇ~~~っ!!」
例え相手が四大魔王でも、ツッコんだ俺は悪くないと思うぞ?
皆様、ご愛読ありがとうございます。
まさかのセラフォルー・レヴィアタン様の大幅前倒し登場の回はいかがだったでしょうか?
実は第07話のソーナおぜう様との会話が伏線になっていたりして(^^
「
になってしまったイッセーの心境はいかなるものか?(笑
しかも堕天使総督の名前まで出てくるし、次回は更なるカオスの展開が?
それでは皆様、また次回にてお会いできることを祈って。
もしご感想などをいただけると、とても嬉しいです。